申し送りは、シフト交代時に利用者の状態やケアを次の担当者へ確実に伝える、安全なケアの土台です。漏れなく伝えるコツと例文を整理します。
申し送りとは
申し送りは、勤務交代の際に、利用者の状態の変化・実施したケア・注意点などを引き継ぐことです。口頭と記録の両方で行われます。
漏れなく伝えるコツ
- 5W1Hで簡潔に――いつ・誰が・何を・どうしたかを短く。
- 変化とリスクを優先――前回との違い、注意すべき点を先に伝える。
- 事実と判断を分ける――観察した事実と、対応の判断を区別する。
- 次にすべきこと――次の担当者が行う対応を明確に。
書き方の例
「本日午前、体温37.8度。むくみが前日より増加。主治医へ連絡し、夕方の再検温を指示。次勤務帯で検温と水分量の確認をお願いします。」
口頭と記録の使い分け
急ぎや重要なことは口頭でも伝え、記録にも残して「言った・言わない」を防ぎます。記録は誰が読んでも分かる表現にします。
場面別の申し送り例
- 体調変化……「午後から38.0度の発熱。主治医へ連絡済み。次帯で再検温を」
- 転倒……「14時、居室で尻もち。外傷・痛みの訴えなし。経過観察を」
- 服薬……「朝食後薬の飲み忘れあり。昼に服薬確認をお願いします」
介護の申し送り|そのまま使える例文
申し送りは「次の勤務者が何をすればよいか」が分かることが目的です。
| 場面 | 例文 |
|---|---|
| 体調の変化 | ◯◯様、14時に37.8℃の発熱。水分摂取を促し、16時に37.2℃へ低下。夜間も検温をお願いします。 |
| 転倒・ヒヤリ | ◯◯様、10時にトイレ前で膝をつかれました。外傷なし、痛みの訴えなし。念のため夜間の歩行時は見守りをお願いします。 |
| 食事 | ◯◯様、昼食の主食が3割にとどまっています。夕食時の摂取量を確認してください。 |
| 家族対応 | ◯◯様のご長女より、次回受診への同行を希望とのお電話。ケアマネジャーへの連絡は明日担当が行います。 |
| 申し送り事項なし | ◯◯様、本日は特記事項ありません。食事・排泄・睡眠とも普段どおりです。 |
伝わる申し送りの型
「誰が・いつ・何があって・どう対応し・次に何をしてほしいか」の順で書くと、抜けが出にくくなります。
| 要素 | 書くこと |
|---|---|
| 誰が | 利用者名 |
| いつ | 時刻(「午前中」ではなく「10時」) |
| 何があって | 観察した事実(推測と分けて書く) |
| どう対応し | 実施したこと |
| 次に何を | 次の勤務者への依頼(依頼がなければ「経過観察のみ」と書く) |
口頭で伝えるものと記録に残すもの
- 口頭のみで済ませない——伝えた内容は必ず記録に残す
- 緊急性のあるものは先に口頭——記録を待たずに直接伝える
- 記録は事実、判断は分けて——「痛そうだった」ではなく「顔をしかめ、右膝をさすっていた」
申し送りの例文(場面別)
| 場面 | 例文 |
|---|---|
| 状態の変化 | 101号室の○○様。本日14時ごろより37.6℃の発熱。水分は摂取できています。16時に再検し37.2℃。夜間も検温をお願いします。 |
| 転倒・ヒヤリハット | ○○様、10時30分にトイレ前で膝をつかれました。外傷なし、痛みの訴えなし。ご家族へは11時に連絡済み。夜間の移動時は見守りをお願いします。 |
| 食事 | ○○様、昼食の主食を半分残されました。「あまり食べたくない」とのこと。夕食の摂取量を確認し、続くようなら記録に残してください。 |
| 排泄 | ○○様、3日排便がありません。本日、看護師へ報告済み。指示があれば夜勤帯で対応をお願いします。 |
| 家族対応 | ○○様の長女様より、来週の受診同行についてお問い合わせがありました。担当ケアマネジャーへ連絡済みです。 |
