デジタル化(DX)は変革の土台。その上でAIが判断・実行まで担うのが「AX」です。効果実感が半数どまりのいま、AXで何がどう変わるのか——効果データ、国の後押し、現場の変化、そして“淘汰されないための進め方”まで、一次情報と現場の知見で整理しました。

介護現場のデジタル化(DX)は、この数年で大きく進みました。しかし、その効果を「十分に実感できている」事業所は約半数にとどまります。次に問われているのは、デジタルに置き換えた基盤の上で、AIが記録・計画・報告の“実行”まで担う段階——AX(AIトランスフォーメーション)です。
この記事は、当社がPR TIMESで公表した調査リリースを土台に、同じ切り口・同じデータを、現場の実務目線でより詳しく解説したものです。数値はすべて厚生労働省・総務省・公益財団法人介護労働安定センターなどの公表データに基づき、出典を明記しています。判定や成果の保証を目的とするものではありません。記事の後半には、「では、どう進めればいいのか」という実践の3つの方法まで踏み込みました。
関連する記事はAXラボ(介護×AIの研究室)でまとめています。
結論:DXは“変革の土台”、AXは“その上でAIが実行する段階”
まず全体像を、先に置きます。
- DX(デジタル化)=“変革の土台”づくり。紙や手作業をデジタルに置き換え、記録・情報共有の基盤をつくる構造的な変化です。これは決して小さな一歩ではなく、後戻りできない前進です。
- AX(AIトランスフォーメーション)=その基盤の上で、AIが「判断」と「実行」まで担う段階。置き換えた上に“実行”が乗るため、DXの段階よりも効果を実感しやすいと考えられます。
ポイントは、DXとAXは対立ではなく順番だということです。DXという土台がなければAXは乗りません。逆に、DXで止まってしまうと、入力や転記の手間は残り、効果を感じにくいまま終わってしまいます。「入れたか」ではなく「回せた(AIが実行できた)か」で、事業所間の差が開き始めています。DXが“なぜ最初の一歩で止まりやすいのか”は、介護のDXが進まない本当の理由もあわせてご覧ください。
令和6年の姿——ICT導入は進んだが、効果実感は約半数
公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」では、ケア記録・ケアプラン等の入力・保存・転記の機能を日常的に利用している事業所は75.4%にのぼりました。10事業所のうち7〜8が、なんらかの形でデジタルの記録に触れている計算です。デジタル化そのものは、着実に広がっています。
ところが、その先に“壁”があります。ICT機器・介護ロボットを導入しても、「昼間の業務負担の軽減」に効果を感じている事業所は49.4%、「夜間」は44.6%と、効果実感はおよそ半数にとどまっています(同調査)。「入れた」ことと「効いた」ことのあいだに、大きな溝がある——これが令和6年の姿です。
背景には、事業所そのものの厳しさもあります。従業員が「不足」と感じる事業所は65.2%(前年度64.7%)、「今の報酬では十分な賃金を払えない」は約39.1%(同調査)。人手も、原資も足りない。だからこそ、「入れただけ」で止められない、という切実さがあります。

なぜ半数か——デジタル化は「変革」。だが“実行”はまだ人の手に
誤解のないように言うと、DXが浅いから効果が出ない、のではありません。デジタル化は、紙の記録をタブレットに移し、情報を共有できるようにする、れっきとした変革です。土台としては大きな価値があります。
問題は、その先です。デジタルにはなったけれど、「入力する」「確認する」「転記する」「突き合わせる」といった“実行”の多くを、いまも人が担っている。たとえば——訪問先で話した内容を、事務所に戻ってから記録に打ち直す。アセスメントの結果を見ながら、計画書を一から手で組み立てる。実績を集計して、報告書の様式に写す。デジタル化しても、この“手数”そのものが消えるわけではありません。
効果実感が半数にとどまる背景には、この「基盤はできたが、実行の負担までは変わっていない」段階があると考えられます。負担が体感として軽くならなければ、「入れたけれど、正直あまり変わらない」という感想になるのは自然なことです。
AI時代の転機——DX(デジタル化)から AX(AIが“実行”する)へ
ここに、AIが入ります。AX(AIトランスフォーメーション)は、DXがつくったデジタル基盤の上で、AIが「判断」と「実行」まで担う段階です。具体的には、こう変わります。
- 記録:話す・撮るだけで、AIが下書きをつくり、転記まで行う。打ち直しがなくなる。
- 計画・報告:アセスメント等の情報から、AIが計画書・報告書の原案を作成し、人は確認・承認に集中する。
- 判断の支援:数字を人が読み解くのではなく、データからAIが示唆を出し、最終的な判断は専門職が行う。
部分的にAIを“使う”のではなく、業務のアウトプットそのものをAIが下書き・実行する。だから、置き換えた上に“実行”が乗るぶん、DXの段階よりも負担の軽減が体感につながりやすい——ここが分かれ目です。生成AIの実用化が進んだ2025年以降、一般企業でも「デジタル化推進部」を「AI活用(AX)推進」の体制へ再編する動きが報じられています。この考え方は、無理なく現場に定着させる「スローDX」の発想とも一致します。
DX×AX 対照表——記録・計画・判断・効果・国の後押し
DXとAXの違いを、場面ごとに並べて確認します。左が「デジタル化まで」、右が「AIが実行するAX」です。
| 場面 | DX(デジタル化) | AX(AIが判断・実行) |
|---|---|---|
| 記録 | 紙→タブレット入力(打ち直しは残る) | 話す・撮るだけでAIが下書き→転記まで |
| 計画・報告 | 様式を手で作成 | アセスメント等からAIが原案、人が確認・承認 |
| 判断の支援 | 数字を人が読む | データからAIが示唆、専門職が決める |
| 効果 | 効果実感は約半数(“実行”は人の手) | アウトプットが変わる(定着が鍵) |
| 国の後押し | ICT機器の導入支援 | 生産性向上・AIケアプラン原案支援ソフトも対象 |

これは介護だけの話ではない——AXは、すでに全産業を動かしている
AIによる業務の作り替え(AX)は、いま産業全体を動かしています。総務省の令和7年版情報通信白書によれば、企業は生成AIを文書作成やカスタマーサポート等に活用しており、その主な目的は人手不足対策と業務効率化。約75%の企業が「業務効率化や人員不足の解消につながると思う」と回答しています。人手が足りないから、AIで仕事のやり方そのものを変える——この動機は、介護とまったく同じです。
そして、導入が進むほど「使いこなせたか」で差が開いています。民間の調査(帝国データバンク・2026年)でも、生成AIの活用は「検討」から「実装」の段階へ移りつつある一方で、期待を上回る効果を実感できる企業は限られ、二極化が続くと指摘されています。なお、日本で生成AIの「活用方針を定めている」企業は42.7%で、米国・ドイツ・中国の約8割に比べ、およそ半分にとどまっています(総務省・同白書)。方針を決めた組織から、先に動いているのが現状です。
介護・看護・医療・障害福祉も、この流れの例外ではありません。むしろ、人手不足がもっとも深刻で、AIが最も必要とされる分野の一つです。他産業で「AXした事業者」と「していない事業者」の差が開いているのなら、それは介護・看護・医療・障害でも、やがて——そしてすでに——起こることだと考えられます。
介護に問われるAX——省力化だけでは埋まらない構造
介護(要支援を含む)の認定を受けている方は約690万人(令和4年5月時点・介護保険事業状況報告)。一方、介護職員は2026年度に約240万人が必要とされ、2022年度の約215万人から約25万人を積み増す必要があるとされています(第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について)。需要は増え、担い手は追いつきません。

この構造は、入力を少し減らすだけの“省力化”では追いつきません。記録・計画・報告といった、時間のかかるアウトプットそのものをAIが下書きし、専門職が確認・承認する——そうした「業務の作り替え(AX)」が、次に問われる論点になっていると考えられます。
国の後押しは、旗振りでなく“具体策”になっている(令和6→令和8)
国の後押しは、抽象的な呼びかけにとどまりません。少なくとも次の3つが、すでに動いています。

(1)報酬:生産性向上推進体制加算の新設(令和6年度改定)
