訪問看護の現場でも、AIを使って記録や書類の作成を効率化する動きが広がっています。一方で「ChatGPTと何が違うのか」「利用者の情報を入れて大丈夫なのか」「導入しても人員基準は変わらないのでは」といった疑問も多く聞かれます。
このページでは、訪問看護AIとは何かから、汎用AIとの違い、導入前に確認すべきこと、選び方までを一通り整理します。制度・法令にかかわる部分は出典を示し、判断が必要な事項は「ご確認ください」の形で記載しています。
このページでわかること
- 訪問看護AIの定義と、できること
- ChatGPTなど汎用AIとの3つの違い
- 個人情報の扱い——学習に使われる設定かどうかが分かれ目(個人情報保護委員会の注意喚起)
- 導入前に確認すべき5点(記録責任・人員基準ほか)
- 事業所規模から見た導入の現実(自社集計17,959事業所)
- 選び方と、無料で試せる範囲
1. 訪問看護AIとは
訪問看護AIとは、訪問看護の業務にAI(人工知能)を用いる仕組みの総称です。狭義には、訪問看護記録書Ⅱ(SOAP)・訪問看護計画書・訪問看護報告書といった訪問看護に固有の帳票を、話した内容や入力内容から下書きとして生成し、介護ソフトへ引き渡すことに特化したアプリケーションを指します。現場では「訪看AI」と略して呼ばれることもあります。

「AI」と一口に言っても、次の2つは性質が異なります。この記事では、両者を区別して説明します。
| 内容 | |
|---|---|
| 汎用AI | ChatGPT、Gemini、Claude、Copilot など。文章の作成・要約・翻訳など幅広い用途に使える |
| 訪問看護専用AI | 訪問看護の帳票様式・業務の流れに合わせて設計されたアプリケーション。記録書Ⅱ・計画書・報告書などの形で出力する |
どちらが優れているという話ではなく、用途が違います。汎用AIは考える作業の相棒として、専用AIは決まった帳票を作る作業の道具として使われます。
2. 訪問看護AIでできること
訪問看護の業務のうち、AIの利用が進んでいるのは主に書類作成の領域です。

| 帳票・業務 | AIができること | 人が行うこと |
|---|---|---|
| 訪問看護記録書Ⅱ(SOAP) | 訪問後に話した内容から、S・O・A・Pの形に整理した下書きを作成 | 観察内容と看護判断の確認・修正 |
| 訪問看護計画書 | 過去の記録をふまえた目標・援助内容の下書き | 利用者・主治医との調整、内容の決定 |
| 訪問看護報告書 | 期間中の記録から経過の要約を作成 | 主治医への伝達事項の判断 |
| 情報共有 | 申し送り・カンファレンス記録の整理 | 共有すべき内容の選別 |
| 請求前の確認 | 記録の抜け漏れの洗い出し | 算定要件の確認・最終判断 |
いずれも「下書きを作る」までがAIの役割です。訪問看護記録は看護職員が自らの観察と判断に基づいて記載するものであり、内容の確認と修正は看護師ご自身が行う必要があります。
3. 汎用AI(ChatGPT等)と訪問看護専用AIの3つの違い
経営者・管理者の方から最も多くいただく質問がここです。「ChatGPTがあるのに、専用のものが必要なのか」——違いは大きく3つあります。

違い1:出力の形が、帳票の様式に沿っているか
汎用AIは自由な文章を作ることが得意です。一方、訪問看護で提出する書類には様式があります。訪問看護記録書Ⅱであれば S・O・A・P の区分、計画書であれば療養上の目標と具体的な援助内容、報告書であれば主治医に伝えるべき経過——というように、書くべき欄と粒度が決まっています。
専用AIは、この様式を前提に出力します。汎用AIでも、様式を毎回指示すれば近い出力は得られますが、その指示を誰がどう管理するかという運用の問題が残ります。
違い2:介護ソフトへの転記まで想定されているか
記録は作って終わりではなく、介護ソフトに入っていなければ請求につながりません。汎用AIで作った文章は、コピーして貼り付ける作業が別途発生します。訪問1件ごとにこの作業が積み上がると、効率化した時間が転記で相殺されることがあります。
専用AIは、作成した記録を介護ソフトへ引き渡すところまでを含めて設計されているものがあります。導入を検討する際は、「作成」だけでなく「どこまで運ぶか」を確認してください。
違い3:利用者の情報を、どこまで入れてよいか
訪問看護で扱うのは、氏名・病名・生活状況といった要配慮個人情報を含む情報です。汎用AIに利用者情報をそのまま入力してよいかは、各サービスの利用規約と、事業所として定めた規程によって判断が分かれます。
厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」等を踏まえ、事業所として利用範囲と管理方法を定めたうえでご利用ください。専用AIを選ぶ場合も、データの保存先と管理方法は必ずご確認ください。
| 観点 | 汎用AI(ChatGPT等) | 訪問看護専用AI |
|---|---|---|
| 得意なこと | 文章の作成・要約・相談・学習 | 決まった帳票の下書き作成 |
| 出力の形 | 指示しだい(都度の指示が必要) | 帳票の様式に沿った形 |
| 介護ソフトへの反映 | 手作業でコピー&貼り付け | 転記まで想定した設計のものがある |
| 利用者情報の入力 | 利用規約と事業所規程の確認が必要 | 医療・介護での利用を前提に設計 |
| 費用 | 無料〜低額から始めやすい | サービスにより異なる(無料枠を持つものもある) |
| 向いている使い方 | 研修資料づくり、文章の相談、調べもの | 日々の記録・計画書・報告書 |
実務上は、両方を使い分けている事業所が多いのが実情です。調べものや研修資料は汎用AIで、日々の帳票は専用AIで、という形です。
4. 訪問看護でAIが使われている場面
- 訪問直後の記録:移動中や訪問先で話した内容から記録書Ⅱの下書きを作る
- 月末の報告書:期間中の記録から経過をまとめる
- 計画書の見直し:前回の計画と実際の記録を突き合わせる
- 申し送り・カンファレンス:会話の要点を整理する
- 新人教育:記録の書き方の例を示す、良い記録・改善したい記録を比較する
- 調べもの:制度や用語の確認(※出典の確認は必須)
このうち、下の3つは汎用AIでも十分に対応できます。上の3つ(帳票そのものの作成)が、専用AIとの差が出やすい領域です。
5. 個人情報の扱い:ここが最大の分かれ目
訪問看護でAIを使ううえで、最も慎重に確認すべきがここです。結論から言うと、判断の分かれ目は「そのAIサービスが、入力した内容を自社AIの学習に使うかどうか」です。

前提:訪問看護が扱うのは「要配慮個人情報」
利用者の氏名・住所だけでなく、病歴・診療情報・心身の状態は、個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたります。通常の個人情報より取り扱いが厳格で、取得にあたって原則として本人の同意が必要とされています。
訪問看護記録書Ⅱの内容は、まさにこれに該当します。
★分かれ目:入力内容が「学習に使われる」かどうか
個人情報保護委員会は、令和5年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しています。そこで示されている考え方の要点は次のとおりです。
生成AIサービスの提供者が、入力された内容を自社AIの精度向上(学習)のために利用することとしている場合、利用者が個人データを入力すると、利用者から提供者に対して個人データを提供したことになる——という整理が示されています。
個人データを第三者に提供するには、原則としてあらかじめ本人の同意が必要です。つまり「学習に使われる設定のまま利用者情報を入力する」ことは、本人の同意なしには行えない可能性があります。
嶺井さんのように「オプトアウトしているから大丈夫」と考えている方は多いのですが、ここは事業所として明文化して確認しておく価値があります。
一般向けチャットサービスとAPIは、既定の扱いが違う
同じ会社のAIでも、どの経路で使うかによって既定の扱いが異なります。ここを混同すると判断を誤ります。
| 利用経路 | 入力内容の学習利用(既定) | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 一般向けチャットサービス (ChatGPT・Gemini・Claudeの個人向けプラン) | 学習に使われる設定になっている場合がある | 設定画面でオプトアウトの状態を確認。プランにより既定が異なる |
| 法人向けプラン (Business/Team/Enterprise 等) | 既定で学習に使わないとされているものが多い | 契約内容と管理者設定を確認 |
| API経由 (アプリに組み込まれている形) | 既定で学習に使わないとされているものが多い | 提供元の規約と、アプリ事業者のデータの扱いを確認 |
訪問看護専用AIアプリの多くは、この「API経由」にあたります。ただし、アプリ事業者側がどのようにデータを扱うかは別途確認が必要です。
事業所として、最低限これだけは決めておく
- ①どのAIを、誰が、何に使ってよいか——業務利用するサービスを事業所として指定する(個人の判断で使い分けない)
- ②学習利用の設定——使うサービスについて、入力内容が学習に使われる設定になっていないかを確認し、記録に残す
- ③入力してよい情報の範囲——氏名・住所・生年月日などを入れずに使えないかを検討する(後述)
- ④データの保存先と保存期間——どこに保存され、いつ消えるのかを提供元に確認する
