認知症の方のケアプランは、できないことを補うだけでなく、その人らしさと意欲を支える視点が欠かせません。文例とともに整理します。
ケアの視点
なじみの関係や役割を大切にし、不安や混乱を減らしながら、穏やかに過ごせる環境を整えます。家族の負担軽減も重要な視点です。
ケアプランの文例
ニーズ:なじみの人と関わりながら、穏やかに毎日を過ごしたい。
長期目標:日中の活動に参加し、表情豊かに過ごす時間を持てる。
短期目標:週3回の通所で、他者との会話やレクリエーションに参加できる。
サービス内容:通所介護での個別活動・回想法、家族への対応方法の助言、見守り体制の整備。
書き方のポイント
- できることや役割を活かす目標にする
- 行動の背景(不安・体調など)に目を向ける
- 家族の介護負担への支援も計画に入れる
認知症の計画づくりで、実際に迷うところ
① 「困った行動」を課題に書かない
計画書は本人・家族も読みます。行動そのものではなく、その背景にある本人の困りごとを課題として書くと、支援の方向が変わります。「徘徊がある」ではなく「安心して過ごせる場所と時間が必要」と書きます。
② できることを取り上げない
安全のために先回りして代わりにやると、できることが減っていきます。どこまで本人がやり、どこから支援するかを計画で線引きします。
③ 家族への支援を計画に入れる
認知症の支援では、家族の負担が支援の継続を左右します。家族の休息(レスパイト)を計画に位置づけることは、本人の生活を守ることでもあります。
長期目標・短期目標の立て方
| 避けたい書き方 | 扱いやすい書き方 | |
|---|---|---|
| 長期目標 | 認知症が進行しない | 慣れた環境で、安心して生活を続けられる |
| 短期目標 | 物を失くさなくなる | 探し物があったとき、支援者に伝えられる |
| 短期目標 | 家族に迷惑をかけない | 家族が週1回、自分の時間を持てる |
サービス種別ごとの位置づけ例
| サービス | 位置づけの例 | 記録で見るところ |
|---|---|---|
| 訪問介護 | 生活のリズムを支え、できることを引き出す | 本人が自分で行った動作、声かけへの反応 |
| 通所介護 | 日中の活動と他者との交流 | 参加した活動、表情、他者との関わり |
| 訪問看護 | 服薬と身体状態の管理 | 服薬状況、睡眠、食欲、体重 |
| 短期入所 | 家族のレスパイト | 利用中の様子と、帰宅後の変化 |
第1表・第2表の文例
第1表:利用者及び家族の生活に対する意向
- 本人「ここにいれば大丈夫。でも時々、何をしていたか分からなくなる」
- 長男の妻「介護を代わってくれる人がいない。自分の時間が全くない」
第1表:総合的な援助の方針
ご本人が長く暮らしてこられた環境と生活のリズムを大切にしながら、できることを続けていただけるよう支援します。ご家族の負担が過大にならないよう、休息の時間を確保します。ご本人が混乱されたときは、否定せずに気持ちを受け止める関わりを、関係者で統一します。
第2表:ニーズ・目標・サービス内容
| 生活全般の解決すべき課題 | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| ひとりで過ごす時間に不安が強くなる | 日中を安心して過ごせる | デイサービスに週2回、継続して通える | 通所介護:週2回/訪問介護:送り出しの支援 |
| 服薬を忘れる、または重ねて飲んでしまう | 安全に服薬を続けられる | 服薬の飲み忘れ・重複がない状態が続く | 訪問看護:服薬管理/薬局:一包化とカレンダー |
| 家族の介護負担が大きく、続けられるか不安 | 家族が休息をとりながら介護を続けられる | 家族が月1回、まとまった休息をとれる | 短期入所:月1回/地域包括:家族会の情報提供 |
| できることが減っていくのが本人もつらい | できることを続け、役割を持てる | 洗濯物たたみなど、家庭内の役割を続けられる | 訪問介護:一緒に行う家事(見守り的援助) |
モニタリングで見る、変化のサイン
- 睡眠——昼夜が逆転していないか
- 食事——食べたことを忘れるのか、食べる意欲がないのかは別の問題です
- 服薬——飲み忘れか、拒否か
- 表情と発語——数が減っていないか
- 家族の様子——介護者の疲労は、本人の変化より先に出ることがあります
- 身体の変化——認知症のせいにせず、脱水・便秘・感染などの身体要因を疑います
計画づくりでよくある疑問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| 「徘徊」と書いてよいか | 目的のない歩き回りと決めつけた語です。「外出して戻れなくなることがある」など事実で書きます |
| 本人に計画を説明すべきか | 説明します。理解が難しくても、本人の前で本人のことを決めない姿勢が要ります |
| 家族と本人の意向が違う | どちらも第1表に併記します。片方だけを書かないことが大切です |
| 進行したら計画はどうする | 状態の変化に合わせて見直します。目標を下げることは支援の後退ではありません |