見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入し、国の「生産性向上に資するガイドライン」に沿った業務改善を継続し、事業年度ごとに取組の実績データを厚生労働省に報告した事業所に、加算(Ⅱ)として一月あたり10単位を算定できる仕組みが新設されました。テクノロジーを複数導入し、報告データで成果が確認された場合には、より高い評価(加算(Ⅰ))が設定されています。あわせて、利用者の安全と職員の負担軽減を検討する委員会の設置(おおむね3か月に1回以上の開催)が求められます。「入れて終わり」ではなく「成果を報告する」ことまでを報酬に組み込んだ点が特徴です。要件の詳細は介護労働安定センターの解説資料(PDF)をご確認ください。

(2)対象:重点分野を9分野16項目へ拡充(令和6年6月)
国が支援の重点を置く介護テクノロジーの分野が9分野16項目へと拡充されました。移乗支援・移動支援・排泄支援・見守り・入浴支援・コミュニケーション支援などに加えて、機能訓練支援・食事栄養管理支援・認知症ケア支援が新たに位置づけられ、記録や情報共有を扱う「介護業務支援」も分野として明確化されました。名称も「ロボット技術の介護利用における重点分野」から「介護テクノロジー利用の重点分野」へと改められています。支援の裾野が、記録やソフトの領域まで広がったことを意味します。
(3)AIまで対象:AIケアプラン原案作成支援ソフトも対象経費に
介護テクノロジー導入支援事業では、都道府県の実施要綱において、介護ソフトやタブレット等に加えて「AIケアプラン原案作成支援ソフト」も対象経費に挙げられています。デジタル機器の導入だけでなく、AIによる業務支援まで、補助の対象が広がっています。補助率・上限額・締切は自治体ごとに異なります。詳しくは介護テクノロジー補助金の解説、ICT導入支援事業とは、介護ソフトの補助金まとめ、補助率1/2・3/4・4/5の計算例をご覧ください。
国の関心は「導入したか」から「成果が出たか」へと移りつつあります。これは、“入れただけ”を超えるAX(業務の作り替え)の方向と重なります。
先行事例の成果——差は、もう開き始めている
「入れただけ」と「業務そのものを作り替えた」の差は、数字にも表れ始めています。
- 見守り機器を全床に導入した施設では、夜勤職員1人あたりが対応できる利用者数が平均+35.2%と示されています(厚生労働省の生産性向上の効果測定・実証)。導入割合が高い施設ほど、業務時間に占める「直接介護」や「巡回・移動」の割合が下がる傾向も確認されており、リアルタイムに状態を把握できることで、必要なタイミングでケアができるようになったためと推察されています。
- 生産性向上に先進的に取り組む特定施設では、介護サービスの質の確保と職員の負担軽減を確認したうえで、人員配置基準の特例的な柔軟化が認められています(令和6年度改定)。取り組みが進んだ事業所は、成果に加えて、経営上の選択肢まで広がる形になっています。

つまり、テクノロジーやAIを「入れたか」ではなく、「業務そのものを作り替え、成果を出せたか(AX)」で、事業所間の差が開き始めています。人手不足が深刻になるほど、この差は経営に効いてきます。
AXする体力があるうちに——「淘汰」と「急ぎすぎ」のあいだ
ここからは、公表データではなく、私たちが現場で得た見立てです。
差が開くほど、後発は追いつきにくくなります。そして、AXに取り組むには、人・時間・気持ちの“余力”が要ります。正直に言えば、その体力が残っていない事業所ほど、これから先、淘汰されかねない——私たちはそう考えています。だからこそ、余力がまだあるうちに、小さくでも始めておくことに意味があります。
いっぽうで、ここで力みすぎるのも危険です。一気にAX(スゴイこと)をやる必要はありません。むしろ、急ぎすぎると現場が疲弊し、「AIはもう嫌だ」という空気が生まれて、かえって遠回りになります。焦りは、いちばんの敵です。
答えは、シンプルです。小さく始めて、続ける。その具体的なやり方を、3つの方法にまとめました。
まず、自事業所の現在地を確認する
ここまで「DXからAXへ」という変化を整理してきましたが、進め方を考える前に必要なのは、自事業所が今どこにいるのかを確かめることです。現在地が分からないまま方法だけを選ぶと、すでにできていることをやり直したり、土台が無いまま先に進んだりしがちです。
そのために、無料の「AX診断」を公開しています。事業所名または所在地から検索するだけで、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の公表データをもとに、貴事業所の「AX(AI活用)度」を表示します。登録も入力も不要です。
出典:厚生労働省ウェブサイト(介護サービス情報公表システム オープンデータ)/公共データ利用規約(第1.0版)。本ツールは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。診断結果は公表情報にもとづく整理であり、個別の判定・助言を行うものではありません。詳細は各事業所にてご確認ください。
この変化に対応する、3つの方法

方法1:2割のAXから始める(2:6:2の法則)
どんな組織にも、変化に前向きな2割、中立の6割、抵抗する2割がいる、と言われます(2:6:2)。ここで大事なのは、いきなり全員に一斉導入しないことです。まずは抵抗のない2割の人に、AXのうちいちばん負担の軽い2割の業務から試してもらう。小さな成功体験を先につくると、中立の6割が自然と後に続きます。抵抗する2割を最初に説得しようとすると、たいてい止まります。入口は“いちばんラクなところ×いちばん前向きな人”から。
方法2:1日1つずつ覚える(3ヶ月かけるイメージ)
新しい道具を一度に覚えようとすると、現場は必ず息切れします。おすすめは、1日にひとつだけ、できることを増やすこと。今日は音声で記録を1件、明日は写真から1件、というふうに、ひとつずつ。3ヶ月くらいかけて身につけるイメージで十分です。急がないことが、結局はいちばんの近道になります。
方法3:とにかく“触れた回数”を増やす(効果は2週間後から)
上達は、才能よりも接触回数に比例します。だから、うまく使えなくてもいいので、まず触る回数を増やす。経験上、効果を感じ始めるのは、だいたい2週間後からです。そこからは、2週間ずつの改善ループ——「やってみる→気づく→少し変える」を回していくと、少しずつ加速して伸びていきます。最初の2週間で判断せず、まず2週間、続けてみてください。
「一気にスゴイことをする」必要はありません。急ぎすぎると、かえって危ない。小さく始めて、続ける。それが結果的に、いちばん速く、いちばん壊れにくい進め方です。
※この進め方は、当社が現場で得た知見に基づく整理であり、効果や成果を保証するものではありません。
現場で起きていること——「デジタル」から「AIで回す」へ
デジタル化だけでなく、AIで日々の業務を回すようになると、現場からは次のような声も出始めています。心理的な負担が軽くなった。到底さばけなかった仕事量が、限られた時間でこなせるようになった。1日では終わらず「夜も気になって眠れない」状態だった業務が、その日の業務時間内に片づき、数年来の悩みが解けた——。こうした変化に触れ、これまでAIに積極的でなかった職員も使い始め、事業所全体へ広がっていきます。
この動きは令和6年以降、令和7〜8年で加速しており、令和9〜10年にはさらに大きくなると見ています。介護の“常識”すら、この数年のAXで変わり得るかもしれない——現場に立ち会ってきた私たちは、そう感じています。
※上記は現場で聞かれ始めている声であり、効果を保証するものではありません。効果は事業所の状況により異なります。
AXを進めるときの実務注意
AI・AXの導入や、記録をAIに渡す運用にあたっては、利用者の氏名・被保険者番号などの個人情報の扱い(伏字・事業所内ルールの確認)にご留意ください。制度の要件・単位数・様式は、改定や自治体運用により変わります。加算の算定や補助の可否は、必ず告示・通知・自治体の実施要綱の原典と、貴事業所の登録内容をご確認ください。本記事は特定の製品・サービスの効果や算定を保証するものではありません。
業務別|「DX止まり」と「AXまで来た」の分かれ目(14業務・実行が誰に残るかで判定)
DXとAXは、道具の新しさで分かれるのではありません。実行が人の手に残っているか、AIが実行の手前まで担っているかで分かれます。同じ「記録の電子化」でも、職員が最初から最後まで文章を書いているならDX止まり、音声や選択の入力からAIが下書きを作り、人は確かめて確定しているならAXまで来ています。
この線引きが実務上の意味を持つのは、令和6年度の調査で介護ソフトの利用は75.4%に達している一方、負担軽減の実感は昼49.4%・夜44.6%にとどまっているからです。導入率と実感率の差は、「入れたのに実行が人に残ったまま」の業務が多いことを示しています。どの業務が、いまどちらの段階にあるのかを、次の表で1行ずつ確認してください。
