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GAF尺度とは|点数の目安と精神科訪問看護での評価・記録の書き方(評価事例20例)

GAF尺度は、精神疾患のある方の「いま、どのくらい生活が回っているか」を1つの数字で表す物差しです。精神科訪問看護の現場では、記録書や報告書にGAFの評点を書く場面がありますが、「何点にすればよいのか分からない」「看護師によって点数が違う」「点数だけ書いて根拠が残っていない」という声がよく聞かれます。

このページは、GAF尺度そのものに絞って整理します。何を測る尺度なのか、10の点数帯をどう読むか、点数を決めるまでの手順、評価者ごとのぶれを減らす取り決め、そして点数の根拠を記録に残す書き方です。後半では、架空の設定による評価事例20例を「観察した事実→点数帯の判断根拠→記録文」の3点セットで並べます。

記録書Ⅱ・報告書そのものの書き方(SOAPの文例や、欄ごとの書き分け)は、別の記事「精神科訪問看護の記録とGAF尺度|記録書Ⅱ・報告書の書き方」で扱っています。このページと役割を分けていますので、あわせてご覧ください。

要点

  • GAF尺度は、心理面・社会生活・仕事や学業の機能を0〜100の連続した数字で表す尺度で、米国精神医学会の診断統計マニュアル(DSM)の第3版改訂版と第4版で用いられ、第5版(DSM-5)で多軸評定とともに削除されました
  • 点数は「症状の重さ」と「生活・対人・仕事の機能」の両方を見て、より低い方に合わせて帯を選ぶ考え方が広く用いられています
  • 点数は評価者によってぶれやすいため、対象期間・迷ったときの寄せ方・根拠の書き方を事業所で取り決め、点数と一緒に「そう評価した事実」を記録に残すことが要になります

正式な評価基準は原典(DSMの該当版)と所属機関の手順に従ってください。このページの点数帯の説明は、当社が自分の言葉で要約した「おおまかな目安」です。

GAF尺度とは|何を測る尺度か(基本の8項目)

GAFは「Global Assessment of Functioning」の略で、日本語では「機能の全体的評定尺度」と訳されます。病名を決めるための尺度ではなく、症状と生活の状態を合わせて「全体としてどのくらい機能しているか」を1つの数字に置き換えるものです。精神科の診療や訪問看護で長く使われてきたのは、1つの数字なので月ごとの変化を追いやすく、職種や機関をまたいで共有しやすいからです。

一方で、1つの数字に症状と生活を押し込むため、何を重く見たかで点数が変わりやすいという弱点もあります。DSM-5で削除された背景には、こうした評価者間のばらつきや、症状と機能が1つの軸に混ざることへの指摘がありました。削除された後も、既存の様式や記録の枠組みの中でGAFが使われ続けている場面があります。

GAF尺度の基本を8項目で整理

項目 内容(一般に知られている範囲) 訪問看護で意識したいこと
正式な名称 機能の全体的評定尺度(Global Assessment of Functioning) 記録では「GAF」と略してよいか、事業所の表記ルールをそろえる
出どころ 米国精神医学会のDSM第3版改訂版・第4版で、多軸評定の第5軸として用いられた 原典の版によって記述が異なるため、事業所がどの版の基準を参照するかを決めておく
現在の扱い DSM-5では多軸評定とともに削除された 削除後も様式に欄が残っている場面があるため、記載の要否は制度側の取扱いで確かめる
点数の幅 0〜100の連続した数字。10点ごとの帯に目安の記述がある 帯を選んでから、帯の中で上寄りか下寄りかを決める2段階で考える
見る領域 症状の重さと、心理的・社会的・職業的な機能 訪問看護では「睡眠・服薬・対人・作業所や仕事・日常生活・危険な行動」の6つに分けて見ると事実を拾いやすい
合わせ方 症状と機能のうち、より低い方に合わせて評価する考え方が広く用いられる 症状は軽いが生活が回っていない、という場合に点数が高すぎないよう注意する
含めないもの 身体の病気や住環境などによる制限は含めない扱いが一般的とされる 骨折で外出できない、家に段差があるといった理由は分けて記録する
対象とする期間 評価時点の状態を対象にするのが一般的な扱い 「直近1週間」「前回訪問から今回まで」など、事業所で対象期間を決めて記録に書く

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

点数帯の読み方|10の帯の目安と、隣の帯との分かれ目

GAFは10点ごとの帯で考えると扱いやすくなります。下の表は、各帯の「状態のおおまかな目安」を当社が自分の言葉で要約し、訪問看護で見えやすい手がかりと、隣の帯との分かれ目を添えたものです。原典の記述文を写したものではありません。実際の評価では、原典と所属機関の手順を基準にしてください。

読み方のこつは、上から順に「この帯の説明より、今の状態は悪いか」を問いながら下りていき、初めて当てはまった帯で止まることです。止まった帯の中で、上の帯に近いのか下の帯に近いのかを考えて、最後に1点単位の数字を決めます。

10の点数帯|状態のおおまかな目安(当社要約)

