脳梗塞・脳出血の後遺症がある方のケアプランは、麻痺や言語の障害を踏まえつつ、残された力を活かす視点が大切です。文例とともに整理します。
ケアの視点
麻痺や高次脳機能の障害があっても、できることを増やし、再発を防ぎながら在宅生活を続けられるよう支えます。リハビリと安全な環境づくりが中心になります。
ケアプランの文例
ニーズ:麻痺があっても、できることを増やして自宅で暮らしたい。
長期目標:見守りのもとで、身の回りのことを自分で行いながら在宅生活を続けられる。
短期目標:歩行器を使い、見守りで居室からトイレまで歩ける。
サービス内容:理学療法士による歩行・上肢の訓練、福祉用具(歩行器・手すり)の活用、住宅改修。
書き方のポイント
- 麻痺の程度や、できる動作・できない動作を具体的に書く
- 再発予防(服薬・血圧管理)の視点を入れる
- 本人の「したいこと」を目標に反映する
計画に落とし込むときに迷うところ——脳血管疾患(脳梗塞・脳出血後遺症)の場合
① 「回復期」と「維持期」で目標が変わる
発症から時間が経つと、機能そのものの回復から「残った機能でどう暮らすか」へ支援の重心が移ります。時期に合っていない目標は、本人を消耗させます。
② 見えにくい後遺症がある
麻痺は目に見えますが、高次脳機能障害(注意、記憶、遂行機能)や失語は見落とされます。「やる気がない」と誤解されている行動が、症状であることがあります。
③ 再発予防が計画の柱になる
血圧の管理、服薬の継続、脱水の予防。再発すると、これまでの支援がすべて振り出しに戻ります。目立たない項目ですが、優先度は高くなります。
長期目標・短期目標の立て方
| 避けたい書き方 | 扱いやすい書き方 | |
|---|---|---|
| 長期目標 | 麻痺が改善する | 残った力を使って、自宅での生活を続けられる |
| 短期目標 | 毎日歩行訓練をする | 装具と杖を使って、トイレまで自分で行ける |
| 短期目標 | 家事ができるようになる | 片手でできる方法で、身の回りのことができる |
サービス種別ごとの位置づけ例
| サービス | 位置づけの例 | 記録で見るところ |
|---|---|---|
| 訪問介護 | 生活動作の支援と、できることを引き出す関わり | 本人が自分で行った動作、麻痺側の使い方 |
| 訪問看護 | 血圧・服薬の管理、再発兆候の観察 | 血圧、服薬状況、麻痺やことばの変化 |
| 訪問リハ・通所リハ | 動作の再獲得、住環境に合わせた練習 | 可動域、動作の変化、装具の適合 |
| 福祉用具 | 手すり、装具、移動と入浴の支援 | 用具の使用状況と適合 |
第1表・第2表の文例
第1表:利用者及び家族の生活に対する意向
- 本人「右手が使えないのがもどかしい。前のように料理がしたい」
- 妻「言いたいことが伝わらないと、本人がいらいらしてしまう」
第1表:総合的な援助の方針
残った力を活かして、ご自宅での生活を続けられるよう支援します。ことばが出にくい場面では、急かさずに待つ関わりを関係者で統一します。再発を防ぐため、血圧の管理と服薬の継続を全員で見守ります。
第2表:ニーズ・目標・サービス内容
| 生活全般の解決すべき課題 | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 右片麻痺があり、身の回りのことに介助が必要 | 残った力で身の回りのことができる | 片手で上着の着脱ができる | 訪問介護:更衣の一部介助(見守り的援助)/作業療法士:自助具の選定 |
| 歩行が不安定で、転倒の不安がある | 安全に屋内を移動できる | 装具と杖でトイレまで自分で行ける | 訪問リハ:週1回/福祉用具:手すり |
| ことばが出にくく、意思を伝えるのが難しい | 意思を伝えられる手段を持てる | よく使う内容を、指差しや短い言葉で伝えられる | 言語聴覚士:訓練/全事業所:待つ関わりの統一 |
| 再発への不安がある | 血圧が安定し、服薬を継続できる | 血圧の測定と記録が毎日続けられる | 訪問看護:週2回/家族:日々の測定 |
モニタリングで見る、変化のサイン
- 血圧——朝晩の値と、変動の幅
- 服薬——飲み忘れ、自己中断
- 麻痺——動きにくさが急に増していないか(再発の兆候)
- ことば——出にくさ、理解のしにくさの変化
- 嚥下——むせ、食事時間の延び
- 転倒——ヒヤリとした場面
- 気持ち——できないことへの落ち込み。うつを伴うことがあります
計画づくりでよくある疑問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| どこまで手伝ってよいか | できる動作を代わると、できることが減ります。時間がかかっても待つ場面を計画で決めます |
| 麻痺側は使わせないほうがよいか | 使わないと機能が落ちます。使い方はリハビリ職の指示に沿います |
| ことばが出ないとき | 急かさない、先回りして言わない、はい/いいえで答えられる聞き方をする、を全員で統一します |
