【令和8年度】介護テクノロジー補助金の申請をサポート

介護のICT化は失敗する?|つまずく5つのパターンと導入前チェックリスト15項目

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ICTの日常利用は75.4%まで進みました。しかし負担軽減の効果を実感できている事業所は、昼49.4%・夜44.6%。「入れた」と「効いた」のあいだには、はっきりした溝があります。何がその差を生むのかを公表データと国のガイドラインで整理し、導入前に自分で確かめられる15項目のチェックリストにしました。

「高いシステムを入れたのに、結局みんな紙に戻った」——介護の現場で、この話は珍しくありません。そして多くの場合、原因は「選んだ製品が悪かった」ことではありません。

この記事では、ICT化がつまずく5つのパターンを整理し、そのそれぞれに対応する導入前チェックリスト15項目を用意しました。すでに「使われないシステム」を抱えている事業所向けに、立て直しの順番も書いています。数値は厚生労働省・公益財団法人介護労働安定センターの公表データに基づき、出典を明記しています。

関連する記事はAXラボ(介護×AIの研究室)でまとめています。

結論:失敗の多くは「製品選び」ではなく「入れ方」で起きている

先に結論です。うまくいかなかった事業所の話を聞いていくと、詰まっている場所は製品の機能ではなく、導入の進め方と、導入後の運用に集中しています。

具体的には——現場に一度も触らせずに決めた/既存ソフトへの入力が残って二重入力になった/機能が多すぎて「どれを使うか」が決まっていない/担当者1人に依存した/効果を測っていないので、続ける理由も直す手がかりもない。この5つです。

逆に言えば、これらは製品を選ぶ前に、事業所側で潰しておけます。それがこの記事の目的です。

数字で見る「入れた」と「効いた」の溝

公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」では、ケア記録・ケアプラン等の入力・保存・転記の機能を日常的に利用している事業所は75.4%。導入そのものは、着実に広がっています。

ところが、ICT機器・介護ロボットを導入しても「昼間の業務負担の軽減」に効果を感じている事業所は49.4%、「夜間」は44.6%(同調査)。4分の3が入れているのに、効いたと感じているのは約半数——これが令和6年の姿です。

背景には事業所そのものの厳しさもあります。従業員が「不足」と感じる事業所は65.2%(前年度64.7%)、「今の報酬では十分な賃金を払えない」は約39.1%(同調査)。人も原資も足りないなかで、効かない投資を繰り返す余裕はありません。

つまずく5つのパターン

パターン① 現場に一度も触らせずに決めた

経営層や本部だけで比較検討し、実際に毎日使う人が導入前に一度も触っていないケースです。導入後に「前のほうが早い」「押す場所が分からない」という声が出て、そこから巻き返すのは、決める前に触ってもらうより何倍も大変になります。

選定の段階でいちばんITが苦手な職員に触ってもらうのが、いちばん確実な検査になります。その人が使えるなら、他の人はまず使えます。

パターン② 二重入力が残った

よくある失敗です。新しいツールを入れても、請求や記録のために既存の介護ソフトへ入力する作業が残る。すると純粋に作業が1工程増えます。「ICTを入れたら忙しくなった」という感想は、たいていここから生まれます。

確認すべきは「連携できます」という言葉ではなく、「どの画面のどの項目が、どの操作で、どちらの向きに渡るのか」という具体です。片方向なのか双方向なのか、手作業のCSV書き出しが挟まるのかどうかで、現場の負担はまったく変わります。

パターン③ 機能が多すぎて、使う機能が決まっていない

高機能なものを選んだこと自体は失敗ではありません。問題は、「うちはこの機能を使う」という合意がないまま配られることです。マニュアルが分厚くなり、研修も一度きり。結果として、誰も全体像を持たないまま日常が始まります。

導入初月に使う機能を1つか2つに絞って明文化するだけで、定着率は変わります。残りは3か月目以降でも遅くありません。

パターン④ 担当者1人に依存した

ITに強い職員が1人で導入を回し、その人が異動・退職した瞬間に止まる、というパターンです。運用ルールがその人の頭の中にしかないため、引き継げません。

手順書を1枚つくること、そして「聞く相手が2人以上いる」状態をつくることが、いちばん安いリスク対策になります。国のガイドラインでも「手順書の作成」は業務改善の取組の1つとして挙げられています。

パターン⑤ 効果を測っていない

導入前の記録1件あたりの所要時間を測っていないため、導入後に楽になったかどうかを誰も証明できない。すると、続ける理由も、どこを直せばいいかの手がかりも失われます。反対する人を説得する材料も出てきません。

必要なのは大げさな測定ではありません。導入前に、代表的な記録3件分の所要時間をストップウォッチで測っておく。それだけで、あとから比べられるようになります。

国は「入れたか」ではなく「成果が出たか」を見ている

この流れは、国の制度設計にもはっきり表れています。令和6年度介護報酬改定で新設された生産性向上推進体制加算では、見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入し、国の「生産性向上に資するガイドライン」に沿った業務改善を継続し、事業年度ごとに取組の実績データを厚生労働省に報告することが求められます(加算(Ⅱ)は一月あたり10単位。テクノロジーを複数導入し、報告データで成果が確認された場合には、より高い評価として加算(Ⅰ)が設定されています)。

あわせて、利用者の安全と職員の負担軽減を検討する委員会の設置(おおむね3か月に1回以上の開催)も求められています。「入れて終わり」ではなく「成果を報告する」ところまでが要件になっている、ということです。

要件の詳細・単位数は改定や自治体運用により変わります。算定の可否は、必ず告示・通知の原典と貴事業所の登録内容をご確認ください。

国のガイドラインでは、ICTは「7つの取組」のうちの1つ

見落とされがちですが、厚生労働省の生産性向上ポータルサイトでは、業務改善の視点から整理した取組として、次の7つが示されています。

  1. 職場環境の整備
  2. 業務の明確化と役割分担
  3. 手順書の作成
  4. 記録・報告様式の工夫
  5. 情報共有の工夫
  6. OJTの仕組みづくり
  7. 理念・行動指針の徹底

ICTツールが直接効くのは、主に「記録・報告様式の工夫」と「情報共有の工夫」です。逆に言えば、業務の役割分担が曖昧なまま、手順書もないままシステムだけを入れても、残りの5つは何も解決しません。「ICTを入れたのに変わらない」の正体は、しばしばここにあります。

導入前チェックリスト15項目

5つのパターンに対応する形で並べました。右の列(確認のしかた)だけ持ち帰って使っていただけます。すべてを満たす必要はありませんが、空欄が多い項目ほど、そこが後で詰まります。

# 確認項目 確認のしかた
1 毎日使う職員が、契約前に実機を触ったか デモは管理者だけで受けない。現場から2人同席してもらう
2 いちばんITが苦手な職員が使えたか その人に、説明なしで1件つくってもらう
3 自分のスマホ・タブレットで動くか 事務所のPCではなく、実際に持ち歩く端末で試す
4 既存の介護ソフトへの入力が減るか、増えるか 導入後の1日の流れを、紙に書き出して比べる
5 連携が「どの項目・どの向き・どの操作」か言えるか 営業担当に画面を見せてもらいながら口頭で説明させる
6 CSVの手作業書き出しが挟まらないか 「全自動ですか、手作業が1回入りますか」と直接聞く
7 初月に使う機能を1〜2個に絞って書き出したか 紙1枚に書いて、全員が見える場所に貼る
8 使わないと決めた機能を明示したか 「今は触らない」リストをつくる
9 手順書が1枚あるか 導入初週に、使った人自身に書いてもらう
10 聞ける相手が事業所内に2人以上いるか 最初から2人で始める(1人担当制にしない)
11 ベンダーの問い合わせ窓口と応答時間を確認したか 電話かチャットか、平日何時までかを書面で
12 導入前の所要時間を測ったか 代表的な記録3件を、ストップウォッチで計測
13 4週間後に見る指標を1つ決めたか 「記録1件あたりの時間」など、1つでよい
14 やめる条件を決めたか 「4週間で楽にならなければ止める」と先に決める
15 個人情報の扱い(伏字・保存先・削除)を確認したか 口頭ではなく書面で3点を確認する

もう「使われないシステム」になっている事業所へ——立て直しの順番

すでに導入してしまい、使われていない場合。いきなり全部を作り直そうとすると、たいてい二度目の失敗になります。順番があります。

  1. 使われている機能を1つ探す。ゼロということはまずありません。そこが足場になります。
  2. 二重入力が起きている箇所を特定する。1日の流れを紙に書き出せば、たいてい1〜2箇所に集中しています。
  3. その1箇所だけを解消する。全体最適はいったん忘れます。
  4. 楽になったことを数字で示す。ここで初めて、他の職員が動きます。
  5. 使わない機能を正式に「使わない」と決める。捨てることで、残ったものが使われ始めます。

