訪問看護ステーションでは、看護だけでなく、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)によるリハビリも提供されます。その役割・訪問リハとの違い・記録のポイントを、2024年度改定の視点もふまえて整理します。
訪問看護からのリハビリとは
訪問看護ステーションのPT・OT・STが、訪問看護の一環として利用者の自宅でリハビリを行うものです。看護職員と連携し、訪問看護計画書に位置づけて提供します。あくまで「訪問看護」として提供される点が特徴です。
PT・OT・STの役割
- PT(理学療法士)――歩行・起き上がりなど基本動作や、筋力・関節の機能の維持・改善。
- OT(作業療法士)――食事・着替えなど生活動作や、趣味・役割の活動の支援。
- ST(言語聴覚士)――言葉・コミュニケーションや、飲み込み(嚥下)の支援。
訪問リハビリとの違い
「訪問看護からのリハビリ」は訪問看護ステーションが提供します。一方「訪問リハビリテーション」は、病院・診療所や老健などの事業所が提供します。指示や保険上の扱いが異なるため、区別して理解しておくことが大切です。
2024年度改定のポイント
2024年度介護報酬改定では、理学療法士等による訪問看護について評価の見直しが行われ、看護職員による定期的な訪問・状態確認や、リハビリ職の訪問回数に応じた評価が整理されました。リハビリ主体の利用者でも、看護職員が関与し状態を確認する運用が求められます。詳しい単位・要件は訪問看護の加算一覧や最新の告示で確認してください。
計画・記録のポイントと記入例
- 看護職員と連携し、目標やケア内容を共有する
- 実施したリハビリの内容と、利用者の反応・変化を記録する
- 訪問看護計画書・報告書に位置づける
S:「トイレまで自分で歩きたい」
O:平行棒内歩行10m×2、右膝の伸展改善。ふらつき軽減
A:下肢筋力は改善傾向。屋内歩行の自立に向け継続が有効
P:歩行訓練を継続。手すり位置を家族と調整。看護師へ状態を共有
訪問看護のリハビリと訪問リハビリテーションは、制度上の別サービス
どちらも自宅でリハビリを受ける点は同じですが、制度上の位置づけが違います。利用者・家族への説明でも混同されやすいところです。
| 訪問看護からのリハビリ | 訪問リハビリテーション | |
|---|---|---|
| 提供する事業所 | 訪問看護ステーション | 病院・診療所・介護老人保健施設など |
| 職種 | 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 同左 |
| サービスの区分 | 訪問看護 | 訪問リハビリテーション |
| 指示の出どころ | 主治医の訪問看護指示書 | 事業所の医師の指示(診察が前提) |
| 計画 | 訪問看護計画書 | リハビリテーション実施計画書 |
訪問看護ステーションから理学療法士等が訪問する場合、それは「看護職員の代わりに訪問するもの」という整理がされています。したがって、看護職員による訪問と組み合わせた計画・評価が求められます。
計画と記録で押さえること
- 看護職員による定期的な評価——理学療法士等の訪問だけで完結させず、看護職員が状態を確認した記録を残します
- 訪問看護計画書・報告書——理学療法士等が訪問した回数・内容も含めて作成します
- 主治医への報告——リハビリの経過と、看護の視点からの状態を併せて伝えます
- 目標の共有——「歩行距離を伸ばす」ではなく「トイレまで自分で行く」のように生活動作で書くと、家族・他職種と共有しやすくなります
回数・時間の考え方
理学療法士等による訪問は、1回あたりの時間と週あたりの回数に定めがあり、超える場合の取り扱いも決められています。報酬上の要件は改定で見直されることがあるため、計画を組む前に最新の告示・通知をご確認ください。
記録に残しておきたいこと
- 実施した内容(部位、方法、負荷、時間)
- 実施中と実施後の反応(痛み、疲労、バイタルの変化)
- 前回からの変化(できるようになったこと、できなくなったこと)
- 家族・本人への指導内容と、その受け取られ方
- 中止基準に触れた場合は、その判断と対応
※本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。実際の取り扱いは、最新の告示・通知および指定権者(都道府県・市区町村)の運用をご確認ください。
リハビリ実施時の記録の書き方(記入例つき)
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 実施内容 | 左下肢の関節可動域訓練10分、立ち上がり訓練10回×2セット、平行棒内歩行20m×2往復 |
| 実施中の反応 | 立ち上がり2セット目の後半で「膝が重い」との訴えあり。1分間の休憩を挟み再開 |
| バイタルの変化 | 実施前 BP138/82・P72/実施後 BP146/86・P88。5分後にP74へ回復 |
| 前回からの変化 | 平行棒内歩行の距離が前回20m→40mへ延長。歩行時の左立脚期の短縮は残存 |
| 本人・家族への指導 | ご本人へ、椅子からの立ち上がりを1日10回行うようお伝えした。長女へ、見守りの位置(左後方)を説明 |
| 中止基準への該当 | なし(該当した場合は、判断した根拠と対応を記載) |