帯 状態のおおまかな目安 訪問看護で見えやすい手がかり 1つ下の帯との分かれ目
91〜100 困りごとがほとんど表に出ず、生活の幅も広い 訪問の目的そのものが「見守り」に近く、話題は趣味や予定が中心 ささいな心配ごとが語られる程度か、生活に影響する症状が出ているか
81〜90 日常的な悩みはあるが、生活・対人・仕事はほぼ保たれている 予定どおりの通所・通勤、家事の継続、困りごとは自分で対処できている ストレスへの反応が一時的な範囲に収まっているか、数日続いているか
71〜80 出来事に反応した一時的な不調があっても、すぐ戻る 行事の前後だけ眠りが浅い、家族と言い合った翌日だけ外出を控える 不調が一時的か、軽い症状として定着しはじめているか
61〜70 軽い症状や生活上の小さなつまずきがあるが、大筋は回っている 週に数回の不眠、作業所の欠席が月に1〜2回、親しい相手との交流は保たれている つまずきが「ときどき」か、生活の複数の場面で「目立つ」か
51〜60 症状や機能の低下がはっきり目に見え、生活のどこかが崩れている 作業所の欠席が増える、家事の一部が止まる、交流の相手が限られてくる 低下が一部の領域にとどまるか、生活や対人の広い範囲に重く及んでいるか
41〜50 症状が重い、または生活・対人・仕事のいずれかで大きな支障がある 通所・就労が止まっている、身の回りのことに声かけが要る、強い不安や落ち込みが続く 現実のとらえ方や意思疎通そのものに障害が出ているか
31〜40 現実のとらえ方や意思疎通に乱れがある、または複数の領域で大きく崩れている 話のつながりが追いにくい、家族・仕事・判断のいくつもの場面で支障が重なる 行動が症状に大きく引っ張られているか、ほとんどの領域で生活が止まっているか
21〜30 行動が症状に強く左右される、またはほぼすべての領域で生活が成り立たない ほとんど終日臥床、食事や服薬を自分で始められない、訴えの内容に沿って行動してしまう 自分や他人を傷つける危険や、最低限の身の回りの保持の崩れがあるか
11〜20 自分や他人を傷つけるおそれがある、または最低限の清潔や食事が保てない 危険につながる言動、水分や食事がとれない、意思疎通がほとんど成り立たない 危険が持続しているか、差し迫った重い行為があるか
1〜10 自分や他人への重い危険が続く、または差し迫った重大な行為がある 訪問の場で直ちに主治医・関係機関へ連絡する状態 (0は情報が足りず評価できない場合に用いる扱いが一般的)

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

6つの領域ごとの手がかり|高め・中ほど・低めの見え方

1つの数字にまとめる前に、領域ごとに「いまどのあたりか」をばらして見ると、根拠の事実を拾い漏らしにくくなります。下の表は訪問看護で拾いやすい事実の例です。帯の目安と同じく、当社の整理です。

領域 高め(おおむね61以上)で見えやすい事実 中ほど(おおむね41〜60)で見えやすい事実 低め(おおむね40以下)で見えやすい事実
睡眠 就寝・起床の時刻がほぼ一定。寝つけない日があっても週1回程度 入眠に時間がかかる日が週の半分以上、日中の臥床が数時間ある 昼夜が入れ替わっている、2〜3時間しか眠らない日が続く
服薬 本人が管理し、残数が処方と一致している 特定の時間帯の飲み忘れが続く、声かけで飲める 自己判断の中断が数日続く、薬の袋に手を付けていない
対人交流 家族以外にも話す相手がいて、自分から連絡できる 話す相手が家族か支援者に限られる、約束を断ることが増える 支援者の訪問にも応じにくい、家族との会話がほとんどない
作業所・就労・役割 予定どおり通所・通勤できている、家庭内の役割を続けている 欠席が予定の半分前後、役割の一部を家族が肩代わりしている 通所・就労が止まっている、家庭内の役割も果たせていない
日常生活 食事・入浴・洗濯・金銭の支払いを自分で回せている 入浴や掃除の頻度が落ちる、食事が偏る、支払いが遅れる 食事や水分を自分で用意できない、清潔が保てない
症状として語られる内容 気になる考えがあっても生活への影響は小さいと本人が話す 訴えが毎日のようにあり、生活の選択に影響している 訴えの内容に沿って行動している、話のつながりが追いにくい
危険な行動 自分や他人を傷つける言動はみられない つらさの訴えはあるが、具体的な行動には結びついていない 自分や他人を傷つけるおそれのある言動があり、主治医への連絡を要する
外出・生活範囲 買い物・通院・余暇で週に数回外出している 外出が通院など必要なものに限られる 玄関から出ない日が1週間以上続く

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

GAFの評価手順|点数を決めるまでの6ステップと迷ったときの考え方

点数は「印象」で決めると、同じ利用者でも訪問した看護師や日によって揺れます。手順を固定しておけば、誰が評価しても同じ事実から同じ帯にたどり着きやすくなります。以下は訪問看護の1回の訪問の中で無理なく回せる手順の例です。

点数を決めるまでの6ステップ

ステップ やること 記録に残すもの
1.対象期間を決める 事業所の取り決めに沿って「直近1週間」「前回訪問から今回まで」などの期間を確認する 対象とした期間(例:9月1日〜9月7日)
2.6つの領域の事実を拾う 睡眠・服薬・対人交流・作業所や就労・日常生活・危険な行動について、回数・時刻・量で事実を聞き取り、見て確かめる 領域ごとの事実(本人の言葉は「」で、見た事実は数字で)
3.症状の側で帯を当てる 語られた症状の強さと、それが行動にどれだけ影響しているかから、症状だけで見た帯を考える 症状側の帯(例:61〜70)
4.機能の側で帯を当てる 生活・対人・作業所や就労の状態から、機能だけで見た帯を考える 機能側の帯(例:51〜60)
5.低い方に合わせ、帯の中の位置を決める 症状側と機能側のうち低い方の帯を採り、隣の帯にどれだけ近いかで1点単位の数字を決める 採った帯、数字、帯の中で上寄り・下寄りにした理由
6.前回と比べて確かめる 前回の点数と根拠の事実を読み返し、動いた数字に見合う事実の変化があるかを確かめる 前回の点数との差と、その差を説明する事実

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

迷いやすい10の場面と考え方の例

手順どおりに進めても、帯の境目で迷う場面は残ります。迷ったときに「どちらに寄せるか」を事業所で決めておくと、評価者ごとの差が小さくなります。下の表の「考え方の例」は一つの整理であり、所属機関の手順がある場合はそちらを優先してください。

