がん末期の方のケアプランは、痛みなどの症状をやわらげ、本人・家族の意向を尊重しながら、住み慣れた自宅で穏やかに過ごせるよう支えることが中心になります。文例とともに整理します。
ケアの視点
疼痛をはじめとする症状の緩和を中心に、本人・家族の意思決定(ACP)を支えます。状態の変化が早いため、こまやかな観察と24時間の連絡体制が大切です。
ケアプランの文例
ニーズ:痛みをやわらげ、最期まで自分らしく自宅で過ごしたい。
長期目標:症状がやわらぎ、望む生活を自宅で続けられる。
短期目標:痛みが緩和され、夜間も休息がとれる。
サービス内容:訪問看護による疼痛・症状の観察と緩和ケア、医療用麻薬の管理支援、本人・家族の意思決定支援、看取りに向けた家族支援。
書き方のポイント
- 痛み・症状の変化を具体的に書く
- 本人・家族の意向(ACP)と、その変化を記載
- 24時間の連絡・緊急対応の体制を明記
計画に落とし込むときに迷うところ——がん(末期)の在宅療養の場合
① 状態が変わる速さが、他の疾患と違う
数週間、ときに数日で状態が変わります。計画を月単位で組むと追いつきません。見直しの頻度と、緊急時に誰が動くかを最初に決めておきます。
② 「できるようになる」目標にしない
機能の回復を目標に置くと、状態が下がるたびに未達になります。「その時々でしたいことができる」という書き方にします。
③ 本人・家族が知りたいことを、支援者が決めない
予後や治療について、どこまで知りたいかは人によって違います。本人が語った言葉をそのまま残し、支援者の解釈で先回りしないことが要点です。
長期目標・短期目標の立て方
| 避けたい書き方 | 扱いやすい書き方 | |
|---|---|---|
| 長期目標 | 痛みがなくなる | 痛みが和らぎ、過ごしたい場所で過ごせる |
| 短期目標 | 食事量を増やす | 食べたいものを、食べられる量だけ楽しめる |
| 短期目標 | リハビリを続ける | 起きて過ごしたい時間に、起きていられる |
サービス種別ごとの位置づけ例
| サービス | 位置づけの例 | 記録で見るところ |
|---|---|---|
| 訪問看護 | 症状の緩和、医療的な管理、24時間の連絡体制 | 痛みの程度と部位、服薬、全身状態 |
| 訪問診療 | 疼痛コントロール、看取りへの備え | 診察と処方の内容 |
| 訪問介護 | 生活の支援、清潔の保持 | 本人ができること、負担の少ない介助方法 |
| 福祉用具 | 特殊寝台、体圧分散、移動の支援 | 用具の適合、体位の工夫 |
| 家族 | 日々の見守り | 家族自身の疲労と気持ち |
第1表・第2表の文例
第1表:利用者及び家族の生活に対する意向
- 本人「痛みが取れれば、最期まで家にいたい」
- 妻「急に悪くなったとき、どうすればよいのか分からない」
第1表:総合的な援助の方針
痛みや苦痛をできるだけ和らげ、ご本人が過ごしたい場所で過ごせるよう支援します。状態の変化が速いため、計画は短い間隔で見直します。ご家族が不安なときにすぐ連絡できる体制を整え、ご家族自身の休息も支援の対象とします。
第2表:ニーズ・目標・サービス内容
| 生活全般の解決すべき課題 | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 痛みにより、したいことができない | 痛みが和らぎ、過ごしたいように過ごせる | 夜間に痛みで目が覚める回数が減る | 訪問看護:疼痛の評価と対応/訪問診療:処方の調整 |
| 状態の変化が速く、家族が不安を感じている | 不安なときにすぐ相談できる | 24時間の連絡先を家族が把握している | 訪問看護:24時間対応体制/全事業所:連絡経路の共有 |
| 食事がとれず、体力が落ちている | 食べたいものを、食べられる量だけ楽しめる | 好きなものを口にできる日がある | 訪問介護:調理と食事の支援 |
| 介護する家族の負担が大きい | 家族が休息をとりながら介護を続けられる | 家族が週1回、まとまった休息をとれる | 訪問介護:家事支援/短期入所またはレスパイトの検討 |
モニタリングで見る、変化のサイン
- 痛み——部位、強さ、いつ強くなるか、薬が効いているか
- 食事・水分——量より「口にできたか」
- 排泄——便秘は薬の影響でも起きます
- 呼吸——息苦しさ、痰
- 意識——傾眠、混乱
- 本人の言葉——「もういい」「疲れた」といった言葉は、そのまま記録に残します
- 家族——睡眠、食事、表情。介護者の限界は本人の変化より先に来ることがあります
計画づくりでよくある疑問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| 予後を計画書に書くか | 書きません。本人・家族が語った言葉と、希望する過ごし方を書きます |
| 目標の期間はどう設定するか | 短く設定し、頻繁に見直します。3か月では長すぎることがあります |
| 急変時の対応をどこまで書くか | 誰に、どの順で連絡するかを明記します。判断の内容までは書きません |