この「小さく始めて、続ける」進め方については介護のDXが進まない本当の理由介護のDXからAXへでも詳しく整理しています。

お金の話——補助金だけで製品を決めない

介護テクノロジー導入支援事業やデジタル化・AI導入補助金など、導入費用を軽くする制度は複数あります。補助率・上限額・締切・対象経費は自治体ごとに異なります。詳しくは介護テクノロジー補助金の解説ICT導入支援事業とはデジタル化・AI導入補助金補助金ナビをご覧ください。

ただし一点だけ。「補助対象だから」を選定理由の1位に置くと、上のチェックリストの1〜3が飛びます。補助金は費用を軽くする手段であって、現場で使えるかどうかの証明ではありません。使うかどうかを決めるのは現場、支払いを軽くするのが補助金、という順番を崩さないことをおすすめします。

自事業所の現在地を確かめる

立て直しの前に、いまどこにいるのかを確かめておくと遠回りが減ります。無料の「AX診断」では、事業所名または所在地から検索するだけで、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の公表データをもとに現在地を表示します。登録も入力も不要です。

AX診断(無料)で自事業所のAX(AI活用)度を見る

出典:厚生労働省ウェブサイト(介護サービス情報公表システム オープンデータ)/公共データ利用規約(第1.0版)。本ツールは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。診断結果は公表情報にもとづく整理であり、個別の判定・助言を行うものではありません。詳細は各事業所にてご確認ください。

導入を進めるときの実務注意

ICT・AIの導入や、記録を外部サービスに渡す運用にあたっては、利用者の氏名・被保険者番号などの個人情報の扱い(伏字・事業所内ルールの確認)にご留意ください。制度の要件・単位数・様式は、改定や自治体運用により変わります。加算の算定や補助の可否は、必ず告示・通知・自治体の実施要綱の原典と、貴事業所の登録内容をご確認ください。本記事は特定の製品・サービスの効果や算定を保証するものではありません。

入れたあとの半年で起きること|1週目・1か月・3か月・半年の48場面

ここから先は、入れる前ではなく入れたあとの話です。うまく落ち着いた事業所の話も、途中で止まった事業所の話も、起きる順番はよく似ています。期待から始まり、戸惑いが来て、紙と画面の両方に書く時期があり、そこで決めごとを置けたかどうかで半年後の姿が分かれます。

下の表は4つの時点を横に切り、そのとき現場で起きること/確かめること(記入欄)/このとき打てる手、の3列にしたものです。記入欄が空のまま次の時点へ進むと、同じ場面が次の時点でもう一度出てきます。

1週目|期待と戸惑いが同時に来る(13場面)

1週目に出てくるのは、たいてい操作の問題ではなく段取りの問題です。入れない、置き場が分からない、いつ書けばいいのか分からない。どれも1日で決められることばかりですが、この週に決めずに通り過ぎると、そのまま2か月目の景色になります。

この時期は速さも中身の充実も見ません。見るのは全員が一度は触れたかどうかだけです。触れていない人が何人残っているかを数えておくと、翌週にどこへ手を入れるかがそのまま決まります。

そのとき現場で起きること 確かめること(記入欄) このとき打てる手
初日にログインできない職員が出る 入れなかった人数:( )人/原因:( ) その場で再設定の時間を取ります。原因を1行だけ残しておくと、次に入る職員で同じ足止めが起きません。
端末の置き場が決まっておらず、探す時間が生まれる 端末の定位置:( )/探した回数:( )回 置き場を1か所に決めて貼り紙で示します。置き場が決まると、返っているかどうかが次の人にも分かります。
「前のやり方のほうが早い」という声が出る 早いと言われた作業名:( )/その担当:( ) 作業名を1つに特定して書き出します。速さの話は作業単位でしか噛み合わないため、全体の印象では扱いません。
入力が終わらないまま次の訪問・次のフロアへ移る 持ち越した件数:( )件/時間帯:( ) 入力を行う時間と場所を、時間帯ごとに決め直します。決めていない時間帯があると、そこだけ紙が残ります。
同じ利用者の記録が二重に立つ 二重に立った件数:( )件/立った場面:( ) どちらを正とするかを、その日のうちに決めます。決めが翌週へ持ち越されると、片方を消す判断ができなくなります。
文字入力に時間がかかる職員と、かからない職員に分かれる 入力手段の内訳(手入力・音声・定型):( ) 入力手段を職員ごとに選べるようにします。手段を1つに揃えると、揃えられない人がそのまま離れます。
「これは書かなくていいのか」という質問が続く 質問された項目名:( )/答えた人:( ) 質問と答えをその日のうちに1枚へ足します。口頭だけで答えると、同じ質問が人数分だけ繰り返されます。
管理者が紙で確認を続けている 画面で確認した回数:( )回/紙で確認した回数:( )回 管理者の確認手段を先に画面へ移します。確認する側が紙のままだと、出す側は紙をやめられません。
夜間帯だけ運用が別になる 夜間帯に入力された件数:( )件/入力した場所:( ) 夜間帯の入力の置き場と手順を別立てで決めます。昼と同じ前提で組むと、夜間帯だけ運用が抜け落ちます。
電波が届かない場所で入力できない 届かない場所:( )/その場所での件数:( )件 届かない場所を先に一覧にします。場所が分かれば、後で回すのか、その場は別の形で残すのかを決められます。
初日に触れなかった職員が出る(休み・遅番など) 触れなかった人数:( )人/触れた日:( ) 触れていない職員の初回を1週目のうちに個別に置きます。全体研修の回数を増やすより、取り残しの人数を数えるほうが早く進みます。
同じことを指す言葉が人によって違う 同じ意味で使われている言葉:( ) 言葉を1つに寄せて一覧に書きます。言葉が割れていると、後から探しても過去の記録に届きません。
「いつまで紙も書くのか」と聞かれる いま紙で残している帳票名:( ) いつ決めるかの日付だけを先に答えます。期日の答えを持たないまま1週目を越えると、併用がそのまま既定になります。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

1か月|二重運用が固まるかどうかの分かれ目(13場面)

1か月目は、紙と画面の両方に書く状態を「一時的なもの」と呼べる最後の時期です。ここで帳票の数を数えて一覧にできた事業所は、あとで終える相談ができます。数えないまま3か月目に入ると、併用は運用の一部として扱われ、やめる話そのものが誰の役割でもなくなります。

この時期にもう一つ起きるのが、質問の受け手が1人に固まることです。受け手が1人で回っているあいだは順調に見えますが、その人が休んだ日に初めて、運用がその人に載っていたことが分かります。順調に見える時期こそ、受け手を増やす時期です。

そのとき現場で起きること 確かめること(記入欄) このとき打てる手
紙と画面の両方に書く運用が定着し始める 両方に書いている帳票名:( )/その所要:( ) 両方に書いている帳票を一覧にします。数えていないうちは、やめる相談そのものが始まりません。
使われている機能と、開かれていない機能に分かれる 開かれていない機能名:( ) 開かれていない機能を「当面は触らない」と正式に決めます。決めずに残すと、教える対象だけが増え続けます。
入力の抜けが特定の時間帯に集中する 抜けが多い時間帯:( )/その時間帯の人数:( )人 その時間帯の入力の置き場を変えます。人を責める前に、置き場と手順の側を先に疑います。
質問が特定の1人に集まる 質問を受けた人:( )/1週間の件数:( )件 受け手を2人以上にします。受け手が1人だと、その人の不在が運用の停止と同じ意味になります。
「聞きにくい」という理由で自己流が生まれる 自己流の入力が見つかった件数:( )件 見つかった自己流を手順へ取り込むか、やめるかを決めます。放置すると、後から集計できない記録が積み上がります。
手順書が作られないまま1か月が過ぎる 手順書の枚数:( )枚/書いた人:( ) 使っている職員本人に1枚書いてもらいます。使っていない人が書いた手順書は、現場の順番と合いません。
新しく入った職員が、前のやり方で教わる 1か月に入った職員数:( )人/教えた人:( ) 教える順番を1本に決めます。教える人が複数いても、順番が1本なら運用は割れません。
記録の内容が短くなる(項目を埋めるだけになる) 短くなった帳票名:( ) 必須項目の数を見直します。項目が多いと、書く人は埋まる形のほうを選びます。
利用者や家族から見え方について質問が出る 質問の内容:( )/答えた人:( ) 説明の言い方を1つに決めて共有します。人によって説明が違うと、同じ質問が何度も返ってきます。
端末の充電と持ち出しの管理が曖昧になる 充電されていなかった回数:( )回/担当:( ) 充電と返却の場所を同じ場所にします。別の場所にすると、どちらか一方が守られなくなります。
事業者への問い合わせが事業所内で止まる 事業所内で止まっている質問:( )件 どこから先を事業者に聞くかの線を決めます。線がないと、答えの出ない質問が事業所内に溜まります。
導入前の数字を測っていなかったことに気づく 導入前に測った記録:( )/測った日:( ) いまから測り直して、測り始めた日を書き残します。前の数字が無いことは、測らない理由にはなりません。
「様子を見よう」という言葉で判断が先送りされる 先送りされている決めごと:( ) 決める日を1つ置きます。日付の無い先送りは、そのまま既定の運用になります。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