| 「やる気がない」ように見える | 高次脳機能障害の症状のことがあります。主治医・リハビリ職に相談します |
| 再発の兆候は | 顔の片側が下がる、腕が上がらない、ことばがもつれる。すぐに救急へつなぐことを計画に書きます |
※本記事は計画作成の一般的な考え方を整理したものです。医学的な判断は主治医の指示によります。給付や算定の可否は保険者(市区町村)にご確認ください。
文例を土台に、作成はAIで
文例はあくまで土台です。介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の居宅向け機能(居宅マナ)は、アセスメントからケアプランの原案を自動で作成します。確認・修正するだけで仕上がり、実証では作成時間が平均125.5分から37.6分に短縮しました(約70%短縮)。※所要時間は利用者さまの状態・記載量・事業所の運用により異なります。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
ケアプラン文例(記入例・コピペ可)
脳血管疾患(脳梗塞・脳出血の後遺症)の方のケアプランでは、残存機能を活かした生活動作、リハビリ、再発予防が柱です。
| 生活課題(ニーズ) | 長期・短期目標 | サービス内容・留意点 |
|---|---|---|
| できることを活かして自分らしく暮らしたい | (長期)残存機能で生活動作ができる/(短期)麻痺側を保護しながら移乗が安定する | 訪問リハビリ、福祉用具貸与、住宅改修、介助方法の指導 |
| また歩けるように機能を保ちたい | (長期)安全に移動を続けられる/(短期)週2回のリハに参加できる | 通所リハビリ、機能訓練、自宅での自主訓練の助言 |
| 再発を防いで在宅生活を続けたい | (長期)再発なく体調が安定する/(短期)血圧・服薬が管理される | 訪問看護の血圧・服薬管理、主治医と連携、生活習慣の助言 |
脳血管疾患(脳梗塞・脳出血の後遺症)|第2表の通し文例
以下はすべて記載のイメージを示すための(例)であり、実在の利用者ではありません。アセスメント結果とご本人の意向に合わせて必ず書き換えてください。岡山市の資料では「複数の利用者の居宅サービス計画の内容が一律である」ことが不適切事例として挙げられています。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 右半身が動きにくいが、トイレは自分で行きたい | 転倒せずに、屋内をひとりで移動できる(1年) | 四点杖を使い、居室からトイレまで歩ける(3か月) | 訪問リハビリテーション:歩行訓練(週2)/福祉用具貸与:手すり・杖 |
| 言葉が出にくく、伝えたいことが伝わらない | 意思疎通が保たれ、人との関わりを続けられる(1年) | 短い言葉やジェスチャーで用件を伝えられる(3か月) | 言語聴覚療法:訓練/家族:ゆっくり待つ関わり |
| 食事中にむせることがある | 誤嚥性肺炎を起こさず、食事を続けられる(1年) | とろみと姿勢の調整で、むせが週1回以下になる(3か月) | 言語聴覚療法:嚥下の評価/訪問介護:食事の姿勢の調整 |
| 片手では着替えに時間がかかる | 身支度を自分で続けられる(1年) | 片手で上着の着脱ができる(3か月) | 作業療法:動作の工夫/福祉用具:着脱しやすい衣類 |
| 血圧が高く、再発が心配だ | 再発せずに、在宅生活を続けられる(1年) | 朝の血圧を毎日測り、記録できる(2か月) | 訪問看護:血圧と服薬の確認/本人:血圧手帳の記入 |
| 麻痺した側の手が固くなってきた | 関節の動きを保ち、介助しやすい状態を保てる(1年) | 痛みなく、肘と手首を動かせる(3か月) | 訪問リハビリテーション:可動域訓練/家族:日常での動かし方 |
| お風呂に一人で入るのが不安だ | 安全に入浴を続けられる(1年) | 手すりを使って、浴槽をまたげる(3か月) | 通所介護:入浴介助(週2)/住宅改修:手すりの設置 |
| 外に出る機会が減ってしまった | 人との関わりを保ち、生活に張りが出る(1年) | 週2回、通所の場に参加できる(3か月) | 通所リハビリテーション(週2)/家族:付き添い外出 |
| 家族が移乗の介助で腰を痛めている | 家族が体を痛めずに介助を続けられる(1年) | 移乗の負担が減り、腰痛が悪化しない(3か月) | 福祉用具貸与:スライディングボード/訪問リハビリテーション:介助方法の指導 |
| 思うようにならず、いらだつことがある | 気持ちの波とつきあいながら、生活を続けられる(1年) | できたことを一緒に確認する機会が週1回ある(2か月) | 訪問看護:傾聴/通所介護:役割のある活動 |
脳血管疾患(脳梗塞・脳出血の後遺症)|観察項目とモニタリングの視点
短期目標の期間が終わる前に、次の項目を確認して評価します。公表資料では、実施状況の把握を行わずに一律に短期目標の期間を延長していた事例が指摘されています。
| 観察する項目 | 変化のサイン | 計画への反映 |
|---|---|---|