迷いやすい場面 考え方の例 記録に書き添えること
症状は落ち着いているが、生活がほとんど回っていない 機能の側が低いので、機能の帯に合わせて考える 回っていない生活の場面を具体的に(入浴・食事・外出の回数)
生活は回っているが、強い症状の訴えが続いている 症状の側が低いので、症状の帯に合わせて考える 訴えの内容・頻度と、生活が保たれている事実を両方
訪問した日だけ調子がよく、ほかの日の様子が分からない 訪問時の様子だけで決めず、対象期間の事実を本人・家族・記録表から集める 情報源(本人/家族/生活記録表)を分けて記載
対象期間の途中で大きく崩れ、訪問時には戻っている 事業所で決めた対象期間の扱い(最も低かった時点か、評価時点か)に従う 崩れた日付と内容、戻った日付
身体の病気で外出できていない 身体や環境による制限は分けて考える扱いが一般的。精神面の機能を中心に見る 身体の制限の内容と、それを除いて見た理由
本人の話と家族の話が食い違う どちらか一方で決めず、見て確かめられる事実を優先する 誰が何と話したかを分けて記載し、確かめた事実を添える
前回の点数に引きずられそうになる 前回を読み返すのは点数を決めた後。先に今回の事実から帯を当てる 今回の事実から当てた帯と、前回との差
帯のちょうど境目(例:60か61か) 隣の帯の説明と今回の事実を並べ、より多く当てはまる側を採る 境目で迷ったこと、採った側の理由となる事実
主治医が示した評価と看護師の見立てが違う 看護師が見た事実を主治医へ報告し、扱いは主治医の指示に従う 報告した日時・伝えた事実・受けた指示の内容
初めて訪問した月で、普段の状態が分からない 初回に分かる範囲の事実で評価し、情報が足りない点を書き添える 情報が足りない領域と、次回以降に確かめる事項

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

評価者間のぶれを減らす工夫|事業所で決めておく12の取り決め

GAFの点数が看護師によって違うのは、評価する人の腕の差というより、「何を見て、どちらに寄せるか」が人によって違うことから起きます。取り決めを文書にして全員が同じものを見られるようにしておくと、担当が交代しても点数の流れが途切れにくくなります。

ぶれの原因と取り決めの対照表

ぶれの原因 起きやすい場面 事業所で決めておくことの例 貴事業所の取り決め(記入欄)
対象期間が人によって違う 訪問日の様子だけで採点する人と、1週間を見る人が混在 対象期間を1つに決める(例:前回訪問から今回まで)  
症状と機能のどちらを重く見るかが違う 症状は軽く生活が崩れている利用者で、点数が20点近く割れる 低い方に合わせる考え方を採るかどうかを明文化する  
参照している基準の版が違う 古い研修資料と新しい資料を別々の人が見ている 参照する原典の版と、事業所内の要約表を1つに決める  
帯の中の位置の決め方が違う 同じ帯でも、いつも真ん中の5点台を付ける人がいる 「隣の帯に近ければ上寄り・下寄り」と決め、理由を1行書く  
身体の制限を含めるかどうかが違う 骨折や持病で外出が減った月に点数が下がる 身体・環境による制限は分けて記録する扱いを決める  
情報源の扱いが違う 家族の話を重く見る人と、本人の話を重く見る人がいる 見て確かめた事実を優先し、情報源を書き分ける  
前回の点数に引きずられる 状態が変わっても点数が数か月同じまま 先に今回の事実で帯を当て、その後に前回と比べる順番にする  
月の途中の変化の扱いが違う 月半ばに崩れた利用者で、再評価する人としない人がいる 再評価する目安(例:通所の中断、入院の検討など)を決める  
評価する職種が違う 看護師と作業療法士で見ている場面が違う 誰が評価するか、ほかの職種の情報をどう取り込むかを決める  
根拠の書き方が人によって違う 点数だけの人、長文の人、印象だけの人が混在 根拠は「6領域のうち点数を決めた領域の事実を2〜3行」と型を決める  
主治医の評価との関係があいまい 主治医の評価を写す人と、自分で評価する人がいる 主治医との役割分担と、違いが出たときの報告の流れを決める  
新しく入った職員への伝え方がない 入職直後の職員の点数が、ほかの職員と大きく違う 架空事例での採点練習を入職時の研修に入れる  

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

すり合わせ会の進め方|架空事例で採点をそろえる8つの手順

取り決めを作っただけでは、点数はそろいません。同じ架空事例を全員で採点し、差が出たところを話し合うと、取り決めの抜けが見つかります。所要時間の目安は30〜45分です。

手順 やること 進め方のこつ
1.事例を用意する 実在の利用者を特定できない架空事例を3つ用意する(高め・中ほど・低めを1つずつ) この記事の後半の評価事例を下敷きにしてもよい
2.各自で採点する 話し合う前に、各自が点数と帯の根拠を紙に書く 先に誰かが点数を言うと、ほかの人がそれに寄ってしまう
3.点数を一斉に出す 全員の点数を一覧にし、最も高い点と低い点の差を確かめる 差が10点以内なら取り決めは機能している目安にする
4.根拠を読み比べる 点数が離れた人どうしの根拠を並べ、どの事実を重く見たかを比べる 点数の正しさではなく、見た事実の違いに焦点を当てる
5.迷った点を拾う 「境目で迷った」「身体の制限をどう扱うか迷った」など、迷った点を全員分書き出す 迷った点がそのまま取り決めの候補になる
6.取り決めを直す 書き出した迷いのうち、2人以上が同じ点で迷ったものを取り決めに足す 取り決めは1枚に収まる量にとどめる
7.記録に残す 実施日・参加者・事例ごとの点数の幅・直した取り決めを記録する 次回のすり合わせで、点数の幅が縮んだかを比べられる
8.間隔を決める 次回の実施時期を決める(例:半年ごと、新しい職員が入ったとき) 担当の交代が多い時期は間隔を短くする

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

点数の根拠を記録に残す書き方|要素別の対照表と悪い例・良い例

点数だけが書かれた記録は、あとから読んだ人に「なぜその点なのか」を伝えません。担当が交代したとき、主治医に報告するとき、本人が記録の開示を求めたとき、根拠の事実が並んでいれば点数の意味が伝わります。ここでは、点数と一緒に書く要素を分解し、そのまま使える形の文を示します。

