福祉用具貸与計画書は、どの用具を、どんな目標のために使うかを定める書類です。福祉用具専門相談員が作成し、利用者に交付します。書き方を整理します。
福祉用具貸与計画書とは
福祉用具専門相談員が、ケアマネジャーのケアプランに沿って作成します。選んだ用具とその理由、利用目標、使用上の留意事項をまとめ、利用者・家族に説明・交付します。
主な記載項目
- 利用者の心身の状況・living環境
- 福祉用具を使う目標
- 選定する品目と、その選定理由
- 使用上の留意事項・安全への配慮
書き方のポイント
- 目標と用具を結びつける――「安全に移動できる」ために「歩行器」など、目的を明確に。
- 選定理由を具体的に――なぜその品目・機種かを書く。
- 安全への配慮――誤った使い方による事故を防ぐ留意点を記す。
- ケアプランと整合させる――ケアプランの目標に沿わせる。
記入例
目標:屋内を安全に移動し、転倒なく生活できる。
選定品目:歩行器(前輪キャスター付き)。
選定理由:下肢筋力の低下があり、伝い歩きで不安定。歩行器で支持面を確保し、転倒リスクを軽減するため。
留意事項:段差や敷物に注意。ブレーキ操作を本人・家族へ説明。
福祉用具貸与計画書|記載事項と書き方
「モニタリングを行う時期等」の記載漏れが公表資料で名指しされています。以下は記載のイメージを示す(例)です。
| 記載事項 | 書き方 | 記入例 |
|---|---|---|
| 利用者の基本情報 | 氏名・要介護度・認定の有効期間 | 要介護2/令和◯年◯月〜令和◯年◯月 |
| 利用者及びその家族の希望 | 本人の言葉に近い形で | 「トイレまで自分で歩いて行きたい」(本人)/「転ばないか心配」(長女) |
| 心身の状況 | 把握した状態を具体的に | 右片麻痺あり。屋内は伝い歩き。浴室のまたぎに介助を要する |
| 置かれている環境 | 住まいの実際の数値で | 玄関の段差20cm、廊下幅80cm、浴槽の縁の高さ50cm、手すりなし |
| 利用目標 | 達成できたか判断できる形で | 手すりを使い、居室からトイレまで自分で歩ける |
| 選定した機種 | 品名・型番まで | 据置型手すり(◯◯社・型番◯◯) |
| 選定の理由 | 心身の状況・環境・目標との関係で | 工事を伴わずに設置でき、立ち上がりの支点として使えるため |
| 留意事項 | 使い方と、注意すること | 設置面のずれを月1回確認する。濡れた床では体重をかけない |
| モニタリングを行う時期 | いつ確認するかを明記 | 初回は納品後2週間、以降は3か月ごと |
| 複数の提案 | 同一種目で複数を提示したこと | 据置型・突っ張り型・工事型の3点を提示し、本人が据置型を選択 |
| 販売計画との一体 | 特定福祉用具販売を利用している場合 | 入浴用いす(販売)と一体の計画として作成 |
| 説明と同意 | 説明日・同意日・交付日 | ◯月◯日に説明、同日に同意を得て交付 |
福祉用具|運営指導で公表されている指摘
| 公表されている指摘 | 公表元 |
|---|---|
| 福祉用具貸与計画を作成していない。福祉用具専門相談員を常勤換算で2以上配置していない。介護予防福祉用具貸与についてモニタリングを適切に行っていない。利用者が特定福祉用具販売を利用していたにもかかわらず特定福祉用具販売計画と一体で作成していない | 公表資料の主な指摘事項 |
| 同一種目における複数の福祉用具の提案がされていない事例が散見されます。福祉用具の保管及び消毒に係る業務の委託先が変更されているにもかかわらず変更届を提出していない/消毒・保管に関する委託業務の履行確認が定期的に行われていない/福祉用具貸与計画に「モニタリングを行う時期等」を記載していない/軽度者に対する貸与について状態像から見て使用が想定しにくい | 堺市の資料 |
| 福祉用具貸与計画が居宅サービス計画に沿っていない/適時適切に変更されていない。指摘22件のうち「福祉用具貸与・特定福祉用具販売計画の作成等の不備」が7件(31.8%)で最多 | 長野県の令和6年度運営指導結果(福祉用具貸与・特定福祉用具販売) |
| 特定福祉用具販売があった際、サービス担当者会議の記録がなく、居宅サービス計画へ反映されていなかった | 姫路市の令和6年度実地指導結果 |
モニタリングで確認すること
| 確認する項目 | 見るところ | 記録に残すこと |
|---|---|---|
| 使用の有無 | 実際に使われているか | 使用の頻度と、使われていない場合の理由 |