- ⑤利用者への説明——個人情報の利用目的の通知・公表の内容と、実際の運用が食い違っていないかを確認する
実務的な工夫:そもそも特定できる情報を入れない
最も確実なのは、個人を特定できる情報を入力しないことです。訪問看護の記録に必要なのは多くの場合、氏名そのものではなく観察した事実と看護の判断です。
- 氏名は入れず、「利用者」「Aさん」などに置き換える
- 住所・電話番号・生年月日は入力しない
- 出力された下書きに氏名を補うのは、介護ソフト側で行う
- 疾患名など要配慮個人情報にあたる内容の扱いは、事業所の規程で範囲を定める
専用AIの中には、氏名などの識別情報を入力せずに帳票の下書きを作れる設計のものがあります。導入検討時は「どこまでの情報を入力する必要があるか」を確認してください。
※本項は制度の一般的な考え方を整理したものであり、個別の事案における適法性を判断するものではありません。判断に迷う場合は、個人情報保護委員会の公表資料をご確認いただくか、専門家にご相談ください。
6. AIの出力をそのまま使ってはいけない理由
AIは、事実と異なる内容を、もっともらしい文章として出力することがあります。この現象は一般に「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれます。訪問看護の記録では、これが直接リスクになります。

訪問看護の記録で起こりやすい3つのパターン
| 起こりやすいこと | 具体例 | 対処 |
|---|---|---|
| 観察していない内容が入る | 話していないバイタルの数値や、確認していない皮膚の状態が書かれている | 数値・所見は必ず実測値と照合する |
| 表現が一般化される | 「変わりなし」「良好」など、実際の観察より曖昧な言葉に置き換わる | 具体的な観察事実に書き直す |
| 看護判断が先回りされる | A(アセスメント)に、看護師が判断していない評価が書かれている | 判断は看護師自身の言葉に必ず修正する |
特に3つ目は重要です。訪問看護記録書Ⅱのアセスメントは、看護師が自らの観察に基づいて行う判断を記載する欄です。AIが作った文章をそのまま残すと、記録上の判断の主体が曖昧になります。
運用として決めておくこと
- AIの出力は「下書き」と位置づける——完成品ではないことを事業所内で共有する
- 数値は必ず突き合わせる——バイタル・体重・服薬などの数値は実測と照合する
- アセスメントは自分の言葉にする——AIの表現をそのまま残さない
- 迷ったら消す——観察していないことは書かない
AIを使う目的は「書く時間を短くすること」であって、「書く責任を移すこと」ではありません。記録の正確性に対する責任は、これまでどおり看護職員にあります。
7. 導入前に確認すべき5点
AIの導入を検討する際、事業所として先に決めておくべきことがあります。
| # | 確認すること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 個人情報の取り扱い | 入力内容が学習に使われる設定になっていないかを確認する。入力してよい情報の範囲と保存先も事業所として定める(→ 5章) |
| 2 | 記録の責任 | AIの出力は下書き。確認・修正は看護職員が行うという運用を明文化する |
| 3 | 人員基準は変わらない | 看護職員 常勤換算2.5以上という基準(省令37号第60条)はAI導入では変わらない |
| 4 | 加算の判定はしない | 算定可否は告示・通知の要件と事業所の体制で決まる。AIは補助にとどまる |
| 5 | いま使っている介護ソフトとの関係 | 併用できるか、乗り換えが必要か。転記の手間が残らないかを確認する |
特に3については誤解が生じやすい点です。AIは人員基準を代替するものではありません。AIに期待できるのは、いま働いている一人が担える業務の余力を増やすことです。
8. 導入の進め方(4ステップ)
いきなり全員・全帳票で始めると、うまくいかなかったときに原因が分かりません。次の順で進めると、判断しやすくなります。

- いま一番時間がかかっている帳票を1つ決める——記録書Ⅱか、報告書か、計画書か。管理者の実感ではなく、実際にかかっている時間で選ぶ
- 1人・数名の利用者で試す——無料枠がある場合はここで使う。実際に使っている様式で出力を確認する
- 出力の修正にかかる時間を測る——「作成時間」ではなく「作成+修正+転記」の合計で比べる
- 運用ルールを決めてから広げる——入力してよい情報の範囲、確認の担当、修正の基準を先に決める
3が最も見落とされます。AIが下書きを作っても、修正と転記に時間がかかれば全体の時間は減りません。比べるべきは「最初から最後まで」の時間です。
9. 費用の考え方
訪問看護AIの費用は、サービスによって考え方が異なります。比較する際は、月額だけでなく、増える条件を確認してください。

| 課金の形 | 内容 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 利用者数による | 登録する利用者の人数で決まる | 利用者が増えたときの金額 |
| スタッフ数による | アカウント数で決まる | 非常勤・パートの扱い |
| 訪問件数による | 訪問した回数で決まる | 繁忙期に費用が跳ねないか |
| 基本料+従量 | 基本料に使用量が上乗せされる | 上限があるか |
また、いま使っている介護ソフトとは別料金になるのが一般的です。既存ソフトの費用と合わせた総額で判断してください。
補助金を活用できる場合もあります。制度の詳細は介護テクノロジー補助金や介護補助金ナビでご確認ください。
10. データで見る:訪問看護事業所の規模と、AIが効きやすい条件
当社は、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」のオープンデータ(訪問看護17,959事業所)を法人番号で名寄せし、事業所の規模を集計しました。

訪問看護を運営する法人13,179社のうち、89.3%(11,767社)が拠点を1つしか持っていません。さらに41.4%(5,455社)は、訪問看護以外の介護サービスを届け出ていません。
つまり多くの事業所では、管理者が訪問に入りながら、記録・計画書・報告書の作成、加算の要件の確認、請求、採用までを担っている可能性があります。事務職員を置く余力がない規模では、書類作成の時間がそのまま管理者の時間を奪います。
AIの導入効果は、「いま誰が、どの帳票に、どれだけ時間をかけているか」によって変わります。まずは最も時間がかかっている帳票を一つ特定し、そこから試すのが現実的です。
詳しいデータは訪問看護ステーションの運営構造を公表データ17,959件で集計にまとめています。
11. 訪問看護AIの選び方
比較する際は、次の観点で確認すると判断しやすくなります。
- 使っている帳票の様式で出力されるか(記録書Ⅱ・計画書・報告書)
- いまの介護ソフトへ、どこまで運んでくれるか(転記の手間が残らないか)
- データの保存先と管理方法
- 試せる範囲(無料枠・試用期間の有無)
- 導入時と導入後のサポート
- スタッフが使えるか(訪問先で片手で操作できるか)
記録システム・ソフト全般の選び方は訪問看護の記録システム・ソフト・アプリの選び方で詳しく整理しています。
訪問看護AIアプリ「訪問看護マナ」

当社が提供する訪問看護専用のAIアプリケーションです。訪問先で話した内容から訪問看護記録書Ⅱ(SOAP)を作成し、介護ソフト「カイポケ」へ転記します。
- 話した内容から、SOAP形式の訪問看護記録書Ⅱを作成
- 作成した記録をカイポケへ転記(二重入力を減らします)
- 訪問看護計画書・訪問看護報告書の作成に対応
- 利用者3名まで無料でご利用いただけます
▼ 機能・料金の詳細、無料でのお試しはこちら
訪問看護AIアプリ「訪問看護マナ」
※記録の内容は看護師ご自身がご確認・修正のうえご使用ください。本サービスは記録の作成を補助するものであり、看護判断や加算の算定可否を判定するものではありません。
訪問看護の1日を場面に割る|AI関与の3段階と42の判断
「AIを使うか、使わないか」で考えると、話が止まります。訪問看護の1日は、性質の違う作業が数分おきに入れ替わる仕事だからです。前回の記録を読み返す時間と、創部を見る時間と、報告書の下書きを作る時間は、まったく別の作業です。ひとまとめに「使う/使わない」を決めようとすると、どちらに決めても現場のどこかで無理が出ます。
そこで、1日を場面に割り、場面ごとに「関与の深さ」を決めます。関与の深さを次の3段階に固定しておくと、判断すべきことが「この場面はどの段階か」の1つに減ります。
関与の3段階の定義
| 段階 | 定義 | 出てくるもの | 人がしていること |
|---|---|---|---|
| ①人がやる | 道具に渡さない。人が見て、人が考えて、人が書く。素材そのものが人の五感でしか得られない場面、または結果が利用者の身体や権利に直接届く場面 | 観察の事実、判断、説明、同意の取得 | すべて |
| ②AIが下書きし人が直す | 音声・測定値・前回までの記録といった素材から、文章の「形」を先に作らせる。人はそれを読み、事実と違うところを直し、足りないところを足して確定する | 記録の下書き、報告文の案、計画書の素案 | 読む・直す・足す・確定する |
| ③AIが担い人が確認する | 正解が一意に決まる作業(転記・並べ替え・期日の抽出・突合の表示)を任せ、人は結果と元データを見比べるだけにする | 転記結果、期限の一覧、差分の表示 | 元データと突き合わせる |