| 業務 | 紙のままの段階 | DX止まり(実行が人に残る) | AXまで来た(AIが判断の手前まで担う) | どの段階でも人に残ること |
|---|---|---|---|---|
| 訪問・介助の記録 | 紙の記録用紙に手書きし、事務所で綴じる | 端末の入力欄に、職員が最初から文章を打つ。空欄と定型句が増える | 音声・選択の入力から下書きが作られ、職員は事実と違う箇所を直して確定する | その場で何を観察したか。確定の押印にあたる行為 |
| 申し送り | ノートと口頭。読んだかどうかは分からない | 共有画面に転記する。読む側は全文を読むしかない | 前回からの変化点と、次の担当者が見る項目に整理された要約が先に出る | 要約から漏れた事実を足す判断 |
| アセスメント | 用紙にチェックし、備考は空欄になりがち | チェック欄が画面になっただけ。備考欄は依然として空欄 | 過去の記録・前回の内容から、聞き取りの抜けと確認すべき項目が提示される | 本人・家族に会って確かめること |
| ケアプラン(居宅サービス計画)の作成 | 白紙から手書き。過去分を写す | 様式が画面になり、前回分をコピーして日付だけ直す | アセスメントと記録から原案が組み立てられ、人が意向と照らして書き換える | 本人の意向の受け止めと、同意を得る手続き |
| 個別サービス計画・訪問看護計画 | 手書き。事業所ごとに様式がばらつく | 入力はできるが、居宅サービス計画との整合は目で見て合わせる | 居宅サービス計画の目標と、自事業所の計画の食い違いが表示される | 整合しない理由の説明と、担当者への確認 |
| モニタリング | 訪問後にまとめて書く。実施日があいまいになる | 入力欄はあるが、評価欄に同じ文が並ぶ | 前回の短期目標と今回の記録を突き合わせ、変化のあった項目が先に示される | 変化をどう評価するかの判断 |
| 報告書の作成 | 記録を見ながら、月末にまとめて書く | 画面で書くが、記録から手で拾い直している | 期間内の記録から下書きが作られ、人が観察の根拠を足す | 医師・関係機関に伝えるべき事実の取捨 |
| 会議録 | 録音を聞き返して書き起こす | その場でタイピングする。発言に集中できない | 文字起こしから議題ごとに整理され、決定事項と担当者が抜き出される | 決定していないことを「決定」と書かない確認 |
| 請求前の点検 | 紙の記録と請求データを目視で突合 | 画面上で突合するが、見るのは人の目のまま | 記録と請求データの食い違いが一覧で示され、人は理由を確かめる | 食い違いの原因が記録側か請求側かの判断 |
| 実績確認 | 予定表に手で印を付ける | 実績入力はできるが、予定との差は目で追う | 予定と実績の差、変更の理由が未記入のものが抽出される | 変更した理由を書ける唯一の人(担当者)の記載 |
| シフト作成 | 方眼紙・ホワイトボード | 表計算に移しただけ。条件は担当者の頭の中にある | 資格・常勤換算・希望休の条件を入れて候補が組まれ、人が例外を判断する | 人間関係と当日の欠員に対する判断 |
| 備品・消耗品の管理 | 棚を見て発注する | 在庫表に入力するが、更新が滞る | 使用実績から不足の見込みが示され、人が発注の可否を決める | 発注の決裁 |
| 教育・研修 | 集合研修。出席簿だけが残る | 資料をデータで配る。理解度は分からない | 個々の記録の書き方の癖から、次に確認すべき項目が示される | 指導する側の言葉と、評価 |
| 家族への連絡 | 電話と連絡帳 | メッセージで送るが、内容は都度書いている | 記録から連絡すべき変化が抽出され、人が言葉を選んで送る | 伝え方と、伝える相手の選択 |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
いまの言い方から、どの段階かを見分ける
会議で出てくる言葉は、段階をよく表します。左の言い方が出ているうちは、実行はまだ人の手に残っています。右は、同じ業務で実行が移ったときに自然に出てくる言い方です。
| 業務 | DX止まりのときに出る言葉 | 実行が移ったときに出る言葉 |
|---|---|---|
| 記録 | 「入力する時間が取れない」 | 「話した内容が下書きになっているので、直すところを見ている」 |
| 申し送り | 「全部読むと朝礼が終わらない」 | 「変わった人だけ先に出るので、そこから話している」 |
| ケアプラン作成 | 「前回のをコピーして直している」 | 「原案が出るので、意向と合っているかを見て書き換えている」 |
| アセスメント | 「チェックは付けたが備考が書けていない」 | 「聞けていない項目が表示されるので、次の訪問で確認している」 |
| モニタリング | 「毎月同じことを書いている」 | 「前回と変わった項目が出るので、そこを評価している」 |
| 報告書 | 「月末に記録を見返して書いている」 | 「期間の記録から下書きが出るので、観察の根拠を足している」 |
| 会議録 | 「録音を聞き直す時間がない」 | 「決定事項と担当者が抜き出されるので、抜けを補っている」 |
| 請求前点検 | 「請求月は残業になる」 | 「食い違いだけが出るので、理由を確認している」 |
| 実績確認 | 「予定と実績が合っているか目で見ている」 | 「差があるものと、理由が未記入のものだけを見ている」 |
| シフト作成 | 「担当者が休むと誰も作れない」 | 「条件を入れると候補が出るので、例外だけ判断している」 |
| 備品管理 | 「切らしてから気づく」 | 「不足の見込みが出るので、発注するかを決めている」 |
| 教育 | 「新人が書けているか分からない」 | 「書き方の傾向が出るので、そこを指導している」 |
| 家族連絡 | 「連絡が後回しになる」 | 「連絡した方がよい変化が挙がるので、言葉を選んで送っている」 |
| 全体 | 「システムは入れたが、忙しさは変わらない」 | 「どの工程が手から離れたか、名前を挙げて言える」 |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
職種別|1日のどこに時間が溶けているか(6職種・36場面の時間帯別)
「事業所として何を導入するか」から入ると、賛成も反対も理由が見えません。職種ごとに、1日のどの時間帯に何が起きているかまで下ろすと、どこにDXが効き、どこからがAXの領域かが具体物として見えます。以下は、時間帯・場面ごとに時間が溶ける理由を分解したものです。自事業所の実態と照らして、当てはまる行から手を付けてください。
| 職種 | 時間帯・場面 | 時間が溶ける理由 | DXが効くところ(実行は人に残る) | AXが効くところ(判断の手前まで) |
|---|---|---|---|---|
| ケアマネジャー | 始業前〜9時 | 前日の留守電・FAX・メールを開き直し、誰に何を返すかを頭の中で並べ替える | 連絡の受け口を1つにまとめ、履歴が残る形にする | 未返信のものと期限が近いものが先頭に並ぶ |
| ケアマネジャー | 午前の訪問(2〜3件) | 訪問先でメモを取り、事務所に戻ってから清書する | その場で端末に入力できるようにする | 会話から支援経過の下書きが作られ、帰所後は確認と加筆で済む |
| ケアマネジャー | 移動・昼 | 車内での電話対応。内容が記録に残らないまま次へ進む | 通話後にその場で入力する運用にする | 通話の要点が支援経過の候補として残る |
| ケアマネジャー | 午後のサービス担当者会議 | 司会をしながら書き取る。誰が何を引き受けたかが後で曖昧になる | 会議記録の様式を共通化する | 録音から議題ごとに整理され、決定事項と担当者が抜き出される |
| ケアマネジャー | 夕方の事務作業 | 第1〜3表・支援経過・モニタリングの様式を行き来し、同じ情報を書き写す | 様式間で共通項目が引き継がれる | アセスメントと記録から原案が組まれ、人は意向と照らして書き換える |
| ケアマネジャー | 月初1〜10日 | 給付管理。利用票・提供票と実績の突合、事業所への確認電話が重なる | 実績データを取り込み、手入力を減らす | 予定と実績の差、理由が未記入の変更が一覧で示される |
| サービス提供責任者 | 始業直後 | 当日の欠員・キャンセルの調整。電話が同時に鳴る | 連絡と変更履歴が1か所に残る | 資格・移動時間・希望条件を満たす代替候補が提示される |
| サービス提供責任者 | 午前の同行・代行訪問 | 自らも訪問に入るため、事務が夕方以降に押し出される | 訪問中に記録が完結する | 訪問中の会話から記録の下書きが作られる |
| サービス提供責任者 | 昼前後 | ヘルパーからの相談電話。内容が記録に残らない | 相談内容を残す欄を決める | 相談の要点と、対応が必要な利用者が抽出される |