3か月|あきらめが静かに始まる(12場面)

3か月目は、はっきりした反対が出る時期ではありません。出るのは「結局あまり変わらない」という静かな感想で、これは反対よりも扱いが難しいものです。反対には理由が付いていますが、感想には付いていないためです。

この時期にやることは、感想を作業の名前へ戻すことに尽きます。どの帳票の、どの時間帯の、どの操作のことなのか。名前まで下りてくれば、変えられる場所が1つか2つに絞られます。名前の付かない不満は、直す先も持ちません。

そのとき現場で起きること 確かめること(記入欄) このとき打てる手
「結局あまり変わらない」という感想が出る そう言った職員の担当作業:( ) どの作業のことかを聞き取ります。感想は作業の名前に戻さないと、直す場所が見つかりません。
使う人と使わない人の差が固まる 使っていない人数:( )人/その担当時間帯:( ) 使っていない人の時間帯と場所を確かめます。意欲の差ではなく、置き場と時間の差であることがあります。
二重運用をやめる相談が、誰からも出ない 併用している帳票数:( )/併用の期間:( )か月 相談を出す人と日を決めます。誰の役割でもない相談は、誰からも出ません。
手順書が更新されないまま古くなる 手順書の最終更新日:( ) 更新の担当と、見直す間隔を決めます。古い手順書は、無い手順書より紛らわしくなります。
記録の書き方が事業所内で分かれ始める 書き方が分かれている項目名:( ) 見本を1件だけ決めて掲示します。基準になる文を持たない指導は、伝える人によって内容が変わります。
集計しようとして、項目が揃っていないと気づく 集計できなかった項目名:( ) 集計に使う項目を先に決め、入力の必須に反映します。集計の設計は、入力の設計より先に置きます。
教えた人が異動・交代する 引き継ぎの記録:( )/引き継いだ日:( ) 引き継ぎの内容を手順書に載せます。頭の中にある運用は、引き継ぎの場では再現できません。
「前より画面を見ている時間が長い」という指摘が出る 指摘された場面:( ) 見ている時間の中身(入力・確認・検索)を分けて確かめます。合計だけでは、見直す対象が決まりません。
過去の記録を探せない 探せなかった件数:( )件/探した条件:( ) 検索に使う言葉を揃えます。書き方が揃っていない期間は、後から探しても出てきません。
事業者の窓口の使い方が分からないまま放置される 窓口へ連絡した回数:( )回 窓口の連絡先と使う場面を掲示します。使い方が共有されていない窓口は、無いのと同じ扱いになります。
一度決めた「使わない機能」を再検討したくなる 再検討したい機能名:( ) 3か月ごとに見直す日を置きます。思いついた順に足すと、初月に絞った意味が消えます。
管理者が使用状況を見ていない 使用状況を見た回数:( )回/見た日:( ) 週に1回、見る時間を決めます。見ていない運用は、止まっていることにも気づけません。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

半年|定着したか、名ばかりになったか(10場面)

半年経つと、その事業所なりの落ち着きどころが見えてきます。ここで大事なのは、落ち着いた状態を意図した状態として認めるかどうかを言葉にすることです。深くは使っていないが日々は回っている、という状態も、認めてしまえば立派な運用になります。認めずに放っておくと、同じ状態が「うまくいっていない」と語られ続けます。

もう一つ、この時期に静かに起きるのが職員の入れ替わりです。導入前を知らない職員が増えると、前と比べる話し方が届かなくなります。説明の仕方を、比較ではなく手順に切り替える時期でもあります。

そのとき現場で起きること 確かめること(記入欄) このとき打てる手
紙をやめた帳票と、残った帳票がはっきり分かれる やめた帳票数:( )/残した帳票数:( ) 残した帳票について、残す理由を1行ずつ書きます。理由の書けない併用は、決めていないだけの併用です。
「入れてはいるが、深くは使っていない」状態で落ち着く 日常的に使っている機能数:( ) その状態を、意図した状態として認めるかどうかを決めます。認めるなら、これ以上の研修は置きません。
契約の更新時期が近づく 更新の時期:( )/判断に使う記録:( ) 半年分の記録を並べて、続けるかどうかを話し合います。印象ではなく、残した記録のほうで話します。
導入前を知らない職員が半数を超える 導入後に入った職員数:( )人 導入前の話を前提にした説明をやめます。前と比べる話は、比べられる人にしか届きません。
記録の量は増えたが、読まれているか分からない 読んだ回数を確かめた方法:( ) 誰が何のために読むのかを1行で書きます。読み手の決まっていない記録は、書く負担だけが残ります。
二重入力が残っている箇所が1〜2か所に絞られる 残っている箇所:( ) 残った箇所について、解消の可否を事業者に確かめます。残り1〜2か所は、導入初期の全体像より答えが出しやすい状態です。
事業所内で教えられる人が2人以上いる 教えられる人数:( )人 3人目を育てる日を置きます。2人は最低限であって、休みと交代の両方には足りません。
「元に戻したい」という声が特定の場面だけ残る 戻したい場面:( ) その場面だけを取り出して、手順を作り直します。全体を戻す判断は、場面の特定より後に置きます。
半年前に決めた運用が、誰にも見直されていない 最後に見直した日:( ) 見直す日を年内に1回置きます。見直しの予定がない運用は、次の職員の代で崩れます。
他の作業にも広げたい、という話が出る 広げたい作業名:( )/いまの対象:( ) 広げる前に、いまの対象で残っている宿題を書き出します。宿題を持ったまま広げると、同じ宿題が2つに増えます。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

やめてしまう理由を、人ではなく仕組みで見る|32の言い換え

止まった話を聞くと、原因が特定の職員の名前で語られることがあります。ところが同じ場面を、端末の置き場・電波・入り口(ログイン)・入力する場所・教える人といった仕組みの側に置き換えると、直せる形に変わることがあります。人は替えられませんが、置き場と手順は替えられます。

置き換えには実務上の利点もあります。人の話にしてしまうと、直す相手が1人になり、その人が休んだ日にまた止まります。仕組みの話にすれば、直した結果が全員に効き、次に入る職員にも引き継がれます。同じ場面を二度説明しなくてよくなるのが、置き換えのいちばん分かりやすい見返りです。

下の表は、よく聞く言い方を左に置き、それを仕組みの側で見るとどう読めるかを真ん中に、確かめる欄を右に置いたものです。左の列は言ってはいけない例として引用しているもので、当社の見解ではありません。真ん中の列に思い当たるものが1つでもあれば、そこが先に手を入れる場所になります。

端末・置き場・電波で見る(11項目)

いちばん手が入れやすいのがこの11項目です。端末の置き場所、充電器の数、電波の届く範囲は、事業所の判断だけで動かせます。逆に言えば、ここを動かさないまま研修の回数だけを増やしても、同じ場面が翌月にもう一度出てきます。

