個別機能訓練計画書は、利用者一人ひとりの生活機能の向上を目指して、訓練の目標と内容を定める書類です。個別機能訓練加算の算定にも欠かせません。書き方を整理します。
個別機能訓練計画書とは
機能訓練指導員を中心に多職種が連携して作成し、定期的(おおむね3か月ごと)に見直します。単に身体機能を上げるだけでなく、「自宅で〜できる」といった生活の場面に即した目標を立てることが重視されます。
主な記載項目
- 長期・短期の目標(生活機能の向上)
- 訓練の内容・方法
- 頻度・時間・担当者
- 本人の興味・関心、自宅での生活状況
- 評価(達成度・見直し)
書き方のポイント
- 生活に即した目標――「歩ける」ではなく「トイレまで自分で歩ける」など、生活の場面で書く。
- 興味・関心を反映――本人がやりたいことを目標や活動に取り入れる。
- 自宅の状況を把握――必要に応じて自宅を訪問し、環境をふまえる。
- 評価して見直す――達成度を確認し、次の計画に反映する。
記入例
短期目標:手すりを使って浴室の出入りができる。
訓練内容:下肢筋力・バランス訓練、立ち座りの反復、またぎ動作の練習。週2回・各20分。
評価:3か月後に動作の安定性を再評価し、目標を更新する。
要件を「体制・実施・記録」の3つに分けて見る
個別機能訓練計画書は、要件が複数の条文に分かれていて全体像がつかみにくくなりがちです。体制(人と仕組み)・実施(何をするか)・記録(何を残すか)の3つに分けると、自事業所で足りていない部分が見えます。
| 区分 | 確認すること |
|---|---|
| 作成 | 多職種が共同して作成すること |
| 説明と同意 | 本人・家族への説明と、同意を得た記録 |
| 実施 | 計画に基づく訓練の実施 |
| 評価と見直し | 定められた頻度での実施状況の確認と、計画の見直し |
記録で示すもの
要件は「やったこと」ではなく「記録があること」で示します。実施していても記録がなければ、要件を満たしていることを説明できません。
| 残すもの | 書く内容 |
|---|---|
| 計画書 | 本人の希望、心身の状況、長期・短期目標、訓練内容、頻度、時間、担当者 |
| 共同作成の記録 | 関わった職種と、いつ検討したか |
| 同意の記録 | 説明した日、同意を得た日、署名または記録への記載 |
| 実施記録 | 実施日、内容、回数・負荷、本人の反応 |
| 評価 | 目標に対する到達状況、次の計画への反映 |
運営指導で指摘されやすいところ
- 計画書はあるが、実施の記録がない
- 全員が同じ訓練内容になっている
- 目標が身体機能だけで、生活動作につながっていない
- 共同作成の記録がない
- 同意の日付が記載されていない
- 見直しの記録がない
- 担当者が計画書と実際で違っている
計画書の記入例(項目別)
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 本人の希望 | 「近所のスーパーまで自分で買い物に行きたい」 |
| 心身の状況 | 右膝の変形性関節症。屋内は伝い歩き。屋外は50mで疲労し休憩を要する |
| 長期目標 | 屋外を連続200m歩行し、買い物に行ける |
| 短期目標 | 屋内を手すりなしで20m歩行できる |
| 訓練内容 | 下肢筋力訓練(立ち座り10回×2セット)、平行棒内歩行、屋外歩行 |
| 頻度・時間 | 週2回、1回20分 |
| 担当 | 理学療法士 ○○ |
| 留意事項 | 右膝に疼痛あり。訴えがあれば中止し、看護師へ報告 |
よくある疑問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| 目標はどのくらいの期間で設定するか | 評価と見直しの頻度に合わせます。長すぎると見直しの機会を失います |
| 集団体操は対象になるか | 個別の計画に基づく訓練であることが要点です |
| 機能訓練指導員が休んだ日は | 配置の要件と、その日の取り扱いを最新の通知でご確認ください |
| 同意は口頭でよいか | 記録に残る形で得ます。署名または記録への記載が一般的です |
| 計画の変更はどこまで必要か | 訓練内容や目標が変わる場合は、あらためて説明と同意を得ます |
※加算・減算の要件は改定のたびに見直されます。算定の可否は、最新の告示・通知および保険者(市区町村)の運用を必ずご確認ください。本記事は一般的な考え方を整理したものです。
計画書とケアプランのつながり
- ケアプラン第2表の目標と、個別機能訓練計画書の目標が対応していること
- サービス担当者会議で、訓練の内容と目標を共有していること
- 目標が変わったときは、両方を見直すこと
- モニタリングの結果を、ケアマネジャーへ伝えていること
個別機能訓練計画書(書き方の実務)|告示の定めと、貴事業所の状況
左に告示・通知の定め、右に貴事業所の状況を書き込む形にしています。算定の可否を判定するものではありません。要件・運用は保険者により異なりますので、最新の告示・通知および保険者の取り扱いをご確認ください。