点数と一緒に書く9つの要素

書く要素 書く内容 記入例(架空)
評価した日 評価を行った訪問日 9月4日の訪問時に評価
評価者の職種 評価した人の職種(氏名の書き方は事業所の様式に従う) 看護師が評価
対象期間 事業所で決めた対象期間 対象期間:8月28日〜9月4日
点数と帯 1点単位の数字と、採った帯 GAF 57(51〜60の帯)
症状側の事実 語られた症状の内容・頻度と、行動への影響 「人の視線が気になる」との発言が期間中3回。外出の取りやめは1回
機能側の事実 睡眠・服薬・対人・作業所や就労・日常生活の回数や量 作業所は予定4回中2回参加。入浴週2回。食事1日2回
危険な行動の有無 自分や他人を傷つけるおそれのある言動の有無と、確かめた方法 つらさについて伺い、傷つける考えは「ない」との発言。前腕に新しい傷なし
帯の中の位置の理由 上寄り・下寄りにした理由 対人交流が保たれている点から、帯の中ほどよりやや上とした
前回との比較 前回の点数と、差を説明する事実 前回62。作業所の参加が4回中4回から2回に減ったことを反映

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

根拠の書き方|悪い例と良い例(14組)

左の悪い例は、実際の記録でよく見かける一行です。右の良い例は、日付や数字を差し替えればそのまま使える形にしています。いずれも架空の内容です。

場面 悪い例(書かない) 良い例(そのまま使える形)
点数だけの記録 GAF 55。 GAF 55(51〜60の帯)。作業所は予定8回中3回参加、入浴は週1回。本人より「朝起きるのがつらい」との発言あり。対人交流は家族と支援者に限られる。
印象で決めた記録 全体的に調子がよさそうなのでGAF 70。 GAF 68(61〜70の帯)。就寝23時・起床7時が7日中6日。作業所は予定4回すべて参加。寝つけない日が週1回あり、帯の中ほどとした。
前回と同じ点数 前回と変わりなくGAF 60。 GAF 60(前回60)。作業所参加 前回3回→今回3回、入浴 週2回で同じ。新たな症状の訴えなし。事実に変化がないことを確かめて同じ点数とした。
点数を下げた記録 状態悪化のためGAF 45に下げた。 GAF 45(前回58)。外出 週3回→0回、食事 1日3回→1回、睡眠 6時間→3時間。本人より「何もしたくない」との発言あり。9月5日14時、主治医へ電話で報告し、受けた指示の内容を記載した。
点数を上げた記録 だいぶ良くなったのでGAF 65。 GAF 65(前回56)。作業所の参加が予定4回中1回から4回に増えた。家事は洗濯・皿洗いを本人が再開。本人より「朝が楽になった」との発言あり。
症状を評価語で書いた記録 「妄想がひどい」のでGAF 38。 GAF 38(31〜40の帯)。本人より「近所の人が家の中を見ている」との発言が訪問中に4回。窓に目張りをしている。家族との会話は短い返答のみ。
機能だけで決めた記録 家事ができているのでGAF 75。 GAF 58(51〜60の帯)。家事は保たれているが、「声が聞こえて眠れない」との発言が毎日あり、症状の側に合わせて帯を選んだ。
危険な行動の確認が抜けた記録 落ち込みあり。GAF 42。 GAF 42(41〜50の帯)。本人より「気持ちが重い」との発言あり。つらさについて伺い、傷つける考えは「今はない」との発言。連絡先の紙が電話の横にあることを確かめた。
情報源が混ざった記録 眠れていない。GAF 52。 GAF 52。本人より「眠れている」との発言。家族より「夜中に3回起きている」との発言。見て確かめた事実として、日中の臥床が訪問中の観察で1時間。
身体の制限が混ざった記録 外出できないのでGAF 40。 GAF 62。外出が減っているのは8月末の足首の捻挫によるもの(本人・家族の発言)。電話での対人交流と家事は保たれており、身体の制限は分けて評価した。
対象期間が書かれていない記録 今日は落ち着いている。GAF 66。 GAF 61(対象期間9月1日〜9月7日)。訪問日は落ち着いていたが、9月3日に作業所を早退したとの発言あり。期間内の事実から帯を選んだ。
主治医の評価を写しただけの記録 主治医評価どおりGAF 50。 GAF 54(看護師評価)。主治医の外来での評価は50と家族より伺った。作業所の参加が増えた事実を9月10日に主治医へ書面で報告し、返信の内容を記載した。
帯の中の位置の理由がない記録 GAF 47。 GAF 47(41〜50の帯)。通所は止まっているが、服薬は本人管理で残数どおり。服薬の自己管理が保たれている点から、帯の中ほどよりやや上とした。
初回で情報が少ない記録 初回のため不明。 GAF 50(初回・暫定)。睡眠・服薬・食事は初回の聞き取りと薬袋の確認で把握。対人交流と作業所の状況は情報が足りず、次回に相談支援専門員へ確かめることとした。

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

記載の要否と時期|確認する項目の対照表(記入欄)

GAFの評点をどの書類に、いつ、どのように書くかは、診療報酬の告示・通知と審査支払機関の取扱いで定められる事項です。当社の別記事では精神科訪問看護の書類とGAFの関係を整理していますが、改定や地域の取扱いで変わりうるため、このページでは確認する項目と確認先だけを挙げます。記載の要否・時期は診療報酬の告示・通知と審査支払機関の取扱いをご確認ください。

確認する項目 確認先の例 貴事業所の確認結果(記入欄)
GAFの評点を記載する書類(記録書・報告書・明細書など) 診療報酬の告示・通知、審査支払機関  
評価する時期(月のどの訪問か) 診療報酬の告示・通知  
月の途中で状態が変わったときの扱い 診療報酬の告示・通知、主治医の指示  
記載の対象となる療養費の区分 診療報酬の告示・通知  
評価した日(判定日)の書き方 審査支払機関、使用している請求ソフトの入力欄  
評価する人の職種 所属機関の手順、主治医の指示  
主治医の評価との関係 主治医との取り決め  
報告書の様式の欄名と書き方 事業所が使用している様式、主治医  
記録の保存の扱い 所属機関の規程、関係法令  
確認した日と確認した人 —  