| 麻痺の程度 | 動かせる範囲、痙縮の強さ | 訓練内容と福祉用具を見直す |
| 歩行 | 距離、ふらつき、装具の適合 | 歩行の目標を現実的な距離に置き直す |
| 嚥下 | むせの頻度、食事にかかる時間 | 食形態と姿勢を再評価する |
| 血圧 | 朝夕の変動、服薬状況 | 測定の担当と報告の目安を書く |
| 言語 | 伝わりやすさ、本人の疲労 | 関わり方の工夫を留意事項に書く |
| 関節 | 拘縮の進行、更衣時の動かしにくさ | 可動域訓練を計画に明記する |
| 活動量 | 外出の回数、離床時間 | 活動の場を計画に位置づける |
| 気分 | いらだち、意欲の低下 | 傾聴と役割づくりを計画に入れる |
脳血管疾患(脳梗塞・脳出血の後遺症)|避けたい書き方と言い換え
姫路市の資料では、第2表の目標欄に「利用者の目標ではなく、介護者が提供すべきサービス内容が記載されていた」ことが指摘されています。目標は利用者を主語に、達成できたか判断できる形にします。
| 避けたい書き方 | 理由 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 麻痺を改善する | 回復の程度は目標にできない | 転倒せずに、屋内をひとりで移動できる |
| リハビリを継続する | 手段が目標になっている | 四点杖を使い、居室からトイレまで歩ける |
| 再発を予防する | 起きなかったことは確認しにくい | 朝の血圧を毎日測り、記録できる |
| 嚥下機能を維持する | 専門用語で、達成の確認ができない | とろみと姿勢の調整で、むせが週1回以下になる |
| コミュニケーションを図る | 誰が何をするか分からない | 短い言葉やジェスチャーで用件を伝えられる |
| 家族が介助する | 家族頼みの計画になっている | 移乗の負担が減り、腰痛が悪化しない |
| 意欲を引き出す | 支援者側の行為であり、目標ではない | できたことを一緒に確認する機会が週1回ある |
第2表そのものの書き方はケアプラン第2表の書き方・文例、他の疾患は疾患別ケアプランの文例をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
脳血管疾患のケアプランで重視する点は?
麻痺がある場合の注意点は?
再発予防はどう位置づけますか?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
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介護のDXは、ゆっくりでいい。
まずは無料で、現場で試すところから。
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場面別|脳血管疾患の観察と記録の文例
脳血管疾患の方の記録で、その日の変化が伝わる書き方を場面ごとにまとめました。数字と時刻を入れるのが要点です。
| 場面 | 記録の文例 |
|---|---|
| 起床 | 左上肢の麻痺あり。ベッド柵を右手でつかみ、見守りで端座位となる。 |
| 血圧 | 起床時138/84、就寝前128/78。前日と大きな変化なし。 |
| 移乗 | ベッドから車いすへ、右手で手すりをつかみ軽介助で移乗。1日6回。 |
| 歩行 | 四点杖で室内10m。左足の振り出しに時間を要する。ふらつきなし。 |
| 食事 | 右手でスプーンを使い自力摂取。左側の食器に気づかず残されるため、位置を寄せた。 |
| 嚥下 | 水分でむせが1回。とろみを追加し以後なし。 |
| 言語 | 短い言葉は伝えられる。長い説明では言葉が出にくくなる。 |
| 更衣 | 麻痺側から袖を通すことを声かけし、上衣は自分で着られた。 |
| 入浴 | 浴槽の出入りは2名で介助。洗身は右手で前面のみ自分で行われる。 |
| 排泄 | 日中はトイレで自立。夜間はポータブルトイレを使用。 |
| リハビリ | 左上肢の他動運動10回×2セット。痛みの訴えなし。 |
| 皮膚 | 麻痺側の左肘に発赤あり。クッションの位置を調整した。 |
| 痛み | 左肩に痛みの訴え。数字で聞くと10のうち3。移乗時に増強。 |
| 意欲 | 「また歩きたい」と話される。訓練に自分から取り組まれる。 |
| 服薬 | 抗凝固薬を含め処方どおり内服。残薬なし。 |
| 注意点 | 入浴前後の血圧を測定。収縮期血圧160以上のときは中止する。 |
| 急変時 | ろれつが回らない・力が入らない場合は、ただちに受診の判断を行う。 |
| 家族 | 妻へ、麻痺側からの更衣と、移乗の手順を実演して説明した。 |
あわせて確認したい、併存しやすい状態
脳血管疾患の方は、次の状態を併せ持つことがあります。それぞれの文例と、計画に書くときの観点をまとめています。
27の疾患・状態の一覧は疾患別ケアプランの文例にまとめています。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
