訪問看護ステーションの開設には、満たすべき基準と、踏むべき手続きがあります。「何から準備すればいい?」という方に向けて、3つの指定基準と開設までの流れを整理します。
開設に必要な3つの指定基準
訪問看護ステーションを開設するには、人員基準・設備基準・運営基準の3つを満たし、都道府県知事(指定都市・中核市ではその市長)から事業者の指定を受ける必要があります。また、開設するには法人格が必要です。
人員基準
- 看護職員――保健師・看護師・准看護師を、常勤換算で2.5人以上配置。
- 管理者――常勤の保健師または看護師であること。原則として専従です。
- 理学療法士等――リハビリを提供する場合、実情に応じて適当数を配置。
設備基準
- 事業の運営に必要な広さの専用区画(事務室)
- 必要な設備・備品(手指消毒や感染対策の物品、相談スペース など)
運営基準
- サービス内容・手続きの説明と利用者の同意
- 訪問看護計画書・報告書など記録の整備と保存
- 主治医との連携、緊急時の対応体制
- 秘密保持、苦情対応、衛生管理 など
開設までの流れ
- 1. 法人を準備する――法人を設立、または既存法人の事業目的に訪問看護を加えます。
- 2. 人員・物件を確保する――管理者・看護職員(常勤換算2.5人以上)と事務室を用意します。
- 3. 指定申請を行う――都道府県等へ必要書類を提出します(申請には締切があり、事前相談が必要な自治体も)。
- 4. 指定を受ける――審査を経て「指定訪問看護ステーション」として指定されます。
- 5. 運営開始――サービス提供を開始します。
人員や物件の準備には時間がかかるため、開設希望の少なくとも1年前から体制づくりを始めるのが安心です。
指定申請から開設までを逆算する
訪問看護ステーションは、指定を受けた日からしかサービスを提供できません。多くの都道府県で申請の締切は開設希望月の前々月〜前月に置かれており、ここを外すと開設が1か月ずれます。
| 時期 | やること | つまずきやすいところ |
|---|---|---|
| 6〜4か月前 | 法人設立(定款の事業目的に訪問看護を入れる) | 目的に記載がなく、変更登記からやり直しになる |
| 4〜3か月前 | 物件の確保、事前相談 | 事務室と相談スペースの要件を満たさない物件を契約してしまう |
| 3〜2か月前 | 人員の確保、就業規則・運営規程の整備 | 常勤換算2.5の計算を誤り、申請時に不足が判明する |
| 2〜1か月前 | 指定申請書の提出 | 添付書類(資格証、雇用契約、平面図等)の不足で受理されない |
| 開設月 | 指定・運営開始、国保連への届出 | 請求のための届出が漏れ、初回請求ができない |
開設時に決めておくべき3つのこと
① 24時間対応をするか
緊急時の対応体制を取るかどうかで、必要な人数と、看護職員の負担がまったく変わります。少人数で始めて24時間対応も掲げると、特定の職員に電話が集中します。開設時から輪番の仕組みと手当の設計を決めておくほうが、あとから変えるより摩擦が小さくなります。
② 医療保険と介護保険のどちらが主になるか
小児や精神科、末期がんなどを主に受けるのか、要介護高齢者を主に受けるのかで、必要な人材も連携先も変わります。営業先(病院の地域連携室か、居宅介護支援事業所か)も変わります。
③ 記録と請求の運び方
紙で始めると、訪問件数が増えた時点で必ず行き詰まります。開設時は件数が少ないため問題が見えませんが、件数が増えてから移行するほうがコストは高くつきます。
立ち上げ期の資金繰り——入金は約2か月後
介護報酬・診療報酬は、サービスを提供した月の翌月に請求し、入金はそのさらに翌月になるのが一般的です。つまり4月に訪問した分の入金は6月。この間も家賃と人件費は出ていきます。
- 開設から最初の入金まで、およそ2〜3か月分の運転資金が要ります
- 人件費は訪問件数に先行して発生します(採用してから利用者が増える)
- 返戻・査定があると入金がさらにずれます。初回請求は特に確認が要ります
- 自己資金だけで組まず、日本政策金融公庫や制度融資を開設前に相談しておく事業所が多くあります
※本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。実際の取り扱いは、最新の告示・通知および指定権者(都道府県・市区町村)の運用をご確認ください。
開設後の記録・請求体制を整える
開設後は、計画書・記録書・報告書の作成や、保険請求の体制づくりが必要です。介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の訪問看護向け機能(訪問看護マナ)は、訪問記録から各書類の下書きを自動で作成し、立ち上げ期の少ない人員でも記録の負担を抑えられます。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
開設資金と、よくあるつまずき
開設には、法人設立費用・人件費・物件費・運転資金の準備が必要です。指定を受けてから報酬が入金されるまでにタイムラグがあるため、数か月分の運転資金を見込んでおくと安心です。よくあるつまずきは、①管理者の常勤・専従要件を満たせない、②常勤換算2.5人の確保が間に合わない、③指定申請の締切に間に合わない、の3点です。開設と同時に加算の届出や、記録・請求の体制づくりも計画しておきましょう。
開業のあとは「経営・定着」がテーマになります
指定を受けて開業したら、次の課題は黒字化と人材の定着です。訪問看護は人件費率が約8割の労働集約型で、看護師を辞めさせないことと生産性が経営を左右します。あわせてご覧ください。
- 訪問看護ステーションの経営|黒字化と収支のポイント
- 訪問看護師の離職を防ぐ|管理者のための定着の作り方
- 訪問看護の残業を減らす方法|記録・直行直帰
- 訪問看護の利用者獲得|営業とケアマネ・医療機関連携
- 機能強化型訪問看護とは|1・2・3の要件とメリット
- 訪問看護の加算一覧/記録を効率化する訪問看護マナ
訪問看護ステーション開設の流れ
訪問看護ステーションの開設には、人員・設備・運営基準を満たし、指定申請を行う必要があります。流れを整理しました。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 準備 | 事業計画、資金、物件、人員の確保 |
| 人員基準 | 看護職員の配置(管理者・常勤換算の要件) |
| 設備 | 事業運営に必要な設備・区画 |
| 指定申請 | 自治体へ申請し指定を受ける |
算定要件・単位数・様式は介護報酬改定や自治体により異なります。実際の運用にあたっては最新の告示・通知・条例等でご確認ください。
よくある質問(FAQ)
訪問看護ステーションの開設に必要なことは?
人員の要件は?
準備のポイントは?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
出典:厚生労働省ウェブサイト/公共データ利用規約(第1.0版)。本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。加算・単位数・要件は改定される場合があるため、最新の告示・通知でご確認ください。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
監修:嶺井 美幸(看護師・訪問看護ステーション「訪問看護ようき」代表・株式会社ライフシフトCSO)