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

場面別の評価事例|観察した事実から記録文まで(20例)

ここからは、架空の設定による評価事例を20例並べます。どの例も「観察された事実」「点数帯の判断根拠」「記録文」の3点セットです。実在の利用者ではなく、点数は評価の考え方を示すための例です。診断や治療方針を示すものではありません。実際の評価は、原典と所属機関の手順、主治医の指示に基づいて行ってください。

記録文は、日付・時刻・回数を実際の訪問に置き換えれば使える形にしてあります。本人の言葉は「」でそのまま残し、看護師が見て確かめた事実は数字で書いています。

生活がおおむね回っている月(61以上の帯・4例)

設定(架空) 観察された事実 点数帯の判断根拠 記録文
利用者A・統合失調症・50代・一人暮らし・就労継続支援B型に週4回 作業所は予定16回中16回参加。就寝22時30分・起床6時がほぼ毎日。服薬は本人管理で残数どおり。作業所の仲間と月1回外食。「声」の訴えはなし。危険な行動なし 症状側・機能側ともに目立った支障がない。帯を下りていき、一時的な不調も語られないことから81〜90の帯とし、日常的な心配ごとが1つ語られた点から帯の下寄り 9月3日評価(対象期間8月27日〜9月3日)。GAF 83(81〜90の帯)。作業所は8月の予定16回すべて参加。就寝22時30分・起床6時。服薬は本人管理で残数は処方どおり。本人より「作業所の仲間と月1回ごはんに行くのが楽しみ」との発言あり。「来月の工賃が下がらないか心配」との発言が1回あり、帯の下寄りとした。自他を傷つける言動なし。
利用者B・うつ病・40代・会社員(短時間勤務)・配偶者と同居 勤務は予定どおり週4日。先週の部署異動の後、2日間寝つきが悪かったが、その後は戻った。家事は分担どおり。友人と電話。希死念慮の訴えなし 出来事に反応した一時的な不調で、数日で戻っている。71〜80の帯を採り、不調が2日で戻った点から帯の中ほど 9月9日評価(対象期間9月2日〜9月9日)。GAF 76(71〜80の帯)。勤務は予定4日すべて出勤。9月3日の部署異動後、本人より「2日くらい寝つけなかったが、今は戻った」との発言あり。配偶者も同様の発言。夕食の支度は本人の担当どおり実施。気持ちのつらさについて伺い、消えたい考えは「ない」との発言。
利用者C・双極性障害・30代・家族と同居・アルバイト週3回 8月のアルバイトは予定12回中11回。睡眠6〜7時間。1回だけ前夜に4時間しか眠れず欠勤。買い物の量は普段どおり。家族との会話あり。危険な行動なし 軽い睡眠の乱れと欠勤が1回あるが、生活の大筋は回っている。61〜70の帯とし、欠勤が月1回にとどまる点から帯の上寄り 9月12日評価(対象期間9月5日〜9月12日)。GAF 68(61〜70の帯)。8月のアルバイトは予定12回中11回出勤。9月6日のみ「前の夜に4時間しか眠れず休んだ」との発言あり。本人の睡眠記録で他の日は6〜7時間。家族より「買い物の量は普段どおり」との発言。自他を傷つける言動なし。
利用者D・不安障害・20代・一人暮らし・通信制の学校に在籍 課題は期限内に提出。電車に乗るのは苦手で、登校日は家族の車で移動。近所のスーパーには週3回。友人1人とメッセージのやりとり。危険な行動なし 場面を選べば生活は回っており、支障は移動の一部に限られる。61〜70の帯とし、電車を避けて登校日を調整している点から帯の中ほど 9月16日評価(対象期間9月9日〜9月16日)。GAF 65(61〜70の帯)。本人より「課題は全部出せた」との発言あり、提出済みの画面を本人が提示。登校日1回は家族の車で移動。「電車はまだ無理」との発言あり。近所のスーパーへは週3回、徒歩で外出。友人1人と連絡を取り合っているとのこと。自他を傷つける言動なし。

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

生活の一部が崩れている月(41〜60の帯・4例)

設定(架空) 観察された事実 点数帯の判断根拠 記録文
利用者E・統合失調症・60代・グループホーム入居・地域活動支援センターに週2回 センターは予定8回中4回参加。「テレビが自分のことを話している」との訴えが週2回。食事はホームで3回摂取。入浴は職員の声かけで週2回。ほかの入居者との会話はあいさつ程度。危険な行動なし 症状の訴えが生活の選択(テレビを消す、センターを休む)に影響し、参加が半分に減っている。51〜60の帯とし、身の回りは声かけで回っている点から帯の中ほど 9月5日評価(対象期間8月29日〜9月5日)。GAF 54(51〜60の帯)。本人より「テレビが自分のことを話すので消している」との発言が期間中2回あったとホーム職員より情報あり。地域活動支援センターは8月の予定8回中4回参加。食事はホームで1日3回摂取。入浴は職員の声かけで週2回。ほかの入居者とはあいさつ程度の会話。自他を傷つける言動なし。
利用者F・うつ病・70代・配偶者と二人暮らし 起床は10時ごろ。家事は配偶者がほぼ肩代わり。趣味の園芸を2か月していない。外出は通院のみ。食事は1日2回で量は半分。希死念慮は「ない」 家庭内の役割と余暇が止まり、生活範囲が通院に限られている。41〜50の帯の上端と51〜60の帯の下端で迷い、役割がほぼ止まっている点から41〜50の帯の上寄り 9月8日評価(対象期間9月1日〜9月8日)。GAF 49(41〜50の帯)。本人より「庭の世話をする気にならない」との発言あり。2か月、園芸をしていないと配偶者より情報あり。起床10時ごろ。家事は配偶者がほぼ行っている。外出は9月4日の通院のみ。食事1日2回、量は本人の申告で普段の半分。気持ちのつらさについて伺い、消えたい考えは「ない」との発言。帯の境目で迷ったため、役割の停止を重く見て41〜50の帯とした。
利用者G・アルコール依存症・50代・一人暮らし・自助グループに参加 断酒は継続中と本人の申告、カレンダーで確認。自助グループは月4回中2回。仕事を探しているが面接には行けていない。夜間に不安が強く、頓服を月3回使用。危険な行動なし 断酒と生活の基盤は保たれているが、就労に向けた動きが止まり、不安が生活に影響している。51〜60の帯とし、断酒が続いている点から帯の上寄り 9月11日評価(対象期間9月4日〜9月11日)。GAF 58(51〜60の帯)。本人より「今日で48日飲んでいない」との発言あり、本人のカレンダーの印で確認。自助グループは8月の予定4回中2回参加。本人より「面接の日になると怖くなる」との発言あり、面接は2件とも行けていないとのこと。頓服薬は8月に3回、いずれも夜間に使用。自他を傷つける言動なし。
利用者H・強迫性障害・30代・両親と同居・休職中 確認行為のため外出の準備に1時間半かかる。通院は予定どおり。家族との会話は保たれているが、確認への付き合いを家族に求める場面が1日5回程度。復職の見通しは立っていない。危険な行動なし 仕事は止まっており、家族生活にも症状の影響が大きい。41〜50の帯とし、通院と家族との会話が保たれている点から帯の上寄り 9月17日評価(対象期間9月10日〜9月17日)。GAF 48(41〜50の帯)。本人より「出かける前の確認に1時間半かかる」との発言あり。母より「鍵を確かめてと1日5回くらい言われる」との発言あり。休職は継続中で、本人より「戻る時期はまだ考えられない」との発言。通院は9月13日に予定どおり受診。家族との会話は訪問中も続いていた。自他を傷つける言動なし。