| (対象外)渡さない場面 | 同意を得る場面、悪い知らせを伝える場面、本人・家族の意思決定に立ち会う場面。効率の問題ではなく、その場に人がいることが目的である場面 | — | すべて(下書きも作らない) |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
訪問前と移動中の12場面
訪問前は、素材がすでに文字になっている場面が多いところです。前回までの記録、指示書、ケアプラン——すべて読めば分かる形で存在しています。だから③に寄せやすい。ただし「今日どこを見るか」を決めるのは、読んだ人の仕事です。
| 場面 | ①人がやること | ②下書きに任せられること | ③確認だけで済ませられること | 確定・実行の前に人が見る一点 |
|---|---|---|---|---|
| 前回記録の読み返し | 読んで頭に入れる | 直近3回分の要約を作る | — | 要約に出てこなかった項目を、自分で元の記録に当たって確かめたか |
| 前回からの変化点の抽出 | 変化の意味を考える | 前回と今回で数値・記述が動いた箇所を並べる | 測定値の差の計算と表示 | 「変化なし」と表示された項目が、本当に測られていたか(欠測と不変は違う) |
| 今日の観察項目の決定 | 決める(ここは人) | 前回の「次回確認」の記載を拾い出す | — | 拾い出した項目に、本人・家族から出た訴えが漏れていないか |
| 指示書の指示内容の確認 | 指示の中身を読む | — | 指示書の記載と訪問看護計画書の記載を並べて表示する | 並べた結果に差があったとき、どちらが正しいかは読んだ人が判断したか |
| 指示期間の残り日数の把握 | 更新依頼の時期を決める | — | 交付日・有効期間から残り日数を一覧にする | 一覧の元になった交付日が、原本の日付と一致しているか |
| ケアプラン上の位置づけの確認 | ずれの意味を考える | — | 居宅サービス計画の記載と自事業所の計画の記載を対照して表示する | 対照表の「一致」表示が、文言の一致にとどまっていないか |
| 持ち物・衛生材料の準備 | 詰める | 前回使用した材料から必要物品の候補を出す | 在庫数の集計 | 候補に出なかった物品を、今日の処置内容から自分で足したか |
| 訪問順の組み立て | 組み立てる | — | 予定時刻と所要時間の一覧表示 | 時間の都合だけで、状態が不安定な利用者の順番を後ろに送っていないか |
| 移動中の前回要点の読み上げ | 聞いて確かめる | 要点の読み上げ用の短い文を作る | — | 読み上げ文に無かった注意点を、到着前に自分で思い出したか |
| 予定変更の連絡 | 連絡するかどうかを決める | 連絡文の案を作る | — | 送信前に、宛先と利用者名の組み合わせを目で確かめたか |
| 到着予定の共有 | — | — | 到着予定時刻の共有 | 共有先に、その利用者の情報を見てよい人だけが含まれているか |
| 移動中の音声メモ | 何を吹き込むかを決める | 吹き込んだ音声を文字にする | — | 運転中に吹き込んだものは、停車後に読み返してから記録に回したか |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
訪問中の12場面
訪問中は、ほぼすべてが①です。理由は単純で、素材が「人の五感でしか取れないもの」だからです。においも、触った皮膚の湿り気も、声のかすれ方も、道具の入力にはなりません。訪問中に②や③が入るのは、測った数値を打ち込む・写真を撮る・記録の断片を残すといった「記録の側の作業」だけです。
| 場面 | ①人がやること | ②下書きに任せられること | ③確認だけで済ませられること | 確定・実行の前に人が見る一点 |
|---|---|---|---|---|
| バイタルの測定 | 測る(体位・部位・タイミングの選択を含む) | — | — | 測定した部位と体位が、前回と比べられる条件になっているか |
| 測定値の記入 | 読み取る | 読み上げた数値を欄に入れる | 前回値との差の表示、基準からの外れの表示 | 「外れ」の表示は、注意を促すだけであって、判断ではないと全員が理解しているか |
| 全身の観察 | 見る・触れる・においを確かめる | — | — | 観察していない部位について、記録の下書きに文が生えていないか |
| 創部の観察 | 見る、大きさを測る、滲出液の性状を確かめる | 測ったサイズと性状を定型の欄に入れる | 前回サイズとの差の表示 | サイズの測り方(当て方・基準点)が前回と同じか |
| 医療機器の作動確認 | 作動させて確かめる | 設定値を記録欄に入れる | 指示された設定値との対照の表示 | 対照表に差が出たとき、機器側と指示書側のどちらを確かめたか |
| 内服の確認 | 実物を数える・残薬を見る | 残薬の数と枠を記録欄に入れる | お薬手帳の変更点の抽出 | 抽出された変更点を、本人・家族の説明と照らしたか |
| 家族からの聞き取り | 聞く・関係を保つ | 会話から要点の候補を出す | — | 要点の候補に、家族が言っていない内容が混じっていないか |
| 本人の訴えの聞き取り | 聞く・言い回しごと受け取る | 発言をそのままの言葉で書き起こす | — | 書き起こしが「意味の要約」になって、本人の言い回しが消えていないか |
| 環境の観察 | 見て、危ないものに気づく | 室温・湿度の数値を記録欄に入れる | — | 気づいたことのうち、数値にならないもの(段差・動線・臭気)を自分で書いたか |
| 処置の実施 | 行う | 実施した手順を定型文の形に整える | — | 定型文に、実際には行っていない手順が含まれていないか |
| 急変時の対応 | すべて(判断・連絡・実施) | 落ち着いた後で、経過の時刻順の整理 | — | 時刻が、記憶ではなく端末や機器の表示で裏づけられているか |
| 写真の撮影 | 撮る範囲と同意の確認 | 撮影日時・部位のラベル付け | 撮影日時の記録への転記 | 撮影の同意を得た記録が残っているか、写り込みに他者・住所が入っていないか |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
訪問後・月次・教育の14場面
訪問後は、②が最も効く時間帯です。素材(話した内容・測った数値・前回までの記録)が揃っていて、作るものが「文章の形」だからです。同時に、最も危ない時間帯でもあります。訪問中の記憶が薄れる前に確定できれば良い記録になり、翌週に持ち越すと「下書きのほうが記憶より確からしく見えてしまう」からです。
| 場面 | ①人がやること | ②下書きに任せられること | ③確認だけで済ませられること | 確定・実行の前に人が見る一点 |
|---|---|---|---|---|
| 訪問看護記録書Ⅱの下書き | 評価と、次回に向けた計画を書く | 話した内容と測定値から本文の形を作る | — | 下書きの各文が、今日その場で確かめた事実に対応しているか |
| バイタルの転記 | — | — | 測定値を記録欄・介護ソフトへ写す | 転記後の値を、元の測定メモと1件ずつ照らしたか |
| 写真の記録への添付 | どの写真を残すか決める | 撮影日と部位の記述を添える | 日時の転記 | 添付先の利用者が、写真の利用者と一致しているか |
| 主治医への報告文 | 報告するかどうかを決める | 観察した事実を時系列に並べた文案を作る | — | 文案に、自分が確かめていない推測が混じっていないか |
| 他職種への連絡文 | 何を伝えるかを決める | 連絡文の案を作る | — | 宛先ごとに、伝えてよい情報の範囲が変わることを踏まえたか |
| 訪問看護計画書の下書き | 看護の目標を決める | 前回計画と直近の記録から素案を作る | 指示書の記載との対照の表示 | 素案の目標が、前回の文言をそのまま引き継いだだけになっていないか |
| 計画の目標設定 | すべて(本人の希望の反映を含む) | — | — | 本人・家族の言葉が、目標のどこに残っているか説明できるか |
| 訪問看護報告書の月次作成 | 1か月をどう総括するかを決める | 当月の記録から経過の素案を作る | 訪問日・訪問回数の集計 | 素案の中の出来事に、記録上の裏づけ(日付のある記載)があるか |
| 報告書の療養状況の欄 | 主治医に何を伝えるかを決める | 1か月分の記録を要約した文案を作る | 数値の推移の幅の表示 | 要約で落ちた出来事のうち、伝えるべきものを自分で戻したか |
| カンファレンスの記録 | 結論を確定する | 録音から発言の要点と決定事項の候補を出す | 参加者・開催日時の記載 | 「決まったこと」と「意見として出ただけのこと」が混ざっていないか |
| ステーション会議の議事 | 議題の設定と結論 | 議事録の素案を作る | 開催日・出席者の一覧 | 個人が特定できる利用者情報が、共有範囲を超えて議事録に残っていないか |
| 指示書の期限の管理 | 更新を依頼する | — | 有効期間の一覧と、期限前の通知 | 通知が届く設定になっている宛先が、実際に見ている人か |
| 請求前の記録の突合 | 記録と請求の食い違いをどう扱うかを決める | — | 訪問予定・訪問記録・請求データの3者を並べて差を表示する | 差が出た日について、記録側と請求側のどちらを直すかを人が決めたか |