| サービス提供責任者 | 午後の計画作成 | 訪問介護計画とモニタリングを、居宅サービス計画と見比べながら作る | 両方を同じ画面で開ける | 居宅サービス計画の目標との食い違いが表示される |
| サービス提供責任者 | 夕方の点検 | ヘルパーの記録を1件ずつ開き、実施時間と内容を確認する | 点検した事実が残る形にする | 実施時間が一律のもの、特記欄が空欄のものが先に出る |
| サービス提供責任者 | 月末〜月初 | 実績の確定。予定との差を1件ずつ追う | 実績入力を現場側で完結させる | 差のあるものと、変更理由が未記入のものだけが残る |
| 訪問看護師 | 朝のミーティング | 前日の申し送りを全員で読み上げる | 端末で共有し、既読が分かる | 変化のあった利用者と、その変化点が先に示される |
| 訪問看護師 | 午前の訪問2〜3件 | 訪問中はメモ、記録は後回し。夕方に思い出しながら書く | 訪問先で入力できる | 観察・処置の内容から記録書の下書きが作られる |
| 訪問看護師 | 移動中 | 主治医・事業所への連絡が口頭で完結し、記録に残らない | 連絡の記録欄を決める | 連絡内容が経過記録の候補として残る |
| 訪問看護師 | 午後の訪問・臨時対応 | 予定外の対応が入り、当日の記録が翌日に繰り越される | 予定外の訪問も同じ画面で記録する | 予定外対応の理由と経過が下書きになる |
| 訪問看護師 | 夕方の記録・報告 | 指示書・計画書・記録書の間で、同じ内容を書き写す | 様式間で共通項目が引き継がれる | 期間の記録から報告書の下書きが作られる |
| 訪問看護師 | 月次の療養状況の整理 | 利用者全員分を、記録を読み返してまとめ直す | 対象期間の記録を一覧で開ける | 記録から要約が作られ、看護師が事実を確かめて確定する |
| 介護職員(施設) | 早番の申し送り | 夜勤帯の出来事を口頭で受け、メモを取る | 端末で共有する | 夜間の変化点だけが整理されて出る |
| 介護職員(施設) | 午前の介助 | 介助の合間に記録を書けず、記憶が薄れる | その場で選択入力できる | 選択と音声から記録が組み立てられる |
| 介護職員(施設) | 入浴・食事の時間帯 | 実施の有無を後からまとめて入力し、抜けが出る | 実施をその場で残す | 実施の記載がない利用者が抽出される |
| 介護職員(施設) | 夕方の記録 | 複数の様式(日誌・個別記録・実施記録)に同じことを書く | 1回の入力が各様式に反映される | 定型句だけになっている記録が抽出される |
| 介護職員(施設) | 夜勤帯 | 巡視の記録と、翌朝の申し送り準備が重なる | 巡視の記録を端末で完結させる | 夜間の記録から申し送りの要点が組まれる |
| 介護職員(施設) | 委員会・研修の月次 | 開催記録と周知の記録を、担当者が思い出しながら作る | 様式と保存場所を決める | 録音から議事の下書きが作られ、担当者が確定する |
| 管理者 | 始業直後 | 欠員の穴埋め。誰を動かせるかを頭の中で計算する | 勤務表と資格が同じ画面で見える | 条件を満たす候補が提示される |
| 管理者 | 日中の突発対応 | 事故・苦情の一次対応。記録と報告の様式を探す | 様式と報告先を定型化する | 過去の同種事例と、記載が必要な項目が示される |
| 管理者 | 週次の体制確認 | 人員基準・資格の有効期限を、名簿を見ながら確認する | 有効期限を一覧で管理する | 期限が近いもの、記録が欠けているものが先に出る |
| 管理者 | 月次の請求前点検 | 記録と請求内容の突合を、担当者と分担して目視で行う | 両者を同じ画面で突合する | 食い違いのある件だけが抽出される |
| 管理者 | 四半期の委員会・研修 | 開催回数と記録の有無を、書類の綴りをめくって確認する | 開催記録を1か所に集約する | 回数・記録の欠けが表示される |
| 管理者 | 運営指導の連絡が来たとき | 必要書類を探すところから始まり、通常業務が止まる | 書類の所在を一覧で持つ | 確認文書ごとに、揃っていないものが示される |
| 事務 | 月初の実績取込 | 各事業所・各担当から届く実績の形式がばらばら | 入力の形式を統一する | 形式違い・欠損のある行が抽出される |
| 事務 | 請求データの作成 | 記録を見ながら区分を入力し直す | 記録から請求データへ連携する | 記録と区分の食い違いが表示される |
| 事務 | 返戻・過誤の対応 | 原因を探すために、記録と請求を遡って照合する | 履歴が追える形にする | 同じ原因の他の件が併せて示される |
| 事務 | 日常の問い合わせ | 電話の内容を紙にメモし、担当者に口頭で渡す | 受付の記録を残す | 担当者と期限が自動で仕分けられる |
| 事務 | 勤怠の集計 | タイムカードと勤務表を突き合わせ、常勤換算を手計算する | 勤怠を電子で取る | 勤務表と実績の差が表示される |
| 事務 | 月次の書類保存 | どの書類をどこに、いつまで保存するかが人によって違う | 保存場所と年限を決める | 保存されていない書類が示される |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
職種ごとに、最後まで人に残るもの
AXが進んでも移らない仕事があります。ここを先に確認しておくと、現場の不安(自分の仕事がなくなるのか)と、導入側の期待(全部任せられるのか)の両方が同時に整理できます。
| 職種 | 移りやすい工程 | 移らない工程 | 移らない理由 |
|---|---|---|---|
| ケアマネジャー | 様式間の書き写し、原案の組み立て、期限の管理 | 本人の意向を受け止め、同意を得ること | 同意は本人との手続きであり、記録の作成とは別の行為だから |
| サービス提供責任者 | 実績と予定の突合、記録の一次点検の絞り込み | ヘルパーへの指示と、指示した事実の責任 | 指示は組織の中の職責であり、出力の生成では代替できないから |
| 訪問看護師 | 記録・報告書の下書き、期間の要約 | 観察と、そこからの判断 | 観察は現場でしか成立せず、判断には資格に伴う責任があるから |
| 介護職員(施設) | 記録の入力、申し送りの要点整理 | 見守りと介助、その場の気づき | 身体に触れる行為と、その場の判断は人が行うから |
| 管理者 | 集計、期限の把握、書類の所在管理 | 人の配置と、事業所としての方針の決定 | 決裁は責任の所在と結びついているから |
| 事務 | 転記、形式の点検、差分の抽出 | 保険者とのやりとりと、その結果の判断 | 相手の運用に合わせる交渉が含まれるから |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
着手の順番|記録→転記→作成→判断の4段(難度が上がる理由と、飛ばしたときに起きること)
順番を間違えると、投資しても効きません。難度は記録(入る)→転記(つながる)→作成(下書きが出る)→判断(判断の手前まで担う)の順に上がります。上の段は下の段の材料を食べて動くため、下が薄いまま上に手を出すと、出てきた下書きの質が低く、確認の手間が増えて元より遅くなります。
| 段 | 対象業務 | この段で成立していること | 難度が上がる理由 | 次の段に進む前に確認すること |
|---|---|---|---|---|
| 1段目:記録が入る | 訪問・介助の記録 | その場で入力が終わり、事務所での清書がない | 入力の場所と回数を変えるだけなので、道具より運用の合意が要る | 全員が同じ場所に入れているか。紙が併存していないか |
| 1段目:記録が入る | 申し送り | 共有先が1つに決まり、読んだことが分かる | 口頭の文化を変える必要がある | 口頭とノートが残っていないか |
| 1段目:記録が入る | 実施の記録(入浴・食事・送迎など) | 実施したことがその場で残る | 忙しい時間帯に入力が重なる | 後からまとめて入力していないか |
| 1段目:記録が入る | 勤怠・出退勤 | 実際の時刻が記録として残る | 管理者・兼務者ほど記録が抜けやすい | 役員・管理者を含めて記録が揃っているか |
| 2段目:転記が消える | 記録から請求へ | 記録の内容が請求データの元になる | 1段目の記録が正確でないと、誤りがそのまま流れる | 記録と請求の食い違いが、突合できる状態にあるか |
| 2段目:転記が消える | 予定と実績 | 予定の変更が実績に反映される | 変更の理由まで残す運用が要る | 変更理由の欄が空欄のまま流れていないか |
