その日、私は、桐山主任の、訪問に、付いていった。利用者の、ノブさんの、お宅。家で、暮らしながら、えんがわに、通っている人だ。
家に着くと、もう一人、先に、来ている人がいた。私服の上に、エプロンを、つけた、若い女の人。てっきり、ご家族かと、思った。「訪問看護の、ナースさんだよ」と、桐山主任が、教えてくれた。白衣も、着ていない。病院でも、ない。その人は、ノブさんの家の、畳の上で、傷の手当てをして、血圧を測り、薬を、確認していた。
「看護師さんって、病院に、いるものだと……」。私が言うと、ナースさんは、笑った。「家で、療養する人も、たくさん、いるからね。私たちが、家まで、行くの。お医者さんとも、つながってる。何かあれば、すぐ、先生に相談して、指示をもらう」。介護の人と、看護の人と、お医者さんが。それぞれの場所から、一人のノブさんを、囲むように、支えている。その、見えない、連携。
ノブさんが、ぽつりと、言った。「みんなが、来てくれるからな。わしは、最後まで、この家に、いられるんだ」。
支えるのは、一人じゃ、なかった。たくさんの、ちがう仕事の人たちが、手を、つないでいた。一人の人が、その人らしく、いられるように。
「神マナ物語」は、小規模多機能ホーム「えんがわ」に通う、ボランティアの学生・神崎まなの物語です。 → 登場人物と舞台について(はじめに)