「人のせい」に見える言い方 仕組みの側で見ると 確かめること(記入欄)
「あの人は機械が苦手だから」 画面の大きさと、その人が使う場面が合っていない。使う場面を先に決めてから、その場面に合う大きさを選ぶ順番になっているか 使っている端末の種類:( )/使う場面:( )/選んだ理由:( )
「あの人は入力が遅いから」 入力の手段が1つしか用意されていない。手書きに近い形・話す形・選ぶ形のうち、選べるものがいくつあるか 選べる入力手段の数:( )/内訳:( )/試した人数:( )人
「あの人はいつも忘れるから」 端末の置き場が動線から外れている。通り道の上に置かれているか、わざわざ取りに行く場所にあるか 置き場の位置:( )/動線の上にあるか:( )/決めた日:( )
「あの人は持ち出さないから」 持ち出しと返却の手順が決まっていない。持ち出した人が分かる形になっているか 持ち出しの記録の有無:( )/返却の場所:( )/記録の担当:( )
「あの人だけ充電を切らすから」 充電器の数と置き場所が足りていない。返却の場所と充電の場所が別になっていないか 充電器の数:( )台/置き場所:( )/返却場所と同じか:( )
「あの人は現場では書かないから」 立ったまま片手で持てる形になっていない。座れる場所が近くにあるかどうかも含めて見る 立ったまま入力できるか:( )/試した場面:( )/座れる場所:( )
「あの人は圏外だとすぐ諦めるから」 電波の届かない場所が把握されていない。届かない場所での書き方が決まっていない 届かない場所の一覧:( )/作成日:( )/その場所での書き方:( )
「あの人は後でまとめて書くから」 その場で書ける時間と場所が置かれていない。書く時間が業務の流れのどこにも入っていない 書ける場所:( )/その時間帯:( )/流れのどこに置いたか:( )
「あの人は共有の端末を使わないから」 同時に使う人数に対して台数が足りていない。待ち時間が生まれる時間帯が固定していないか 同時に使う最大人数:( )人/台数:( )台/待ちが出る時間帯:( )
「あの人は自分の端末を嫌がるから」 私物の端末を使うかどうかの決めが無い。使う場合と使わない場合の線が引かれていない 私物端末の扱いの決め:( )/文書の有無:( )/決めた日:( )
「あの人は見えないと言うから」 表示の大きさを変える方法が共有されていない。変えられることを知らないまま使っている 表示を変える手順の掲示:( )/掲示場所:( )/伝えた人数:( )人

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

入り口と、入力する場所で見る(11項目)

入り口(ログイン)でつまずいた経験は、そのあとの使い方まで引きずります。最初の1回で入れなかった職員は、次に触るまでの間隔が空き、間隔が空くとまた入れなくなります。入り口の話は、覚え方の話ではなく手順の掲示と頼れる相手の話として扱うほうが早く片づきます。

「人のせい」に見える言い方 仕組みの側で見ると 確かめること(記入欄)
「あの人はいつもログインで詰まるから」 入り口の手順が掲示されていない。口頭で伝えただけで、見に行ける場所に置かれていない 手順の掲示:( )/掲示した日:( )/掲示場所:( )
「あの人はパスワードを忘れるから」 再設定を頼める相手が決まっていない。頼む先が1人だと、その人の休みが停止と同じ意味になる 再設定を頼める人:( )/人数:( )人/連絡の方法:( )
「あの人はログアウトしないから」 共有端末での切り替え手順が無い。切り替えないまま次の人が入る形が黙認されている 切り替え手順の有無:( )/掲示場所:( )/共有端末の台数:( )台
「あの人は他人の名前で入るから」 1人に1つの入り口が用意されていない。誰が書いたかを後から辿れない形になっている 職員数:( )人/用意された入り口の数:( )/不足数:( )
「あの人は事務所でしか書かないから」 事務所以外に書く場所が決まっていない。現場側に書ける場所が置かれていない 事務所以外の入力場所:( )/設けた日:( )/使った人数:( )人
「あの人はメモに書いてから写すから」 途中まで残して後で続ける形が無い。書き切れないときに逃げ場がないため紙に寄る 途中保存の可否:( )/確かめた日:( )/確かめた相手:( )
「あの人は途中でいつも止まるから」 必須の項目が現場の順番と違う。書ける順に並んでいないため、書ける情報から埋められない 必須項目の数:( )/並び順:( )/現場の順番:( )
「あの人は選択肢どおりに書けないから」 自由に書く欄の置き場が決まっていない。選択肢に収まらない事実の行き先が無い 自由記述欄の有無:( )/使う場面:( )/使われた件数:( )件
「あの人は前回の記録を見ないから」 前回を出す操作が手順に入っていない。見るものだと伝えられていない 前回を出す手順の掲示:( )/教えた日:( )/教えた人数:( )人
「あの人はすぐ消してしまうから」 修正と取り消しの手順が共有されていない。間違えたときの直し方を知らないまま書いている 修正手順の掲示:( )/訂正の件数:( )件/主な理由:( )
「あの人は同じ記録を二度作るから」 どちらを正とするかの決めが無い。二重に立ったときの片づけ方が決まっていない 正とする側の決め:( )/決めた日:( )/二重の件数:( )件

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

教える人と、業務の噛み合いで見る(10項目)

この節は業務の分担や勤務の入り方に触れます。社会保険労務士法27条により、労務管理に関する相談・指導は社会保険労務士の業務です。当社は行いません。ここでは、誰がいつ説明を受けたかを事業所が自分で数えるための欄だけを置いています。勤務の組み方そのものについては触れません。

この10項目に共通しているのは、「触れる機会が置かれていたかどうか」という一点です。触れていない職員が残っていること自体は珍しくありませんが、それが何人で、どの時間帯の担当なのかを数えている事業所は多くありません。数えていないうちは、次にどこへ手を入れるかが決められません。

「人のせい」に見える言い方 仕組みの側で見ると 確かめること(記入欄)
「あの人は覚える気がないから」 初めて触れる場面が用意されていない。触れた日そのものが記録に残っていない 初回に触れた日:( )/触れた場面:( )/立ち会った人:( )
「あの人は研修に来ないから」 一度きりの全体研修しか置かれていない。来られなかった人の分の機会が別に置かれていない 個別に触れた機会の回数:( )回/実施日:( )/対象者:( )
「あの人は聞いてこないから」 聞ける相手が1人しかいない。誰に聞けばよいかが掲示されていない 聞ける相手の人数:( )人/氏名の掲示:( )/掲示場所:( )
「あの人は夜になると分からなくなるから」 夜間帯に聞ける相手が置かれていない。昼と同じ前提のまま夜間帯が組まれている 夜間帯に聞ける相手:( )/連絡の方法:( )/夜間の件数:( )件
「あの人は新人に教えられないから」 教える順番が1本に決まっていない。教える人ごとに順番が違うため内容が割れる 教える順番の文書:( )/作成日:( )/教えた人数:( )人
「あの人は手順書を読まないから」 手順書が置き場から遠い、または枚数が多い。読み切れる分量になっていない 手順書の置き場:( )/枚数:( )枚/最終更新日:( )
「あの人は非常勤だから仕方ない」 その職員が説明を受ける機会が置かれていない。説明の場が特定の時間帯に固定されている 説明を受けた回数:( )回/受けた日:( )/説明した人:( )
「あの人は掛け持ちだから覚えないんです」 事業所ごとの決めごとが書き分けられていない。どこの決めなのかが読んで分からない 事業所ごとの決めの文書:( )/渡した日:( )/渡した人数:( )人
「あの人は何も言ってこないから」 困りごとを出す場と日が決まっていない。出す場が会議の最後の数分に押し込まれている 出す場:( )/頻度:( )/直近に出た件数:( )件
「あの人がすぐ前のやり方に戻すから」 戻す判断を誰がするかが決まっていない。戻したことが記録に残らないため理由も残らない 戻す判断をする人:( )/記録の残し方:( )/戻した場面:( )

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

紙との併用をいつ終えるか|27場面の見極めと、終える条件の決め方

紙と画面の両方に書く状態は、放っておくとそのまま既定の運用になります。ところが、紙が残る理由は場面ごとに違い、事業所の判断だけで終えられるもの(置き場・手順・確認の仕方)と、相手や提出先の都合で終えられないものが混ざっています。混ざったまま話すと、どちらの側にも決着がつきません。

下の表は、紙が残る27の場面を、なぜ紙が残るか/確かめること(記入欄)/終える条件の決め方、の3列に分けたものです。終える日そのものは表では決めません。決めるのは事業所です。

記録・申し送りの側で紙が残る(14場面)

この14場面は、事業所の判断だけで終えられる可能性が高い側です。理由の多くが、置き場・手順・確認の仕方という事業所内の事柄に収まっているためです。ただし「速いから紙」という理由だけは、手数を数えてみるまで本当かどうか分かりません。速さの話は感覚では決着しないので、回数と手数を並べてから話すほうが早く終わります。

もう一つ、この側でよく出るのが「一応」書いている紙です。誰が読むのかを聞いて名前が挙がらなければ、それは終える対象の候補になります。読み手のいない帳票は、書く負担だけがそのまま残ります。

