介護記録AI「神マナ」無償提供のお知らせ

第二十話 触れられるのが、こわい人

シゲさんは、人に、触られるのを、ひどく、嫌がった。

八十二歳。私が、手を引こうとすると、びくっと、身を縮める。「やめて」。声に、棘があった。記録には「接触を、強く拒否」と、あるらしい。理由は、誰も、知らなかった。

ある日、梅田看護師が、シゲさんの腕に、古い火傷の痕が、あるのに、気づいた。子どもの頃の、空襲のものらしい。ずっと、人に、見られたくなかったのだ。急に触られると、その熱を、思い出すのかも、しれなかった。

それから、私は、シゲさんに触れる前に、かならず、声を、かけるようにした。「シゲさん。いま、手を、お借りしますね」「肩に、触りますよ。あったかいですか」。ひとこと、断ってから、そっと。シゲさんは、もう、びくっと、しなくなった。「……あんた、ていねいだね」。小さな声だった。

それから、何ヶ月か、たった、ある日。シゲさんが、自分から、あの、火傷の痕のある腕を、私に、見せた。「これね」と、シゲさんは、言った。「八つのとき、母さんが、火の中から、引っぱり出して、くれた、痕なんだよ」。私は、その腕に、そっと、両手を、添えた。あたたかかった。

「神マナ物語」は、小規模多機能ホーム「えんがわ」に通う、ボランティアの学生・神崎まなの物語です。 → 登場人物と舞台について(はじめに)

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