通所介護の入浴介助加算は、ⅠとⅡで考え方が異なります。違いと算定要件を整理します。
入浴介助加算とは
通所介護で入浴の介助を行った場合に算定できる加算です。2021年度改定でⅠとⅡに分かれました。
Ⅰ・Ⅱの違い
- 加算Ⅰ……入浴介助を適切に行う体制を評価。
- 加算Ⅱ……自宅での入浴の自立を目指し、専門職が自宅の状況を確認し、個別の入浴計画にもとづいて介助する場合を評価。Ⅰより高い評価。
算定の主な要件
- 入浴介助を行うこと(Ⅰ)
- 医師・理学療法士等が自宅の浴室環境を評価し、個別の計画を作成(Ⅱ)
- 計画にもとづく介助と、その記録
要件・単位は改定で変わるため、最新の告示・通知で確認してください。
要件を「体制・実施・記録」の3つに分けて見る
入浴介助加算は、要件が複数の条文に分かれていて全体像がつかみにくくなりがちです。体制(人と仕組み)・実施(何をするか)・記録(何を残すか)の3つに分けると、自事業所で足りていない部分が見えます。
| 区分 | 確認すること |
|---|---|
| 体制 | 医師・理学療法士・作業療法士等による、利用者の居宅の浴室環境の評価(上位区分の要件に含まれます) |
| 実施 | 個別の入浴計画に基づく入浴介助。居宅での入浴の自立に向けた支援 |
| 記録 | 評価の内容、入浴計画、実施記録 |
| 見直し | 状態の変化に応じた計画の見直し |
記録で示すもの
要件は「やったこと」ではなく「記録があること」で示します。実施していても記録がなければ、要件を満たしていることを説明できません。
| 残すもの | 書く内容 |
|---|---|
| 居宅の浴室環境の評価 | 訪問した日、評価した職種、浴室の状況(浴槽の深さ、またぎの高さ、手すりの有無) |
| 入浴計画 | 課題、目標、事業所で行う支援、居宅で想定する動作 |
| 実施記録 | 実施日、介助の内容、本人が自分で行った動作 |
| 評価 | 目標に対する到達状況、計画の見直し |
運営指導で指摘されやすいところ
- 入浴の実施記録はあるが、個別の計画がない
- 計画が全員同じ内容になっている
- 居宅の浴室環境の評価の記録がない(上位区分の場合)
- 「入浴介助」とだけ書かれ、どこを介助したか分からない
- 本人ができた動作が記録されていない
- 見直しの記録がない
記入例
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 居宅の浴室の状況 | 浴槽の縁の高さ50cm、またぎ動作に介助を要する。浴室内に手すりなし。脱衣所と浴室に3cmの段差 |
| 課題 | 浴槽への出入りに介助を要し、自宅では入浴できていない |
| 目標 | 手すりを使い、見守りで浴槽に出入りできる |
| 事業所での支援 | 浴槽のまたぎ動作の練習(手すり使用)、洗身は本人が行い、背中のみ介助 |
| 実施記録 | 7/15 手すりを使ってまたぎ動作を実施。右足からの跨ぎは自立。洗身は背中以外を自分で実施 |
| 評価 | 3か月後:見守りでまたぎ動作が可能。自宅への手すり設置をケアマネジャーへ提案 |
よくある疑問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| シャワー浴でも算定できるか | 入浴の方法と算定の関係は通知で示されています。最新の内容をご確認ください |
| 本人が入浴を拒否した日は | 実施していない日は算定できません。拒否の事実は記録に残します |
| 自宅に浴室がない場合 | 評価の取り扱いについて保険者にご確認ください |
| 評価は誰が行うか | 区分によって求められる職種が異なります |
| 計画は何か月ごとに見直すか | 状態の変化に応じて見直します。定められた頻度は通知でご確認ください |
※加算・減算の要件は改定のたびに見直されます。算定の可否は、最新の告示・通知および保険者(市区町村)の運用を必ずご確認ください。本記事は一般的な考え方を整理したものです。
自立に向けた支援を、段階で考える
| 段階 | 事業所で行うこと | 自宅で目指す状態 |
|---|---|---|
| ① 環境を知る | 居宅の浴室環境を評価する | — |
