看護師が構造的に不足するなか、訪問看護ステーションにとって最大の経営リスクは「看護師の離職」です。この記事では、訪問看護に特有の離職要因と、管理者ができる定着の打ち手を整理します。介護全般の採用・定着は介護の人材採用・定着もご覧ください。
あわせて、訪問看護AIの活用と選び方もご覧ください。
訪問看護は、なぜ辞めやすいのか
訪問看護の離職率は病院よりやや高い傾向があります。背景には、訪問看護ならではの負担があります。
- 一人訪問の判断の重圧――経験3年未満の看護師の約9割が強く感じるとされます。その場で一人で判断しなければならない。
- オンコールの負担――夜間・休日の対応が続くと休息が取れない。→緊急時対応(オンコール)。
- 記録・事務による残業――訪問後の記録が勤務時間内に終わらず、持ち帰り・残業になる。
定着の作り方──管理者の4つの打ち手
1. 同行・教育で「一人の不安」を減らす
特に入職初期は同行訪問や相談体制を整え、「一人で抱えない」環境をつくる。教育体制の不備は離職に直結します。
2. オンコール負担を分散する
輪番・手当・翌日の勤務調整で、特定の人に負担が偏らないようにする。
3. 記録の負担を減らし、残業をなくす
離職理由の上位にある「記録残業」を減らすことは、最も即効性のある定着策です。音声入力・AIで記録を軽くすれば、時間内に業務が終わります。→残業を減らす方法。
4. 直行直帰でワークライフバランスを整える
クラウド記録で直行直帰を実現すれば、移動と拘束が減り、子育て世代の看護師も働きやすくなります。
記録残業をなくすことが、定着の近道
「もっとお話を聞きたいけれど、記録が終わらないと帰れない」——この声をなくすことが、辞めない事業所への一歩です。「訪問看護アプリ「訪問看護マナ」」は、記録書Ⅱ・報告書・計画書を話すだけで作成し、記録の残業を減らします。利用者3名まで無期限無料。
まとめ
- 訪問看護の離職要因=一人訪問の重圧・オンコール・記録残業。
- 定着策=教育/同行・オンコール分散・記録負担の削減・直行直帰。
- 採れない時代、今いる看護師の定着が経営の生命線。
訪問看護で人が辞める理由は、施設と違う
| 要因 | 訪問看護に特有の事情 |
|---|---|
| 孤独 | 1人で訪問し、その場で判断する。相談相手がその場にいない |
| オンコール | 夜間の呼び出しが特定の人に偏る。眠れない日が続く |
| 記録 | 訪問後に記録が残り、勤務時間内に終わらない |
| 責任の重さ | 急変時の判断を1人で行う場面がある |
| 移動 | 天候、渋滞、駐車。訪問件数以上に消耗する |
| 利用者・家族との距離 | 自宅に上がるため、関係が密になりやすい |
定着に効く順番
- オンコールの負担を測る——当番回数ではなく、実際に鳴った回数と出動回数を記録します
- 記録を勤務時間内に終える——移動中や訪問先で入力できる仕組みにします
- 相談できる相手をつくる——判断に迷ったときにすぐ連絡できる体制
- 訪問件数の偏りをなくす——特定の人に難しいケースが集中していないか
- 1人にしない——同行訪問、事例検討会、朝の顔合わせ
新人が定着するかは最初の3か月で決まる
- 単独訪問までの期間を決める——早すぎると自信を失い、遅すぎると独り立ちできません
- 同行訪問の回数を記録する
- 困ったときの連絡先を明示する(誰に、どの手段で)
- 週1回、短くても振り返りの時間を持つ
- できるようになったことを言葉で伝える
オンコールの負担を設計する
| 論点 | 決めておくこと |
|---|---|
| 当番の回し方 | 全員輪番か、経験者中心か。新人はいつから入るか |
| 一次・二次 | どうなったら二次(管理者等)が動くか、基準を決める |
| 手当 | 待機についているのか、出動についているのか |
| 翌日の勤務 | 夜間に出動した場合、翌日の訪問件数を減らすか |
| 携帯の運用 | 個人の携帯か、事業所の携帯か。番号の管理 |
| 記録 | 鳴った回数、出動した回数、時刻を残す |
⚠「鳴らないから負担はない」は誤りです。鳴るかもしれない状態で過ごす夜そのものが負担になります。
管理者ができること
- 同行訪問を減らしすぎない——1人で抱える時間が長いほど消耗します
- 難しいケースを1人に集中させない
- 困ったときに連絡できる相手を明示する
- 記録を勤務時間内に終えられる仕組みにする
- 辞めた人の理由を記録に残し、次に活かす
- 「がんばっている」ではなく、具体的にできたことを言葉で伝える
定着について現場から多い質問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| 新人はいつから単独訪問か | 早すぎると自信を失い、遅すぎると独り立ちできません。同行の回数を記録して判断します |
