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介護AIは怖くない|はじめてのAI活用ガイド・よくある不安7つの答えと最初の1週間

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「パソコンが苦手」「仕事を奪われるのでは」——介護現場でAIに感じる不安は、たいてい7つに収まります。その一つひとつを、公表データと一次情報で確かめました。AIにできること・できないことの対照表、個人情報の扱い、そして最初の1週間の進め方まで。判定はしません。材料を並べます。

介護の現場で「AIを入れよう」と言われて、素直に賛成できる人は多くありません。パソコンが苦手、仕事を奪われそう、覚えることが増えそう——不安はどれも、もっともです。

ただ、その不安の中身を一つずつ開いてみると、「事実として確かめられること」と「事業所が決めればいいこと」に分かれます。この記事では、よく聞かれる不安7つを分解し、それぞれ「いま言えること」と「自分で確かめる方法」を並べました。数値は厚生労働省・公益財団法人介護労働安定センターなどの公表データに基づき、出典を明記しています。

関連する記事はAXラボ(介護×AIの研究室)でまとめています。

結論:AIが代わるのは「判断」ではなく、「手を動かす作業」

先に結論を置きます。介護現場でいまAIが担っているのは、記録の下書き、計画書・報告書の原案づくり、情報の要約——つまり「やらなければいけないが、時間のかかる作業」です。

誰にどのケアを届けるかという判断、利用者や家族との関わり、説明と同意。これらは、これまでどおり専門職の仕事として残ります。国の補助制度でも、AIを使うソフトは「AIケアプラン原案作成支援ソフト」という名前で位置づけられています。あくまで原案であり、決めるのは人という前提が、制度の側にも書かれているということです。

だから「AIに置き換えられる」と身構えるより、「時間のかかる作業を、どこまで渡せるか」と考えるほうが実態に近い、と私たちは整理しています。

まず数字で——デジタル化は、もう特別なことではない

公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」では、ケア記録・ケアプラン等の入力・保存・転記の機能を日常的に利用している事業所は75.4%でした。10事業所のうち7〜8が、なんらかの形でデジタルの記録に触れている計算になります。「うちだけが遅れている」ということは、まずありません。

いっぽうで、ICT機器・介護ロボットを導入しても負担軽減の効果を感じている事業所は、昼間で49.4%、夜間で44.6%(同調査)。入れることと、効くことは別です。だからこそ、不安を先に一つずつ潰しておいたほうが、結局は早く進みます。

よくある不安7つと、その答え

左が現場でよく聞かれる不安、真ん中がいま言えること、右があなた自身で確かめられる方法です。右の列だけメモして持ち帰っていただいても構いません。

不安 いま言えること 自分で確かめる方法
① パソコンが苦手でも使えるか 近年の介護向けAIは、スマホ・タブレットでの利用を前提にしたものが増えています。入力も「話す」「撮る」「押す」が中心で、キーボードで長文を打つ前提ではないものが主流です。 事務所のPCではなく自分のスマホで触らせてもらう。「5分で1件つくれるか」を実際に試す。
② 仕事を奪われないか AIが担っているのは下書き・転記・要約です。ケアの判断と対人援助は専門職に残ります。国の制度上も「原案」を支援する位置づけです。 「AIが出したものを、誰がどう確認して確定するか」を先に決める。決められない業務は、まだ渡さない。
③ AIが間違えたら誰の責任か 責任は事業所と専門職に残ります。AIの出力は下書きとして扱い、確認・承認の工程を必ず挟むことが前提になります。 承認者を決め、確認したことが記録に残る運用を先につくる。
④ 利用者の個人情報を入れて大丈夫か これは事業所が決めるべき論点です。氏名・被保険者番号などをそのまま渡さない運用(伏字)と、サービス側のデータの扱いの確認が要ります。 「学習に使われるか」「保存先はどこか」「削除できるか」の3点を、口頭ではなく書面で確認する。
⑤ 覚えることが増えて、逆に大変にならないか 一度に全部覚えようとすると、たいてい息切れします。1日にひとつずつでも十分に進みます。 最初の1週間で覚える機能を1つだけ決めて、それ以外は触らないと決める。
⑥ お金がかかるのでは 介護テクノロジー導入支援事業では、都道府県の実施要綱において、介護ソフトやタブレット等に加えて「AIケアプラン原案作成支援ソフト」も対象経費に挙げられています。補助率・上限額・締切は自治体ごとに異なります。 補助金ナビで自分の都道府県の要綱を確認する。
⑦ うまく使えなかったら無駄になるのでは 無料で試せる範囲から始めれば、失う金額はゼロに近づきます。失うのは時間だけです。 やめるときの条件を先に決めてから始める(例:4週間続けて楽にならなければ止める)。