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

複数の領域で大きく崩れている月(21〜40の帯・4例)

設定(架空) 観察された事実 点数帯の判断根拠 記録文
利用者I・統合失調症・40代・母と同居・通所は中断中 「電波で考えを抜かれる」との訴えがあり、窓をアルミで覆っている。質問への返答が話題からそれる。食事は母が用意したものを1日1回。入浴は2週間なし。服薬は母が手渡しで、飲んだかは不明。危険な行動の言動なし 現実のとらえ方の乱れが行動(窓を覆う)に表れ、意思疎通・清潔・食事の複数領域が崩れている。31〜40の帯とし、母の手渡しで服薬が続いている点から帯の中ほど 9月2日評価(対象期間8月26日〜9月2日)。GAF 35(31〜40の帯)。本人より「電波で考えを抜かれるから窓をふさいだ」との発言あり。居室の窓2か所がアルミ箔で覆われていることを確認。質問への返答が別の話題へ移ることが訪問中に4回。食事は母が用意したものを1日1回。母より「お風呂は2週間入っていない」「薬は手渡しているが飲んだかは分からない」との発言。傷つける考えについて伺い「ない」との返答。同日15時、主治医へ電話で確認した事実を報告し、受けた指示の内容を記載した。
利用者J・うつ病・50代・一人暮らし 終日ほぼ臥床。食事はゼリー飲料を1日1本。水分は500mL程度。訪問時の返答は短い。ごみが室内に溜まる。服薬は袋から出ていない日が5日。「消えたい」との発言はないが、「どうでもいい」との発言あり ほぼすべての領域で生活が成り立っておらず、身の回りの保持も崩れかけている。21〜30の帯とし、危険につながる具体的な言動は確かめられていない点から帯の中ほど 9月6日評価(対象期間8月30日〜9月6日)。GAF 26(21〜30の帯)。訪問時(11時)臥床中、声かけで開錠。本人より「どうでもいい」との発言が2回。食事はゼリー飲料1日1本、水分は本人の申告で約500mL。服薬カレンダーは5日分が未使用。室内にごみ袋が6袋。消えたい考えについて伺い「そこまではない」との発言。同日11時40分、主治医へ電話で食事・水分・服薬の状況を報告し、受けた指示の内容を記載した。
利用者K・双極性障害・40代・配偶者と同居・自営業 睡眠2〜3時間が1週間。話が次々に移り、話をさえぎるのが難しい。取引先に一方的な電話を繰り返し、契約を1件失った。高額の設備を注文。配偶者との口論が毎日。暴力の言動はなし 行動が症状に大きく引っ張られ、仕事・家族・判断の複数領域で重い支障がある。31〜40の帯と21〜30の帯で迷い、家庭と仕事の生活はまだ一部続いている点から31〜40の帯の下寄り 9月10日評価(対象期間9月3日〜9月10日)。GAF 32(31〜40の帯)。本人より「1週間、2〜3時間寝れば十分」との発言あり。訪問中、話題が数分おきに移り、こちらの問いかけに応じる間が取りにくかった。配偶者より「取引先に何度も電話して、契約を1件切られた」「設備を注文していた」との発言あり。配偶者との口論が毎日あるとのこと。手を上げる言動はないと双方から確認。同日13時、主治医へ電話で報告し、受けた指示の内容を記載した。帯の境目で迷ったため、仕事と家庭の生活が一部続いている点を重く見た。
利用者L・統合失調症・70代・一人暮らし・身体の持病あり 「隣の家から毒を流されている」との訴えがあり、水道水を飲まずペットボトル1日500mLのみ。食事は菓子パン1日1個。外出は近所のコンビニのみ。訪問には応じる。膝の痛みで階段がつらいとの訴え。危険な行動の言動なし 訴えの内容に沿って飲水・食事を制限しており、行動が症状に強く左右されている。膝の痛みによる外出の制限は分けて考え、21〜30の帯とし、訪問に応じ会話が成り立っている点から帯の上寄り 9月13日評価(対象期間9月6日〜9月13日)。GAF 29(21〜30の帯)。本人より「隣から毒を流されているから水道は使わない」との発言あり。飲水はペットボトル1日500mLのみ、食事は菓子パン1日1個と本人の申告。外出は近所のコンビニのみ。本人より「膝が痛くて階段がつらい」との発言があり、外出の減少のうち膝の痛みによる分は分けて評価した。訪問には玄関で応じ、会話は続いた。傷つける考えについて伺い「ない」との返答。同日、主治医へ飲水・食事の状況を報告し、受けた指示の内容を記載した。