| ② 動作を分ける | またぎ、洗身、洗髪、拭き取りのどこに介助が要るかを特定する | — |
| ③ 練習する | 介助を減らせそうな動作を、事業所の浴室で練習する | — |
| ④ 環境を整える | 必要な用具をケアマネジャーへ提案する | 手すり、シャワーチェア等の導入 |
| ⑤ 移行する | 自宅での入浴を家族と確認する | 見守りまたは自立での入浴 |
入浴時の事故を防ぐ
- 入浴前のバイタル測定と、当日の体調確認
- 脱衣所と浴室の温度差(ヒートショック)
- 湯温の確認——本人の感覚に頼らない
- 浴槽内での滑り——マット、すのこ
- 入浴中に目を離さない基準を決めておく
- 事故が起きたときの記録の残し方を事前に決める
拒否がある方への進め方
- 理由を探す——寒い、恥ずかしい、こわい、痛い、体調が悪い、のどれか
- 時間帯を変える——午前が苦手な方、午後が苦手な方がいます
- 順番を変える——脱衣の前に足浴だけ試す
- 担当を変える——同性介助で受け入れられることがあります
- 無理に入れない——拒否があった事実と、その後の働きかけを記録に残します
記録に残す入浴の観察点
- 入浴前のバイタルと、当日の体調
- 介助した動作と、本人が自分で行った動作
- 皮膚の状態(発赤、傷、あざ、乾燥)——入浴は全身の皮膚を見られる貴重な機会です
- 入浴中・入浴後の様子(疲労、ふらつき、めまい)
- 拒否があった場合はその事実と対応
入浴介助加算|告示の定めと、貴事業所の状況
左に告示・通知の定め、右に貴事業所の状況を書き込む形にしています。算定の可否を判定するものではありません。要件・運用は保険者により異なりますので、最新の告示・通知および保険者の取り扱いをご確認ください。
| 告示・通知の定め | 貴事業所の状況(記入欄) | 裏づけになる書類 |
|---|---|---|
| 入浴介助を適切に行うことができる人員及び設備を有すること | 人員: /設備: | 勤務表・平面図 |
| 入浴介助に関する研修等を行うこと | 研修の実施日: /参加者: 名 | 研修の記録(日時・参加者・内容・資料) |
| 個別の入浴計画を作成すること。個別の入浴計画に相当する内容を通所介護計画の中に記載する場合は、その記載をもって作成に代えることができるとされている | 入浴計画の作成:単独/通所介護計画に記載 | 入浴計画または通所介護計画 |
| (上位区分)医師・理学療法士等が利用者の居宅を訪問し、浴室の環境を評価すること | 訪問日: /評価者: | 評価の記録 |
| (上位区分)評価に基づき、個別の入浴計画を作成すること | 計画の作成日: | 個別の入浴計画 |
| 算定した日に、入浴介助を実施していること | 当月の入浴実施日: | サービス提供の記録 |
| 入浴を中止した日は、その理由を記録すること | 中止した日と理由: | サービス提供の記録 |
入浴介助加算|運営指導で公表されている指摘
実際に公表されている内容です。詳細は監査対策ナビと各自治体の公表資料をご確認ください。
| 公表されている指摘 | 公表元 |
|---|---|
| 入浴介助加算について、入浴介助に関する研修等を行ったことが確認できない、個別の入浴計画が不十分。個別の入浴計画に相当する内容を通所介護計画の中に記載する場合はその記載をもって作成に代えることができる | 福井市の令和7年度集団指導資料 |
| サービス提供表の実績では入浴介助加算Ⅰが算定されていたが、当該日のサービス提供の記録には入浴サービスを提供した記録が確認できなかった | 豊島区が公表した令和5年度の運営指導(地域密着型通所介護18件) |
入浴介助加算|記録に残すこと
体制が整っていても、記録がなければ説明できません。以下は記載のイメージを示す(例)です。
| 場面 | 残す記録 | 記載例 |
|---|---|---|
| 研修を実施したとき | 日時・参加者氏名・内容・使用資料 | ◯月◯日 入浴介助に関する研修。参加者◯名(名簿添付)。移乗と観察の方法を確認 |
| 入浴計画を作ったとき | 作成日・目標・介助の方法・留意点 | 通所介護計画の中に、入浴の目標(週2回・見守り)と介助方法を記載した |