なぜ紙が残るか 確かめること(記入欄) 終える条件の決め方
短い連絡は手書きのほうが速い場面がある その場面:( )/1日の回数:( )回 同じ内容を画面で書いたときの手数を数えて並べます。手数が同じになった日を、終える候補日にします。
現場で端末を持てない場面がある 持てない場面:( )/理由:( ) 理由を、置き場・形・手の空きに分けます。理由が解ける場面から順に終えます。
電波が届かない場所がある 届かない場所:( )/件数:( )件 その場所の記録を後で入れる手順を決めます。手順が1週間まわった時点を、終える条件にします。
管理者が紙で確認している 紙で確認している帳票名:( ) 確認する側の手段を先に画面へ移します。確認側が移った日から、出す側の紙を終える相談を始めます。
他事業所・他職種へ紙で渡している 渡している相手:( )/帳票名:( ) 相手の受け取り方を確かめます。相手の都合で残る紙は、事業所内の判断だけでは終えられません。
家族へ紙で見せている 見せている場面:( )/回数:( )回 見せる目的を1行で書きます。目的が説明であれば、画面を見せる形に置き換えられるかを確かめます。
夜間帯だけ紙で回している 夜間帯の帳票名:( )/件数:( )件 夜間帯の入力の置き場と手順を別に決めます。夜間帯で1週間まわった時点を、終える条件にします。
非常時・停電時の備えとして残している 備えとして残す帳票名:( ) 備えとして残すのか、日常でも使うのかを分けます。備えだけであれば、日常の併用は終えられます。
理由がはっきりしないまま「一応」書いている 一応で残っている帳票名:( ) 誰が読むのかを確かめます。読み手が挙がらない帳票は、終える対象の候補になります。
過去の紙を参照している 参照する期間:( )/参照の回数:( )回 参照する期間の区切りを決めます。区切りより新しい分は、紙で残さない形にできます。
新人が紙で覚えている 紙で教えている項目:( )/人数:( )人 教える順番を画面の順番に合わせます。教え方が変わった時点を、終える条件にします。
記録の下書きとして紙を使っている 下書きに使っている場面:( ) 途中まで残して後で続ける手順を共有します。その手順が使われ始めた週を、終える候補にします。
押印や署名が求められる帳票がある 押印が要る帳票名:( )/求めの出どころ:( ) 求めがどこから来ているかを確かめます。出どころがはっきりするまでは、終える判断を置きません。
利用者ごとに書式が違う 書式が違う利用者数:( )人/違う点:( ) 違いの中身を項目に落とします。項目に落ちた時点を、終える条件にします。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

確認・提出・保管の側で紙が残る(13場面)

こちらの13場面には、事業所の判断だけでは終えられないものが混ざっています。提出先が紙を求めている場合、押印や署名が求められている場合、保管の考え方が決まっていない場合。いずれも、相手の求めや自事業所の決めが先に定まらないと、終える日を置きようがありません。

混ざったまま話し合うと、終えられる紙まで「うちはまだ無理」に飲み込まれます。先に2つの束へ分けてから相談するだけで、話が進む束と待つ束がはっきりします。運営指導で何を見られるかは保険者(指定権者)により異なりますので、その点は原典と保険者にご確認ください。

なぜ紙が残るか 確かめること(記入欄) 終える条件の決め方
提出先が紙を求めている 提出先:( )/帳票名:( ) 提出先の求めを書面で確かめます。求めが変わらないあいだは、その帳票だけ併用のまま置きます。
保管の方法が決まっていない 保管の場所:( )/期間:( ) 画面側の保管の考え方を先に決めます。決まるまでは紙を終えません。
画面から取り出す方法を知らない 取り出しを試した回数:( )回 取り出しの手順を一度みんなで試します。試した日を、終える相談の起点にします。
運営指導の場面が不安で残している 不安に感じる帳票名:( ) 何を見られるかを確かめる相手を決めます。確かめる先は保険者(指定権者)です。
過去分の取り込みが終わっていない 取り込みが済んだ期間:( ) 取り込む範囲を先に区切ります。区切りの外は紙で残すと決めれば、併用は終えられます。
「紙もあると安心」という意見がある その意見を出した人:( )/内容:( ) 安心の中身を、消える不安と探せない不安に分けます。不安の種類ごとに手順で答えます。
データの持ち出し方が分からない 確かめた日:( )/確かめた相手:( ) 契約の内容で確かめます。持ち出せる形が分かるまでは、紙の廃棄を進めません。
印刷して回覧している 回覧の相手:( )/回数:( )回 回覧の目的が周知であれば、周知の手段を1つに決めます。手段が決まった時点を終える条件にします。
紙の様式に慣れた職員がいる その職員の担当:( )/慣れている様式:( ) 画面の並びを様式の並びに近づけられるかを確かめます。並びが揃った時点を候補にします。
訂正の方法が紙と画面で違う 訂正が起きた件数:( )件 訂正の手順を1本に決めます。手順が1本になるまでは、両方に訂正が残り続けます。
集計を紙から拾っている 集計している項目:( )/頻度:( ) 集計に使う項目を入力の必須へ入れます。集計が画面から出た月を、終える条件にします。
引き継ぎ簿だけ紙が残っている 引き継ぎ簿の使用者:( )/記載の項目:( ) 引き継ぎに載せる項目を決めます。項目が決まると、置き場を移せます。
併用をやめる日を誰も決めていない 決める人:( )/決める日:( ) 決める人と日をまず置きます。終える条件を話す前に、決める人がいないと相談が始まりません。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

職員への説明と、続けるための決めごと|言い方36例・決めごと26項目

止まる場面の多くは、伝え方の場面でもあります。「上が決めたので使ってください」と伝えた事業所と、「◯月は◯◯の記録だけを、日勤帯の担当者が入力します」と伝えた事業所では、1週目に返ってくる質問の数が変わります。範囲・期間・やめる可能性の3つが入っているかどうかが、そのまま伝わり方の差になります。

下の表の左は言い方の例として引用しているもので、当社の見解ではありません。右の列はそのまま声に出して使える完成文です。◯の部分だけを事業所の言葉に置き換えてお使いください。

導入を決めた段階で伝えること(12例)

この段階で伝えておきたいのは、範囲・期間・やめる可能性の3つです。範囲が示されていないと、職員は「全部が変わる」と受け取ります。期間が無いと、いつまで我慢すればよいのかが分からなくなります。やめる可能性に触れていないと、うまくいかないときに言い出せる人がいなくなります。

逆に、この3つが入っていれば、多少ぎこちない説明でも受け取ってもらえます。丁寧さより、決まっている範囲がどこまでかのほうが伝わります。

場面 伝わりにくい言い方 そのまま使える言い方
なぜ入れるのかを話す 「上が決めたので使ってください」 いまの記録のやり方で、いちばん時間がかかっている作業を1つ挙げてください。その作業を先に置き換えて、うまくいくかを一緒に確かめます。
誰が使うのかを話す 「全員が対象です」 まず◯月は、◯◯の記録だけを、日勤帯の担当者が入力します。それ以外の帳票と時間帯は、これまでと同じやり方で続けます。
触ってもらう場をつくる 「デモを見ておいてください」 ◯月◯日に、実物を触る時間を30分取ります。説明を聞くだけではなく、自分で1件つくるところまでやってみてください。
苦手意識のある職員に伝える 「簡単ですから大丈夫です」 使いにくいところが出たら、その場で教えてください。使いにくさは直す手がかりになるので、言ってもらえるほど早く落ち着きます。
期間を伝える 「しばらく様子を見ます」 ◯月◯日までを試す期間にします。その日に、続けるか、やり方を変えるか、いったん止めるかを一緒に決めます。
やめる可能性を伝える 「やめることはありません」 試して合わなければ、やり方を戻す判断もします。戻すときは、何が合わなかったのかを書き残してから戻します。
端末の扱いを伝える 「各自で管理してください」 端末は◯◯に置きます。使い終わったら同じ場所に戻して、充電器につないでください。
記録の中身が変わるかを伝える 「書く内容は変わりません、たぶん」 書く内容は変えません。書く場所と、書いたあとの渡し方だけが変わります。
個人情報の扱いを伝える 「安全なので心配ありません」 利用者の氏名や番号をどう扱うかは、事業所の決めごととして◯◯に書いています。迷ったらその文を見て、判断がつかなければ管理者に確認してください。
質問の出し方を伝える 「分からなければ聞いてください」 質問は◯◯さんと◯◯さんの2人が受けます。どちらでも構いませんし、答えの出ないものは事業者の窓口へ回します。
期待を上げすぎない 「これで楽になります」 楽になるかどうかは、やってみないと分かりません。ですので最初の◯週間は、記録1件にかかる時間を測りながら進めます。
反対意見への応じ方 「もう決まったことです」 反対の理由を具体的に聞かせてください。作業の名前まで下ろしてもらえると、そこだけを変える相談ができます。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

初日に伝えること(8例)

