訪問看護記録書Ⅰ(フェイスシート)は、利用者の基本情報をまとめる、看護の出発点となる書類です。「記録書Ⅱとの違いは?」「どこまで書く?」と迷う方に向けて、記載項目・記入例・更新のタイミングを整理します。
訪問看護記録書Ⅰ(フェイスシート)とは
記録書Ⅰは、主治医の指示書や居宅介護支援事業所からの情報、初回訪問時に把握した利用者の基本情報をまとめる書類です。フェイスシートとも呼ばれ、毎回作成する記録書Ⅱとは異なり、一度作成したら変更があったときに更新します。ここが充実していると、その後の計画書・記録の質が安定します。
記録書Ⅰと記録書Ⅱの違い
- 記録書Ⅰ――利用者の基本情報・初回情報をまとめる。作成は基本1回、変更時に更新。
- 記録書Ⅱ――1回ごとの訪問の記録。毎回作成する(SOAPなどで記載)。
主な記載項目
- 訪問看護の依頼目的
- 初回訪問年月日
- 主たる傷病名
- 現病歴・既往歴
- 療養状況・介護状況
- 生活歴
- 主治医・医療機関の情報
- 家族等の緊急時の連絡先
- 担当ケアマネジャー・指定居宅介護支援事業所
様式は、2021年度の介護報酬改定に合わせて厚生労働省が示した標準様式が基準です。自ステーションの様式が標準様式に沿っているか、一度確認しておきましょう。
書き方のポイント
- 情報源を意識する――指示書・ケアプラン・本人/家族のどこから得た情報かを明確にします。
- 初回訪問で漏れなく収集――以後のケアの土台になるため、生活歴や療養環境まで丁寧に。
- 変更があれば都度更新――状態・主治医・連絡先が変わったら速やかに修正します。
記入例
【療養・介護状況】
独居。日中は自立して生活できるが、服薬管理に一部見守りが必要。要介護2。週2回の訪問看護を利用。近隣に長女が居住し、緊急時の対応が可能。
【現病歴・既往歴】
2年前に脳梗塞を発症、右片麻痺が残存。高血圧症・2型糖尿病で内服治療中。X年X月に肺炎で入院、退院後に訪問看護を開始。
【家族・緊急連絡先】
長女(車で10分)を第一連絡先とする。日中不在時は長男(携帯)へ。主治医は◯◯クリニック(24時間対応可)。
記録書Ⅰと計画書・報告書のつながり
記録書Ⅰでまとめた基本情報は、計画書の目標設定や、報告書での経過報告の土台になります。全体像は訪問看護の書類一覧で確認できます。
記録書Ⅰに「国が定めた様式」はあるのか
訪問看護の記録書は、様式そのものが法令で一律に定められているわけではありません。指定基準(平成11年厚生省令第37号)が求めているのは記録を整備し、一定期間保存することであり、レイアウトは事業所ごとに設計できます。
そのため「他社の様式をそのまま使ったら項目が足りなかった」ということが起こります。様式を選ぶ前に、自事業所が満たすべき記載項目を確認する順番が安全です。
医療保険と介護保険で、記録書Ⅰの位置づけが変わるところ
| 介護保険の訪問看護 | 医療保険の訪問看護 | |
|---|---|---|
| 利用の起点 | ケアプランへの位置づけ+主治医の指示書 | 主治医の訪問看護指示書 |
| 計画の相手 | 居宅サービス計画(ケアマネジャー)との整合 | 医療機関との連携が中心 |
| 記録書Ⅰで重くなる項目 | 要介護度、支給限度額、他サービスの利用状況 | 傷病名、特別な管理の有無、公費の種別 |
| 更新のきっかけ | 認定更新・区分変更・プラン変更 | 指示書の更新、状態の変化 |
同じ利用者でも保険が切り替わることがあります。切り替えの日付と理由を記録書Ⅰに残しておくと、後から請求内容を確認するときに追えます。
運営指導で見られやすいところ
- 記載者と記載日が特定できるか(誰がいつ書いたか)
- 主治医の指示書の内容と、記録書Ⅰの傷病名・療養上の留意点が食い違っていないか
- 緊急時の連絡先が最新か(家族の連絡先が転居前のままになっていることがあります)
- 同意を得た日付が残っているか
- 保存期間を満たしているか(介護保険は原則、完結の日から2年間。都道府県の条例で5年とされる場合があります)
いつ更新するか
記録書Ⅰは「最初に作って終わり」の書類として扱われがちですが、次のタイミングでは見直しが要ります。
- 要介護認定の更新・区分変更があったとき
- 主たる傷病名や医療処置が変わったとき
- 同居家族や主介護者、住環境が変わったとき
- 主治医・医療機関が変わったとき
- 入退院があったとき
※本記事は制度の一般的な考え方を整理したものです。実際の取り扱いは、最新の告示・通知および指定権者(都道府県・市区町村)の運用をご確認ください。
記録書Ⅰの記入例(項目別)
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 主たる傷病名 | 脳梗塞後遺症(令和6年3月発症)、高血圧症、2型糖尿病 |
| 現病歴・既往歴 | 令和6年3月に脳梗塞を発症し、○○病院に2か月入院。左片麻痺が残り、令和6年5月に自宅退院。以降、外来通院を継続 |
| 療養上の留意点 | 血圧の変動に注意。収縮期血圧180以上または90以下の場合は主治医へ連絡。左上下肢の関節可動域訓練を実施 |
| 介護状況 | 長女と同居。長女は平日9〜18時就労のため、日中は独居に近い状態 |
| 住環境 | 木造2階建て。居室は1階。玄関に3段の階段あり。浴室に手すり設置済み |
| 本人・家族の希望 | 本人「トイレは自分で行きたい」。長女「日中の様子が分からず不安。何かあれば連絡がほしい」 |
