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神マナ物語 ── はじめに(舞台と登場人物)

「神マナ物語」は、ひとつの、小さな介護の現場をめぐる、短い物語集です。

主人公は、神崎まな。十九歳の、学生。介護の知識も、資格も、まだ何も、ありません。あるのは、「目の前の人の役に、立ちたい」という、想いだけ。彼女が、無償のボランティアとして通うなかで出会う、たくさんの人——その一人ひとりとの、ささやかで、忘れがたい時間を、まなの日記として、綴ります。

製品の話は、出てきません。ただ、人として、人と、どう向き合うか。それだけの、物語です。

舞台 ── 小規模多機能ホーム「えんがわ」

架空の町の、坂の途中にある、小さな施設。「小規模多機能」とは、通い(デイ)・訪問・泊まりを、ひとつの事業所で兼ねる形のこと。なじみの職員が、同じ顔ぶれで、ずっと寄り添えるのが、いいところです。名前の「えんがわ」は、世代を越えて、人がふっと腰かけ、庭を眺める、あの縁側から。

登場人物

神崎まな(19)── 主人公。学生のボランティア。無資格・無償・無知。でも、人を、よく見ている。「いるだけで、いい」の意味を、一話ごとに、知っていく。

桐山和子(61)── 介護主任。この道、三十五年のベテラン。ぶっきらぼうだが、芯は、あたたかい。まなの師匠。口ぐせは「世話は、用事を済ませることじゃ、ないよ」。

梅田(45)── 看護師。毒舌で、現実的。でも、誰より、利用者を、よく見ている。

湊 大地(26)── 介護士。口下手だが、段取り上手。記録や送迎の“小さな工夫”を、そっと持ち込む人。

藤巻(54)── 所長。人手不足に頭を抱えつつ、それでも、辞めない。「いっぺんには、無理だ。一個ずつ、変えるんだ」。

イネさん(98)── えんがわ最古参の利用者。ほとんど喋らないが、すべてを、見ている。“縁側の主”。

※ そのほかの利用者は、一話ごとに、入れ替わります。毎回、ちがう、出会いです。

ちいさな用語集

小規模多機能……通い・訪問・泊まりを、ひとつの事業所で。なじみの人が、ずっと寄り添える形。
主任……現場の介護職を、まとめる、ベテランのリーダー。
デイ(通所)……日中だけ、施設に通って、過ごすこと。
ボランティア……無償で、手伝いに来る人。資格は、いりません。
看取り……人生の最期を、そばで、見守ること。

読み方

どの話から読んでも、大丈夫。一話ずつ、完結します。はじめての方は、まなが「えんがわ」に来た、最初の話──「字が、きたない子」から、どうぞ。

目次

序章 はじめに(舞台と登場人物)

第一部 介護って、なんだろう

第一話 おばあちゃんの、最後の家

第二話 四十歳から、みんなが払っているお金

第三話 人生の、設計図を引く人

第四話 老人ホームって、こんなにあるの?

第五話 だれが、介護を、支えているのか

第二部 しごととしての、介護

第六話 ここで、学ばせてください

第七話 介護は、書く仕事だった

第八話 監査が、来る

第九話 白衣を着ない、看護師さん

第十話 介護は、ただ世話するだけじゃ、なかった

第三部 出会い

第十一話 字が、きたない子

第十二話 毎週、妻に、はじめましてを言う男

第十三話 私を、娘だと、まちがえる人

第十四話 「おじいちゃん」では、振り向かない人

第十五話 怒鳴る人の、ほんとうの理由

第十六話 湯のみは、二つ

第十七話 なぜ、彼は、同じ話を、何度もするのか

第十八話 合格を、くれない人

第十九話 髪に、誰も触らせない人

第二十話 触れられるのが、こわい人

第二十一話 「泥棒!」と、彼女は私を指さした

第二十二話 入れ歯を、隠す人のわけ

第二十三話 毎日、消える老人の、ゆくえ

第二十四話 庭を、見ていてくれ

第二十五話 彼女が、風呂を拒んだ理由

第二十六話 下手くそだねえ

第二十七話 毎日、死んだ妻に手紙を書く男

第二十八話 五十二歳の、彼

第二十九話 孫の結婚式まで、ひと月

第三十話 九十四歳を、笑わせた人

第三十一話 娘の顔も忘れた母が、唯一おぼえていたこと

第三十二話 父の、ノート

第三十三話 もう、来るのを、やめようと思った日

第三十四話 ありがとうを、言わない人

第三十五話 はじめて、人を、見送った日

第三十六話 最後の言葉を、書きとめた

第三十七話 行き先は、もう、ない家

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