| 2段目:転記が消える | 様式間(計画・記録・報告) | 共通項目が引き継がれる | 様式が事業所ごとに違うと引き継げない | 様式が統一されているか |
| 2段目:転記が消える | 事業所間の情報連携 | 受け取った情報を打ち直さない | 相手側の形式に依存する | 受領した記録が、どこに保存されるか決まっているか |
| 3段目:下書きが出る | 記録の文章化 | 音声・選択から文章の下書きが出る | 材料が薄いと、下書きも薄くなる | 1段目の記録に、観察の根拠が書かれているか |
| 3段目:下書きが出る | 報告書・会議録 | 期間の記録・録音から下書きが出る | 下書きの確認者を決めないと、誰も直さない | 確認する人が決まっているか |
| 3段目:下書きが出る | 計画の原案 | アセスメントと記録から原案が組まれる | 意向の記載が薄いと、原案が一般論になる | アセスメントの備考欄が埋まっているか |
| 3段目:下書きが出る | 家族への説明資料 | 記録から説明の素材が組み立てられる | 個人情報の扱いの取り決めが要る | 使用の同意の範囲が書面で確認できるか |
| 4段目:判断の手前まで | 請求前の点検 | 食い違いのある件だけが抽出される | 判定の根拠を人が追えないと、確認できない | なぜ抽出されたのか、根拠が表示されるか |
| 4段目:判断の手前まで | 記録の質の点検 | 定型句だけの記録、空欄の記録が抽出される | 指摘された側の受け止めが要る | 点検結果を誰が現場に返すか決まっているか |
| 4段目:判断の手前まで | 体制・期限の管理 | 期限が近いもの、記録の欠けが示される | 元データ(資格・勤務表)の更新が止まると意味を失う | 元データを誰がいつ更新するか決まっているか |
| 4段目:判断の手前まで | シフトの組み立て | 条件を満たす候補が提示される | 条件を言語化する作業そのものが重い | 条件が担当者の頭の中だけにないか |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
段を飛ばしたときに、実際に起きること
| 飛ばした段 | 起きること | 戻ってやること |
|---|---|---|
| 1段目を飛ばして3段目へ | 下書きは出るが、元の記録が「特変なし」だけなので、下書きも中身がない | 記録に、時刻・観察した事実・その根拠を書く運用へ戻す |
| 1段目が半分(紙と併存) | 紙と画面の両方に書く二重入力になり、以前より時間が増える | どちらに寄せるかの期日を決め、紙の帳票を回収する |
| 2段目を飛ばして4段目へ | 点検の対象データが手入力なので、点検結果そのものが信用されない | 記録から請求へ、打ち直しのない経路を先に作る |
| 2段目が片方向のみ | 予定は流れるが変更が戻らず、実績との差が説明できない | 変更の理由を残す欄と、入力の担当者を決める |
| 3段目で確認者を決めていない | 下書きがそのまま確定され、誰も内容を見ていない記録が残る | 下書きを確定できる人を職種と役職で定める |
| 3段目で様式が事業所ごとに違う | 拠点ごとに出力の形が変わり、点検も教育も再現しない | 様式を統一してから広げる |
| 4段目で根拠が見えない | 抽出された理由が分からず、現場が結果を無視するようになる | 根拠(どの記録のどの項目か)が表示される形にする |
| 全段を一斉に | 質問が同時に発生し、通常業務が止まる | 1業務・数名・1か月に絞り、教える人を先に育てる |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
止まる場面別|そのとき確認すること(8場面)とAIの出力を業務に載せる前の取り決め
導入が止まるとき、現場からは決まった言い方が出てきます。言い方の裏側には構造があり、確認する先も違います。「使ってくれない」で終わらせず、次の表の左端の言葉を手がかりに、右端まで進めてください。
| 現場から出る言葉 | その裏で起きている構造 | 確認すること | どこを見るか |
|---|---|---|---|
| 「入力する時間がない」 | 入力の場所が現場ではなく事務所のままで、清書の工程が残っている | 入力が発生する場所と回数。1件あたり何回入力しているか | 訪問から確定までの動線を、担当者に実演してもらう |
| 「結局、紙にも書いている」 | 紙の帳票が回収されておらず、二重入力が固定している | まだ回っている紙の帳票の名前と、それを求めている人 | 事業所内の綴り、回覧簿、提出先 |
| 「一部の人しか使えていない」 | 権限か端末の数が足りず、使える人が限られている | 職種ごとの権限と端末の割り当て | アカウント一覧と、端末の設置場所 |
| 「管理者しか見ていない」 | 出力の受け手が管理者に固定され、現場に返っていない | 点検結果を誰が、いつ、どの場で現場に返すか | 会議の議題と、返却の記録 |
| 「覚えられない」 | 教育が一斉配布で終わり、日常の中に練習の場がない | 誰が教える役か。1日1つの練習が業務の中にあるか | 研修計画と実施記録、日々の朝礼 |
| 「思っていたのと違う」 | 導入前の期待値が「全部やってくれる」に振れていた | どの工程を移す約束だったのか。文書に残っているか | 導入時の資料と、稟議の記載 |
| 「出てきた文章が合っているか分からない」 | 出力を確認する人と、確認の観点が決まっていない | 確認者・確認の観点・確認した事実の残し方 | 後述の取り決めの表 |
| 「前より遅くなった」 | 下の段が薄いまま上の段に進み、確認の手間が増えている | いまどの段にいるか。1段目・2段目の穴 | 前掲の4段の表を、業務ごとに当てはめる |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
AIの出力を記録として残す前に、決めておく7項目
AIが下書きを作る段階に入ると、「その記録は誰が書いたことになるのか」という問いが必ず出ます。これを決めずに運用を始めると、記録の責任の所在が曖昧なまま書類だけが増えます。次の7項目は、始める前に文書として決めておくものです。
| 決めること | 決めていないと起きること | 決め方の書き方(例) | どこに書き、どこに残すか |
|---|---|---|---|
| 誰が確認して確定するか | 下書きのまま確定され、事実と違う記録が残る | 「下書きは、当該利用者を担当した職員本人が内容を確認し、修正のうえ確定する。担当者以外は確定できない」 | 記録の取扱いに関する事業所内の手順書。確定者が記録上に残る形にする |
| 何を確認するか(観点) | 読み流しになり、確認したことにならない | 「①日時と時刻が実際と一致しているか ②観察した事実が書かれているか ③記載のない事項が補われていないか、の3点を確認する」 | 同手順書。確認の観点を印刷して端末の近くに置く |
| 根拠をどこに残すか | 後から「なぜそう書いたか」が説明できない | 「下書きの元になった音声・入力の保存期間と保存場所を定め、確定後も参照できる状態にする」 | 記録の保存に関する取り決め。保存年限は保険者の定めをご確認ください |
| 間違いに気づく仕組み | 同じ誤りが全件に広がる | 「毎月、確定済みの記録から一定数を抽出し、管理者と担当以外の職員が読み合わせる」 | 点検の記録。実施日・対象件数・気づいた点を残す |
| 修正の残し方 | 上書きされ、事実と異なる記録になる | 「訂正が必要な場合は上書きせず、元の内容・修正後の内容・修正日が分かる形で残す」 | 神戸市の資料に、事実と異なる記録・書類を作成しないことと、修正の残し方が示されています |
| 個人情報の扱い | 同意の範囲を超えた利用になる | 「利用者本人・家族の個人情報の使用について、目的と期間を明記した同意を書面で得る。家族分の同意欄を分けて設ける」 | 個人情報使用同意書、重要事項説明書、契約書 |
| 外部に出す情報の範囲 | どこまでが外部に渡るのか説明できない | 「利用者を特定できる情報を外部へ送る場合の可否・条件・記録の残し方を定める」 | 事業所の情報の取扱い方針。委託先がある場合は契約書に明記する |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
運営指導で見られるのは記録の中身|確認項目・確認文書と、システムを入れても人に残る部分
システムを入れても、運営指導で見られるものは変わりません。見られるのは記録の中身と、それを裏づける文書です。次の表は、厚生労働省の運営指導マニュアル別添1(居宅介護支援の欄)に示された確認項目・確認文書を整理し、そのうちどこがシステム化で軽くなり、どこが人に残るのかを並べたものです。なお、介護保険法に基づく届出書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務です。
