おばあちゃんの、遺品を整理していて、一枚の、うすい水色の、カードが、出てきた。「介護保険被保険者証」。私は、その存在すら、知らなかった。
調べてみて、驚いた。介護保険、というのは、四十歳になったら、国民みんなが、保険料を、払っている。まだ元気な、父も、母も、ずっと、払っていた。そのお金が、集められて、おばあちゃんのような人を、支えるために、使われていた。
おばあちゃんが、施設で受けていたサービス。あれは、ただ、ではなかった。でも、おばあちゃんが、全額を、払っていたわけでも、なかった。本人の負担は、一割ほど。残りは、みんなで出し合った保険料と、税金で、支えられていた。国と、県と、市町村が、それぞれ、お金を出し合って、この仕組みを、回している。
私は、知らなかった。日本という国が、こんなにも大きな仕組みで、お年寄りを、支えていることを。おばあちゃんは、たった一人で、年老いていったわけじゃ、なかったのだ。たくさんの、顔も知らない人たちの、ほんの少しずつの負担が、おばあちゃんの、最後の二年を、支えていた。
うすい水色のカードを、私は、しばらく、見ていた。こんなに、薄いのに。これは、たくさんの人の、やさしさで、できているんだ。
「神マナ物語」は、小規模多機能ホーム「えんがわ」に通う、ボランティアの学生・神崎まなの物語です。 → 登場人物と舞台について(はじめに)