初日の説明で置いておきたいのは逃げ道です。入力できなかったときにどうするかを先に伝えておくと、できなかった場面が報告として上がってきます。逃げ道を用意しないと、できなかったことが黙って隠れ、あとから紙の運用として現れます。

目標も1つに絞ります。全員が1件つくる、それだけです。初日に速さと中身の両方を求めると、どちらも残りません。

場面 伝わりにくい言い方 そのまま使える言い方
開始の宣言 「今日から使ってください」 今日から、◯◯の記録だけを画面で入力します。今日は入力が終わらなくても構いませんので、まず1件つくってみてください。
できないときの逃げ道 「入力しないのは無しでお願いします」 入力できないときは、これまでのやり方で書いて構いません。そのかわり、入力できなかった場面を1行だけ教えてください。
入り口の案内 「IDとパスワードを配ります」 入り口の情報は1人ずつお渡しします。入れなかった人はその場で教えてください。今日のうちに設定し直します。
置き場の案内 「端末はそこにあります」 端末は◯◯に◯台置いています。使ったら同じ場所に戻して、返っているかどうかが次の人に分かるようにしてください。
入力の場所と時間の案内 「空いた時間に入力してください」 入力は◯◯で、◯時から◯時のあいだに行います。この時間に入力できなかった場合は、翌日の同じ時間に回してください。
言葉の揃え方 「言い方は自由です」 同じことを指す言葉は◯◯に揃えます。あとで探すときに、言葉が揃っていないと出てこないためです。
初日の目標 「今日中に使いこなしてください」 今日の目標は、全員が1件つくることだけです。速さと中身の充実は、今日は見ません。
見本の案内 「見本を参考にしてください」 見本は1件だけ、◯◯に貼っています。迷ったら見本と同じ形で書いてください。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

1か月後に伝えること(8例)

1か月後の場は、報告ではなく決める場にします。決めるのは、併用をどれから終えるか、使わない機能をどれにするか、質問の受け手を誰に増やすかの3つです。この3つが決まらないまま「引き続きお願いします」で終わると、2か月目は1か月目と同じ月になります。

測った記録を共有するときは、変わった場面と変わらない場面の両方を出します。良い側だけを出すと、次に困ったときに報告が上がってこなくなります。

場面 伝わりにくい言い方 そのまま使える言い方
続け方の相談 「引き続きお願いします」 1か月経ったので、続け方を相談したいと思います。困っている場面を、作業の名前で挙げてください。
二重運用の話を出す 「そのうち紙はやめます」 いま紙と画面の両方に書いている帳票は◯件です。このうちどれから終えられそうかを、今日決めたいと思います。
使わない機能を決める 「他の機能も追々使いましょう」 使っていない機能は、当面「使わない」と決めます。決めておくと、覚えることが増えません。
手順書を頼む 「誰か手順書を作ってください」 ◯◯さんが実際に使っている手順を、そのまま1枚に書いてください。整っていなくて構いません。使っている順番のままが、いちばん役に立ちます。
質問の受け手を増やす 「困ったら私に聞いてください」 これからは◯◯さんにも受けてもらいます。1人だけだと、その人が休んだ日に止まってしまうためです。
測った記録を共有する 「かなり効率が上がりました」 測った記録はこのとおりです。変わった場面と変わらない場面の両方が出ていますので、今日は変わらない場面のほうを見ます。
新しく入った職員への配慮 「先輩に聞いてください」 ◯月に入った方には、◯◯の順番で教えます。順番は決まっているので、教える人が違っても内容は変わりません。
夜間帯の職員への配慮 「昼と同じでお願いします」 夜間帯は入力する場所と時間を別に決めています。◯◯で、◯時以降に入力してください。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

うまくいかないときに伝えること(8例)

うまくいかない場面での言い方には、共通の形があります。人ではなく場面を尋ねることです。「なぜ使わないのか」ではなく「どの場面で止まるのか」。前者は責める形になり、後者は直す形になります。同じことを聞いていても、返ってくる情報の量が変わります。

いったん止める判断をするときも、失敗という言葉で締めないほうが後が続きます。合わなかった場面と合った場面を分けて言えば、次に手をつける場所がその場で残ります。

場面 伝わりにくい言い方 そのまま使える言い方
使われていないと分かったとき 「使ってくださいと言ったはずです」 使われていないのは、置き場か時間のどちらかが合っていない可能性があります。どちらが近いかを教えてください。
紙に戻ったとき 「紙に戻さないでください」 戻った場面を教えてください。全部を戻すのか、その場面だけ紙で続けるのかを、場面ごとに決めます。
入力が遅れているとき 「もっと早く入力してください」 遅れている時間帯が◯◯に集まっています。その時間帯の入力の場所を変えてみたいのですが、どこがよいと思いますか。
反発が出たとき 「慣れの問題ですから」 慣れの話ではなく、手順の話として聞かせてください。どの操作で止まるかが分かれば、そこだけを変えられます。
特定の職員だけ使えていないとき 「あの人には無理だと思います」 使えていない場面を、時間帯と場所で確かめます。人ではなく、置き場と手順の側を先に見ます。
変化が見えないとき 「効果が出るまで続けましょう」 導入前の記録がないので、いまから測り直します。◯週間後に、続けるかどうかをその記録で決めます。
事業者への不満が出たとき 「そういう仕様なので仕方ないです」 どの操作で困ったかを書き出して、窓口へ聞きます。答えが返ってきたら、そのまま共有します。
いったん止める判断をするとき 「今回は失敗でした」 今回は、◯◯の場面では合わないという結果になりました。合った場面は◯◯なので、そこだけを残して続けます。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

ここまでが言い方の例です。ただ、説明が届いても決めごとが口頭のままだと、教える人が変わった時点で運用が割れます。以下の26項目は文書に書いておく対象で、決め方の目安を真ん中に、事業所の決めを右に書く形にしています。目安は目安であって、決めるのは事業所です。

始めるときに置く決めごと(13項目)

この13項目は、始める前か、遅くとも1週目のうちに置いておく種類のものです。あとから決めようとすると、すでに動いている運用を止めて決め直すことになり、そこで反発が出ます。決めるのに時間がかかる項目ではなく、決めそびれると後で高くつく項目を集めています。

決めること 決め方の目安 貴事業所の決め(記入欄)
置き換える作業の範囲 1つの作業に限って始め、増やす日を別に置きます。範囲を広げる相談は、いまの範囲の宿題が片づいてから行います。 対象の作業:( )/決めた日:( )
対象の時間帯 日勤帯から始め、夜間帯は別に決めます。昼と同じ前提で夜間帯まで含めると、夜間帯だけ運用が抜けます。 対象の時間帯:( )/決めた日:( )
入力する場所 場所を先に決め、そこに端末と電源を置きます。場所が決まっていない時間帯は、そこだけ紙に戻ります。 入力の場所:( )/決めた日:( )
入力を行う時間 業務の流れのどこに置くかを、時間帯で決めます。空いた時間に、という決め方では時間が生まれません。 入力の時間:( )/決めた日:( )
端末の台数 同時に使う最大の人数から数えます。1日の合計人数から数えると、待ちが出る時間帯を見落とします。 台数:( )台/決めた日:( )
端末の置き場 動線の上に1か所置き、返却の場所と同じにします。置き場と返却場所が別だと、片方が守られません。 置き場:( )/決めた日:( )
充電の担当 人ではなく時間帯で決めます。担当者名で決めると、その人の休みの日に切れます。 担当の時間帯:( )/決めた日:( )
電波が届かない場所の扱い その場所の記録をいつ入れるかを決めます。届かない場所の一覧を先に作ってから決めます。 扱いの決め:( )/決めた日:( )
入り口(ログイン)の配り方 1人に1つ配り、共有しない形にします。誰が書いたかを後から辿れる形にしておきます。 配り方:( )/決めた日:( )
再設定を頼む相手 2人以上を決め、名前を掲示します。1人だと、その人の休みが運用の停止と同じ意味になります。 頼む相手:( )/決めた日:( )
初月に使う機能の範囲 1つか2つに絞り、文書に書きます。口頭で絞ったつもりの範囲は、翌週には広がっています。 使う機能:( )/決めた日:( )
使わない機能の明示 「当面は使わない」と書いた一覧をつくります。決めずに残した機能は、教える対象だけを増やします。 使わない機能:( )/決めた日:( )
個人情報の扱い 伏字・保存先・削除の3点を書面で確かめます。口頭の説明だけでは、後から確かめ直せません。 確かめた内容:( )/確かめた日:( )

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

続けるあいだ置き続ける決めごと(13項目)