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

危険に関わる言動があった月(20以下の帯・3例)

この帯の評価では、点数を決めることよりも、聞いた言葉と時刻、誰にいつ連絡し、どのような指示を受けたかを記録に残すことが先になります。点数の欄を埋めることを急がず、確かめた事実と連絡の経過を先に書き切ります。

設定(架空) 観察された事実 点数帯の判断根拠 記録文
利用者M・うつ病・30代・一人暮らし 「今夜、薬をまとめて飲もうと思っていた」との発言。台所に処方薬の空き袋が集められている。食事は2日とっていない。訪問への応答は保たれている 自分を傷つける具体的な言動があり、差し迫ったおそれがある。11〜20の帯とし、訪問者への応答が保たれ連絡が取れる点から帯の中ほど 9月4日評価。GAF 15(11〜20の帯)。14時10分、本人より「今夜、薬をまとめて飲もうと思っていた」との発言あり、そのまま記載した。台所に処方薬の袋が集められていることを確認。食事は2日とっていないとのこと。14時20分、主治医へ電話で発言内容と確認した事実を報告し、受けた指示の内容を記載した。14時35分、事業所管理者へ報告。指示に沿って実施した対応と、家族へ連絡した時刻を記載した。
利用者N・統合失調症・20代・両親と同居 「命令する声に従わないといけない」との訴え。前夜、包丁を持って廊下に立っていたと父より情報。訪問時は落ち着いて座っているが、声に聞き入る様子が訪問中に数回 訴えの内容に沿った行動が他人を傷つけるおそれにつながっている。11〜20の帯とし、訪問時は危険な行動が止まっている点から帯の上寄り 9月14日評価。GAF 18(11〜20の帯)。本人より「命令する声に従わないといけない」との発言あり。父より「昨夜、包丁を持って廊下に立っていた」との発言あり。訪問中(10時00分〜10時40分)は座って会話に応じたが、途中で黙って宙を見つめる場面が3回。10時45分、主治医へ電話で本人・父の発言と確認した事実を報告し、受けた指示の内容を記載した。刃物の保管について家族と話した内容と時刻を記載した。
利用者O・摂食障害・20代・母と同居 水分をほとんどとらず、立ち上がるとふらつく。会話は保たれている。体重は本人の同意を得て測定し、前月から3kg減。自分を傷つける考えは「ない」と本人 最低限の水分・食事の保持が崩れ、身体の危険につながる状態。11〜20の帯とし、意思疎通が保たれ本人が状況を話せる点から帯の上寄り 9月20日評価。GAF 19(11〜20の帯)。本人より「水を飲むのも怖い」との発言あり。飲水は本人の申告で1日コップ1杯。立ち上がり時にふらつきを2回確認。体重は本人の同意を得て測定し、前月同日より3kg減。傷つける考えについて伺い「ない」との発言。13時30分、主治医へ電話で飲水量・体重・ふらつきを報告し、受けた指示の内容を記載した。母へ伝えた内容と時刻を記載した。

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

前月から点数を動かした月・評価者で分かれた月(5例)

点数が動いたときこそ、根拠の事実が問われます。前月と今月の事実を同じ物差しで並べると、読んだ人が点数の動きを追えます。評価者で点数が分かれた場合は、分かれた理由も残しておくと、すり合わせ会の材料になります。

設定(架空) 観察された事実 点数帯の判断根拠 記録文
利用者P・統合失調症・50代・一人暮らし(前月62→今月47) 作業所 前月12回→今月2回。夜間の「足音」の訴えが週1回→毎日。入浴 週3回→週1回。服薬は残数どおり。危険な行動なし 通所がほぼ止まり、症状の訴えが毎日になった。41〜50の帯とし、服薬が保たれている点から帯の中ほどより上。前月との差15点を、通所・訴え・入浴の3つの事実で説明 9月2日評価(対象期間8月26日〜9月2日)。GAF 47(前月62)。作業所の参加 前月12回→今月2回。本人より「毎晩、天井から足音が聞こえる」との発言あり(前月は週1回程度)。入浴 週3回→週1回。服薬カレンダーの残数は処方どおり。自他を傷つける言動なし。同日16時、主治医へ電話で3つの変化を報告し、受けた指示の内容を記載した。
利用者Q・うつ病・60代・配偶者と同居(前月44→今月61) 起床 11時→7時30分。散歩 0回→週4回。家事の分担を再開。友人とお茶に出かけた。寝つけない日が週1回残る。危険な行動なし 生活の大筋が回るようになり、軽い不眠が残る程度。61〜70の帯とし、寝つけない日が残る点から帯の下寄り。前月との差17点を、起床・散歩・家事・対人の4つの事実で説明 9月9日評価(対象期間9月2日〜9月9日)。GAF 61(前月44)。起床は前月11時ごろ→今月7時30分ごろ。散歩 前月0回→今月週4回。配偶者より「洗濯をまた担当してくれている」との発言あり。本人より「先週、友人とお茶に行けた」との発言あり。寝つけない日が週1回あるとのことで、帯の下寄りとした。自他を傷つける言動なし。
利用者R・不安障害・40代・一人暮らし(月の途中で再評価) 月初の評価は66。月半ばに職場で強い発作があり、以後の出勤が0回。買い物も宅配に切り替え。月初に比べて外出がなくなった。危険な行動なし 仕事と外出の両方が止まり、月初の評価時点から明らかに変わった。事業所の取り決め(通所・就労の中断で再評価)に沿って再評価し、41〜50の帯の上寄り 9月18日再評価(対象期間9月11日〜9月18日)。GAF 48(9月2日評価 66)。本人より「9月12日に職場で息ができなくなって、それから行けていない」との発言あり。出勤 9月12日以降0回。買い物は宅配に切り替えたとのこと。外出は9月12日以降なし。自他を傷つける言動なし。事業所の取り決めに沿って月の途中で再評価した。同日、主治医へ電話で報告し、受けた指示の内容を記載した。
利用者S・統合失調症・30代・両親と同居(評価者で分かれた月) 看護師は症状の訴え(「監視されている」週3回)を重く見て52。作業療法士は家事・作業所の継続を重く見て63。作業所は予定8回中7回。家事は料理を週3回担当 症状側は51〜60、機能側は61〜70。事業所の取り決め(低い方に合わせる)に沿って51〜60の帯を採り、機能が保たれている点から帯の上寄り 9月22日評価(対象期間9月15日〜9月22日)。GAF 57(51〜60の帯)。本人より「外に出ると監視されている気がする」との発言が期間中3回。作業所は8月の予定8回中7回参加。料理を週3回担当していると母より情報あり。看護師の評価52、作業療法士の評価63で分かれたため、事業所の取り決めに沿い症状側の帯を採り、機能が保たれている点から帯の上寄りとした。次回のすり合わせ会の事例として共有する。
利用者T・うつ病・20代・一人暮らし(初回訪問の月) 初回訪問。睡眠は入眠3時・起床13時。食事は1日1回、コンビニの弁当。アルバイトは先月から休んでいる。友人との連絡は途絶えている。家族とは月1回電話。希死念慮は「ない」 仕事が止まり、対人交流も家族との電話に限られる。41〜50の帯とし、情報が初回の聞き取りだけで足りないため暫定とした 9月25日評価(初回訪問・暫定)。GAF 45(41〜50の帯)。本人より「3時ごろ寝て、昼の1時ごろ起きる」との発言あり。食事は1日1回、コンビニの弁当とのこと。アルバイトは8月から休んでいるとの発言。友人との連絡はなく、家族とは月1回電話。気持ちのつらさについて伺い、消えたい考えは「ない」との発言。初回の聞き取りのみで対象期間の事実が不足しているため暫定の評価とし、次回に生活記録表をもとに見直すこととした。

