介護保険では、車いすやベッドなどの福祉用具を借りたり、入浴・排泄に使う用具を購入したりできます。福祉用具貸与・販売の仕組みと対象品目を整理します。
福祉用具貸与とは
福祉用具貸与は、介護保険を使って福祉用具をレンタルできるサービスです。原則1割(所得に応じて2〜3割)の自己負担で利用でき、要介護度によって借りられる品目が異なります。
貸与と販売の違い
車いすやベッドなどは「貸与(レンタル)」、入浴や排泄に使うなど貸与になじまない用具は「特定福祉用具販売(購入)」になります。販売は、年間10万円を上限に購入費が支給されます。
主な対象品目
- 貸与の例……車いす、特殊寝台(介護ベッド)、床ずれ防止用具、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、移動用リフト、認知症老人徘徊感知機器 など
- 販売の例……腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具部分 など
利用の流れ
- ケアマネジャーに相談し、ケアプランに位置づける
- 福祉用具専門相談員が用具を選定し、福祉用具貸与計画書を作成
- 適合・調整して貸与(販売)を開始
- 定期的にモニタリングし、必要に応じて見直す
2024年度から始まった「貸与と販売の選択制」
2024年度の改定で、一部の福祉用具について貸与と販売のどちらかを利用者が選べる仕組みが導入されました。対象は比較的安価で、長く使うことが見込まれる品目です。
| 選択制の対象 | 考え方 |
|---|---|
| 固定用スロープ | 段差の解消に使うもの。工事を伴う場合は住宅改修の区分になります |
| 歩行器(歩行車を除く) | 屋内での歩行を支えるもの |
| 単点杖(松葉づえを除く) | 一本杖 |
| 多点杖 | 四点杖など |
選択制の導入により、福祉用具専門相談員には貸与・販売それぞれの利点と注意点を説明する役割が加わりました。販売を選んだ場合も、一定期間後の使用状況の確認が求められます。
- 貸与が向く場面——状態が変わる可能性がある、短期間の利用が見込まれる、修理・交換の手間を避けたい
- 販売が向く場面——状態が安定していて長期の利用が見込まれる、月々の負担を抑えたい
要介護度による給付の制限(軽度者)
要支援1・2および要介護1の方は、次の品目が原則として貸与の対象外とされています。
- 車いす・車いす付属品
- 特殊寝台(介護ベッド)・特殊寝台付属品
- 床ずれ防止用具
- 体位変換器
- 認知症老人徘徊感知機器
- 移動用リフト(つり具の部分を除く)
ただし、状態や状況によっては例外的に給付が認められる場合があります。判断は保険者が行うため、「借りられる」と説明する前に確認する手順が必要です。自動排泄処理装置については、原則として要介護4・5の方が対象とされています。
費用の考え方
| 貸与 | 特定福祉用具販売 | |
|---|---|---|
| 支払い方 | 毎月の利用料 | 購入時に一度 |
| 自己負担 | 原則1割(所得に応じて2〜3割) | 同左 |
| 上限 | 区分支給限度基準額の枠内 | 同一年度で10万円(購入費の合計) |
| 支払い方式 | 事業者に自己負担分を支払う | 償還払いまたは受領委任払い(保険者により異なる) |
| メンテナンス | 事業者が行う | 自己管理 |
貸与は区分支給限度基準額の枠を使います。他のサービスと合わせて上限を超えると、超えた分は全額自己負担になるため、ケアプランを組む段階での確認が要ります。
主な対象品目(区分別)
| 区分 | 品目 |
|---|---|
| 貸与 | 車いす、車いす付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置 |
| 販売 | 腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、排泄予測支援機器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分 |
| 選択制 | 固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖 |
※本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。給付や算定の可否は保険者(市区町村)の判断によります。最新の告示・通知と保険者の運用をご確認ください。
福祉用具について利用者・家族から多い質問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| 要支援でも借りられますか | 借りられますが、要介護度によって対象品目に制限があります。例外的な取り扱いの可否は保険者にご確認ください |