| 本人が「家で最期まで」と言っている | その言葉を第1表に残します。実現できるかは、そのつど関係者で確認します |
| 家族が限界に見える | 家族への支援を計画に位置づけます。休息は本人の生活を守ることでもあります |
※本記事は計画作成の一般的な考え方を整理したものです。医学的な判断は主治医の指示によります。給付や算定の可否は保険者(市区町村)にご確認ください。
文例を土台に、作成はAIで
文例はあくまで土台です。介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の居宅向け機能(居宅マナ)は、アセスメントからケアプランの原案を自動で作成します。確認・修正するだけで仕上がり、実証では作成時間が平均125.5分から37.6分に短縮しました(約70%短縮)。※所要時間は利用者さまの状態・記載量・事業所の運用により異なります。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
ケアプラン文例(記入例・コピペ可)
がん(末期)の方のケアプランでは、痛みなどの症状緩和、本人の望む過ごし方の尊重、家族支援、多職種・医療との連携が柱です。
| 生活課題(ニーズ) | 長期・短期目標 | サービス内容・留意点 |
|---|---|---|
| 自宅で痛みなく穏やかに過ごしたい | (長期)苦痛が緩和され望む形で在宅生活を続けられる/(短期)痛みや不安が和らいだ状態で過ごせる | 訪問看護の緩和ケア・症状観察、主治医と連携、24時間の連絡体制 |
| 自分らしい時間を大切にしたい | (長期)本人の望む過ごし方が支えられる/(短期)したいことができる時間をもてる | 本人の意向の確認、訪問介護の生活支援、環境の工夫 |
| 家族も安心して支えたい | (長期)家族が支えながら見送りに備えられる/(短期)家族の不安や負担が和らぐ | 家族への相談・グリーフケア、レスパイト、多職種の連携 |
がん(末期)|第2表の通し文例
以下はすべて記載のイメージを示すための(例)であり、実在の利用者ではありません。アセスメント結果とご本人の意向に合わせて必ず書き換えてください。岡山市の資料では「複数の利用者の居宅サービス計画の内容が一律である」ことが不適切事例として挙げられています。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 痛みが不安だが、最期まで家で過ごしたい | 痛みがやわらいだ状態で、望む場所で過ごせる(3か月) | 日中の痛みが落ち着き、したいことができる(1か月) | 訪問看護:疼痛の評価(毎日)/訪問診療/訪問介護:清潔ケア |
| 薬が効かなくなるのが心配だ | 痛みへの対応が続き、不安が軽くなる(3か月) | レスキュー薬を自分のタイミングで使える(2週間) | 訪問看護:使い方の指導/主治医:定時薬の調整 |
| 食べられなくなってきた | 食べたいものを、食べられる形で口にできる(3か月) | 好きなものを1日1回は口にできる(1か月) | 訪問看護:口腔と嚥下の観察/訪問介護:少量ずつの準備 |
| だるくて起き上がれない日がある | 体調に合わせて過ごし方を選べる(3か月) | 起きられる日は、椅子に座って過ごせる(1か月) | 訪問リハビリテーション:負担のない動作/福祉用具:特殊寝台 |
| 家族に迷惑をかけたくない | 本人と家族が納得した形で過ごせる(3か月) | 支援を受ける範囲を自分で決められる(2週間) | 介護支援専門員:意向の確認/訪問介護:本人の希望に沿った援助 |
| 家族が夜も眠れず疲れている | 家族が休息をとりながら支えられる(3か月) | 家族が週2回、まとまった休息をとれる(1か月) | 訪問看護:24時間対応/短期入所療養介護/訪問介護:夜間の支援 |
| 入浴して、さっぱりしたい | 清潔が保たれ、心地よく過ごせる(3か月) | 週2回、体を拭いてさっぱりできる(2週間) | 訪問看護:清潔ケア/訪問介護:清拭・部分浴 |
| 急に具合が悪くなったときが不安だ | 急変時にも慌てず対応できる(3か月) | 急変時の連絡手順を家族が実行できる(2週間) | 訪問看護:24時間連絡体制/主治医:訪問診療 |
| やり残したことがある | 大切にしたいことを、できる形で叶えられる(3か月) | 本人が望む外出や面会が1回実現する(1か月) | 訪問看護:体調の調整/家族・関係者との調整 |
| 看取りについて家族と話せていない | 本人と家族が意向を共有できる(3か月) | 看取りの場所と方針について話し合いの場を持てる(1か月) | 訪問看護:意思決定の支援/訪問診療:説明の場の設定 |
がん(末期)|観察項目とモニタリングの視点
短期目標の期間が終わる前に、次の項目を確認して評価します。公表資料では、実施状況の把握を行わずに一律に短期目標の期間を延長していた事例が指摘されています。