| 居宅を訪問して評価したとき | 訪問日・評価者の職種・浴室の状況・自宅で入浴するための課題 | ◯月◯日、理学療法士が訪問。浴槽の高さと手すりの位置を評価した |
| 入浴を実施したとき | 実施日・介助の程度・皮膚の観察 | 7月2日 入浴実施。またぎは一部介助、洗身は見守り。皮膚に発赤なし |
| 入浴を中止したとき | 中止した日・理由・代替の対応 | 7月9日、体温37.8℃のため中止。清拭に切り替えた |
| 状態が変わったとき | 変化の内容・介助方法の見直し | 浴槽のまたぎが自立となったため、介助方法を見直し計画を変更した |
| 加算を算定したとき | 算定日と、その日の入浴の記録の対応 | 算定した9日分すべてについて、当日の記録に入浴の実施を記載している |
入浴介助加算|よくある誤りと直し方
| よくある誤り | なぜ問題か | 直し方 |
|---|---|---|
| 算定した日の記録に入浴の記載がない | 公表資料で名指しされている | 算定日と記録を突合し、入浴の実施を明記する |
| 入浴介助に関する研修の記録がない | 研修を行ったことが確認できないと指摘されている | 日時・参加者氏名・内容・資料を残す |
| 個別の入浴計画が不十分 | 公表資料で名指しされている | 目標・介助方法・留意点を具体的に書く(通所介護計画への記載でも可) |
| 中止した日の理由が書かれていない | 算定の可否が判断できない | 中止した日と理由、代替の対応を記録する |
| 上位区分で居宅の訪問評価をしていない | 要件を欠く | 評価者の職種と訪問日、評価内容を記録する |
| 計画と実際の介助方法が違う | 実態と計画が乖離する | 状態が変わったら計画も変更する |
他の加算は介護保険の加算・減算まとめ、運営指導で確認される書類は監査対策ナビで確認できます。
記入例(加算Ⅱの取り組み)
「理学療法士が自宅の浴室を確認。またぎ高さ40cmの浴槽で、手すり設置を提案。通所では立ち座りとまたぎ動作の練習を行い、3か月後に自宅での入浴自立を目標とする。」
記録を効率化する
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の通所向け機能(通所介護マナ)は、加算の根拠となる記録づくりを後押しします。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
通所介護の入浴介助加算のポイント
通所介護の入浴介助加算は、入浴の介助に関する加算です。区分により要件が異なります。要点を整理しました。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 基本の考え方 | 入浴介助を適切に行う体制 |
| 上位区分 | 個別の入浴計画にもとづき、自宅での入浴の自立を支援する取り組み |
| 記録 | 計画と実施の記録を整える |
算定要件・単位数・様式は介護報酬改定や自治体により異なります。実際の運用にあたっては最新の告示・通知・条例等でご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. Ⅱは必ず自宅訪問が必要?
A. 自宅の浴室環境の把握が前提になります。訪問や聞き取りなどで状況を確認し、個別計画に反映します。
Q. ⅠとⅡは同時に算定できますか?
A. できません。いずれか一方の算定です。自宅での入浴自立に取り組む場合はⅡを目指します。
入浴介助加算のⅠとⅡの違いは?
算定のポイントは?
単位数は?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
出典:厚生労働省ウェブサイト/公共データ利用規約(第1.0版)。本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。加算・単位数・要件は改定される場合があるため、最新の告示・通知でご確認ください。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