| ケアプランがなくても借りられますか | 介護保険で借りる場合は、居宅サービス計画への位置づけが前提になります |
| 途中でやめられますか | 貸与は月単位の契約が一般的です。解約の条件は契約書をご確認ください |
| 壊れたらどうなりますか | 貸与は事業者が修理・交換を行います。販売品は原則、自己管理になります |
| 中古品が来ることはありますか | 貸与品は消毒・保守されたうえで提供されます。消毒方法の説明を受けられます |
| 同じ品目を複数借りられますか | 必要性が説明できる場合に限られます。保険者の判断になります |
| 入院中も借り続けられますか | 原則として給付の対象外になります。入院が決まった時点で相談してください |
| 自費で借りることはできますか | 保険外での貸与を行っている事業者もあります。料金は事業者ごとに異なります |
相談する相手と、頼み方
- ケアマネジャー——まずここへ。ケアプランへの位置づけが必要なため、最初の窓口になります
- 福祉用具専門相談員——用具の選定と適合を行います。実際に自宅で試せるか聞いてみてください
- 主治医・リハビリ職——身体の状態から見て、その用具が適切かの意見をもらえます
- 市区町村の窓口——例外的な給付や、住宅改修の申請について確認できます
計画書・契約管理を効率化する
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福祉用具貸与・販売のしくみ
福祉用具は、介護保険で貸与(レンタル)または販売の対象になります。しくみを整理しました。
| 区分 | 対象品目の例 |
|---|---|
| 貸与(レンタル) | 車いす、介護ベッド、歩行器、手すり、床ずれ防止用具など |
| 特定福祉用具販売 | 入浴・排泄に関わる用具(腰掛便座、入浴補助用具など) |
| 選定 | 福祉用具専門相談員が状態と環境にあわせて選ぶ |
よくある質問(FAQ)
福祉用具貸与と販売の違いは?
誰に相談すればよいですか?
費用は?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
要支援でも借りられますか?
購入とレンタルはどちらが得?
貸与と販売と住宅改修|どれを使うか
同じ困りごとでも、貸与・販売・住宅改修のどれで解くかが変わります。費用の仕組みも違います。
| やりたいこと | 貸与 | 販売 | 住宅改修 |
|---|---|---|---|
| ベッドから起き上がる | 特殊寝台 | — | — |
| ベッドから立ち上がる | 特殊寝台付属品(介助バー) | — | — |
| 室内を移動する | 歩行器、車いす | — | 手すりの取付 |
| 廊下でつかまる | 手すり(置き型) | — | 手すりの取付 |
| 段差を越える | スロープ(据置型) | — | 段差の解消 |
| 浴槽に入る | — | 入浴補助用具(浴槽用手すり、すのこ) | 手すりの取付、床材の変更 |
| 浴槽で座る | — | 入浴補助用具(入浴台、シャワーチェア) | — |
| トイレで座る | — | 腰掛便座 | 洋式便器への取替え |
| 夜間の排泄 | — | 腰掛便座(ポータブルトイレ) | — |
| 床ずれを防ぐ | 床ずれ防止用具、体位変換器 | — | — |
| 外出する | 車いす、車いす付属品、スロープ | — | 段差の解消 |
| 外に出てしまうのを知る | 認知症老人徘徊感知機器 | — | 引き戸等への取替え |
| 移乗する | 移動用リフト | 移動用リフトのつり具の部分 | — |
| 排泄の後始末 | 自動排泄処理装置 | 自動排泄処理装置の交換可能部品 | — |
制度の違い
| 項目 | 貸与 | 特定福祉用具販売 | 住宅改修 |
|---|---|---|---|
| 支給の形 | 貸与(月額) | 購入費の支給 | 改修費の支給 |
| 上限 | 区分支給限度基準額の枠内 | 同一年度10万円 | 同一住宅20万円 |
| 自己負担 | 1〜3割 | いったん全額を支払い、後から支給(受領委任払いの制度がある保険者も) | 同左 |
| 事前の手続き | — | — | 事前申請が必要 |
| 対象の品目 | 13品目 | 6品目 | 6種類の改修 |
| 計画 | 福祉用具貸与計画 | 特定福祉用具販売計画 | 理由書 |
| 作る人 | 福祉用具専門相談員 | 同左 | 介護支援専門員等 |
| モニタリング | 必要 | 必要 | — |
| 選択制 | 一部の品目で貸与と販売を選べる | 同左 | — |
品目の一覧は福祉用具一覧、軽度者の例外給付は軽度者への貸与をご覧ください。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