AIにできること/できないこと

この線引きが曖昧なまま始めると、「AIが決めてくれると思ったのに」という失望か、「結局ぜんぶ見直すなら意味がない」という徒労のどちらかになりがちです。線を引いてから始めるのが近道です。

AIに渡せること 人に残ること
話した内容を文章の形にする 何を話すべきか、何を書き残すべきかを決める
様式に合わせて原案を組み立てる その人にとって適切な目標かどうかを判断する
大量の記録から要点を拾う 拾った要点の重み付けを最終決定する
転記・書き写し・体裁を整える 説明と同意、家族への対応
時間帯を問わず動く 結果に責任を負う

いま実際に使われている、3つの使い方

1. 記録の下書き

訪問先や利用者のそばで話した内容をもとに、AIが記録の下書きをつくる使い方です。事務所に戻ってから打ち直す時間が、確認して直す時間に置き換わります。最初に渡す業務としては、いちばん短い記録が向いています。

2. 計画書・報告書の原案

アセスメントなどの情報から、AIが計画書・報告書の原案を組み立て、人が確認して確定する使い方です。ゼロから様式を埋める作業がなくなるぶん、内容の検討に時間を回せます。ここは「原案」であることを、事業所内で明確にしておくことが大切です。

3. 情報の要約

会議の記録や、長い経過記録から要点を拾う使い方です。読む時間が減ります。ただし要点の取捨選択は人が確認するという前提を外さないでください。

個人情報の扱い——ここだけは、始める前に決める

AIを使い始めるとき、後回しにすると必ず困るのが個人情報の扱いです。次の3点を紙1枚に書いて、事業所内で共有してから始めることをおすすめします。

  • どこまで渡すか:氏名・被保険者番号・住所などをそのまま入れない(伏字にする)ルールを決める
  • サービス側の扱い:入力した内容が学習に使われるか、保存先はどこか、削除できるかを書面で確認する
  • 誰が確認して確定するか:AIの出力を承認する人と、その記録の残し方を決める

この3つは製品を選ぶ前に決められます。むしろ先に決めておくと、製品選びの基準そのものになります

最初の1週間——Day1からDay7

「何から始めればいいか分からない」がいちばん多い詰まりどころなので、1週間分だけ具体的に置いておきます。1日10〜20分で足ります。

やること 目安
Day 1 使う人を1人だけ決める。いちばん前向きな人を選ぶ(全員一斉導入は避ける) 10分
Day 2 渡す業務を1つだけ決める。いちばん短い記録から 10分
Day 3 個人情報のルール3点を紙1枚に書いて共有する 20分
Day 4 実際に1件つくってみる。うまくいかなくてよい 15分
Day 5 出力を人が直す。どこを直したかをメモする 15分
Day 6 メモをもとに、入力の仕方を1つだけ変えてもう1件つくる 15分
Day 7 続けるか止めるかは決めない。「もう1週間だけ続ける」とだけ決める 5分

効果を感じ始めるのは、経験上2週間後くらいからです。最初の1週間で判断しないことが、いちばんのコツになります。この進め方の考え方は介護のDXからAXへでも詳しく整理しています。

お金の話——国の補助の対象になり得る

「試したいが予算がない」という場合、国と自治体の補助制度が使える可能性があります。介護テクノロジー導入支援事業では、都道府県の実施要綱において、介護ソフトやタブレット等に加えて「AIケアプラン原案作成支援ソフト」も対象経費に挙げられています。

ただし補助率・上限額・締切・対象経費は自治体ごとに異なります。詳しくは介護テクノロジー補助金の解説ICT導入支援事業とはデジタル化・AI導入補助金をご覧ください。可否は必ず自治体の実施要綱の原典でご確認ください。

自事業所の現在地を確かめる

進め方を選ぶ前に、自分の事業所がいまどこにいるのかを確かめておくと、遠回りが減ります。無料の「AX診断」では、事業所名または所在地から検索するだけで、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の公表データをもとに現在地を表示します。登録も入力も不要です。

AX診断(無料)で自事業所のAX(AI活用)度を見る

出典:厚生労働省ウェブサイト(介護サービス情報公表システム オープンデータ)/公共データ利用規約(第1.0版)。本ツールは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。診断結果は公表情報にもとづく整理であり、個別の判定・助言を行うものではありません。詳細は各事業所にてご確認ください。

使い始めるときの実務注意

AIの導入や、記録をAIに渡す運用にあたっては、利用者の氏名・被保険者番号などの個人情報の扱い(伏字・事業所内ルールの確認)にご留意ください。制度の要件・単位数・様式は、改定や自治体運用により変わります。加算の算定や補助の可否は、必ず告示・通知・自治体の実施要綱の原典と、貴事業所の登録内容をご確認ください。本記事は特定の製品・サービスの効果や算定を保証するものではありません。

よくある質問(FAQ)

パソコンが苦手でも介護AIは使えますか?