| オンコールを新人に任せてよいか | 段階を踏みます。まず二次として、次に一次へ |
| ブランクのある看護師を採用してよいか | 同行期間を長めに取れば戦力になります。訪問看護の経験より、姿勢で見る事業所が多くあります |
| 給与を上げれば定着するか | 金額だけでは戻りません。孤独と負担の構造に手を入れないと同じことが起きます |
| 退職を切り出されたら | 引き止める前に理由を聞き、記録に残します。次の人に同じことが起きるのを防げます |
離職の兆候
- 記録の提出が遅れはじめる
- 会議での発言が減る
- 有給の申請が急に増える/まったく取らない
- 同僚との会話が減る
- 「もう無理です」ではなく「大丈夫です」が増える
よくある質問
Q. 訪問看護師が辞める主な理由は?
一人訪問での判断の重圧、オンコールの負担、そして記録・事務による残業が代表的です。特に経験の浅い看護師は判断の重圧を強く感じます。
Q. 定着のために管理者ができることは?
同行・教育で一人訪問の不安を減らす、オンコール負担を分散する、記録の負担を減らして残業をなくす、直行直帰でワークライフバランスを整える、が効果的です。
Q. 採用と定着、どちらを優先すべき?
看護師は構造的に不足しており採用は難しいため、まず今いる人を辞めさせない(定着)ことが経営の安定に直結します。
訪問看護師の離職を防ぐポイント
訪問看護ステーションの運営では、看護師の定着が課題です。離職を防ぐポイントを整理しました。
- 負担の軽減――記録・残業・オンコールの負担を減らす
- 相談できる体制――一人で抱え込まない仕組み
- 教育・成長――学べる機会と評価
- 働き方の柔軟性――勤務時間や直行直帰の工夫
よくある質問(FAQ)
訪問看護師の離職の原因は?
定着のために何ができますか?
記録の負担軽減はどう役立ちますか?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
辞める理由と、事業所でできること
「やりがい」では止まりません。負担そのものを減らす手当てを1つずつ入れます。
| よく挙がる理由 | 事業所でできること |
|---|---|
| オンコールの負担 | 担当の輪番を広げる、出動の実績を見える化する、手当を見直す |
| 1人で判断する不安 | 相談できる相手を決める、同行訪問の機会を作る |
| 記録の持ち帰り | 勤務時間内に記録を書ける時間を置く |
| 移動の多さ | 訪問の順路を見直す、地域を分ける |
| 急な変更 | 当日変更の連絡ルールを決める |
| 利用者・家族との関係 | 1人で抱えさせない。担当の交代の基準を作る |
| 医療的な不安 | 事例検討、外部研修への参加 |
| 評価が分からない | 面談の頻度を決める |
| 休みが取りにくい | 希望休の出し方を決める |
| 賃金 | 処遇改善加算の配分を説明する |
| 人間関係 | 会議の場で決めることを増やす |
| 将来像が見えない | 資格取得の支援、役割の段階を示す |
入職から定着までに置くこと
| 時期 | 置くこと |
|---|---|
| 入職前 | 見学、同行訪問の体験 |
| 1週目 | 事業所の手順の説明、記録の書き方 |
| 1か月 | 同行訪問。1人で行く利用者を段階的に増やす |
| 1か月 | 面談(困っていることを聞く) |
| 3か月 | 担当の見直し。オンコールの開始時期を相談 |
| 3か月 | 面談 |
| 6か月 | 事例の振り返り |
| 6か月 | 面談 |
| 1年 | 役割の見直し、研修の希望 |
| 随時 | 相談できる先輩を決めておく |
オンコールの体制は緊急時訪問看護加算、残業の実態は訪問看護の残業をご覧ください。
面談で聞くことと、聞き方
| 聞くこと | 聞き方 |
|---|---|
| 負担に感じていること | 「いま一番手が止まるのはどの場面ですか」 |
| オンコール | 「出動のあと、次の日はどうしていますか」 |
| 記録 | 「記録はどこで書いていますか」 |
| 担当 | 「担当を替わりたい利用者はいますか」 |
| 相談 | 「困ったとき、誰に聞いていますか」 |
| 学び | 「もう少し知りたい分野はありますか」 |
| 休み | 「希望どおりに休めていますか」 |
| 将来 | 「1年後、どんな仕事をしていたいですか」 |
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
監修:嶺井 美幸(看護師・訪問看護ステーション「訪問看護ようき」代表・株式会社ライフシフトCSO)