| 申し送り不要の判断 | ○○様、本日特記事項なし。バイタル・食事・排泄いずれも普段どおりです。 |
申し送りを組み立てる5つの順番
- 誰の話かを最初に言う——名前を先に出すと、聞く側が構えられます
- いつ起きたかを時刻で言う——「さっき」は人によって幅があります
- 何が起きたかを事実で言う——解釈は分けます
- 何をしたかを言う——対応済みか、未対応かで受け手の動きが変わります
- 次に何をしてほしいかを言う——ここが抜けると、情報を渡しただけになります
申し送りでよくある失敗
- 長い——1人あたり30秒を超えると、後半が頭に入りません
- 解釈が混ざる——「機嫌が悪かった」は事実ではありません
- 依頼が曖昧——「気にしておいてください」では何をするか分かりません
- 口頭だけ——重要なものは記録にも残します。言った・言わないになります
- 全員に同じ量——夜勤帯に必要な情報と、日勤帯に必要な情報は違います
申し送りを短くするコツ
- 全員に必要な情報と、担当者だけに必要な情報を分ける——全体では前者だけを話します
- 記録に書いてあることは読み上げない——「記録のとおりです」で足りるものがあります
- 変化がないことも一言で言う——「特記なし」を省くと、抜けたのか無かったのか分かりません
- 依頼は最後にまとめる——聞く側が動きを整理できます
記録と申し送りの使い分け
| 記録 | 申し送り | |
|---|---|---|
| 目的 | 事実を残す | 次の担当者を動かす |
| 読む相手 | 行政、家族、後任、司法 | その日の勤務者 |
| 書く量 | 必要な事実をすべて | 動くために要る分だけ |
| 残るか | 保存期間中ずっと残る | その日限り(重要なものは記録へ) |
口頭だけで終わらせないもの
- 体調の変化と、それに対して行った対応
- 転倒・ヒヤリハットと、家族へ連絡した時刻
- 家族からの申し出、苦情、相談
- 医療者への報告と、受けた指示
- サービス内容を変更した理由と、判断した人
申し送り|そのまま使える文例
以下はすべて記載のイメージを示すための(例)であり、実在の利用者ではありません。状態・数値は実際の記録に置き換えてご使用ください。
| 場面 | 申し送りの文例 | 受けた側が確認すること |
|---|---|---|
| 体調の変化 | 7/16 右下腿の浮腫が増強。同日14:20 主治医へ電話報告、経過観察の指示 | 浮腫の程度と、次回の観察のタイミング |
| 発熱 | 7/18 6:00 体温38.2℃。解熱剤使用後、8:00に37.4℃。水分摂取を促した | 再検温の時刻と、受診の目安 |
| 転倒 | 7/20 10:30 居室で転倒。外傷なし。家族と担当ケアマネへ連絡済み(事故報告書により別途) | その後の状態と、動線の見直しの有無 |
| 服薬 | 夕食後分の飲み忘れが2回。服薬カレンダーの置き場所を食卓へ変更した | 変更後の効果と、残薬の確認 |
| 食事 | 昼食の摂取が5割。「食欲がない」との訴えあり | 次食の摂取量と、体重の推移 |
| 排泄 | 夜間のトイレが3回に増加。日中の水分摂取の時間を前倒しした | 夜間の回数と、日中の水分量 |
| 皮膚 | 仙骨部に発赤2cm。圧迫を解除しても消退せず。除圧用具を導入 | 発赤の大きさの変化と、体位変換の実施 |
| 本人の訴え | 「息子に迷惑をかけている」との発言あり。傾聴した | 同様の発言の有無と、表情の変化 |
| 家族からの依頼 | 長女より「夜間の様子を知りたい」と依頼。連絡帳に夜間の記載を追加する | 記載が続いているか |
| サービスの変更 | 7/23より通所の入浴を週2回へ変更(担当ケアマネと調整済み) | 変更後の本人の受け止め |
| 未対応の事項 | 手すりの位置調整を福祉用具事業所へ依頼中。7/25に訪問予定 | 訪問が実施されたか |
