福祉用具は、合わないものを選ぶと事故やADL低下につながります。選び方の基本と、代表的な品目の選定ポイントを整理します。
選び方の基本
- 使う目的を明確にする(移動・移乗・入浴など)
- 本人の身体状況に合わせる
- 住環境(広さ・段差・動線)に合うか
- 本人・家族の意向と使いやすさ
車いすの選定ポイント
- 自走式か介助式か
- 座面の幅・奥行き・クッション(床ずれ予防)
- 住宅内で取り回せるサイズか
介護ベッド(特殊寝台)の選定ポイント
- 背上げ・高さ調整などの機能
- サイドレール・介助バーの安全性
- マットレスの硬さ(床ずれ・起き上がり)
専門相談員と選ぶ
福祉用具専門相談員が心身・住環境をふまえて選定し、貸与計画書にまとめます。実際に試したり、適合・調整を受けたりして決めるのが安心です。
用具は「本人の状態」ではなく「本人と環境の組み合わせ」で選ぶ
同じ状態の方でも、住まいが変われば適した用具は変わります。カタログの機能比較より、自宅のどこで、どの動作に困っているかから入ります。
| 困っている動作 | 見るところ | 候補になる用具 |
|---|---|---|
| ベッドからの起き上がり | 布団か、ベッドか。起き上がるときに何につかまっているか | 特殊寝台、介助バー |
| 立ち上がり | 座面の高さ、手をつく場所の有無 | 手すり、座面の高い椅子 |
| 屋内の移動 | 廊下の幅、段差、伝う場所があるか | 手すり、歩行器、スロープ |
| 屋外の移動 | 玄関の段差、坂道、目的地までの距離 | 歩行車、シルバーカー、車いす |
| トイレ | 便器までの距離、便座の高さ、夜間の移動 | 手すり、ポータブルトイレ、補高便座 |
| 入浴 | 浴槽の縁の高さ、洗い場の広さ、床の滑り | シャワーチェア、浴槽内すのこ、バスボード |
選ぶときに必ず確認すること
- 自宅で試せるか——同じ用具でも、住環境で使い勝手が変わります
- 介助する人が扱えるか——本人だけでなく、家族の身長や力も条件です
- 調整できるか——高さ、幅、角度。合っていない用具は危険になります
- 状態が変わったら替えられるか——貸与なら交換できます
- 要介護度による制限がないか——軽度者は原則対象外の品目があります
よくある失敗
- 大は小を兼ねない——過剰な機能は、かえって使いにくくなります
- 家族の希望で決めてしまう——使うのは本人です
- 置き場所を考えていない——搬入できない、通路を塞ぐ
- 使い方の説明が本人だけ——実際に介助する家族にも説明が要ります
- 入れたら見に行かない——合わない用具は使われなくなります
※加算・減算の要件は改定のたびに見直されます。算定の可否は、最新の告示・通知および保険者(市区町村)の運用を必ずご確認ください。本記事は一般的な考え方を整理したものです。
相談する相手と、頼み方
| 相手 | 相談できること |
|---|---|
| ケアマネジャー | まずここへ。ケアプランへの位置づけが前提になります |
| 福祉用具専門相談員 | 用具の選定、適合、調整。自宅で試せるか聞いてみてください |
| 理学療法士・作業療法士 | 身体の状態から見て、その用具が適切か |
| 主治医 | 医学的に注意すべき点 |
| 市区町村の窓口 | 例外的な給付、住宅改修の申請 |
費用の考え方
| 貸与 | 販売 | |
|---|---|---|
| 支払い | 毎月 | 購入時に一度 |
| 自己負担 | 原則1割(所得に応じて2〜3割) | 同左 |
| 上限 | 区分支給限度基準額の枠内 | 同一年度で10万円 |
| 修理・交換 | 事業者が行う | 自己管理 |
| 状態が変わったとき | 交換できる | 買い直しになる |
貸与は区分支給限度基準額の枠を使います。他のサービスと合わせて上限を超えると超過分は全額自己負担になるため、ケアプランを組む段階での確認が要ります。
入れたあとに必ず見に行く
- 実際に使われているか(使われていない場合は理由を聞く)
- 高さや位置が合っているか
- 介助する家族が扱えているか
- 傷み(ゴム先の摩耗、ネジのゆるみ)
- 状態が変わって、別の用具のほうが合わないか
状態が変わったときの見直し
| 変化 | 見直すこと |
|---|---|