| 次回の計画 | 歩行距離を維持しつつ、屋外歩行への移行を検討。看護師と皮膚・浮腫の評価を共有 |
リハビリの訪問について現場から多い質問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| 看護師が訪問しない月があってよいか | 理学療法士等の訪問だけで完結させず、看護職員による評価の記録を残す運用が求められます |
| 訪問リハビリと併用できるか | 同時に同じ目的で提供する場合の取り扱いに定めがあります。ケアマネジャーと保険者にご確認ください |
| 計画書は誰が作るか | 訪問看護計画書として作成します。理学療法士等の訪問分も含めて記載します |
| 目標はどう書くか | 「膝の可動域を10度広げる」ではなく「トイレまで自分で歩いて行く」と生活動作で書くと共有しやすくなります |
| 家族が毎回同席できない | 同席できた日の指導内容と、できなかった日の申し送り方法を決めておきます |
記録・連携を効率化する
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の訪問看護向け機能「訪問看護マナ(訪問看護AI)」は、訪問記録から記録書・報告書の下書きを自動で作成し、看護とリハビリの連携を記録面から支えます。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
訪問看護のリハビリ(PT・OT・ST)の役割
訪問看護では、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)によるリハビリも提供されます。役割を整理しました。
| 職種 | 主な役割 |
|---|---|
| 理学療法士(PT) | 起き上がり・立ち上がり・歩行など基本動作の回復・維持 |
| 作業療法士(OT) | 食事・更衣など日常生活動作や手の機能の支援 |
| 言語聴覚士(ST) | 言語・コミュニケーション・嚥下の支援 |
よくある質問(FAQ)
訪問看護でリハビリは受けられますか?
記録では何を残しますか?
看護師との連携は?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
出典:厚生労働省ウェブサイト/公共データ利用規約(第1.0版)。本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。加算・単位数・要件は改定される場合があるため、最新の告示・通知でご確認ください。
職種別|訪問看護からのリハビリで見ること
訪問看護からのリハビリは「訪問看護」として提供されるものです。訪問リハビリテーション(別のサービス)とは制度上の位置づけが異なります。
| 職種 | 主に見るところ | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 理学療法士 | 起き上がり、立ち上がり、歩行、移乗 | 評価(関節可動域・筋力・バランス)、実施した内容、回数、反応 |
| 作業療法士 | 食事、更衣、整容、入浴、家事、趣味 | 生活動作の評価、道具の工夫、実施内容 |
| 言語聴覚士 | 話す、聞く、飲み込む | 嚥下の評価、食形態の助言、実施内容 |
| 共通 | 痛み、疲労、意欲 | 中止基準に触れていないか |
| 共通 | 住環境 | 段差、手すり、動線 |
| 共通 | 家族の介助方法 | 指導した内容と、理解の程度 |
記録に残すこと(1回ごと)
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 実施日 | 年月日 |
| 開始・終了の時刻 | 分単位で |
| 実施者 | 氏名と職種 |
| 訪問前の状態 | バイタル、痛み、疲労 |
| 実施した内容 | 運動の種目、回数、負荷 |
| 本人の反応 | できたこと、できなかったこと、訴え |
| 中止・変更 | 行った場合はその理由 |
| 実施後の状態 | バイタル、疲労 |
| 家族への指導 | 伝えた内容 |
| 環境の調整 | 変えたこと |
| 看護師との共有 | 伝えたこと |
| 次回の予定 | 行う内容 |
よくある誤りと、直し方
| よくある誤り | どうするか |
|---|---|
| 「リハビリ実施」だけ | 種目・回数・負荷を書く |
| 毎回同じ文言 | その日の反応を書く |
| 計画書に位置づけていない | 訪問看護計画書に、リハビリの内容と頻度を書く |
| 評価をしていない | 定期的に評価し、記録に残す |
| 看護師と情報を共有していない | 記録を共有し、報告書に反映する |
| 中止基準を決めていない | 血圧・脈拍・痛みの基準を、あらかじめ定める |
| 1日の回数の制限を確認していない | 報酬上の取り扱いを確認する |
| 主治医への報告に入れていない | 報告書にリハビリの経過を含める |
計画書は訪問看護計画書、報告書は訪問看護報告書をご覧ください。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
監修:嶺井 美幸(看護師・訪問看護ステーション「訪問看護ようき」代表・株式会社ライフシフトCSO)