| 引き継ぎの依頼 | 明日の受診に同行が必要。10:00に自宅集合 | 同行者が決まっているか |
申し送り|運営指導で公表されている指摘
| 公表されている指摘 | 公表元 |
|---|---|
| 提供したサービスの内容だけでなく利用者の心身の状況(利用者の様子等)についても記録することとされ、「特変なし」等しか書かれていない記録が見受けられる | 松山市の運営指導での主な指摘事項に関する資料 |
| サービス実施時間が一律に記載されており実態が反映されていない/変更した際に変更した旨とその理由が記録されていない/特記・連絡事項欄に利用者の状況がほとんど記載されていない/サービス提供責任者による記録の点検が十分に行われていない | 堺市の集団指導資料「サービスの提供の記録」 |
| サービス提供に関する記録等の保存年限は市条例に則り5年間とすること。運営規程等に保存年限を記載している場合は誤りがないか確認すること | 金沢市の資料 |
| 記録の保存期間について、サービスの「完結」の日から「5年間」と記載すべきところ、「サービス提供の日」「2年間」となっている例 | 福井市の令和7年度集団指導資料 |
要件・運用は保険者により異なります。詳細は監査対策ナビと各自治体の公表資料をご確認ください。
申し送り|避けたい書き方と言い換え
| 避けたい書き方 | 気をつけたい理由 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 特変なし | 何を見た結果か分からない | 血圧・食事・排泄を確認。前日からの変化なし |
| あとはお願いします | 何を頼まれたか分からない | 手すりの位置調整の進捗を、7/25に確認してください |
| 様子を見てください | 見る対象が示されていない | 右下腿の浮腫の程度を、次回訪問時に確認してください |
| たぶん大丈夫 | 推測が申し送られる | 現時点で発熱・呼吸苦なし。再検温は14時に実施予定 |
| 口頭だけで済ませる | 記録が残らない | 電話で伝えた場合も、内容と時刻を記録する |
| 主語がない | 誰が何をしたか分からない | 看護師◯◯が主治医へ電話報告した |
| 未対応のまま書かない | 抜けが起きる | 対応中の事項は「未対応」として明記する |
業種別の書き方は介護記録の書き方まとめ、訪問介護は実施記録の書き方、訪問看護は記録書Ⅱの書き方をご覧ください。
申し送りを効率化する
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の記録機能(施設記録マナ)は、日々の記録から要点を整理しやすく、申し送りの抜け漏れを減らせます。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
申し送りの記入例(項目別)
申し送りは、次の勤務者へ利用者の状態と必要な対応を漏れなく伝えるものです。項目別の記入例をまとめました。
| 項目 | 申し送りの例 |
|---|---|
| 体調の変化 | 午後から微熱37.4℃。水分を促し経過観察中。夜間も検温を。 |
| 排泄 | 朝から排便なし。夕方に下剤使用、経過を確認。 |
| 食事・服薬 | 昼食後の内服を確認。夕食は摂取量に注意。 |
| 転倒・事故 | 特になし。 |
| 家族・連絡 | 家族より面会の連絡あり。明日午後に来訪予定。 |
よくある質問(FAQ)
Q. 口頭と記録、どちらを優先?
A. 重要なことは両方で行います。口頭で確実に伝え、記録にも残して認識のズレを防ぎます。
Q. 申し送りが長くなりすぎます。
A. 変化とリスク、次にすべきことに絞ると簡潔になります。変わりない項目は省略してかまいません。
申し送りで大切なことは?
口頭と記録はどう使い分けますか?