| 告示・通知の定め | 貴事業所の状況(記入欄) | 裏づけになる書類 |
|---|---|---|
| 居宅を訪問して把握した生活状況を、計画に反映すること | 訪問日: /把握した内容: | 居宅訪問の記録 |
| 長期目標・短期目標を、達成できたか判断できる形で書くこと | 長期: /短期: | 個別機能訓練計画書 |
| 訓練項目・実施時間・回数・担当者を記載すること | 項目: /時間: 分/回数:週 回 | 計画書 |
| 利用者又はその家族へ説明し、同意を得ること | 説明日: /同意日: | 同意欄のある計画書 |
| おおむね3か月ごとに進捗を確認し、見直すこと | 直近の見直し: | 見直しの記録 |
| 通所介護計画(または訪問介護計画等)の目標と整合させること | 整合の確認:済/未 | 双方の計画書 |
| 見直した内容を、あらためて説明し同意を得ること | 再同意日: | 同意欄のある計画書 |
個別機能訓練計画書(書き方の実務)|記録に残すこと
体制が整っていても、記録がなければ説明できません。以下は記載のイメージを示す(例)です。
| 場面 | 残す記録 | 記載例 |
|---|---|---|
| 目標を書くとき | 利用者を主語に、達成の判断ができる表現で | (長期)手すりを使って玄関の段差を上がれる/(短期)段差昇降を10回続けられる |
| 訓練項目を書くとき | 部位・方法・回数・時間を具体的に | 下肢筋力訓練(立ち上がり10回×2セット)、段差昇降訓練(10回)、計20分 |
| 居宅の状況を書くとき | 実際に測った数値で | 玄関の段差20cm、浴槽のまたぎ40cm、廊下幅80cm、手すりなし |
| 実施記録を書くとき | 実施日・内容・回数・本人の反応 | 7月2日 立ち上がり10回×2セット。ふらつきなく自立。「今日は調子がいい」 |
| 進捗を書くとき | 数値の変化で | 段差昇降が5回→10回へ増加。当初の目標に到達 |
| 見直しを書くとき | 見直しの理由と、変更した内容 | 段差が自立したため、屋外歩行50mを新たな短期目標とした |
| 同意を書くとき | 説明日・相手・同意日・交付日 | ◯月◯日にご本人と長女へ説明、同日に同意を得て交付 |
個別機能訓練計画書(書き方の実務)|よくある誤りと直し方
| よくある誤り | なぜ問題か | 直し方 |
|---|---|---|
| 目標が「機能訓練を継続する」 | 支援者側の行為であり、利用者の目標ではない | 手すりを使って玄関の段差を上がれる |
| 目標に数値がない | 達成したか判断できない | 段差昇降を10回続けられる |
| 居宅の状況が「段差あり」だけ | 計画の根拠にならない | 段差20cmなど、測った数値で書く |
| 訓練項目が「下肢筋力訓練」だけ | 何をどれだけ行うか分からない | 回数・セット数・時間まで書く |
| 3か月ごとの見直しをしていない | おおむね3か月ごととされている | 見直しの時期を計画書に明記する |
| 見直したのに再度の同意を得ていない | 変更内容への同意が必要 | 見直しのたびに説明し、同意を得る |
他の加算は介護保険の加算・減算まとめ、運営指導で確認される書類は監査対策ナビで確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. どのくらいの頻度で見直しますか?
A. おおむね3か月ごとに評価・見直しを行います。状態が変われば随時見直します。
Q. 通所介護計画書との関係は?
A. 通所介護計画書の目標と整合させ、機能訓練の部分を具体化したものと考えると分かりやすいです。
計画書づくりを効率化する
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の通所向け機能(通所介護マナ)は、記録から計画書・評価の下書きを作成し、多職種での作成・見直しを後押しします。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
個別機能訓練計画書の記入例(コピペ可)
個別機能訓練計画書の記載項目と記入例です(表の右上ボタンからExcel/CSVにコピーできます)。通所介護計画書の目標と整合させ、生活の目標につながる訓練内容にします。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 長期目標 | 自宅内を手すりや歩行器で安全に移動し、在宅生活を続けられる(6か月) |
| 短期目標 | 下肢の筋力が向上し、10メートルを見守りで歩ける(3か月) |
| 訓練内容(プログラム) | 下肢筋力運動、立ち上がり訓練、歩行訓練、バランス練習 |
| 実施時間・頻度 | 1回20分・週2回、通所時に個別で実施 |
| 留意点・中止基準 | 血圧・自覚症状を確認し、めまい・胸痛時は中止。転倒に留意 |
| 評価の時期 | 3か月ごとに評価し、目標と内容を見直す |
よくある質問(作成のポイント)
個別機能訓練計画書は誰が作成しますか?