| 確認項目(該当条項) | 確認内容の要旨 | 確認文書 | システムを入れても人が用意する部分 |
|---|---|---|---|
| 内容及び手続の説明及び同意(第4条) | 利用申込者又はその家族への説明と同意の手続きを取っているか。重要事項説明書の内容に不備等はないか | 重要事項説明書、同意があったことが分かるもの、説明の理解にかかる署名文書、利用契約書 | 説明した事実と、同意を得た日付。日付の前後関係 |
| 指定居宅介護支援の具体的取扱方針(第13条) | 希望とアセスメントに基づき総合的な計画を立てているか。サービス担当者会議で情報を共有し専門的見地からの意見を求めているか。定期的にモニタリングを行っているか。説明・同意・交付を行っているか | アセスメントシート、サービス担当者会議の記録、居宅サービス計画、支援経過記録等、モニタリングの記録、個別サービス計画 | 意向の聞き取りの中身と、会議で出た意見の記載 |
| 従業者の員数(第2条) | 従業者の員数は適切か。必要な資格を有しているか。専門員証の有効期限は切れていないか | 勤務実績表/タイムカード、勤務体制一覧表、従業者の資格証 | 実際の勤務時刻の記録と、資格証の原本確認 |
| 管理者(第3条) | 管理者は常勤専従か。兼務している場合、兼務体制は適切か | 管理者の雇用形態が分かる文書、管理者の勤務実績表/タイムカード | 兼務の実態と、それが分かる勤務記録 |
| 受給資格等の確認(第7条) | 被保険者資格、要介護認定の有無、有効期限を確認しているか | 介護保険番号、有効期限等を確認している記録等 | 確認した事実を残すこと |
| 運営規程(第18条) | 事業の目的及び運営の方針、職種・員数・職務内容、営業日・営業時間、提供方法・内容・利用料等、実施地域、虐待の防止のための措置に関する事項などを定めているか | 運営規程 | 規程の内容が実態と一致していること |
| 勤務体制の確保(第19条) | 事業所の介護支援専門員・従業者によって提供されているか。資質向上のための研修の機会を確保しているか。就業環境が害されることの防止に向けた方針の明確化等の措置を講じているか | 雇用の形態が分かる文書、研修計画・実施記録、方針、相談記録 | 研修を実施した事実と、その内容の記載 |
| 業務継続計画の策定等(第19条の2) | 感染症・非常災害発生時の業務継続計画の策定及び必要な措置を講じているか。周知・研修・訓練を実施しているか。計画の見直しを行っているか | 業務継続計画、研修及び訓練計画、実施記録 | 訓練を行った事実と、見直した内容 |
| 感染症の予防及びまん延防止のための措置(第21条の2) | 対策を講じているか。対策を検討する委員会を6か月に1回開催しているか | 委員会名簿・委員会の記録、指針、研修の記録及び訓練の記録 | 開催した事実と、議事の中身 |
| 秘密保持等(第23条) | 個人情報の利用に当たり、利用者及び家族から同意を得ているか。退職者を含む従業者が秘密を保持することを誓約しているか | 個人情報同意書、従業者の秘密保持誓約書 | 家族分を含む同意の取得と、誓約書の保管 |
| 広告(第24条) | 広告は虚偽又は誇大となっていないか | パンフレット/チラシ | 掲載内容が実態と一致していること |
| 苦情処理(第26条) | 苦情受付の窓口があるか。受付・内容等を記録、保管しているか。内容を踏まえた質向上の取組を行っているか | 苦情の受付簿、苦情者への対応記録、苦情対応マニュアル | 対応の経過と、取組の中身の記載 |
| 事故発生時の対応(第27条) | 対応方法は定まっているか。市町村・家族等に報告しているか。事故状況・対応経過が記録されているか。再発防止のための取組を行っているか | 事故対応マニュアル、市町村・家族等への報告記録、再発防止策の検討の記録 | 再発防止策が具体的であること |
| 虐待の防止(第27条の2) | 対策を検討する委員会を定期的に開催し周知しているか。指針を整備しているか。研修を実施しているか。担当者を設置しているか | 委員会の開催記録、発生・再発防止の指針、研修計画・実施記録、担当者を設置したことが分かる文書 | 開催・研修・周知の各事実の記録 |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
自治体が公表した指摘のうち、システム化・自動化で起きやすくなるもの
次は、各自治体が公表している運営指導の指摘のうち、入力の効率化を進めるほど起きやすくなる型を抜き出したものです。転記が減るほど、計画の値がそのまま記録に入る、前回の内容がそのまま複製される、といった事態が起こりやすくなります。効率化そのものが問題なのではなく、実測値と実際の日付を残す運用が同時に設計されていないことが問題になります。
| 公表された指摘の要旨 | 自治体・資料 | 効率化を進めると起きやすくなる事情 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 訪問介護のサービス提供記録に、計画に位置付けられた時間を機械的に記録しているケースが多数見受けられた | 松山市「運営指導での主な指摘事項及び周知事項について」(令和5年度第2回介護保険サービス事業者連絡会資料) | 計画の値が初期表示されると、そのまま確定されやすい | 記録の開始・終了時刻が、初期表示のままになっていないか |
| サービス提供の記録の開始・終了時間が、計画に位置付けられた標準的な時間で記載されていた。実際の時間を記載すること | 横浜市健康福祉局介護事業指導課「令和7年度 横浜市介護サービス事業者等集団指導講習会資料(各サービス共通編)」 | 予定から実績への自動反映が、実測の入力を省かせる | 実測値を入れる欄があり、入力されているか |
| サービス提供時間について、居宅サービス計画等に記載された時間をそのまま記載するのではなく、実際に提供した開始・終了時刻を記録すること | 和歌山市 令和3年度 介護保険サービス事業者集団指導資料【Ⅰ共通資料(その1)】(令和4年3月・和歌山市指導監査課) | 保険給付対象と対象外の記録が同じ画面に混在する | 保険給付対象とそれ以外の記録が区分されているか |
| サービス提供記録が「特変なし」等のみで、利用者の心身の状況が記録されていない | 松山市介護保険課「運営指導での主な指摘事項及び周知事項について」 | 定型句がボタン化されると、選ぶだけで記録が完結してしまう | 定型句だけの記録が、どのくらいの割合で残っているか |
| サービス実施時間が一律に記載され実態が反映されていない。特記・連絡事項欄に利用者の状況がほとんど記載されていない。サービス提供責任者による記録の点検が十分に行われていない | 堺市「令和8年度 介護保険施設・事業所等集団指導 居宅事業所編」 | 点検の対象件数が増え、目視の点検が形骸化する | 点検した事実が記録として残る運用になっているか |
| 居宅サービス計画作成(変更)日の日付が、全て1日付(介護認定の有効期間の開始日)になっていた | 姫路市「令和6年度以前実地指導結果(指定基準等)」 | 日付欄に既定値が入ると、実際の作成日が上書きされる | 作成日・変更日が、実際に作成した日になっているか |
| 実施状況の把握を行わず、多数の利用者に対し一律に短期目標の期間を延長していた。軽微な変更と判断した根拠の記録がない | 金沢市「令和7年度 介護サービス事業者集団指導 資料1」 | 一括更新の機能が、個別の評価を省かせる | 一括での期間延長を行っていないか。判断の根拠が支援経過に残っているか |
| 軽微な変更による取り扱いについて、支援経過に記録がない | 福岡県介護保険広域連合「居宅介護支援事業者等 集団指導資料(令和6年度版)」 | 変更が画面上で完結し、理由を書く場面がなくなる | 変更の理由を書く欄が、確定前に必須になっているか |
| 支援経過記録には実施の記載があるがモニタリングの記録がない。モニタリング表と支援経過記録の実施日が一致しない。同一の評価内容が長期にわたり続いている | 北九州市「令和7年度 ケアプラン点検実施結果」 | 前回内容の複製が、評価欄の使い回しを招く | 評価欄が前回と同一の文になっていないか。実施日が一致しているか |
| サービス提供の記録がない。記録されたサービス内容と請求内容に齟齬がある | 宇都宮市「令和7年度 運営指導における主な指導事例(各サービスに共通する事項)」資料1 | 請求データが先に確定し、記録の欠落が見過ごされる | 請求前に、記録と請求データを突合する工程があるか |
