訪問看護では、訪問のたびに記録書Ⅱを作成します。「観察したことをどう整理して書けばよいか」「指示書や計画とどうつなげるか」と悩む看護師の方に向けて、記載項目と記入例を整理します。
訪問看護記録書Ⅱとは
訪問看護記録書は、Ⅰ(利用者の基本情報や初回訪問時の情報)とⅡ(1回ごとの訪問の記録)に分かれます。記録書Ⅱは、毎回の訪問で「観察した状態・実施したケア・その評価」を記す、日々の看護の記録です。
主な記載項目
- 訪問年月日・時間
- バイタルサイン(体温・血圧・脈拍・呼吸・SpO2 など)
- 病状・全身状態の観察
- 実施した看護・リハビリの内容
- 本人・家族の反応や訴え
- 評価と、次回訪問への申し送り
書き方のポイント
- 観察は客観的に――数値と事実で記し、主観的な印象と分けます。
- 指示書・計画と連動させる――訪問看護指示書や計画書の目標に沿って、実施と評価を書きます。
- 変化に着目する――前回との違い、改善・悪化の傾向を明確にします。
記入例
体温36.6度、血圧132/78、脈拍72整、SpO2 97%。下腿の浮腫は前回より軽減。創部の発赤なく、滲出液少量。指示に基づき処置を実施。本人「むくみが楽になった」との発言あり。次回も創部と浮腫の観察を継続する。
記録書Ⅱで指摘されやすい書き方
記録書Ⅱは訪問のたびに書くため、書きぶりが定型化しやすい書類です。運営指導や監査で指摘されやすいのは、次のような記載です。
| よくある記載 | 何が問題か | 書き換えの方向 |
|---|---|---|
| 「変わりなし」のみ | 何を観察して変わりないと判断したかが残らない | バイタルと、その日確認した項目を具体に |
| 毎回まったく同じ文章 | 訪問した事実の裏づけとして弱い | 当日の会話・環境・処置の差分を1行入れる |
| 「指導した」だけ | 何をどう伝え、相手がどう反応したかが不明 | 伝えた内容と、本人・家族の反応を分けて書く |
| 指示書にない処置の記載 | 指示との整合が取れない | 指示内容の変更手続きを経てから記録する |
| 数値のない状態評価 | 経過の比較ができない | 測ったものは数値で、測れないものは基準を決めて書く |
SOAPで書くときの型
記録書ⅡをSOAPで整理すると、観察と判断の切り分けがはっきりします。訪問看護では次の配分が扱いやすくなります。
| 入れるもの | 入れないもの | |
|---|---|---|
| S(主観) | 本人・家族が言ったことを、言葉のまま | 看護師が言い換えた要約 |
| O(客観) | バイタル、皮膚・創部の所見、動作、環境 | 推測(「つらそう」は主観に近い) |
| A(評価) | Oから何を読み取ったか、前回との比較 | 根拠のない断定 |
| P(計画) | 次回までにすること、誰に何を伝えるか | あいまいな「経過観察」だけ |
医療保険と介護保険で記載が変わるところ
- 訪問時間——介護保険は時間区分が報酬に直結するため、開始と終了の時刻を明確に残します
- 訪問人数——複数名で訪問した場合は、その理由と各自の役割が要ります
- 特別な管理——医療保険では、対象となる状態や処置の有無が記録に残っている必要があります
- 他職種との連携——ケアマネジャーへ報告した内容と日付を残します
署名・記載者・訂正のルール
- 記載者が特定できること(姓のみの記載で複数該当者がいる事業所では、フルネームや職員番号を併用します)
- 訂正は二重線と訂正印が基本です。修正液・上書きは避けます
- 電子記録の場合は、いつ誰が編集したかの履歴が残る仕組みであること
- 記載は訪問後できるだけ早く行い、あとからまとめて書かないこと
※本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。実際の取り扱いは、最新の告示・通知および指定権者(都道府県・市区町村)の運用をご確認ください。
場面別の記入例(そのまま型として使えます)
状態が安定しているとき
S:「変わりないよ。よく眠れている」
O:BT36.3℃/BP132/78/P68・整/SpO2 97%。下腿浮腫なし。食事摂取は自立、全量摂取。歩行器で室内自立。
A:バイタル・食事量ともに前回と同様で安定。浮腫の悪化なし。
P:次回も同様に観察。体重測定を行い、増減を確認する。
褥瘡の処置があるとき
S:「あおむけだと痛い」
O:仙骨部にd2の褥瘡。大きさ2.0×1.5cm、滲出液は少量・淡黄色、周囲の発赤あり。指示に基づき洗浄後、○○を貼付。
A:滲出液は前回より減少。周囲の発赤は残存。体位変換の間隔が空いている可能性。
P:家族へ体位変換の間隔を再度説明。次回、エアマットの導入をケアマネへ相談。
状態が悪化しているとき
S:「今朝から息が苦しい」
O:BT37.8℃/BP148/88/P96・整/SpO2 91%(室内気)。両下肺に副雑音。下腿に圧痕性浮腫あり。
A:前回訪問時よりSpO2が4%低下し、浮腫の増悪あり。
P:14:20に○○クリニック○○医師へ電話報告。14:35に往診の指示あり。長女へ連絡(14:40)。
リハビリ職が訪問したとき
O:左膝関節可動域 屈曲110度(前回105度)。10分間の歩行訓練を実施、途中休憩1回。実施中の疼痛の訴えなし。
A:可動域はわずかに改善。歩行の持久性は前回と同程度。
P:訓練内容を継続。次回の看護師訪問時に、皮膚と浮腫の評価を依頼。
記録書Ⅱについて現場から多い質問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| 訪問先で書けなかった | その日のうちに記載します。日をまたぐと時刻の整合が取れなくなります |