| 新人への指導 | 指導の中身と評価 | 過去の記録から、書き方の見本になる文を集める | — | 見本として出した記録が、実際に良い記録として確定されたものか |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
なお、請求前の突合は「差を表示するところ」までが道具の仕事で、その差をどう扱うかは人が決める領域です。加算の要件の解釈や、要件を満たすかどうかの判断を道具に肩代わりさせることはできません。なお、介護保険法に基づく届出書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務です。
訪問先で音が拾えない|AIが弱くなる8条件と40の手当て
会議室で録った音声と、居室で録った音声は別物です。訪問看護の音声は、生活の場で録られます。テレビが点いていて、窓が開いていて、家族が台所から声をかけてきて、本人はベッドの上から小さな声で話す——この条件で録った音を文字にすると、会議録とは違う壊れ方をします。
ここが、この記事のいちばん実務に近いところです。「AIが苦手」という話は一般論として語られがちですが、訪問看護の苦手条件は具体的で、しかもその場で手当てができるものが多いからです。
8つの条件と、その場でできること
| 条件 | 何が起きるか | なぜ道具の側で消しきれないのか | 訪問中にできる手当て | 確定の前に見る点 |
|---|---|---|---|---|
| テレビ・ラジオが点いている | 番組の音声が、その場の発言として文字になる。ニュースの地名や数値が記録の下書きに紛れる | 雑音の抑制は「人の声ではない音」を減らす仕組みが中心。テレビから出ているのも人の声なので、抑制の対象になりにくい。声の高さや話し方も、居室の人の声と大きくは違わない | 音源から離れた位置で話す。一言断って音量を下げてもらう。難しければ、要点だけを訪問直後に車内で自分の声で吹き込む | その日話題にしていない固有名詞・地名・商品名・数値が下書きに入っていないか |
| 方言・世代による言い回し | 言い回しが標準的な表現に置き換わり、本人の言葉のニュアンスが消える。地域特有の症状の言い方が別の語になる | 文字にする側は、より一般的な語に寄せる傾向がある。本人が使った語そのものを残す仕組みではない | 本人が独特の言い回しをしたときは、看護師が同じ言葉を復唱する。復唱の音声が残れば、下書きにも残りやすい | 本人の訴えの欄が、看護師の言葉づかいに揃っていないか(揃っていたら要注意) |
| 声が小さい・かすれる | 訴えの前半だけが文字になり、後半が落ちる。落ちたことが分からない形で文が完成する | 拾えなかった部分は空白としてではなく、前後がつながった文として出てくる。欠けたことが下書きの見た目に表れない | 耳を近づけて聞き、聞き取れた内容を看護師が声に出して確認する。うなずきだけで済ませない | 本人の訴えが、不自然に短く整った一文になっていないか |
| マスク越し・距離がある | 子音がつぶれ、似た音の語に置き換わる。数字の聞き分けが特に崩れやすい | 高い周波数の成分が減るため、区別の手がかりが元の音に残っていない | 数値は必ず復唱する。「上が138、下が82」のように、桁と項目をセットで言う | 下書きの数値を、測定機器の表示や手書きメモと1件ずつ照らしたか |
| 複数人が同時に話す | 誰の発言かが入れ替わる。家族の推測が、本人の訴えとして記録される | 話者を分ける仕組みがあっても、声が重なった区間はどちらか一方に寄る。誰が話したかの正解は音の中にしかない | 発言の前に「〇〇さん(本人)は、どうですか」と名前を呼んでから聞く。家族の話は、本人の聞き取りが終わってから | 本人の訴えの欄と、家族からの情報の欄が、書き分けられているか |
| 医療用語の同音異義 | 意味の違う語に置き換わる。文としては自然に読めてしまうので、見落としやすい | 前後の文脈から確からしい語が選ばれる。居室の会話は文脈が短く、手がかりが少ない | 取り違えやすい語は、言い換えを添えて話す(「降圧薬、血圧を下げる薬です」) | 下記の語が下書きに出てきたとき、意味が通っているかを1語ずつ見たか |
| 個人情報を声に出せない | 肝心の内容が録音に残らない。残った部分だけで下書きが作られ、断片的な記録になる | そもそも素材が存在しない。道具の側の問題ではない | 同室に他者がいる、集合住宅の共用部にいる等の場面では、声に出さずメモに書く。訪問後に自分で入力する | 下書きに、その場で確かめられていない前提が補われていないか |
| 電波が届かない | 音声が送れず、下書きが作られない。作業が訪問後にまとめて残る | 通信が前提の仕組みでは、圏外は避けられない。端末側で保持する設計かどうかで挙動が変わる | 圏外になりやすい訪問先を事前に一覧にしておく。端末に保存して後で送る運用にする | 圏外の訪問先の記録が、後日まとめて同じ文面になっていないか |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
テレビ・ラジオの音が記録に混ざる8つの型
この条件だけ、別に表を立てます。訪問看護で最も頻繁に起き、しかもいちばん気づきにくいからです。気づきにくい理由は、混ざった文が「日本語として自然」だからです。意味の通らない文なら誰でも直しますが、通ってしまう文は、そのまま確定します。
| 混ざり方の型 | 下書きに現れる形 | 見分けるための問い | その場でできること |
|---|---|---|---|
| ニュースの地名が混ざる | 訪問先とは関係のない地名が、外出先や受診先として文中に現れる | その地名を、今日の会話で誰かが口にしたか | テレビが点いている時間帯の訪問では、居室に入った時点で「テレビの音が入ります」と一言記録に残す運用にする |
| 天気予報の気温が混ざる | 室温として、測っていない数値が入る | その数値を、自分が温湿度計で読んだか | 室温は必ず測って読み上げる。読み上げない数値は書かない |
| 通販番組の数値が混ざる | 数量・回数として、根拠のない数値が入る | その数値の単位と対象が、文中で説明されているか | 数値を話すときは「何を」「いくつ」をセットで言う |
| ドラマの台詞が混ざる | 本人の訴えの欄に、口調の違う一文が入る | その言い回しを、本人が普段使うか | 本人の訴えは、聞き取った直後に看護師が復唱する |
| 健康番組の病名が混ざる | 既往歴や症状として、確かめていない語が入る | その語を、指示書・お薬手帳・本人の説明のどれかで確かめたか | 病名にあたる語は、必ず出どころ(指示書・受診結果・本人の説明)を添えて書く |
| 時報・番組の時刻が混ざる | 訪問開始・終了の時刻として、実際と違う時刻が入る | その時刻が、端末の記録や打刻と一致しているか | 開始・終了は端末側の時刻で残す。口頭の時刻は補助に留める |
| ラジオの相槌が家族の発言になる | 家族からの情報として、誰も言っていない同意や否定が入る | その発言をした人の名前が、記録の中で特定できるか | 家族の発言は「長女より」のように、話した人を明示して書く |
| 番組内の人名が同居家族名になる | 家族構成に、実在しない人物が現れる | その人物が、利用者台帳の家族構成に載っているか | 家族の呼称は続柄で書く(名前ではなく「長男」「次女」) |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
聞き取りが割れやすい16の語
下の語は、居室の音声から文字にしたときに入れ替わりやすいものです。入れ替わっても文として成立するので、読み流すと残ります。読み合わせのときに、この16語だけを重点的に見る運用にすると、確認の手間が減ります。
| 音 | 入れ替わりうる語 | 記録に残った場合に起きること | 確定の前の確認 |
|---|---|---|---|
| こうあつ | 降圧/高圧 | 薬剤の説明が逆の意味になる | お薬手帳の薬剤名と照らす |
| ちんつう | 鎮痛/陣痛 | まったく別の場面の記述として読める | 頓用薬の使用記録と照らす |
| はいえき | 排液/廃液 | 処置の記述が、廃棄物の話に読み替わる | ドレーン・創部の記載と前後の文脈を見る |
| こうくう | 口腔/高空 | ケアの部位が不明になる | 実施したケアの手順の記載と合わせる |
| かんせん | 感染/幹線/観戦 | 観察所見が別の話題になる | その語の前後に、部位や所見の記載があるか見る |
| そうよう | 掻痒/相様 | 皮膚の訴えが消える | 皮膚の観察欄に、部位と程度が書かれているか見る |
| じょくそう | 褥瘡/除装 | 創部の記述が処置の記述に読み替わる | サイズ・滲出液の記載とセットになっているか見る |
| にょうろ | 尿路/入路 | 部位の記述が壊れる | 排泄の欄の記載と合わせる |
| けっとう | 血糖/決闘 | 測定値の対象が不明になる | 測定機器の表示と単位を照らす |
| ふくぶ | 腹部/複部 | 観察部位が特定できない | 触診・聴診の記載とセットで見る |
| ようつう | 腰痛/要通 | 訴えが記録から落ちる | 本人の訴えの欄に、部位と動作の条件があるか見る |
| きょうつう | 胸痛/共通 | 重要な訴えが一般語になって埋もれる | 訴えの時刻と持続時間が書かれているか見る |
| ぜんそく | 喘息/全速 | 既往の記述が壊れる | 指示書の記載と照らす |
| かんき | 換気/喚起 | 環境の記述が指導の記述に読み替わる | 室内の記載か、説明の記載かを前後で見る |