こちらの13項目は、一度決めれば終わりではなく、人が入れ替わっても残っている必要があるものです。決めた内容そのものより、決めたことが文書として置かれているかどうかで差が出ます。頭の中にある決めごとは、引き継ぎの場では再現できません。

決めること 決め方の目安 貴事業所の決め(記入欄)
必須項目の数 現場の順番に合わせ、最小の数から始めます。項目が多いと、書く人は埋まる形のほうを選びます。 必須の数:( )/見直した日:( )
言葉の統一 同じ意味の言葉を1つに寄せ、一覧にします。言葉が割れている期間は、後から探しても出てきません。 統一した言葉:( )/一覧の場所:( )
見本にする記録 見本を1件だけ決め、掲示します。見本が複数あると、書き方はその数だけ分かれます。 見本の記録:( )/掲示場所:( )
訂正の手順 訂正と取り消しの手順を1本に決めます。手順が2本あるあいだは、両方に訂正が残ります。 訂正の手順:( )/掲示場所:( )
二重に立った記録の扱い どちらを正とするかを、その日のうちに決めます。翌週へ持ち越すと、片方を消す判断ができなくなります。 正とする側:( )/決めた日:( )
質問の受け手 事業所内で2人以上を決め、掲示します。夜間帯の受け手は別に決めておきます。 受け手:( )/夜間の受け手:( )
事業者へ聞く線引き どこから先を窓口へ回すかを決めます。線がないと、答えの出ない質問が事業所内に溜まります。 線引き:( )/決めた日:( )
手順書の担当と枚数 使っている職員が書き、枚数の上限を決めます。読み切れない分量になると、置いてあっても読まれません。 担当:( )/枚数の上限:( )枚
手順書を見直す間隔 間隔と、見直す担当をあわせて決めます。古い手順書は、無い手順書より紛らわしくなります。 見直しの間隔:( )/担当:( )
教える順番 1本に決め、教える人が変わっても順番を変えません。順番が割れると、教わった内容も割れます。 順番の文書:( )/作成日:( )
使用状況を見る頻度 管理者が見る曜日と時間を決めます。見ていない運用は、止まっていることにも気づけません。 見る曜日:( )/時間:( )
紙を終える判断をする人 決める人と、決める日を先に置きます。誰の役割でもない相談は、誰からも出ません。 決める人:( )/決める日:( )
やり方を戻すときの決め 戻すときに何を書き残すかを含めて決めます。理由の残らない差し戻しは、次に同じ判断を繰り返します。 戻す判断をする人:( )/残す記録:( )

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

導入の前後で何をどう測るか|36項目の測り方

ここで扱うのは、事業所が自分で測るための欄です。当社が数字を示すのではありません。同じ製品を同じように入れても、記録の量も、書く場所も、職員の数も事業所ごとに違うため、他所の数字は判断の材料になりません。判断の材料になるのは、自分の事業所で、同じ条件で、前と後に取った記録だけです。

測り方には2つだけ約束があります。比べる条件を揃えること(同じ帳票・同じ職員・同じ曜日か時間帯)と、測った日を書き残すことです。この2つが欠けた記録は、後から見返しても何と比べればよいのか分からなくなります。

なお、勤務時間・休憩・賃金に関わる測定はここでは扱いません。社会保険労務士法27条により、労務管理に関する相談・指導は社会保険労務士の業務です。当社は行いません。

記録と入力について測る(13項目)

13項目を全部測る必要はありません。むしろ1つか2つに絞って続けるほうが、10項目を1回だけ測るより役に立ちます。続けて取れた記録だけが、あとで並べられるためです。最初に選ぶなら、代表的な記録1件にかかる時間と、紙と画面の両方に書いている帳票の数の2つが扱いやすい組み合わせです。

測るときに気をつけたいのは、数えた結果より数えた条件のほうが失われやすいことです。どの帳票を、誰が、いつ測ったのか。条件が残っていない記録は、3か月後に見返しても比較の材料になりません。

測る対象 測り方(記入欄) 記録の残し方
代表的な記録1件にかかる時間 帳票名:( )/件数:( )件/測定日:( ) 同じ帳票・同じ職員で、導入の前と後に3件ずつ測って並べます。条件が違う3件は、並べても比べられません。
記録を書き始めるまでの待ち時間 待った理由(端末待ち・場所待ち):( ) 待った回数を1週間だけ数え、理由の内訳を残します。回数より、理由の内訳のほうが後で役に立ちます。
1日のうち入力が終わっていない件数 数えた日:( )/件数:( )件 終業の時点で数えます。数える時刻を固定しないと、日ごとの比較になりません。
入力を持ち越した時間帯 持ち越しが多い時間帯:( ) 時間帯ごとに件数を並べます。合計だけでは、見直す場所が決まりません。
紙と画面の両方に書いている帳票の数 帳票名:( )/数:( ) 月に1度数え直します。数が動かない月が続いたら、終える相談の合図として扱います。
同じ内容を書き写した回数 書き写した場面:( )/回数:( )回 1週間だけ場面を書き出します。回数より、場面の名前のほうが直す手がかりになります。
記録の訂正が起きた件数 件数:( )件/主な理由:( ) 理由を3つ程度に分類して残します。分類が増えすぎると、次の月に数え直せません。
必須項目で止まった回数 止まった項目名:( )/回数:( )回 止まった項目名を職員に書き留めてもらいます。名前まで残らないと、項目を減らす相談ができません。
入力手段の内訳 手入力:( )/音声:( )/定型:( ) 1週間の件数で数えます。どの手段が多いかは事業所ごとに違うため、他所の内訳とは比べません。
過去の記録を探した回数と、見つかった回数 探した:( )回/見つかった:( )回 探した条件(言葉・期間)も一緒に残します。条件が残っていないと、次に探すときに再現できません。
記録の分量の変わり方 帳票名:( )/前:( )/後:( ) 同じ利用者・同じ場面で比べます。短くなったこと自体は、良し悪しの判断にはなりません。
記録を書いた場所の内訳 現場:( )/事務所:( )/その他:( ) 1週間、書いた場所を記録します。場所が偏っている時間帯が、置き場を見直す入口になります。
紙で残した件数 帳票名:( )/件数:( )件 月ごとに数え、理由の欄を付けます。理由の書けない紙が、いちばん先に終えられる紙です。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

情報の伝わり方について測る(11項目)

記録は書いて終わりではなく、読まれて初めて役に立ちます。ところが読まれているかどうかを見ている事業所は多くありません。書く側の時間ばかりを見ていると、書く量が増えたのに誰も読んでいない、という状態に気づけないままになります。

この11項目は、伝わり方の側から見るための欄です。申し送りの長さ、口頭の補足が続く項目、「聞いていない」が起きた場面。いずれも、様式や手順を見直す入口になります。他事業所と比べる目的では使いません。比べる相手は、先月の自分の事業所です。

測る対象 測り方(記入欄) 記録の残し方
申し送りにかかる時間 測った回数:( )回/1回あたり:( ) 同じ曜日・同じ時間帯で測ります。曜日を揃えないと、その日の忙しさの差が混ざります。
申し送りで口頭の補足が要った項目 項目名:( )/回数:( )回 補足が続く項目を書き出します。同じ項目が続くなら、様式の側を見直す手がかりになります。
「聞いていない」が起きた件数 件数:( )件/場面:( ) 件数だけでなく、伝えた手段も一緒に残します。手段が分からないと、直す先が決まりません。
記録を読んだ人と回数 読んだ人:( )/回数:( )回 読み手の挙がらない帳票は、書く目的から確かめ直します。
管理者が画面で確認した回数 回数:( )回/確認した帳票名:( ) 紙で確認した回数と並べて数えます。並べないと、確認側が移ったかどうかが分かりません。
他職種へ渡した情報の手段 手段:( )/回数:( )回 相手ごとに分けて数えます。相手の都合は事業所側では変えられないため、分けておきます。
家族への説明で使った資料 資料名:( )/回数:( )回 画面を見せた回数も同じ欄に残します。置き換えられる場面が、そこから見えます。
質問が出た件数と受けた人 件数:( )件/受けた人:( ) 受け手が1人に偏っていないかを見ます。偏りは、休んだ日の停止と同じ意味を持ちます。
事業者の窓口へ聞いた件数と返答までの日数 件数:( )件/日数:( )日 聞いた内容の要点も1行で残します。要点が残ると、同じ質問を二度しなくて済みます。
手順書を見た回数 回数:( )回/見た場面:( ) 見られていない手順書は、中身より先に置き場から確かめます。
新しく入った職員が1件つくるまでの日数 日数:( )日/人数:( )人 教えた人と順番も一緒に残します。順番が違えば日数も違うため、両方が要ります。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