| 認知症加算の要件は | サービス種別ごとに定めがあります。要件と算定の可否は保険者にご確認ください |
※本記事は計画作成の一般的な考え方を整理したものです。医学的な判断は主治医の指示によります。給付や算定の可否は保険者(市区町村)にご確認ください。
文例を土台に、作成はAIで
文例はあくまで土台です。介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の居宅向け機能(居宅マナ)は、アセスメントからケアプランの原案を自動で作成します。確認・修正するだけで仕上がり、実証では作成時間が平均125.5分から37.6分に短縮しました(約70%短縮)。※所要時間は利用者さまの状態・記載量・事業所の運用により異なります。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
ケアプラン文例(記入例・コピペ可)
認知症の方のケアプランでは、本人の意向の尊重、なじみの環境、見守りと安全、BPSD(行動・心理症状)への対応が柱です。
| 生活課題(ニーズ) | 長期・短期目標 | サービス内容・留意点 |
|---|---|---|
| なじみの人と穏やかに過ごしたい | (長期)日中の活動に参加し表情豊かに過ごせる/(短期)週3回の通所で会話やレクに参加できる | 通所介護での個別活動・回想法、なじみの関係づくり、家族への助言 |
| 住み慣れた自宅で暮らし続けたい | (長期)混乱が減り在宅生活を続けられる/(短期)生活リズムが整い日中を穏やかに過ごせる | 訪問介護の生活援助・見守り、環境調整、服薬管理の支援 |
| 家族が安心して介護を続けたい | (長期)家族の負担が軽減し在宅介護を継続できる/(短期)家族が休息をとれる | ショートステイ、通所介護、家族の相談・介護教室 |
認知症|第2表の通し文例
以下はすべて記載のイメージを示すための(例)であり、実在の利用者ではありません。アセスメント結果とご本人の意向に合わせて必ず書き換えてください。岡山市の資料では「複数の利用者の居宅サービス計画の内容が一律である」ことが不適切事例として挙げられています。
| 生活全般の解決すべき課題(ニーズ) | 長期目標 | 短期目標 | サービス内容 |
|---|---|---|---|
| 物忘れがあるが、住み慣れた家で暮らし続けたい | なじみの環境で、落ち着いて生活を続けられる(1年) | 日中の活動の場ができ、生活リズムが整う(3か月) | 通所介護(週3・認知症対応)/訪問介護:生活援助/家族:見守り |
| 薬の飲み忘れが増えたが、体調を崩したくない | 服薬が続き、症状が安定した状態を保てる(1年) | 声かけを受けて、朝夕の薬を自分で飲める(3か月) | 訪問介護:服薬の確認/居宅療養管理指導:薬剤師による一包化の相談 |
| 夕方になると落ち着かなくなる | 夕方も穏やかに過ごせる(6か月) | 夕方の不穏がみられる日が週1回以下になる(3か月) | 通所介護:日中の活動/家族:夕方の関わり方の工夫/主治医への相談 |
| 火の消し忘れが心配だ | 安全に台所を使い続けられる(1年) | 調理時に見守りがある体制が整う(1か月) | 訪問介護:調理の見守り/福祉用具・住宅改修:安全装置の検討 |
| 外出して帰り道が分からなくなることがある | 安全に外出を続けられる(1年) | 見守りのもとで、近所への外出ができる(3か月) | 通所介護:外出の機会/地域:見守りネットワークへの登録 |
| 同じ話を繰り返し、家族が疲れている | 家族が休息をとりながら在宅介護を続けられる(1年) | 家族が週2回、自分の時間を持てる(2か月) | 通所介護(週2)/短期入所生活介護(月4日)/家族会の紹介 |
| お風呂に入りたがらない | 清潔が保たれ、気持ちよく過ごせる(6か月) | 週2回の入浴ができる(3か月) | 通所介護:入浴介助(誘い方の工夫)/訪問介護:清拭 |
| 食事をしたことを忘れてしまう | 必要な栄養がとれ、体重を維持できる(6か月) | 決まった時間に3食を食べられる(2か月) | 訪問介護:食事の準備と声かけ/配食サービス(保険外) |
| お金の管理が難しくなってきた | 金銭のトラブルなく生活を続けられる(1年) | 支払いの支援を受けられる体制が整う(3か月) | 日常生活自立支援事業/地域包括支援センターへの相談 |
| できることが減っていくのが不安だ | いまできることを続け、自信を保てる(1年) | 家事の一部(洗濯物たたみ)を毎日続けられる(3か月) | 通所介護:役割のある活動/家族:できることを任せる関わり |
認知症|観察項目とモニタリングの視点
短期目標の期間が終わる前に、次の項目を確認して評価します。公表資料では、実施状況の把握を行わずに一律に短期目標の期間を延長していた事例が指摘されています。
| 観察する項目 | 変化のサイン | 計画への反映 |
|---|---|---|
| 見当識 | 日付や場所を尋ねる回数が増える | 声かけの方法と環境の工夫を計画に加える |
| 服薬 | 残薬が増える、飲み間違いがある | 管理方法を一包化や服薬カレンダーへ見直す |