漏れをなくすには?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
場面別|申し送りの文例(口頭・記録の両方に使える形)
申し送りは「誰の・何が・どうだった・次に何をしてほしいか」の4つで足ります。受け手が次の行動を決められる形にします。
| 場面 | 申し送りの文例 |
|---|---|
| 体調の変化 | ◯◯様、13時に37.5度。看護師へ報告済み。16時に再検の指示が出ています。 |
| 食事量の低下 | ◯◯様、昼食が主食3割。「においがだめ」とのこと。夕食は量を減らして提供してください。 |
| むせ込み | ◯◯様、昼食の汁物で1回むせ込み。とろみを中間に変更しています。夕食も同じ濃度でお願いします。 |
| 転倒 | ◯◯様、10時に居室で尻もち。外傷なし、看護師確認済み。夜間の巡回時に痛みの訴えがないか確認してください。 |
| 内出血 | ◯◯様、右前腕に3cmの内出血。本人に心当たりなし。看護師へ報告済み。拡大がないか明日確認をお願いします。 |
| 皮膚 | ◯◯様、仙骨部に発赤。体位変換を2時間ごとに変更しています。 |
| 排泄 | ◯◯様、3日排便なし。腹部に張りあり。看護師へ報告済み。下剤の指示が出ています。 |
| 服薬 | ◯◯様、朝の薬をテーブルに残されていました。看護師が対応済みです。 |
| 夜間 | ◯◯様、昨夜2回起き出されました。日中の臥床を減らす方向でお願いします。 |
| 帰宅願望 | ◯◯様、夕方に「帰る」と話されます。お茶に誘うと落ち着かれます。 |
| 入浴 | ◯◯様、本日入浴を「寒い」と断られました。15時に脱衣室を暖めて再度お誘いください。 |
| 拒否 | ◯◯様、更衣で手を払いのけられました。時間を空けると応じられます。 |
| 痛み | ◯◯様、腰の痛みを10のうち5と話されます。臥床で軽減。夜間に増強する傾向があります。 |
| 家族の連絡 | ◯◯様、長女より「明日15時に面会」との連絡がありました。 |
| 家族の要望 | ◯◯様のご家族より、洗濯物を毎回持ち帰りたいとのご希望。玄関に置いてください。 |
| 医療の指示 | ◯◯様、主治医より血圧が160以上のときは入浴を中止するよう指示が出ています。 |
| 受診 | ◯◯様、明日10時に◯◯医院を受診。9時30分にお迎えです。 |
| 新規 | 本日から◯◯様が利用開始。左片麻痺があり、移乗は軽介助です。 |
| 退所 | ◯◯様、明日で利用終了。荷物の確認をお願いします。 |
| 感染対策 | ◯◯様、発熱があり、明日の結果が出るまで別室で対応します。 |
| 機器 | エアマットの電源が抜けていることがありました。巡回時に作動を確認してください。 |
| 物品 | 手袋の在庫が残り1箱です。発注済みですが、節約をお願いします。 |
| 行事 | 明日14時からレクリエーションです。◯◯様は座位で参加されます。 |
| 職員体制 | 明日は◯◯が休みのため、入浴の時間を14時からに変更します。 |
申し送りでやりがちなことと、直し方
| やりがちなこと | どうするか |
|---|---|
| 「変わりありません」だけ | 何を見て変わりないと判断したかを一言添える |
| 全員分を同じ量で話す | 変化があった人に絞る。変化がない人はまとめて |
| 口頭だけで残さない | 記録にも同じ内容を書く |
| 「様子を見てください」 | 何を・いつ・どうなったら報告するかまで言う |
| 評価語で伝える | 「不穏」ではなく「同じ質問を1時間に3回」 |
| 長い | 1人あたり30秒を目安に、要点だけ |
| 伝えた相手が分からない | 誰に申し送ったかを記録に残す |
| 欠席者へ伝わらない | ノートや端末で必ず共有できる形にする |
申し送りの元になる記録の型はフォーカスチャーティング(看護記録の書き方)をご覧ください。
申し送りの内容を文書に残す場合は介護の報告書の書き方、記録の保存年限は介護記録の保存期間と個人情報の扱いをご覧ください。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