続いているかどうかを測る(12項目)

最後の12項目は、記録の中身ではなく運用そのものが生きているかを見る欄です。使っている人数、教えられる人の人数、手順書の最終更新日、見直しの次の予定日。どれも地味ですが、止まるときはここから止まります。

とくに手順書の最終更新日と、見直しの次の予定日の2つは、1分で確かめられて、しかも止まりかけを早く教えてくれます。次の予定日が空欄のまま数か月が過ぎている場合、運用はすでに誰の担当でもなくなっている可能性があります。

測る対象 測り方(記入欄) 記録の残し方
日常的に使っている職員の人数 人数:( )人/職員数:( )人 週ごとに数え、時間帯の内訳も残します。内訳が無いと、増やす手を打つ先が決まりません。
まだ触れていない職員の人数 人数:( )人/担当時間帯:( ) 人数が減らない時間帯を先に見ます。人ではなく時間帯から見るのが、この表の使い方です。
使われている機能の数 数:( )/数えた月:( ) 月ごとに数えます。増やすこと自体が目的ではないため、数の増減だけでは判断しません。
開かれていない機能の数 数:( )/うち当面使わないと決めた数:( ) 「決めて使わない」と「決めずに使っていない」を分けて数えます。分けないと、後者が見えません。
手順書の枚数と最終更新日 枚数:( )枚/更新日:( ) 更新が止まった時点を記録に残します。止まった月が、運用が止まった月と重なることがあります。
教えられる人の人数 人数:( )人 休みと交代の両方に足りるかを、人数で確かめます。1人は運用ではなく属人です。
使用状況を見た回数 回数:( )回/見た曜日:( ) 見る予定と、実際に見た回数を並べます。予定だけが残っている月が、危ない月です。
事業所内で止まっている質問の件数 件数:( )件/最も古い日付:( ) 古い順に並べます。古い質問ほど、答えを持っている人がいなくなっています。
決めごとのうち文書になっている数 決めごとの数:( )/文書にした数:( ) 口頭のままの決めごとを数える欄として使います。差が大きいほど、引き継ぎで崩れます。
見直しを行った日 直近の見直し日:( )/次の予定日:( ) 次の予定日が空欄のままなら、そこが止まっている合図として扱います。
契約の更新までの残り期間 更新日:( )/判断に使う記録:( ) 判断に使う記録を先に決めておきます。更新が近づいてから探すと、印象だけで決まります。
導入後に入った職員の人数 導入後に入った人数:( )人/職員数:( )人 前と比べる説明が届く範囲を知るために数えます。導入前を知る人が減ると、説明の仕方を変える時期です。

※本記事は導入と運用の一般的な整理であり、効果は事業所の状況により異なります。導入の可否・費用は各事業者にご確認ください。

ここまでの表は、いずれも事業所が自分で書き込んで使う形にしています。当社は数値の目標を示しませんし、この記事で特定の製品を推していません。制度の要件・様式は改定や自治体の運用により変わりますので、届出や算定に関わる判断は、告示・通知の原典と保険者(指定権者)にご確認ください。なお、介護保険法に基づく届出書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務です。

よくある質問(FAQ)

介護のICT化が失敗する最大の原因は何ですか?

よく起きるのは、新しいツールを入れても既存の介護ソフトへの入力が残り、二重入力になってしまうことです。純粋に作業が1工程増えるため、「ICTを入れたら忙しくなった」という結果になります。契約前に「どの項目が・どの向きに・どの操作で渡るのか」を具体的に確認してください。

ICTを導入したのに使われていません。どうすればいいですか?

全部を作り直そうとせず、順番に進めてください。まず使われている機能を1つ探し、次に二重入力が起きている箇所を1つ特定して、そこだけを解消します。楽になったことを数字で示せると、他の職員が動き始めます。

導入前に測っておくべきことはありますか?

代表的な記録3件分の所要時間を、ストップウォッチで測っておいてください。導入前の数字がないと、楽になったかどうかを証明できず、続ける理由も直す手がかりも失われます。

生産性向上推進体制加算とは何ですか?

令和6年度介護報酬改定で新設された加算です。テクノロジーの導入と、国のガイドラインに沿った業務改善の継続、そして事業年度ごとの実績データの報告が求められます。加算(Ⅱ)は一月あたり10単位、成果が確認された場合はより高い加算(Ⅰ)が設定されています。要件は原典をご確認ください。

国のガイドラインが示す業務改善の取組は何ですか?

厚生労働省の生産性向上ポータルサイトでは、職場環境の整備、業務の明確化と役割分担、手順書の作成、記録・報告様式の工夫、情報共有の工夫、OJTの仕組みづくり、理念・行動指針の徹底という7つが示されています。ICTツールが直接効くのは、主に記録・報告様式の工夫と情報共有の工夫です。

補助金が使える製品を選べばいいですか?

補助金は費用を軽くする手段であって、現場で使えるかどうかの証明ではありません。使うかどうかは現場が実機を触って決め、補助金は支払いを軽くするために使う、という順番をおすすめします。補助率・上限・締切は自治体ごとに異なります。

出典

出典:厚生労働省ウェブサイト/公益財団法人介護労働安定センター/公共データ利用規約(第1.0版)。本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、各府省庁・調査機関の公式見解ではありません。割合は各調査の公表時点のものであり、調査年度や集計方法により変わります。「5つのパターン」「チェックリスト」「立て直しの順番」は当社の現場知見に基づく整理であり、効果や結果を保証するものではありません。要件・単位数・数値は原典をご確認ください。

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よくある失敗と、その前に打てる手

失敗の大半は導入の前に決めていなかったことから生まれます。

失敗 なぜ起きるか その前に打てる手
導入したが使われない 使う人が決めていない 対象の作業と担当者を先に決める
紙と併用のまま やめる期日がない 紙をやめる日を決めてから始める
二重入力が増えた 連携の範囲を確認していない 何が流れて何が流れないかを事前に確かめる
人によって使い方が違う 手順書がない 手順を1つにして文書にする
効果を説明できない 導入前を測っていない 導入を決めた日に測る
現場が止まった 一斉に配った 数名で試し、教える人を先に育てる
項目が多くて終わらない 必須項目を絞っていない 入力の必須を最小にする
端末が足りない 台数を見積もっていない 同時に使う人数から逆算する
圏外で入力できない 通信環境を確認していない 電波がなくても入力できるかを確認する
質問できる人がいない 窓口を決めていない 事業所内の担当と、事業者の窓口を決める
補助金が下りなかった 交付決定前に契約した 見積までにとどめる
翌年に止まった 次年度の費用を見ていない 初年度のみの補助かを確認する
管理者が紙で確認している 確認の方法が変わっていない 画面で確認する運用にする
データを取り出せない 解約時の取り扱いを確認していない 契約前に確認する

契約を決める前に、その場で確かめること

確認 できているか
置き換える作業を1つに絞った
その作業の担当者が合意している
導入前の作業時間を測った
紙をやめる期日を決めた
手順書の担当を決めた
質問の窓口を決めた
端末の台数を確認した
通信環境を確認した
次年度以降の費用を試算した
解約時のデータの扱いを確認した

進め方は介護のDX・AX、二重入力は二重入力をなくす方法をご覧ください。

止まったときの立て直し方

状況 立て直し方
誰も使っていない 対象の作業を1つに戻し、数名で再開する
一部の人だけ使っている 使っている人のやり方を手順書にする
紙に戻った 戻った理由を聞く。多くは入力の場所か項目数
入力が遅れている 必須項目を減らす
効果が見えない 導入前の数字がなければ、いまから測り直す
質問が事業者に届いていない 窓口と連絡方法を掲示する
管理者が把握していない 週1回、使用状況を見る時間を置く
契約の更新が近い いまの使い方で続けるかを、数字で判断する

分野別|厚労省の報告書からの改善事例(出典つき)

実在する事業所が報告した168件の改善事例を、分野ごとに整理した記事です。現場で挙がった課題・取り組んだこと・結果・出典を1行にまとめており、Excel/CSVで持ち帰れます効果の記載がない事例は「記載なし」とそのまま示しています。

分野 事例数 よく挙がる課題
記録業務 50件 二重入力、清書、転記、記録の遅れ
情報共有・申し送り 50件 申し送りが長い、ノートが複数、伝わっていない
シフト・移乗・見守り・教育ほか 68件 シフト作成、移乗の負担、夜間の見守り、新人教育、排泄・入浴

選ぶ段階での確認事項は介護ソフトの選び方に、契約前に必ず聞くこと14項目としてまとめています。

この記事の執筆・編集

介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)

介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。

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