| じょうざい | 錠剤/浄剤 | 剤形の記述が壊れる | お薬カレンダーの実物と照らす |
| そうこう | 爪甲/走行/草稿 | 足の観察の記述が消える | 足部の観察欄に、部位と所見があるか見る |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
電波と場所の条件(8つ)
| 場所・状況 | 起きること | 訪問前にできる設定 | 訪問後にすること |
|---|---|---|---|
| 山間部・農村部 | 訪問中ずっと圏外。音声も写真も送れない | 端末に保存して後で送る設定にする。地図上で圏外エリアを共有しておく | 帰所後に送信できたかを、件数で確かめる |
| 鉄筋集合住宅の奥の部屋 | 玄関では通じるが居室で切れる。送信の途中で止まる | 居室に入る前に、必要な情報を端末に読み込んでおく | 途中で止まった記録が、二重に作られていないか確かめる |
| 地下・半地下の居室 | 常時圏外。時刻の同期もずれることがある | 時刻の自動同期を確認する。開始・終了は手動でも残せるようにする | 記録の時刻が、実際の訪問時間帯と合っているか見る |
| エレベーター内 | 移動中に接続が切れ、入力が消える | 移動中の入力を避ける運用にする | 消えた入力がないか、下書きの有無で確かめる |
| 施設内の居室 | 施設の通信環境に依存する。持ち込み機器の利用可否が施設ごとに違う | 施設側の取り決めを事前に確認する | 施設のルールに沿った形で記録が残っているか見る |
| 車内・トンネル | 断続的に切れ、音声の途中が欠ける | 停車してから吹き込む運用にする | 欠けた区間がないか、音声の長さと内容で確かめる |
| 離島・へき地 | 通信が不安定な時間帯がある | まとめて送る時間帯を決めておく | 送信済みの一覧を、訪問予定と突き合わせる |
| 停電・災害時 | 端末の充電と通信の両方が失われる | 紙の記録用紙を携行する。業務継続計画に記録の代替手段を書いておく | 紙で残した記録を、復旧後にいつ誰が入力したかを残す |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
見たのは人、書いたのは道具|確定前に自分に問う18の設問
ここが、この記事でいちばん譲れない線です。AIは書くのを助けますが、見るのは看護師です。
理由は、技術の限界の話というより、素材の話です。文章を作る仕組みは、渡された素材(話された言葉・入力された数値・過去の記録)から文を組み立てます。渡されていないものは組み立てられません。ところが、組み立てられないはずのものが、文として出てくることがあります。過去の記録や一般的な言い回しから、それらしい文が埋まるためです。
だから、確定の前の問いは「この文は正しいか」ではありません。「この文の元になった観察を、私は今日その場でしたか」です。正しそうに読めるかどうかは、確認の役に立ちません。
確定の前の18の設問
| 設問 | 「はい」と答えられる根拠 | 答えられない場合にすること |
|---|---|---|
| この所見を、今日その場で見たか | 見た部位と体位を言える | その文を消す。見ていないことは書かない |
| この数値は、今日測ったものか | 測定機器の表示か、手書きメモがある | 測っていない数値は消す。次回に測る項目として残す |
| 「変わりない」は、何と比べて変わりないのか | 比較した前回の日付と数値を言える | 比較対象を書き足す。比較していないなら「変わりない」と書かない |
| この訴えは、本人が言ったのか、家族が言ったのか | 誰が言ったかを記録の中で書き分けている | 言った人を確かめてから書く。分からなければ確かめる |
| この病名は、どこで確かめたか | 指示書・お薬手帳・受診結果のいずれかを見た | 出どころを書き添える。確かめていなければ書かない |
| この時刻は、どこから来たか | 端末の記録・打刻・機器の表示がある | 実際の時刻を確かめて直す |
| この処置は、実際に今日行ったか | 使った物品と手順を言える | 行っていない手順を消す |
| この文は、前回の記録の写しではないか | 前回と読み比べて、違いを説明できる | 今日の事実に書き直す |
| 下書きの初期値のまま確定していないか | 各欄を自分で読み、必要な欄を直した | 初期値の欄を1つずつ確かめる |
| 数値の単位と部位は書かれているか | 単位・部位・測定条件が揃っている | 欠けている条件を足す |
| 本人の言葉が、本人の言い回しで残っているか | 復唱した言葉と一致している | 要約された文を、聞いた言葉に戻す |
| 家族の推測と、観察した事実が分かれているか | 「長女より」等の主語が入っている | 主語を足して分ける |
| この評価は、看護師である自分の評価か | 評価の根拠になった観察を指し示せる | 根拠を書き足すか、評価を書き直す |
| 次回の計画は、今日の結果から出てきたか | 今日の観察と結びつけて説明できる | 前回の計画の引き写しを消す |
| 写真は、今日撮ったものか | 撮影日時と部位のラベルがある | 日時を確かめる。過去の写真を今日の記録に付けない |
| この記録は、誰が確認して確定したか | 確定した人の名前が残っている | 確認者を決めてから確定する |
| 訪問していない日の記録が生まれていないか | 訪問予定と記録の件数が一致している | 余分な記録を消す。理由を残す |
| この記録を、本人・家族が読んでも事実として通るか | 読み上げても違和感がないと言える | 読んで違和感の残る箇所を書き直す |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
道具の側からは出てこない10種類の情報
次の10種類は、素材として渡す手段がありません。だから、下書きに出てきたら、それは看護師が話したか入力したかのどちらかであり、そのどちらでもなければ書かれてはいけない情報です。
| 種類 | 例 | なぜ素材として渡らないか | 記録での扱い |
|---|---|---|---|
| におい | 創部の臭気、居室の臭気、口臭 | 音にも数値にもならない | 看護師が言葉にして残す。「臭気なし」も観察の結果として書く |
| 皮膚の湿り気 | 発汗、乾燥、べたつき | 触れた感覚は入力の形がない | 触れた部位と、乾燥・湿潤の別を書く |
| 触れた温度 | 熱感、冷感、左右差 | 体温計の数値とは別の情報 | 部位と左右差を書き添える |
| 表情の変化 | 眉間のしわ、目線が合うか、口角の動き | 音声には現れない | 見たままを書く。「表情良好」で済ませない |
| 介護者の疲れ | 受け答えの間、身なり、家事の滞り | 本人が言葉にしないことが多い | 観察した具体的な様子を書く |
| 居室の様子 | 片づき方、段差、動線、物の置かれ方 | 視覚の情報であり、会話に出ない | 危険につながる点を、位置とともに書く |
| 呼吸音・腸蠕動音 | 副雑音の有無、聴取部位 | 聴診器を通した音は録音に残らない | 聴取した部位と所見を書く |
| 痛みの強さ | 本人の表現、動作との関係 | 数値ではなく本人の言葉。言い換えると失われる | 本人の言葉のまま残し、動作の条件を添える |
| 手技の抵抗感 | 吸引時の抵抗、カテーテルの通り | 手に伝わる感覚は入力にならない | 抵抗の有無と、前回との違いを書く |
| 前回との差の意味 | 同じ数値でも意味が違う場面がある | 差の計算はできても、意味づけは観察した人にしかできない | 差をどう受け取ったかを、看護師の言葉で書く |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
下書きのままの文を、観察の事実に直す|34組の書き換え
下書きは、たいてい「きれいな文」で出てきます。きれいな文は読み流せます。読み流せる文は直されません。ここに、下書きをそのまま確定したときの危うさがあります。
下の表は、左が下書きのまま残りやすい文(書いてはいけない例として引用します)、右がそれを観察の事実に直したものです。右の列は、そのまま記録に貼って使える形にしてあります。日付・数値は自事業所の実際のものに置き換えてください。
訪問中の観察(12組)
| 場面 | 下書きのまま残りやすい文(引用) | 観察の事実に直した文 |
|---|---|---|
| バイタル | 「バイタル安定。特変なし。」 | 血圧138/82mmHg(右上腕・座位)、脈拍72回/分・整、体温36.4℃(腋窩)、SpO2 97%(室内気)。前回8月5日は血圧146/88mmHg。本人より自覚症状の訴えなし。 |
| 全身状態 | 「全身状態良好。」 | ベッド上臥床。声かけに開眼し、氏名と本日の曜日を答える。頬部に乾燥あり、口唇に亀裂なし。前回みられた眉間のしわは本日はなし。 |
| 食事 | 「食事摂取良好。」 | 昼食は主食10割・副食8割(長女からの聞き取り)。むせ込みは昼食時に1回、水分でのみあり。とろみは長女が付けている。 |
| 排泄 | 「排便あり。」 | 8月12日に普通便中等量、13日なし、14日に軟便少量(家族の排便記録より)。腹部の膨満なし、腸蠕動音は4カ所で聴取できた。 |
| 睡眠 | 「夜間良眠。」 | 本人「2時ごろに一度起きたけど、すぐ寝られた」。長女「夜中の呼び出しは1回」。訪問中の傾眠はみられず。 |