| 目標の達成 | 計画の利用目標に到達しているか | 到達の程度を、できるだけ数値で |
| 適合 | 高さ・位置・サイズが 体に合っているか | 調整した内容と、調整した日 |
| 安全 | 破損・劣化・ぐらつきがないか | 点検した日と、対応の内容 |
| 環境の変化 | 住まいや家族の状況が変わっていないか | 変化の内容と、計画への反映 |
| 心身の状況 | 状態が変わり、別の用具が適していないか | 再選定の要否 |
| 本人の受け止め | 使いにくさや不満がないか | 本人の言葉 |
| 計画の見直し | 変更が必要か | 見直した内容と、再度の説明・同意 |
特定福祉用具販売は特定福祉用具販売、居宅サービス計画との整合はケアプラン第2表の書き方をご覧ください。
計画書に書く「選定理由」の書き方
福祉用具貸与計画書でいちばん問われるのが選定理由です。「本人が希望したため」だけでは、なぜその用具なのかが説明できません。
| 弱い書き方 | 説明できる書き方 | |
|---|---|---|
| 歩行器 | 歩行が不安定なため | 屋内で壁を伝う歩行が見られ、方向転換時にふらつきがある。両手で支持でき、方向転換のしやすい歩行器を選定 |
| 特殊寝台 | 起き上がりが困難なため | 腹筋の低下により平床からの起き上がりに介助を要する。背上げ機能により自力での起き上がりが見込めるため選定 |
| 手すり | 転倒予防のため | トイレでの立ち上がり時に前方へふらつく。便器の前方に据置型手すりを設置し、前方への引き寄せで立ち上がりを支持 |
| 車いす | 移動のため | 屋外の連続歩行が50m程度で疲労し、通院時に休憩を要する。自走式では上肢の負担が大きいため介助式を選定 |
計画書の主な記載項目と記入例
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 利用者の希望 | 「トイレに自分で行けるようになりたい」 |
| 利用者の心身の状況 | 右片麻痺。屋内は伝い歩き。立ち上がり時に前方へふらつきあり |
| 介護者の状況 | 長女と同居。日中は就労のため独居 |
| 住環境 | 木造平屋。トイレは寝室から5m。廊下に手すりなし |
| 利用目標 | 日中、介助なしでトイレまで移動し、排泄ができる |
| 選定した用具と理由 | 据置型手すり2点(トイレ前・廊下中間)。伝い歩きの支持点を確保するため |
| 留意事項 | 設置位置が本人の動線に合っているか、1か月後に確認する |
モニタリングとのつながり
- 計画に書いた目標が達成できているかを確認します。用具が使われているかだけではありません
- 確認した結果を記録し、居宅介護支援事業所へ交付します
- 状態の変化があれば、頻度を待たずに見直します
- 使われていない場合は、その理由まで聞き取ります(合わない、こわい、家族が止めた など)
- 要介護度が変わったときは、給付の対象範囲が変わる可能性があります
※本記事は一般的な考え方を整理したものです。算定の可否や要件は、最新の告示・通知および保険者(市区町村)の運用をご確認ください。
計画書の作成と交付の流れ
- ケアプランへの位置づけを確認する——介護保険で貸与する前提になります
- 自宅を訪問し、心身の状況と住環境を確認する——カタログだけで選ばない
- 計画書を作成し、本人・家族へ説明して同意を得る——同意の日付を残します
- 居宅介護支援事業所へ交付する——ケアマネジャーとの共有が要件に含まれます
- 用具を搬入し、適合・調整する——高さや位置の調整の内容を記録します
- 使い方を説明する——本人と、実際に介助する家族の両方へ
- モニタリングを行い、記録して交付する
計画書についてよくある質問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| 販売の場合も計画書が要るか | 特定福祉用具販売でも計画の作成が求められます。取り扱いは最新の通知でご確認ください |
| 用具を追加したときは | 計画書を変更し、あらためて説明と同意、交付を行います |
| 目標はどう書くか | 用具を使うこと自体ではなく、それによってできるようになる生活動作で書きます |
| ケアプランの目標と揃えるべきか | 揃えます。第2表の目標と対応していないと、位置づけの説明が難しくなります |
| 同意は口頭でよいか | 記録に残る形で得ます。署名または記録への記載が一般的です |
計画書が指摘を受けやすいところ
- 選定理由が「本人の希望」だけ——なぜその用具なのかが説明できません