近年の介護向けAIはスマホ・タブレットでの利用を前提にしたものが増えており、入力も「話す」「撮る」「押す」が中心です。検討する際は、事務所のPCではなく自分のスマホで実際に触らせてもらい、5分で1件つくれるかを確かめてみてください。

AIに介護の仕事を奪われませんか?

いまAIが担っているのは記録の下書き・転記・要約といった作業で、ケアの判断や対人援助は専門職に残ります。国の補助制度でも「AIケアプラン原案作成支援ソフト」という位置づけで、決めるのは人という前提が置かれています。

AIの出力が間違っていたら、責任はどうなりますか?

責任は事業所と専門職に残ります。AIの出力は下書きとして扱い、誰が確認して確定するかを決めたうえで、確認したことが記録に残る運用をつくってから始めてください。

利用者の個人情報をAIに入れても大丈夫ですか?

事業所として先に決めるべき論点です。氏名・被保険者番号などをそのまま入れない伏字ルールを決め、サービス側に「学習に使われるか」「保存先はどこか」「削除できるか」の3点を書面で確認したうえで運用してください。

何から始めればいいですか?

使う人を1人、渡す業務を1つに絞って始めるのがおすすめです。全員一斉導入は避け、いちばん短い記録から試してください。効果を感じ始めるのは経験上2週間後くらいからなので、最初の1週間で判断しないことがコツです。

導入費用に補助金は使えますか?

介護テクノロジー導入支援事業では、都道府県の実施要綱において「AIケアプラン原案作成支援ソフト」も対象経費に挙げられています。補助率・上限額・締切は自治体ごとに異なるため、実施要綱の原典をご確認ください。

出典

出典:厚生労働省ウェブサイト/公益財団法人介護労働安定センター/公共データ利用規約(第1.0版)。本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、各府省庁・調査機関の公式見解ではありません。割合は各調査の公表時点のものであり、調査年度や集計方法により変わります。「進め方」「線引き」など制度データ以外の記述は当社の現場知見に基づく見解であり、効果や結果を保証するものではありません。数値・定義は原典をご確認ください。

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よくある不安と、実際のところ

不安の多くは「やってみないと分からないこと」です。小さく試して、数字で判断します。

不安 実際のところ 事業所でできること
仕事がなくなるのでは 置き換わるのは書類の下書きで、判断と関わりは人が行う 置き換える作業を1つに絞って試す
間違ったことを書くのでは 事実と異なる記載が混じることがある そのまま提出せず、人が読んで直す
個人情報が漏れるのでは 入力した内容の扱いは事業者ごとに違う 氏名を記号に置き換える。学習への利用の設定を確認する
高齢の職員が使えないのでは 入力の項目を減らすと差が縮まる 必須の項目を最小にし、教える人を決める
費用に見合うのか 導入前の作業時間を測っていないと判断できない 決めた日に測る
現場が混乱するのでは 一斉に配ると混乱する 数名で1か月試す
紙のほうが早いのでは 場面による どちらが早いかを、実際に測って比べる

最初の1週間で、やること

やること
1日目 置き換える作業を1つ決める(記録の下書きなど)
1日目 いまの作業時間を測る(1件あたり、5件分)
2日目 使う人を2〜3名決める
2日目 使ってよい場面と、いけない場面を書き出す
3日目 1件だけ試す。出力を人が直す
3日目 どこを直したかを記録する
4日目 3件試す
5日目 直した箇所の傾向をまとめる
5日目 うまくいった入力の型を共有する
6日目 別の職員にも試してもらう
7日目 作業時間を測り直す
7日目 続けるかどうかを、数字で決める

入力するときの注意

避けること 代わりに
利用者の氏名をそのまま入れる 「A様」「利用者」などに置き換える
住所・生年月日を入れる 入れない
病名と氏名を一緒に入れる 分けるか、氏名を落とす
職員の氏名を入れる 役割で書く
出力をそのまま提出する 人が読んで直す
制度の説明を鵜呑みにする 告示・通知で確かめる
個人の判断で使い方を決める 事業所として手順を文書にする
同意のない使い方をする 個人情報の利用目的を確認する

ケアマネジメントでの使い方はAIケアマネジメント、失敗の型は介護ICTの失敗をご覧ください。

この記事の執筆・編集

介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)

介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。

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