| 家族の話が長く、要点がまとまらない | Sには言葉のまま、Aで看護師としての解釈を分けて書きます |
| 「異常なし」と書いてよいか | 何を見て異常がないと判断したかを併記します |
| 写真を残してよいか | 同意が要ります。同意の記録と、保存場所・アクセス範囲を決めておきます |
| 複数名で訪問した | 各自の役割と、複数名が必要だった理由を残します |
記録の負担を軽くする
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の訪問看護向け機能(訪問看護マナ)は、訪問時の音声から観察記録や報告書の下書きを自動で作成します。移動の合間に話すだけで原案ができ、記録にかかる時間を大きく減らせます。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
なお、2026年6月から、包括型訪問看護療養費を算定する利用者について記録書Ⅲを1日ごとに作成することが要件化されました。
訪問看護記録書Ⅱの観察項目と記入例
訪問看護記録書Ⅱは、訪問ごとの観察・実施・評価を記録します。主な観察項目と記入例を整理しました。
| 観察項目 | 記入例 |
|---|---|
| バイタル | 体温36.6℃、血圧130/80、脈72、SpO2 98% |
| 症状・状態 | 下腿浮腫あり、呼吸音に問題なし |
| 実施したケア | 服薬確認、褥瘡処置、療養指導 |
| 本人・家族の様子 | 「体調は落ち着いている」と本人。家族へ介護方法を助言 |
| 評価・計画 | 状態は安定。次回も体重と浮腫を観察 |
よくある質問(FAQ)
記録書Ⅱには何を書きますか?
SOAPで書けますか?
効率化するには?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
無料ではじめる
次の一歩を、どうぞ
介護のDXは、ゆっくりでいい。
まずは無料で、現場で試すところから。
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観察項目と、記録の文例
記録書Ⅱはその日に見たことと、行った看護を書きます。SOAP・経時記録のいずれでも、この観察項目が土台になります。
| 観察項目 | 記録の文例 |
|---|---|
| 全身状態 | 体温36.6度、脈拍72(整)、血圧128/76、呼吸18回/分、経皮的動脈血酸素飽和度97%(室内気)。 |
| 意識 | 声かけに開眼し、氏名と日付を正しく答えられる。 |
| 呼吸 | 呼吸音は両肺野で清明。副雑音なし。労作時の息切れは階段昇降時のみ。 |
| 循環 | 下腿に圧痕性浮腫あり(両側・脛骨前面)。前回訪問時より増強。 |
| 皮膚 | 仙骨部に発赤あり(直径2cm・押しても消退しない)。DESIGN-Rでの評価を実施。 |
| 栄養 | 食事は主食8割・副食7割。体重は前回から0.5kg減。 |
| 水分 | 1日の摂取量は約1,000mL。本人は「あまり飲みたくない」と話される。 |
| 排泄 | 排便は3日に1回。前回訪問後に緩下剤を追加し、以降は毎日普通便。 |
| 排尿 | 日中5〜6回、夜間2回。残尿感の訴えなし。 |
| 疼痛 | 右膝の痛みを訴えられる。数字で聞くと10のうち4。歩行後に増強。 |
| 睡眠 | 21時に就寝し、6時に起床。夜間の中途覚醒は1回。 |
| 内服 | 処方どおり内服できている。残薬なし。 |
| 医療処置 | 胃ろうからの注入を実施。挿入部の発赤なし、漏れなし。 |
| カテーテル | 膀胱留置カテーテルを交換(16Fr)。尿の混濁なし。 |
| 酸素 | 在宅酸素を1L/分で使用。装着時間は1日16時間。 |
| リハビリ | ベッド上での下肢挙上を10回×2セット実施。疲労の訴えなし。 |
| 精神 | 「気持ちが沈む」と話される。以前は好きだったテレビも見ないとのこと。 |
| 認知 | 日付と場所は正答。直近の出来事の想起に時間を要する。 |
| 家族 | 妻より「夜に何度も起こされてつらい」と訴えあり。 |
| 環境 | ベッドの高さを調整し、立ち上がりやすくした。 |
| 連絡 | 主治医へ電話で下腿浮腫の増強を報告。利尿剤の追加の指示を受ける。 |
| 指導 | 妻へ、体重測定を毎朝行うよう説明。記録用紙を渡す。 |
| 次回 | 浮腫の程度と体重の推移を確認する。 |
SOAPで書くときの割りふり
| 区分 | 入れるもの | 入れないもの |
|---|---|---|
| S(主観) | 本人・家族が話した言葉 | 看護師の解釈 |
| O(客観) | 測定値、観察した所見、実施した処置 | 評価語 |
| A(評価) | SとOから考えたこと、その根拠 | 根拠のない断定 |
| P(計画) | 次に行うこと、確認すること、指導した内容 | あいまいな「経過観察」のみ |
| 共通 | 日付、訪問の開始・終了時刻、実施者 | — |
| 共通 | 主治医・関係機関への報告 | — |
SOAPの詳しい書き方はSOAPでの書き方、記録書Ⅰは記録書Ⅰの書き方をご覧ください。
SOAP以外の記法としてフォーカスチャーティング(F・D・A・R)があります。看護記録で広く使われている形です。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
監修:嶺井 美幸(看護師・訪問看護ステーション「訪問看護ようき」代表・株式会社ライフシフトCSO)