| 歩けるようになった | より自立度の高い用具へ。使わなくなった用具は外します |
| 歩けなくなった | 移乗と移動の手段を組み直します |
| 退院してきた | 入院前の用具が合わなくなっていることがあります |
| 転居・リフォーム | 適合をやり直します |
| 介助者が変わった | 扱える用具かを確認します |
| 要介護度が変わった | 給付の対象範囲が変わる可能性があります |
用具は入れて終わりではなく、外す・替えるまでが支援です。使われないまま貸与が続く状態は、費用の面でも説明が難しくなります。
用具を勧めても断られるとき
| 断る理由 | 背景にあること | 試せること |
|---|---|---|
| 「まだ必要ない」 | 老いを認めたくない | 「予防のため」ではなく、いま困っている動作から入る |
| 「見た目がいや」 | 人の目が気になる | 外出時だけ、屋内だけ、から始める |
| 「お金がかかる」 | 負担額が分からない | 実際の月額を具体的に示す |
| 「置く場所がない」 | 部屋が狭い | 小さいものから。据置型より突っ張り型など |
| 「使い方が分からない」 | 説明が足りていない | その場で一緒に使ってみる |
断られたときに引き下がると、そのまま転倒につながることがあります。理由を聞き、条件を変えて提案し直すことが支援になります。
用具が届いた日にやること
- 本人に実際に使ってもらい、その場で高さ・位置を調整する
- 介助する家族にも一度使ってもらう
- 置き場所を決め、動線を塞いでいないか確認する
- 取扱説明書と、故障時の連絡先を分かる場所に置く
- 次に確認に来る日を伝える
その他の品目の選定ポイント
- 歩行器・歩行車……支持の安定性、ブレーキ、屋内外での取り回し。
- 手すり・スロープ……設置場所、段差の高さ、工事の要否。
- 床ずれ防止用具……寝たきり度や体格に合うマットレスの種類。
よくある質問(追加)
Q. 試してから決められますか?
A. レンタルなら、実際に使ってから合わなければ交換・調整がしやすいのが利点です。
選定・計画を効率化する
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の福祉用具向け機能(福祉用具マナ)は、選定理由や計画書の作成を補助します。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
主な福祉用具の選定ポイント
福祉用具は、利用者の状態と生活環境にあわせて選びます。代表的な用具の選定ポイントを整理しました。
| 福祉用具 | 選定のポイント |
|---|---|
| 車いす | 体格・座位保持・自走か介助か、移乗のしやすさ |
| 介護ベッド | 起き上がり・立ち上がりの負担、背上げ・高さ調整 |
| 歩行器・杖 | ふらつき・支持性、屋内外の使い分け |
| 手すり | 移動の動線・立ち座りの場所にあわせて設置 |
| 床ずれ防止用具 | 体位変換の負担、皮膚の状態にあわせたマット |
よくある質問(FAQ)
福祉用具は誰が選びますか?
レンタルと購入の違いは?
選ぶときに大切なことは?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
合わなかったら交換できる?
選定にあたって、聞いておくこと
| 聞く相手 | 聞くこと |
|---|---|
| 本人 | どの場面で困っているか、以前に使ったことがあるか |
| 本人 | どんな見た目・色なら使う気になるか |
| 家族 | 家の中のどこで使うか、片づける場所はあるか |
| 家族 | 介助する人の身長・体力 |
| 主治医 | 使ってよい動作の範囲、禁忌 |
| リハビリ職 | 残っている力、伸ばしたい動作 |
| ケアマネジャー | 計画に位置づけられているか |
| 訪問介護員 | 日々の介助で困っている動作 |
| 福祉用具専門相談員 | 候補の品目、試せるか |
| 住宅改修の事業者 | 用具で足りるか、改修が要るか |
| 本人(試したあと) | 使ってみてどうだったか |
| 家族(試したあと) | 片づけ・掃除の手間 |
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