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

手元に残す記録の一覧(記入欄)

評価の手順と取り決めを続けて回すには、どこに何が置いてあるかを全員が分かるようにしておくことが欠かせません。下の一覧を事業所の実情に合わせて埋めてください。

記録の名前 中身 保管場所(記入欄) 最終更新日(記入欄)
GAF評価の取り決め 対象期間・低い方に合わせるかどうか・帯の中の位置の決め方・再評価の目安    
参照する基準の版と要約表 事業所が参照する原典の版と、事業所内の要約表    
利用者ごとの点数の推移 評価日・点数・帯・評価者の職種を月ごとに並べたもの    
点数の根拠の記録 記録書などに書いた、点数と根拠の事実    
主治医への報告の控え 点数が大きく動いたときの報告日時・伝えた事実・受けた指示    
すり合わせ会の記録 実施日・参加者・事例ごとの点数の幅・直した取り決め    
すり合わせ用の架空事例 高め・中ほど・低めの架空事例と、各回の採点結果    
記載の要否・時期の確認結果 前の章の対照表で確かめた結果と、確かめた日・確かめた人    
新しい職員向けの研修記録 採点練習の実施日と、取り決めを説明した日    
本人・家族への説明の記録 点数や評価について説明した日時・内容・本人の反応    

※上記は評価と記録の考え方の一例であり、診断・治療方針や診療報酬の算定を判断するものではありません。評価の基準・手順は所属機関の定めと主治医の指示に従い、算定の取扱いは審査支払機関・保険者にご確認ください。

運営指導での確認については、当社が参照している自治体の公表事例の中では、GAFの評価そのものに関する指摘は確認できませんでした(公表事例では確認できず)。記録の整い方は、精神科訪問看護の記録全体として点検してください。

GAF尺度についてよくある質問

GAF尺度はDSM-5で削除されたと聞きました。今も使われているのはなぜですか?

DSM-5では多軸評定とともにGAFが削除されましたが、精神科訪問看護の記録や報告書などには、GAFの評点を書く欄を設けている様式があります。記載の要否・時期は、診療報酬の告示・通知と審査支払機関の取扱いをご確認ください。

同じ利用者でも看護師によって点数が10点以上違います。どうすればよいですか?

点数そのものより、どの事実を根拠にしたかを並べて比べるのが近道です。症状と生活機能のどちらを重く見たか、評価の対象期間をどこに置いたかが違っていることが多いため、事業所内で対象期間・迷ったときの寄せ方・根拠の書き方を取り決め、年に数回、同じ架空事例を全員で採点して差を確かめる方法があります。

前月から点数を大きく変えるときは、何を書けばよいですか?

変えた理由になった事実を、前月と今月の数字を並べて書きます。例えば外出が週3回から0回、睡眠が6時間から3時間のように、同じ物差しで比べられる形にすると、読んだ人が点数の動きを追えます。あわせて、主治医へ報告した日時と受けた指示の内容を記載します。

症状は落ち着いているのに、生活がほとんどできていません。点数はどちらに合わせますか?

GAFでは、症状の重さと機能の低さのうち、より低い方に合わせて帯を選ぶ考え方が広く用いられています。ただし身体の病気や住環境による制限を含めるかどうかなど、細かな扱いは所属機関の手順によるため、事業所の取り決めと主治医の指示をご確認ください。

GAFの点数を本人や家族に伝えてもよいですか?

精神科訪問看護の記録は、本人から開示を求められる場合があります。点数だけを伝えると成績のように受け取られることがあるため、伝えるかどうかと伝え方は主治医と事業所で方針を決めておき、伝えた場合は日時と本人の反応を記録に残します。

出典・参考

本ページのGAF尺度の説明は、米国精神医学会の診断統計マニュアル(DSM)第3版改訂版・第4版で用いられた「機能の全体的評定尺度」について一般に知られている内容を、当社が自分の言葉で要約・整理したものです。原典の記述文を転載したものではなく、原典および米国精神医学会の公式見解ではありません。評価事例はすべて架空の設定です。

正式な評価基準は原典と所属機関の手順に、評価は主治医の指示に従ってください。GAFの記載の要否・時期は、診療報酬の告示・通知と審査支払機関の取扱いをご確認ください。

この記事の執筆・編集

介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)

介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。

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