| 観察する項目 | 変化のサイン | 計画への反映 |
|---|---|---|
| 疼痛 | 強さ、部位、レスキュー薬の使用回数 | 使用が増えたら速やかに主治医へ報告する |
| 食事・水分 | 摂取量、食べたいものの有無 | 無理に勧めず、口にできる形を工夫する |
| 倦怠感 | 起きられる時間、日内の変動 | 活動の目標を体調に合わせて置き直す |
| 呼吸 | 息苦しさ、体位による違い | 安楽な姿勢と福祉用具を計画に書く |
| 排泄 | 便秘、尿量の減少 | 薬剤の影響も含め、主治医へ報告する |
| 精神面 | 不安の訴え、気持ちの変化 | 傾聴の時間を計画に位置づける |
| 家族の状況 | 睡眠、疲労、不安 | レスパイトの回数を見直す |
| 意向 | 過ごしたい場所、してほしいこと | 変化があれば、そのつど記録して共有する |
がん(末期)|避けたい書き方と言い換え
姫路市の資料では、第2表の目標欄に「利用者の目標ではなく、介護者が提供すべきサービス内容が記載されていた」ことが指摘されています。目標は利用者を主語に、達成できたか判断できる形にします。
| 避けたい書き方 | 理由 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| がんの進行を止める | 疾患の経過そのものは目標にできない | 痛みがやわらいだ状態で、望む場所で過ごせる |
| 疼痛コントロールを行う | 支援者側の行為であり、目標ではない | 日中の痛みが落ち着き、したいことができる |
| 栄養状態を維持する | 終末期の状況に合っていない | 好きなものを1日1回は口にできる |
| 家族を支援する | 家族が主語で、利用者の目標になっていない | (家族支援として)家族が週2回、まとまった休息をとれる |
| 看取りに備える | 何をするのか分からない | 看取りの場所と方針について話し合いの場を持てる |
| 安楽に過ごす | 評価の基準がない | 起きられる日は、椅子に座って過ごせる |
| 急変に対応する | 誰が何をするか分からない | 急変時の連絡手順を家族が実行できる |
第2表そのものの書き方はケアプラン第2表の書き方・文例、他の疾患は疾患別ケアプランの文例をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
末期がんのケアプランで大切な点は?
症状緩和はどう位置づけますか?
家族への支援は?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
無料ではじめる
次の一歩を、どうぞ
介護のDXは、ゆっくりでいい。
まずは無料で、現場で試すところから。
アプリケーションを無料で使ってみる(iPhone / Android)
利用者さま3名まで・期限なく無料/クレジットカード登録不要
場面別|がん(療養期・終末期)の観察と記録の文例
がん(療養期・終末期)の方の記録で、その日の変化が伝わる書き方を場面ごとにまとめました。数字と時刻を入れるのが要点です。
| 場面 | 記録の文例 |
|---|---|
| 痛み | 腰部の痛み。数字で聞くと10のうち4。貼付剤の使用を継続。 |
| 痛みの変化 | 夜間に痛みで目が覚めることが週2回。医師へ報告した。 |
| 食事 | 主食3割・副食2割。「においがだめ」と話される。少量ずつ提供。 |
| 水分 | 1日600mL。氷片を勧めると口にされる。 |
| 倦怠感 | 午前中は臥床して過ごされる。午後に車いすで居間へ。 |
| 排便 | 3日ぶりに排便。緩下剤で調整している。 |
| 皮膚 | 仙骨部に発赤あり。体位変換を2時間ごとに行っている。 |
| 呼吸 | 安静時の呼吸18回/分。労作時に息切れあり。 |
| 睡眠 | 夜間2回覚醒。痛みによるもの。 |
| 気持ち | 「まだやりたいことがある」と話される。傾聴した。 |
| 家族の気持ち | 長女より「どこまでしてあげられるか不安」との訴え。 |
| 意思の確認 | 本人・家族とも自宅で過ごすことを希望されている。 |
| 医師との連携 | 7月12日往診。痛み止めの量が変更となった。 |
| 訪問看護 | 週3回訪問。痛みの評価と処置を実施。 |
| 緊急時 | 夜間の連絡先を紙に書いて冷蔵庫に貼った。 |
| 看取り期 | 呼吸は下顎呼吸。声をかけるとわずかに開眼される。家族が手を握っておられる。 |
| 家族への説明 | これから起こりうる変化について、看護師から説明が行われた。 |
| 記録の注意 | 痛みは数字で、食事は割合で、変化は前回との比較で書く。 |
あわせて確認したい、併存しやすい状態
がん(末期)の方は、次の状態を併せ持つことがあります。それぞれの文例と、計画に書くときの観点をまとめています。
27の疾患・状態の一覧は疾患別ケアプランの文例にまとめています。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