| 皮膚 | 「皮膚トラブルなし。」 | 仙骨部に発赤なし。右踵に2cm大の白色の角質肥厚あり、圧痛なし。両下腿に乾燥と落屑あり、保湿剤を塗布した。 |
| 疼痛 | 「疼痛コントロール良好。」 | 本人「腰は、動かすときだけ痛い。じっとしていれば大丈夫」。強さは「10のうち3くらい」との表現。頓用薬は前回訪問以降の使用なし(お薬カレンダーで確認)。 |
| 内服 | 「服薬できている。」 | お薬カレンダーの8月11日夕分に残薬あり。本人「飲み忘れたと思う」。他の枠に残薬なし。長女に夕方の声かけを依頼した。 |
| 呼吸 | 「呼吸状態安定。」 | 呼吸数16回/分。両肺野で呼吸音を聴取、副雑音なし。会話中の息継ぎの乱れなし。在宅酸素は0.5L/分で使用中、指示書の内容と一致。 |
| 療養環境 | 「療養環境問題なし。」 | 室温28℃、湿度62%(居室の温湿度計)。エアコン使用中。ベッド周囲に段ボール箱2箱あり、移動の妨げになるため長女と置き場所を相談した。 |
| 家族・介護者 | 「家族の介護力あり。」 | 同居の長女が主介護者。長女「夜中に2回起きるので、日中に寝てしまう」。福祉用具の利用について、次回訪問時に説明することとした。 |
| 医療機器 | 「機器問題なし。」 | 吸引器の作動を確認、圧は-20kPaで設定どおり。吸引チューブの予備は5本。加湿ボトルの水は本日交換した。 |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
医療処置・症状の記述(12組)
| 場面 | 下書きのまま残りやすい文(引用) | 観察の事実に直した文 |
|---|---|---|
| 創部 | 「創部良好。」 | 仙骨部の創、長径3cm×短径2cm。滲出液は淡黄色少量、臭気なし。周囲皮膚に発赤なし。指示の軟膏を塗布し、ポリウレタンフォームで保護した。 |
| 創の経過 | 「創部改善傾向。」 | 前回8月7日は長径4cm、本日は3cm。ポケットは触知せず。写真を記録に添付(撮影の同意は8月1日に本人・長女から取得済み)。 |
| 点滴 | 「点滴滴下良好。」 | 右前腕の留置針、刺入部に発赤・腫脹なし。指示の輸液を60分で滴下。終了時に閉塞なし、固定テープを交換した。 |
| 膀胱留置カテーテル | 「カテーテル問題なし。」 | 尿は淡黄色、混濁なし。前回訪問からの8時間で400mL。固定水5mLを確認。テープ固定を右大腿内側に変更した(前回の固定部位に発赤があったため)。 |
| 胃ろう | 「注入問題なし。」 | 瘻孔周囲に発赤・肉芽なし。半固形栄養を指示量、30度以上の座位で注入。注入後30分は体位を保つよう長女に依頼した。 |
| ストーマ | 「ストーマ良好。」 | 面板の溶けは外縁から5mm。周囲皮膚に発赤なし。装具交換は本人が手順の3工程まで実施でき、剥離のみ介助した。 |
| 吸引 | 「吸引実施。」 | 口腔内より白色粘稠痰を少量吸引。吸引前SpO2 94%、吸引後97%。挿入の長さは指示の範囲内。実施後に本人「楽になった」との発言あり。 |
| 血糖・自己注射 | 「血糖値問題なし。」 | 朝食前の血糖値は家族測定で128mg/dL(測定器の記録で確認)。本人が自己注射を実施、設定単位を看護師が読み上げて確認した。注射部位は腹部左側、前回から2cm離した。 |
| 発熱時 | 「発熱あり、様子見。」 | 13時に体温38.1℃(腋窩)。悪寒なし、咳嗽なし。飲水を促し、13時40分に主治医へ電話報告。指示にて解熱薬を頓用し、14時30分に37.4℃へ。長女へ再発熱時の連絡先を口頭と書面で説明した。 |
| 転倒後 | 「転倒あったが問題なし。」 | 長女より、8月13日夜にベッドサイドで尻もちをついたとの報告。本日、腰部・殿部に皮下出血なし、圧痛なし。手すり使用での立ち上がりを確認。主治医へは8月14日に報告済み。 |
| 処方の変更 | 「薬が変更になった。」 | 8月12日の外来受診で内服薬が1剤追加(お薬手帳で確認)。本人・長女に服用時間を確認し、お薬カレンダーの朝の枠に入れ替えた。次回訪問で残薬を確認する。 |
| リハビリテーション | 「リハビリ実施。」 | 端座位保持を3分×2回。立ち上がりは手すり使用で5回、うち2回に膝折れあり。前回8月7日は3回中2回に膝折れがあった。 |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
計画書・報告書・連絡文(10組)
| 場面 | 下書きのまま残りやすい文(引用) | 観察の事実に直した文 |
|---|---|---|
| 計画書の目標 | 「ADLの維持向上を図る。」 | トイレまでの5mを、手すりを使って1人で歩けるようになる(8月〜10月)。本人の希望「自分でトイレに行きたい」を踏まえて設定した。 |
| 計画書のサービス内容 | 「必要な看護を提供する。」 | 週2回(火・金)、1回60分。血圧・脈拍・体温・SpO2の測定、仙骨部の創処置、内服の残数確認、長女への介助方法の助言を行う。 |
| 計画の変更 | 「状態に応じて対応する。」 | 8月14日、発熱の頻度が増えたため、週2回を当面週3回(火・木・金)に変更。主治医の指示は8月14日に文書で受領。ケアマネジャーへ同日連絡した。 |
| 報告書の療養状況 | 「著変なく経過している。」 | 8月は8回訪問。血圧は128〜148/72〜90mmHgで推移。仙骨部の創は長径4cmから3cmとなり、滲出液は少量で経過。8月14日に38.1℃の発熱があり、主治医の指示で頓用薬を使用、翌日には平熱に戻った。夜間の排尿での覚醒は1〜2回。 |
| 主治医への報告文 | 「特に変わりありません。」 | 8月14日13時、体温38.1℃、SpO2 96%、呼吸音に副雑音なし、咳嗽なし、尿の混濁なし。飲水は可能です。解熱薬の使用についてご指示をお願いします。 |
| ケアマネジャーへの連絡 | 「特に問題ありません。」 | 8月14日の訪問で、居室内の段ボールが移動の妨げになっていました。手すりの追加について、次回のサービス担当者会議でご相談させてください。 |
| 家族への説明の記録 | 「家族に説明した。」 | 8月14日15時、長女に対し、38℃以上の発熱が2回続いた場合の連絡先(日中:ステーション、夜間:緊急連絡先)を口頭で説明し、連絡先を記載した紙を冷蔵庫に貼付した。長女より「わかりました」との返答あり。 |
| カンファレンスの記録 | 「情報共有を行った。」 | 8月14日16時〜16時40分、参加者:訪問看護師2名、ケアマネジャー、長女。議題:発熱時の対応。決まったこと:①38℃以上が2回続いたらステーションへ連絡 ②次回訪問時に手すりの位置を確認 ③次回カンファレンスは9月11日。 |
| モニタリング | 「目標達成に向けて継続。」 | 目標「トイレまで5mを手すりで歩く」について、8月14日時点で3mまで到達。膝折れは5回中2回(7月は3回中2回)。目標は継続とし、期間を10月末まで延長する。 |
| 新人への指導の記録 | 「同行訪問を行った。」 | 8月14日、同行訪問。新人が測定と創部の観察を実施し、指導者が創のサイズの測り方(基準点の当て方)を訂正した。次回までの課題:滲出液の量の表現を「少量・中等量・多量」で統一すること。 |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
記録として確定する前に決める7項目|確認者・根拠・修正履歴
下書きを使うかどうかは、道具を入れるかどうかの話ではありません。「誰が、いつ、何を見て確定するか」を決めるかどうかの話です。ここを決めずに使い始めると、下書きが自然に確定していきます。誰も確定した覚えがないのに、記録として残っている——という状態がいちばん困ります。
先に決める7項目
| 決めること | 決め方の例 | 決めないと起きやすいこと | 決めた内容を残す場所 |
|---|---|---|---|
| 誰が確認して確定するか | 訪問した本人が確定する/管理者が週1回まとめて確認する/新人の記録は指導者が確認してから確定する | 確定者が特定できず、記載内容について誰も説明できなくなる | 記録の取扱いに関する手順書、勤務体制の資料 |
| いつ確定するか | 訪問当日中に確定する/翌営業日の午前までとする | 記憶が薄れた状態で下書きを読み、下書きのほうを事実として受け取ってしまう | 手順書、業務の1日の流れの資料 |
| 下書きであることをどう示すか | 確定前は「下書き」と分かる表示にする/未確定の記録を一覧で見られるようにする | 下書きのまま提出・共有され、後から差し替えられなくなる | 手順書、記録の運用ルール |
| 直した履歴をどう残すか | 確定後の訂正は、元の内容・訂正後の内容・訂正日・訂正者が分かる形で残す | いつ何を直したかが追えず、他の書類の信頼にも影響が及ぶ | 記録そのもの(訂正履歴)、手順書 |
| 元になった素材をどう扱うか | 録音・写真の保存期間と保存場所、削除の手順、閲覧できる人の範囲を決める | 素材が端末に残り続ける、または必要なときに参照できない | 個人情報の取扱いに関する規程、同意書 |
| 確定後の訂正の手順 | 誰に申し出て、誰が訂正するかを決める。上書きはしない | その場の判断で上書きされ、元の記載が分からなくなる | 手順書、記録の運用ルール |
| 責任の所在 | 記録の作成者は、下書きを作った仕組みではなく、確定した看護師であることを明文化する | 「道具が書いた」という説明になり、記載内容の説明ができなくなる | 手順書、重要事項に関する説明の資料、研修記録 |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