| サービス提供の記録の作成漏れや記入誤りのある事例が認められた。記録は介護給付費の請求の根拠となる | 広島市「令和7年度運営指導の指摘事項等について」(令和7年度広島市介護サービス事業者集団指導) | 入力の手数が減るほど、欠落に気づく機会も減る | 作成漏れのある日・利用者が抽出できるか |
| 個々の利用者の事業所への到着時間及び出発時間が明確に記録されておらず、請求した報酬区分との整合性が確認できない | 宇都宮市「令和7年度 運営指導における主な指導事例(通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護に関する事項)」資料4 | 区分が自動で決まると、時刻の記録が省かれる | 到着・出発の時刻が個別に残っているか |
| サービス計画に記載された作成日・同意日等に整合性がなく、事実と異なる。修正が必要な場合は、元の内容と修正後の内容、修正日がわかるよう記録を残すこと | 神戸市「介護保険サービス事業運営上の留意事項(居宅通所)」(令和7年3月) | 画面上の上書きは履歴を残さないことがある | 訂正の履歴が残る設定になっているか |
| 事業所として行ったアセスメントの記録が作成されていない、又は不十分である。チェック欄のみで備考が空白 | 宇都宮市「令和7年度 運営指導における主な指導事例(各サービスに共通する事項)」資料1 | 選択式の入力は、自由記述の欄を空欄のまま通す | 備考欄が空欄のまま確定できる設定になっていないか |
| 個人情報使用同意書に利用者の家族の同意欄が設けられていない。使用期間が記載されていない | 広島市「令和7年度運営指導の指摘事項等について」(同旨:大阪市 令和8年度集団指導資料 居宅サービス編) | 様式を電子化する際に、旧様式のまま複製される | 同意書に本人欄と家族欄があり、使用期間の記載があるか |
| 従業者の出退勤記録がなく、勤務実態が確認できない | 和歌山市 令和3年度 介護保険サービス事業者集団指導資料【Ⅰ共通資料(その1)】 | 勤務表だけが電子化され、実際の時刻の記録が残らない | 役員・管理者を含め、出退勤の時刻が記録されているか |
| 誤薬・転倒等、介護事故として記録すべきものを、ヒヤリ・ハット事例として記録している | 神戸市「介護保険サービス事業運営上の留意事項(居宅通所)」(令和7年3月) | 入力画面の分類が曖昧だと、軽い方へ寄る | 事故とヒヤリ・ハットの分類基準が文書化されているか |
| ケアプランデータ連携システムの利用申請を行わず、クライアントソフトをインストールしていない状態が見受けられた。「ケアプランデータ連携システムの活用」を「ICTの活用」と誤認していないか | 堺市「令和8年度 集団指導 居宅事業所編」(同旨:大阪市「令和8年度介護事業者等集団指導資料 居宅サービス編」) | 「ICTを導入した」という自己認識と、資料が求める具体の状態がずれる | 利用申請の控え・導入状況・事務職員の配置が書面で示せるか。取扱いは保険者(指定権者)にご確認ください |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
説明の書き換え|「AIで効率化した」で終わらせない
稟議、実績報告、法人内の説明、採用の場面で最も多いのが「AIで効率化しました」という一文です。これは何も説明していません。どの業務の、どの工程が、誰の手から離れ、いま誰が確認しているのかまで書くと、同じ出来事が判断材料になります。右列はそのまま貼って使える形にしています(数値は自事業所で測った値に置き換えてください)。
| 場面 | 弱い書き方(そのまま書かれがち) | そのまま使える書き方 |
|---|---|---|
| 記録の効率化を説明する | 「AIで記録を効率化しました」 | 「訪問介護の記録について、訪問先での口述からサービス提供記録の下書きが作られる運用に変えました。事務所での清書工程がなくなり、担当したヘルパー本人が開始・終了時刻と利用者の様子を確認して確定しています。確定者は記録上に残ります。」 |
| 申し送りの変更を説明する | 「情報共有をデジタル化しました」 | 「申し送りノートを廃止し、共有画面に一本化しました。前回からの変化点が先頭に整理されるため、朝礼では変化のあった利用者から取り上げています。既読は職員ごとに記録されます。」 |
| ケアプラン作成の変更を説明する | 「ケアプランをAIで作成しています」 | 「アセスメントと支援経過から第2表の原案が組み立てられる運用にしました。原案は担当の介護支援専門員が本人の意向と照らして書き換え、サービス担当者会議での意見を反映したうえで説明・同意・交付を行っています。作成日は実際に作成した日を記録しています。」 |
| モニタリングの変更を説明する | 「モニタリングを自動化しました」 | 「前回の短期目標と当月の記録を突き合わせ、変化のあった項目が先に表示される運用にしました。評価は担当者が記載し、前回と同一の文になっていないかを月次で点検しています。実施日はモニタリング票と支援経過記録で一致させています。」 |
| 報告書作成の変更を説明する | 「報告書の作成時間を短縮しました」 | 「訪問看護報告書について、当月の訪問記録から下書きが作られる運用にしました。看護師が観察した事実と判断の根拠を加筆し、主治医への提出前に管理者が確認しています。加筆前後の内容は履歴として残しています。」 |
| 請求前点検の変更を説明する | 「請求業務を効率化しました」 | 「請求データの確定前に、サービス提供記録の提供日・時間区分と請求内容を突合し、食い違いのある件だけを抽出する工程を設けました。抽出された件は担当者が原因を確認し、記録側の誤りか請求側の誤りかを記載して確定しています。」 |
| 会議録の変更を説明する | 「会議録を自動生成しています」 | 「サービス担当者会議の録音から、議題ごとの整理と決定事項・担当者の抽出を行う運用にしました。作成された下書きは司会者が確認し、決定に至っていない事項を『継続検討』と明記したうえで確定しています。」 |
| 教育・研修について説明する | 「AIの研修を実施しました」 | 「新任職員には、初月は記録の入力のみ、2か月目から下書きの確認を担当させる段取りにしました。確認の観点(時刻の一致・観察した事実の有無・記載のない事項が補われていないか)を印刷して端末に掲示し、月1回、管理者と読み合わせています。」 |
| 個人情報の扱いを説明する | 「セキュリティは万全です」 | 「利用者本人と家族の個人情報の使用について、目的と使用期間を明記した同意書を、本人欄と家族欄を分けて取得しています。外部へ送る情報の範囲と、その記録の残し方を事業所の取扱い方針に定めています。」 |
| 導入の効果を報告する | 「業務が大幅に楽になりました」 | 「導入前に、訪問1件あたりの記録作成にかかる時間を担当者3名・10営業日で測定し、導入3か月後に同じ方法で測り直しました。測定方法と対象者、測定期間を報告書に記載し、変化のなかった業務についてもそのまま記載しています。」 |
| 現場の反対に答える | 「慣れれば楽になります」 | 「移るのは記録の清書と様式間の書き写しで、観察と判断、利用者への説明と同意は担当者に残ります。確定できるのは担当した本人だけに限定しており、確定した人の名前が記録に残ります。」 |
| 運営指導の準備を説明する | 「システムで書類は揃っています」 | 「確認文書の一覧を作成し、書類ごとに保存場所と直近の更新日を記載しています。開催回数の定めがある委員会・研修については、開催記録と周知の記録を同じ場所に保存しています。保存年限の取扱いは保険者(指定権者)にご確認ください。」 |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
ここまでの表は、いずれも「実行が誰の手にあるか」という一点で並べています。導入率が高いのに実感が半数付近にとどまるという令和6年度の数字は、道具が足りないという話ではなく、実行が人の手に残ったままの業務が多いという話として読めます。自事業所のどの業務が、いまどの段にいるのか。まずは1業務だけを選び、前掲の4段の表に当てはめるところから始めてください。
よくある質問(FAQ)
DXとAXは何が違いますか?
DXは紙や手作業をデジタルに置き換える“変革の土台”づくり、AXはその基盤の上でAIが判断・実行まで担う段階です。AXは置き換えた上に“実行”が乗るため、DXの段階より効果を実感しやすいと考えられます。
何から始めればいいですか?
いちばん負担の軽い業務を、抵抗のない人から、小さく試すのがおすすめです(2:6:2の法則)。全員一斉導入は避け、成功体験を先につくると広がりやすくなります。
効果が出るまで、どれくらいかかりますか?