| 生活リズム | 昼夜逆転、日中の傾眠 | 日中の活動の回数を短期目標に置く |
| BPSD | 不穏・帰宅願望・興奮の頻度と時間帯 | 誘因を記録し、環境調整をサービス内容に反映する |
| セルフケア | 入浴・更衣の回数が減る | 支援の入り方を見直し、拒否の少ない時間帯に変える |
| 食事 | 食べたことを忘れる、食欲の変動 | 食事の時間と量を記録し、体重で確認する |
| 対人交流 | 人を避ける、会話が減る | 交流の場を計画に位置づける |
| 家族の状況 | 介護者の疲労、相談の増加 | レスパイトの回数を見直す |
認知症|避けたい書き方と言い換え
姫路市の資料では、第2表の目標欄に「利用者の目標ではなく、介護者が提供すべきサービス内容が記載されていた」ことが指摘されています。目標は利用者を主語に、達成できたか判断できる形にします。
| 避けたい書き方 | 理由 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 認知症が進行しないようにする | 進行の有無は目標にできない | なじみの環境で落ち着いて生活を続けられる |
| 職員が服薬管理を行う | 主語が支援者になっている | 声かけを受けて、朝夕の薬を自分で飲める |
| 問題行動を減らす | 評価語であり、本人の視点がない | 夕方の不穏がみられる日が週1回以下になる |
| 見守りを強化する | サービス内容であり、目標ではない | 見守りのもとで、近所への外出ができる |
| 家族の負担を軽減する | 家族が主語で、利用者の目標になっていない | (本人)通所を継続できる/(家族支援として)週2回の休息時間を確保する |
| できることを続ける | 何ができるのか分からない | 洗濯物たたみを毎日続けられる |
| 安全に過ごす | 評価の基準がない | 調理時に見守りがある体制が整う |
第2表そのものの書き方はケアプラン第2表の書き方・文例、他の疾患は疾患別ケアプランの文例をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
認知症のケアプランで大切な視点は?
BPSD(周辺症状)への対応はどう書きますか?
家族の負担軽減はどう位置づけますか?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
無料ではじめる
次の一歩を、どうぞ
介護のDXは、ゆっくりでいい。
まずは無料で、現場で試すところから。
アプリケーションを無料で使ってみる(iPhone / Android)
利用者さま3名まで・期限なく無料/クレジットカード登録不要
場面別|認知症の観察と記録の文例
認知症の方の記録で、その日の変化が伝わる書き方を場面ごとにまとめました。数字と時刻を入れるのが要点です。
| 場面 | 記録の文例 |
|---|---|
| 起床 | 6時40分、声かけで開眼。「ここはどこ」と尋ねられる。「◯◯さんのお部屋ですよ」と伝えると落ち着かれる。 |
| 食事 | 食事の途中で立ち上がられる。声をかけて席へ戻ると、続きを召し上がる。主食8割。 |
| 服薬 | 薬を飲んだことを忘れ、「まだ飲んでいない」と話される。空の薬包を示して説明し、納得される。 |
| 入浴 | 脱衣に抵抗あり。「あとで」と話されたため時間を空け、15時に再度声かけして入浴された。 |
| 排泄 | 便意の訴えなし。1時間ごとの声かけで、日中の失敗はなかった。 |
| 同じ質問 | 「今日は何日か」を1時間に3回尋ねられる。そのつどカレンダーを示して答える。 |
| 帰宅願望 | 16時ごろ「家に帰る」と玄関へ向かわれる。お茶に誘い食堂へ。10分後に落ち着かれる。 |
| 物盗られ | 「財布を盗られた」と話される。一緒に引き出しを探し、本人が見つけられる。 |
| 昼夜逆転 | 夜間2回起き出して居間へ。日中の臥床が3時間あった。 |
| 介護への抵抗 | 更衣時に手を払いのけられる。時間を空け、別の職員が声をかけると応じられる。 |
| できていること | 洗濯物たたみを20分間、自分から続けられる。 |
| 会話 | 昔の仕事の話になると表情が明るくなり、10分間続けて話される。 |
| 見当識 | 季節に合わない服を選ばれる。並べて示すと、暖かいほうを選ばれる。 |
| 不安 | 夕方に涙ぐまれる。隣に座って話を聞くと、5分ほどで落ち着かれる。 |
| 家族対応 | 長女より「同じことを何度も聞かれてつらい」と訴えあり。対応の工夫を一緒に確認した。 |
| 急な変化 | いつもより反応が乏しい。体温37.6度。脱水と感染を疑い看護師へ報告。 |
| 参加 | 風船バレーに座位のまま10分参加。笑顔がみられた。 |
| 就寝 | 21時消灯。22時の巡回で閉眼、呼吸静か。 |
あわせて確認したい、併存しやすい状態
認知症の方は、次の状態を併せ持つことがあります。それぞれの文例と、計画に書くときの観点をまとめています。
27の疾患・状態の一覧は疾患別ケアプランの文例にまとめています。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