運営指導マニュアル別添1「103 訪問看護」の確認項目と、下書きを使うときの点検点
厚生労働省の運営指導マニュアル別添1には、サービスごとに「確認項目」と「確認文書」が示されています。訪問看護の欄に並ぶ項目は、下書きを使う運用にしたときに、そのまま点検の枠として使えます。左2列は別添1の記載、右1列は自事業所で決めておく点です。
| 確認項目(別添1の記載) | 確認文書(別添1の記載) | 下書きを使う運用で自事業所が点検する点 |
|---|---|---|
| 内容及び手続の説明及び同意(第8条) | 重要事項説明書、利用契約書 | 記録の作成に音声や画像を用いること、その保存の扱いについて、説明の内容が資料に書かれているか |
| 心身の状況等の把握(第13条) | サービス担当者会議の記録 | 会議の記録を下書きから作った場合に、発言者と決定事項の区別が残っているか |
| 居宅介護支援事業者等との連携(第64条) | サービス担当者会議の記録 | 他事業所へ送る連絡文を下書きから作る場合、送信前に誰が内容を確認するか決まっているか |
| 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供(第16条) | 居宅サービス計画 | 計画書の素案が、居宅サービス計画の内容と対照して確認された記録が残っているか |
| サービス提供の記録(第19条) | サービス提供記録 | 訪問看護計画の目標を達成するための具体的な内容が書かれているか。日々の記録が、その日の具体的な事実になっているか |
| 訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成(第70条) | 主治の医師の指示及び居宅サービス計画に基づく訪問看護計画、アセスメントシート、モニタリングシート、訪問看護報告書 | 素案の段階と、説明・同意・交付を経た確定版が区別されているか。目標の達成状況が記録されているか |
| 受給資格等の確認(第11条) | 介護保険番号、有効期限等を確認している記録等 | 確認の記録が、確認した日と確認した人まで残る形になっているか |
| 緊急時等の対応(第72条) | 緊急時対応マニュアル、サービス提供記録 | 急変時の経過を後から整理した場合、時刻の出どころ(端末・機器の表示)が示せるか |
| 勤務体制の確保等(第30条) | 雇用の形態がわかる文書、研修計画・実施記録 | 記録の作成手順に関する研修を行った記録が残っているか |
| 業務継続計画の策定等(第30条の2) | 業務継続計画、研修及び訓練計画・実施記録 | 通信や端末が使えないときの記録の代替手段が、計画に書かれているか |
| 秘密保持等(第33条) | 個人情報同意書、従業者の秘密保持誓約書 | 音声・画像を外部の仕組みに渡す場合の取扱いについて、同意の範囲が資料と一致しているか |
| 苦情処理(第36条) | 苦情の受付簿、苦情者への対応記録、苦情対応マニュアル | 記録の記載内容についての申し出があったときの受付と対応の手順が決まっているか |
| 事故発生時の対応(第37条) | 事故対応マニュアル、報告記録、再発防止策の検討の記録 | 記載の誤りが見つかったときに、訂正だけで終わらせず、原因と再発防止を検討する流れになっているか |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
自治体が公表している指摘と、下書き運用での現れ方(11件)
下の指摘は、いずれも自治体が公表している資料に記載されているものです。どれもAIの話として公表されたものではありません。それでも並べる理由は、下書きをそのまま確定したときに起きることが、すでに指摘として言葉になっているからです。「AI特有の新しい問題」ではなく、既存の指摘が別の経路から起きる、と考えたほうが点検しやすくなります。
| 公表元・資料 | 公表されている指摘の要旨 | 下書きを使う運用で現れやすい形 | 自事業所で点検すること |
|---|---|---|---|
| 松山市介護保険課「運営指導での主な指摘事項及び周知事項について」 | サービス提供の記録には実際に行った時間を記録することとされているのに、計画に位置付けられた時間を機械的に記録しているケースが多数見受けられた | 予定の時刻が初期値として下書きに入り、そのまま確定される | 開始・終了時刻の欄が、端末の記録や打刻から入っているか。予定表の値が既定で入る作りになっていないか |
| 神戸市「介護保険サービス事業運営上の留意事項(居宅通所)」 | 事実と異なる記録や書類を作成しないこと。内容に修正が必要な場合は、元の内容と修正後の内容、修正日がわかるよう記録を残すこと | 下書きの誤りを上書きで直し、直した事実が残らない | 確定後の訂正が、元の記載を残す形になっているか。訂正日と訂正者が分かるか |
| 神戸市「介護保険サービス事業運営上の留意事項(居宅通所)」 | 訪問看護指示書が確認できない・受領が遅い、有効期限が切れている、計画書に具体的な内容・利用者の希望・主治医の指示・看護目標等を記載していない | 期限の一覧が自動で出ることに安心し、原本の受領と内容の確認が後回しになる | 一覧の元になった交付日・有効期間が、原本と一致しているか。誰が原本を見たかが残るか |
| 長野県健康福祉部地域福祉課福祉監査担当「令和6年度運営指導結果の概要(訪問看護)」 | 訪問看護計画の作成等の不備が最多。居宅サービス計画の内容に沿っていない、利用者の同意を得たことが確認できない、具体的なサービス内容を記載していない | 素案の文言が抽象的なまま確定され、説明・同意・交付の記録が素案の段階で止まる | 素案と確定版が区別されているか。説明日・同意日・交付日が残っているか |
| 東京都「運営指導における主な指摘事項」(訪問看護) | 訪問看護計画書を作成せずにサービスを提供している。計画書がケアプランの内容と相違している | 下書きが「作成済み」に見え、確定・交付まで進んでいないことに気づかない | 未確定の計画書が一覧で見られるか。交付の記録があるか |
| 東京都「運営指導における主な指摘事項」(訪問看護) | 主治医の文書指示を受けずに訪問看護を行っていた。訪問内容が指示書と相違している | 前回計画を引き継いだ素案が、更新後の指示内容と食い違ったまま残る | 指示書の内容と計画・記録の対照を、更新のたびに人が見ているか |
| 東京都「運営指導における主な指摘事項」(訪問看護) | 指示書・計画書・報告書・提供記録等の整備と保存が不十分 | 電子化した記録の保存先が分かれ、必要なときに揃わない | 電子で保存する場合に、検索と出力ができる状態が保たれているか |
| 千葉市「令和7年度の運営指導における主な指導事項について」 | ターミナルケアについて、計画及び支援体制の説明と同意の確認ができない。身体症状の変化と看護、精神的な状態の変化とケアの経過等の記録の確認ができない | 要約された下書きから、経過の細部(意向の変化や話し合いの経過)が落ちる | 要約で落ちた経過を、看護師が自分の言葉で書き戻しているか |
| 静岡市「介護サービス事業者の指導監督(運営指導における主な指摘・助言事項等一覧)」 | 理学療法士等による訪問について、看護職員の代わりに訪問させるものであること等を口頭で説明したが、同意を得たことを確認できる記録がない | 口頭の説明が下書きに要約され、同意を得た旨の記載が残らない | 口頭で同意を得た場合に、その旨を記載する欄が記録にあるか |
| 仙台市介護事業支援課「令和6年度運営指導方針・令和5年度運営指導結果等」 | 複数名での訪問について、1人で看護を行うことが困難な具体的な事情が明確にされていない | 定型の文が入るだけで、その利用者に固有の事情が書かれない | 利用者ごとに、身体状況や処置内容に即した具体的な事情が計画書と記録に書かれているか |
| 豊島区「地域密着型通所介護事業所への運営指導で『改善を要する』と指摘された事項について」 | 利用者の提示する被保険者証によらず、介護支援専門員から送られたコピーや電話で資格を確認していた | 台帳に入っている情報が下書きに引き継がれ、原本を見た記録が残らない | 確認した日・確認した人・何を見て確認したかが残る形になっているか |
※上記は各自治体が公表している資料を当社が編集・加工したものであり、各自治体の公式見解ではありません。運営指導の観点・確認様式・判断は保険者(指定権者)により異なります。最終的な算定可否は保険者(指定権者)にご確認ください。
並べてみると、共通しているのは1点です。指摘されているのは「記録が下手」ということではなく、「その記録の元になった行為が確かめられない」ということです。時刻の出どころ、同意を得た事実、原本を見た事実、訂正した事実——どれも、あとから見て確かめられるかどうかが問われています。
下書きを使う運用は、この「確かめられるか」を弱めることがあります。文が先にできるので、確かめる前に完成して見えるからです。だからこそ、確定の一歩手前に人の目を置く必要があります。逆に言えば、確定の手前に人の目が置かれているなら、下書きを作る作業そのものは、看護師が観察に使える時間を守る側に働きます。
観察は人がします。書くのを助けるのは道具です。この順番が入れ替わらない限り、訪問看護の記録は、その日その場で確かめた事実として残ります。
よくある質問
訪問看護AIとは何ですか?