目標はどう立てますか?
個別機能訓練加算との関係は?
計画書の作成を効率化するには?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
通所介護(デイ)の実務ガイド
生活行為別|個別機能訓練計画の目標とプログラムの文例
個別機能訓練計画は「生活行為」から立てるのが要点です。「下肢筋力の向上」ではなく「トイレへ行く」から始め、そのために必要な訓練を組みます。
| 生活行為 | 長期目標 | 短期目標 | 訓練の内容 |
|---|---|---|---|
| トイレへ行く | 日中の排泄をトイレで行える | 手すりを使って便座に移乗できる | 立ち上がりと方向転換の練習を10回×2セット |
| 自分で立ち上がる | いすから見守りで立ち上がれる | 座面40cmから5回連続で立てる | スクワット様の運動を5回×3セット |
| 屋内を歩く | 居間とトイレを伝い歩きで往復できる | 歩行器で20m歩ける | 歩行練習20m×2回、バランス訓練 |
| 外に出る | 付き添いで週1回外出できる | 玄関の段差を昇降できる | 段差昇降の練習10回、屋外歩行 |
| お風呂に入る | 週2回、介助を受けて入浴できる | 浴槽のまたぎができる | 片脚立位の保持、またぎ動作の練習 |
| 服を着る | 上衣を自分で着られる | 袖に腕を通せる | 肩関節の可動域訓練、更衣動作の練習 |
| ボタンを留める | 前開きのシャツを自分で着られる | ボタンを3つ留められる | 手指の巧緻動作訓練、自助具の練習 |
| 食事をとる | 自分でスプーンを使って食べられる | こぼさずに食べられる | 上肢の筋力訓練、姿勢の調整 |
| 飲み込む | むせずに食事できる | とろみ付きの水分でむせない | 嚥下体操、姿勢の指導 |
| 歯をみがく | 自分で歯みがきができる | 奥歯まで届く | 上肢の可動域訓練、柄の工夫 |
| 洗濯物をたたむ | 毎日15分続けられる | 座位で10分続けられる | 座位保持の訓練、上肢の運動 |
| 料理をする | 簡単な調理を週2回行える | 立位を10分保てる | 立位保持訓練、キッチンでの動作練習 |
| 掃除をする | 居間の掃除機がけができる | 5分間立って動ける | 持久力の訓練、動作の分割 |
| 買い物に行く | 付き添いで月2回行ける | 店内をカートを押して回れる | 歩行の持久力訓練 |
| 階段を上る | 手すりを使って上れる | 3段を昇降できる | 段差昇降訓練、下肢筋力訓練 |
| 車に乗る | 自分で乗り降りできる | 座面へ回転して座れる | 移乗動作の練習 |
| 床から立つ | 転んでも自分で起き上がれる | 四つばいから膝立ちになれる | 起き上がり動作の練習 |
| 字を書く | 自分の名前を書ける | ペンを保持できる | 手指の巧緻動作訓練 |
| 人と話す | 週2回、他者と会話する | あいさつができる | 発声練習、集団への参加 |
| 趣味を続ける | 月2回、趣味の時間を持てる | 道具を自分で準備できる | 上肢の動作練習、環境の調整 |
計画に必ず入れる項目
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 作成日 | 年月日 |
| 作成者 | 機能訓練指導員の氏名と職種 |
| 利用者の意向 | 本人の言葉で |
| 家族の意向 | 同左 |
| 居宅の状況 | 訪問して確認した内容(段差・手すり・動線) |
| 健康状態・経過 | 既往、留意事項、中止の基準 |
| 長期目標 | おおむね6か月。生活行為で書く |
| 短期目標 | おおむね3か月。達成が測れる形で |
| プログラム内容 | 種目・回数・負荷・時間 |
| 実施時間 | 1回あたりの時間 |
| 留意点 | 中止の基準、禁忌 |
| 担当者 | 実施する職種 |
| 説明と同意 | 説明日、同意した人、交付の日 |
| 3か月ごとの評価 | 達成状況と、次の目標 |
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