| 緊急時の連絡先 | 長女 ○○(携帯090-××××-××××/勤務先03-××××-××××)。次に長男 ○○ |
| 主治医 | ○○クリニック ○○医師(TEL 03-××××-××××/往診可・水曜午後) |
記録書Ⅰでよくある質問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| 書き直しか、追記か | 経過が分かるよう追記が基本です。上書きすると変化が追えなくなります |
| 家族構成が複雑で書ききれない | ジェノグラム(家系図)を添付すると、文章より正確に伝わります |
| 本人が話せない場合の意向 | 家族や以前の記録から推測した旨を明記し、誰の情報かを残します |
| 介護保険と医療保険の両方を使う | 切り替えの日付と理由を残し、どちらの期間かが分かるようにします |
| 他事業所の様式を使ってよいか | 様式は自由ですが、必要な記載項目が揃っているかを先に確認します |
記録書Ⅰ作成の負担を軽くする
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の訪問看護向け機能「訪問看護マナ(訪問看護AI)」は、訪問記録や聞き取りの内容から、記録書や計画書の下書きづくりを補助します。基本情報の整理から日々の記録までを効率化し、書類作成の時間を大きく減らせます。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
訪問看護記録書Ⅰ(フェイスシート)の記入項目
訪問看護記録書Ⅰは、利用者の基本情報をまとめるフェイスシートです。主な記入項目を整理しました。
| 項目 | 記入のポイント |
|---|---|
| 基本情報 | 氏名・生年月日・住所・連絡先 |
| 主治医・医療機関 | 主治医名・医療機関・指示内容 |
| 既往・現病歴 | 疾患や治療の経過 |
| 家族・介護状況 | 家族構成・介護者・キーパーソン |
| サービス利用状況 | 利用中のサービスと関係機関 |
よくある質問(FAQ)
記録書Ⅰとは?
記録書Ⅱとの違いは?
更新はいつ行いますか?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
出典:厚生労働省ウェブサイト/公共データ利用規約(第1.0版)。本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。加算・単位数・要件は改定される場合があるため、最新の告示・通知でご確認ください。
記録書Ⅰに書く項目と、記入の例
記録書Ⅰは初回にまとめて作り、変わったときに更新するもの。日々の記録は記録書Ⅱに書きます。
| 項目 | 書くこと | 記入の例 |
|---|---|---|
| 利用者の氏名・生年月日 | — | —(個人情報) |
| 要介護認定の状況 | 区分と有効期間 | 要介護2(令和8年3月31日まで) |
| 住所 | — | —(個人情報) |
| 主たる傷病名 | 指示書に沿って | 脳梗塞後遺症、高血圧症 |
| 現病歴 | いつから、どう経過したか | 令和6年5月に脳梗塞を発症。急性期病院からリハビリ病院を経て、同年9月に自宅退院。 |
| 既往歴 | — | 高血圧症(10年前から内服)、白内障の手術(5年前) |
| 療養状況 | 日常生活の様子 | 日中は居間で過ごす。屋内は伝い歩き、屋外は車いす。 |
| 介護状況 | 誰が、どこまで | 妻が同居。入浴と外出は全介助。日中は独居となる時間帯がある。 |
| 緊急時の連絡先 | 続柄と連絡先 | 長女(市内在住・平日日中は勤務) |
| 主治医 | 医療機関名、医師名 | — |
| 関係機関 | ケアマネジャー、他サービス | 居宅介護支援事業所、訪問介護(週3回)、通所リハ(週2回) |
| 初回訪問年月日 | — | 令和8年4月10日 |
| 看護の目標 | — | 血圧の安定と、屋内歩行の維持 |
| 生活歴・生活習慣 | 本人像が伝わるもの | 元は大工。朝5時に起きる習慣が続いている。 |
| 住環境 | 段差、手すり | 玄関に段差18cm。廊下に手すりあり。 |
| 本人・家族の希望 | そのままの言葉で | 本人「自分でトイレに行きたい」/妻「夜が心配」 |
記録書Ⅰ・Ⅱ・計画書・報告書の役割分担
| 項目 | 記録書Ⅰ | 記録書Ⅱ |
|---|---|---|
| 書くタイミング | 初回、変更時 | 訪問のつど |
| 内容 | 基本情報、療養の状況 | その日の観察と看護 |
| 更新 | 状況が変わったとき | 毎回 |
| 形式 | 所定の様式 | SOAP・経時記録など |
| 使われ方 | 全体像の把握 | 経過の追跡 |
| 計画書との関係 | 計画を立てる前提になる | 計画の実施の記録 |
| 報告書との関係 | — | 報告書の元になる |
| 保存 | 完結の日から2年間(条例による) | 同左 |
記録書Ⅱの書き方はSOAPでの書き方、計画書は訪問看護計画書をご覧ください。
記録書Ⅱの記法はSOAPのほか、フォーカスチャーティング(看護記録)もあります。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
監修:嶺井 美幸(看護師・訪問看護ステーション「訪問看護ようき」代表・株式会社ライフシフトCSO)