経験上、効果を感じ始めるのは2週間後くらいからです。その後は2週間ずつの改善ループを回すと、少しずつ加速していきます。最初の2週間で判断しないことがコツです。
生産性向上推進体制加算とは何ですか?
令和6年度介護報酬改定で新設された加算です。テクノロジーの導入とガイドラインに沿った業務改善を継続し、実績データを厚生労働省に報告することが求められます。加算(Ⅱ)は一月あたり10単位、成果が確認された場合はより高い加算(Ⅰ)が設定されています。要件は原典をご確認ください。
AIケアプランは補助金の対象になりますか?
介護テクノロジー導入支援事業では、都道府県の実施要綱において「AIケアプラン原案作成支援ソフト」も対象経費に挙げられています。補助率・上限・締切は自治体ごとに異なります。
自分の事業所のAX(AI活用)度は、どうすれば分かりますか?
無料の「AX診断」で確認できます。事業所名または所在地から検索すると、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の公表データをもとに現在地を表示します。登録は不要です(AX診断はこちら)。
本記事で整理した「AX(AI活用)度」は、AX診断(無料)でご確認いただけます。
出典
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」(調査ページ/公表資料PDF)
- 厚生労働省「介護分野における生産性向上」(厚生労働省ウェブサイト):生産性向上の効果測定・実証事業、生産性向上推進体制加算、介護テクノロジー利用の重点分野の改訂、介護テクノロジー導入支援事業 ほか
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」(総務省ウェブサイト)
- 厚生労働省「介護保険事業状況報告」「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(厚生労働省ウェブサイト)
出典:厚生労働省ウェブサイト/総務省ウェブサイト/公益財団法人介護労働安定センター/公共データ利用規約(第1.0版)。本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、各府省庁・調査機関の公式見解ではありません。割合・推計は各調査・推計の公表時点のものであり、調査年度や集計方法により変わります。「淘汰」「進め方」など制度データ以外の記述は当社の現場知見に基づく見解であり、効果や結果を保証するものではありません。数値・定義は原典をご確認ください。
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介護のDX/AXで、実際に置き換わる作業
DX/AXという言葉のままでは動きません。どの作業が、どう置き換わるかまで下ろすと、投資の判断ができます。
| 作業 | いまのやり方 | 置き換わったあと | 効果の測り方 |
|---|---|---|---|
| 訪問時の記録 | 手書きのメモ→事務所で清書 | その場で音声入力→自動で文章化 | 1件あたりの作成時間 |
| 記録から請求への転記 | 記録を見ながら手入力 | 記録から請求データへ連携 | 転記の回数と、間違いの件数 |
| ケアプランの下書き | 白紙から書き起こす | アセスメントから素案を生成し、人が直す | 1件あたりの作成時間 |
| モニタリング記録 | 訪問後にまとめて記載 | 訪問時に選択式で入力 | 記載漏れの件数 |
| 会議録 | 録音を聞き返して書き起こす | 文字起こし→要点の整理 | 会議1回あたりの作業時間 |
| シフト作成 | 表計算で手作業 | 条件を入れて自動で組む | 作成にかかる時間と、修正回数 |
| 申し送り | 紙・口頭 | 端末で共有し、既読を確認 | 伝達漏れの件数 |
| 請求前の点検 | 目視で突合 | 算定要件と記録を突き合わせて表示 | 点検にかかる時間 |
| 利用者への説明資料 | 都度作成 | 記録から自動で組み立て | 作成時間 |
| 実地指導の準備 | 書類を探して集める | 必要書類の所在を一覧で持つ | 準備にかかった日数 |
進め方|段階と、その段階でやめる判断
| 段階 | やること | 次に進む条件 | ここでやめる判断 |
|---|---|---|---|
| 1. 現状を測る | いまの作業時間を、数人・数日ぶん記録する | ボトルネックが1つに絞れた | 測ってみたら、想定した作業に時間を使っていなかった |
| 2. 対象を1つに絞る | 置き換える作業を1つだけ決める | その作業の担当者が合意した | 全員が別々の作業を挙げる=課題が定まっていない |
| 3. 小さく試す | 1事業所・数名で1か月使う | 時間が短くなった、または質が上がった | 変化がない、または増えた |
| 4. 手順を書き換える | 手引きと役割分担を直す | 新しい手順で1か月回った | 手順を直せない事情がある |
| 5. 広げる | 他の事業所・他の職種へ | 同じ効果が再現した | 拠点ごとにやり方が違いすぎる |
| 6. 測り直す | 1で測った項目を、同じ方法で再測定する | 数値で示せた | 示せない=効果の主張ができない |
よくある誤りと、直し方
| よくある誤り | なぜ問題か | どうするか |
|---|---|---|
| 導入前の作業時間を測っていない | 効果を示せず、次の投資の判断もできない | 導入を決めた日に、まず測る |
| 全員に一斉に配る | 使い方の質問が同時に来て、現場が止まる | 数名で試し、教える人を先に育てる |
| 紙と併用したまま | 二重入力になり、かえって増える | どちらかに寄せる期日を決める |
| 管理者だけで決めた | 使う人が納得していないと定着しない | 対象の作業を、担当者と一緒に決める |
| 道具を増やしすぎた | 転記が増え、どこに何があるか分からなくなる | 入り口を1つに絞る |
| 補助金の交付決定前に契約した | 対象外になることがある | 決定の通知を受けてから発注する |
| 効果を「感覚」で報告している | 実績報告や次の申請で通らない | 導入前後の数値で示す |
| うまくいった理由を残していない | 他の拠点で再現できない | 何を変えたら効いたのかを記録する |
補助の枠はデジタル・AI導入の補助金、介護専用ルートは介護テクノロジーの補助金をご覧ください。
職種ごとに、何が変わるか
「事業所として」ではなく職種ごとに見ると、賛成も反対も理由が分かります。
| 職種 | いま時間を取られていること | 変わるところ | 変わらないところ |
|---|---|---|---|
| 訪問介護員 | 記録の清書、事務所への移動 | その場で記録を終える | 利用者と向き合う時間 |
| サービス提供責任者 | 計画・モニタリングの作成、シフト調整 | 素案の作成と、期日の管理 | 担当者会議での調整 |
| 看護師 | 報告書・計画書の作成 | 記録からの下書き | 観察と判断 |
| ケアマネジャー | 各表の作成、給付管理 | 素案の作成と、限度額の突合 | 本人の意向の受け止め |
| 生活相談員 | 説明資料、連絡調整 | 資料の組み立て | 家族との面談 |
| 介護職員(施設) | 日誌、申し送り | 入力の場所と回数 | 見守りと介助 |
| 管理者 | 点検、実績の集計、指導の準備 | 集計と、書類の所在の把握 | 人の配置と方針の判断 |
| 事務 | 請求、実績の突合 | 転記の削減 | 保険者とのやりとり |
言葉の整理|DXとAXの違い
言葉が混ざったままだと、投資の目的も評価もぶれます。
| 語 | 意味 | 介護での例 |
|---|---|---|
| デジタル化 | 紙をデータにする | 記録用紙をソフトに置き換える |
| DX(デジタル変革) | デジタルを前提に、仕事のやり方そのものを変える | 記録の作成から請求までを、転記なしで通す |
| AX(AI変革) | AIを前提に、判断の手前までを任せる | 音声から記録の下書きを作り、人が確かめて確定する |
| 自動化 | 決まった手順を機械に任せる | 算定要件と記録の突合を、画面で示す |
| 省人化 | 人手を減らす | 夜間の見守りを機器で補う |
| 省力化 | 1人あたりの負担を減らす | 移乗の負担を機器で減らす |
分野別|厚労省の報告書からの改善事例(出典つき)
実在する事業所が報告した168件の改善事例を、分野ごとに整理した記事です。現場で挙がった課題・取り組んだこと・結果・出典を1行にまとめており、Excel/CSVで持ち帰れます。効果の記載がない事例は「記載なし」とそのまま示しています。
| 分野 | 事例数 | よく挙がる課題 |
|---|---|---|
| 記録業務 | 50件 | 二重入力、清書、転記、記録の遅れ |
| 情報共有・申し送り | 50件 | 申し送りが長い、ノートが複数、伝わっていない |
| シフト・移乗・見守り・教育ほか | 68件 | シフト作成、移乗の負担、夜間の見守り、新人教育、排泄・入浴 |
連携で減る作業の測り方はカイポケコネクトとの連携にまとめています。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。