訪問看護の業務にAI(人工知能)を用いる仕組みの総称です。狭義には、訪問看護記録書Ⅱ(SOAP)・訪問看護計画書・訪問看護報告書といった訪問看護に固有の帳票を、話した内容や入力内容から下書きとして生成し、介護ソフトへ引き渡すことに特化したアプリケーションを指します。
ChatGPTなどの汎用AIと、訪問看護専用AIは何が違いますか?
主な違いは3つです。①専用AIは訪問看護記録書Ⅱなどの様式に沿った形で出力します。②専用AIは介護ソフトへの転記まで想定した設計になっています。③利用者の情報を扱うため、専用AIは医療・介護分野の情報の取り扱いを前提に設計されています。汎用AIは幅広い用途に使える一方、様式や転記は利用者側で整える必要があります。
訪問看護でAIを使うとき、個人情報の扱いはどうすればよいですか?
判断の分かれ目は、そのAIサービスが入力内容を自社AIの学習に使うかどうかです。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)では、提供者が学習のために利用することとしている場合、個人データを入力することは提供者への個人データの提供にあたるという整理が示されています。個人データの第三者提供には原則として本人の同意が必要です。一般向けチャットサービスは学習に使われる設定になっている場合があるため、業務で使う際は設定を確認してください。加えて、氏名・住所・生年月日など個人を特定できる情報はそもそも入力しない運用が確実です。訪問看護の記録に必要なのは観察した事実と看護の判断であり、氏名は介護ソフト側で補う方法があります。
AIが作成した記録は、そのまま提出してよいですか?
いいえ。AIが出力するのは下書きです。訪問看護記録は看護職員が自らの観察と判断に基づいて記載するものであり、内容の確認と修正は看護師ご自身が行う必要があります。
AIを導入すると人員基準は緩和されますか?
いいえ。指定訪問看護事業所には看護職員を常勤換算方法で2.5以上配置することが定められており(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準/平成11年厚生省令第37号 第60条)、AIの導入によってこの基準が変わることはありません。
AIは加算が算定できるかどうかを判定してくれますか?
加算の算定可否は告示・通知の要件と、事業所の体制・記録に基づいて判断されるものです。AIは要件の整理や記録作成の補助はできますが、算定の可否を判定するものではありません。最終的な確認は事業所および保険者への照会によって行ってください。
小規模な訪問看護ステーションでも導入できますか?
事業所の規模に関わらず利用できるサービスがあります。当社の集計では、訪問看護を運営する法人の89.3%が1拠点のみで運営しており、管理者が記録・計画書・報告書の作成を兼務している事業所が多数を占めます。導入時は、いま最も時間がかかっている帳票から試すのが現実的です。
無料で試せる訪問看護AIはありますか?
無料プランや試用期間を設けているサービスがあります。当社の「訪問看護マナ」は利用者3名まで無料でご利用いただけます。試す際は、実際に使っている帳票の様式で出力を確認することをおすすめします。
オプトアウトしていれば、利用者情報を入力してよいですか?
学習に使われない設定であることは重要な前提ですが、それだけで入力の可否が決まるわけではありません。データがどこに保存され、いつ削除されるか、事業所として利用目的の通知・公表と整合しているかもあわせてご確認ください。最も確実なのは、氏名・住所・生年月日など個人を特定できる情報を入力しない運用です。
ChatGPTの個人向けプランと、アプリに組み込まれたAI(API経由)は扱いが違いますか?
既定の扱いが異なる場合があります。一般向けチャットサービスは入力内容が学習に使われる設定になっていることがある一方、法人向けプランやAPI経由の利用は既定で学習に使わないとされているものが多くあります。ただし各社の規約は変更されることがあるため、導入時点で提供元の最新の規約と、アプリ事業者のデータの扱いを必ずご確認ください。
関連ページ
- 訪問看護記録書Ⅱ|SOAPの書き方とそのまま使える例文集
- 訪問看護計画書の書き方|目標の立て方と記入例
- 訪問看護報告書の書き方|記載例と主治医への伝え方
- 訪問看護記録書Ⅲとは|包括型訪問看護療養費で1日ごとに作成
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- 訪問看護ステーションの運営構造を公表データ17,959件で集計
- 訪問看護AIアプリ「訪問看護マナ」
出典:厚生労働省ウェブサイト(介護サービス情報公表システム オープンデータ/指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準/医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス)/公共データ利用規約(第1.0版)
本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。
※本ページは制度および一般的な運用を整理したものです。個別の事業所における記録の適否、人員配置の適否、加算の算定可否を判定するものではありません。最新の要件は必ず原典をご確認ください。
訪問看護のどこに使えて、どこは人が決めるか
下書きと点検には向き、判断には向きません。この線を先に引いておくと、導入後に迷いません。
| 場面 | 任せられること | 人が決めること |
|---|---|---|
| 訪問前の情報整理 | 前回までの記録の要約、前回からの変化の抽出 | 今日どこを見るか |
| 記録Ⅱ(SOAP) | 話した内容から下書きを作る | 評価と計画 |
| バイタルの記載 | 測定値の転記と、基準からの外れの表示 | 異常かどうかの判断 |
| 訪問看護計画書 | 前回の計画と記録から素案を作る | 看護の目標 |
| 訪問看護報告書 | 1か月の記録から素案を作る | 主治医に何を伝えるか |
| 主治医への報告文 | 要点の整理 | 報告するかどうかの判断 |
| ターミナルケアの記録 | 経過の整理 | 看取りの方針 |
| カンファレンスの記録 | 録音からの要点の抽出 | 結論 |
| 計画の見直し時期の管理 | 期日の通知 | 見直すかどうか |
| 加算の根拠の点検 | 記録と算定日の突合の表示 | 算定の可否 |
| 指示書の期限管理 | 切れる前の通知 | 依頼の時期 |
| 新人への説明 | 過去の記録から書き方の例を出す | 指導の内容 |
本ページは令和8年6月改定時点の制度に沿って整理しています。様式・要件・単位数は改定により変わります。最新の内容は、厚生労働省の告示・通知および所管の保険者(自治体)の案内でご確認ください。
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この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
監修:嶺井 美幸(看護師・訪問看護ステーション「訪問看護ようき」代表・株式会社ライフシフトCSO)