- 目標が用具の使用そのもの——「歩行器を使う」ではなく、それで何ができるようになるかを書きます
- ケアプランの目標と対応していない——第2表の目標との整合が見られます
- 同意の日付がない——説明した日と、同意を得た記録を残します
- 交付の記録がない——居宅介護支援事業所へ渡したことが残っていない
- 用具を追加したのに計画書が古いまま——追加のたびに変更が必要です
- 住環境の記載がない——なぜその用具が適合するのかの根拠になります
用具を変更・終了するとき
- 状態が改善した場合——より自立度の高い用具へ変更するか、終了を検討します
- 使われていない場合——理由を確認し、別の用具に替えるか、外します
- 入院した場合——原則として給付の対象外になります。入院が決まった時点で相談します
- 要介護度が変わった場合——給付の対象範囲が変わる可能性があります
- いずれの場合も、計画書の変更とケアマネジャーへの共有が要ります
計画書づくりを効率化する
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の福祉用具向け機能(福祉用具マナ)は、貸与計画書の作成・見直しの下書きを補助し、書類の負担を軽くします。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
福祉用具貸与計画書の記入例
福祉用具貸与計画書は、選んだ用具の利用目標や選定理由を記載する書類です。記入例をまとめました。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 利用目標 | 手すりと歩行器で、見守りのもと安全に移動できる |
| 選定した用具 | 手すり(据置型)、歩行器 |
| 選定理由 | 立ち上がりと移動の不安定さを補い、転倒を予防するため |
| 留意点 | 使い方を説明し、定期的に利用状況を確認する |
よくある質問(FAQ)
Q. 計画書の交付は必要ですか?
A. 必要です。作成した計画書は利用者に交付し、同意を得ます。ケアマネジャーにも提供します。
Q. 見直しのタイミングは?
A. モニタリングの結果や状態の変化に応じて見直します。
福祉用具貸与計画書には何を書きますか?
誰が作成しますか?
モニタリングとの関係は?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
品目別|福祉用具貸与計画の目標と留意事項の文例
貸与計画は「なぜこの用具か」と「使うときの注意」を書きます。品目名だけの計画は、運営指導で指摘される点です。
| 品目 | 利用の目標 | 選定の理由 | 留意事項 |
|---|---|---|---|
| 特殊寝台 | 自分で起き上がり、ベッドから離れる時間を増やす | 起き上がりに介助を要し、家族の負担が大きいため | 背上げは45度まで。背抜きを毎回行う |
| 特殊寝台付属品(介助バー) | ベッドから安全に立ち上がる | 立ち上がり時にふらつきがあるため | 固定のゆるみを月1回確認する |
| 床ずれ防止用具 | 仙骨部の発赤を防ぐ | 臥床時間が長く、自力での体位変換が困難なため | 送気の作動を毎日確認。体位変換は2時間ごと |
| 体位変換器 | 介助者の負担を減らし、皮膚トラブルを防ぐ | 妻に腰痛があり、体位変換が困難なため | 当てる部位を毎回変える |
| 車いす | 屋外での移動手段を確保する | 屋外の歩行が困難で、外出の機会が減っているため | ブレーキとタイヤの空気を週1回確認 |
| 車いす付属品(クッション) | 座位の姿勢を保ち、褥瘡を防ぐ | 座面に前ずれがみられるため | へたりを月1回確認 |
| 手すり(置き型) | トイレへの移動を安全に行う | 廊下に手すりがなく、伝い歩きが不安定なため | ぐらつきを週1回確認 |
| スロープ | 玄関からの出入りを自分で行う | 上がりかまち18cmを越えられないため | 固定と勾配を確認。雨の日は滑りに注意 |
| 歩行器 | 屋内の移動距離を延ばす | 杖では不安定で、転倒の危険があるため | ブレーキと車輪を月1回確認 |
| 歩行補助つえ | 屋外での歩行を続ける | 片側の支えで歩行が安定するため | 先ゴムの摩耗を月1回確認 |
| 認知症老人徘徊感知機器 | 夜間の外出に家族が気づけるようにする | 夜間に玄関から出ようとされることがあるため | 電池の残量を月1回確認 |
| 移動用リフト | 介助者1名で安全に移乗する | 2名介助が必要で、日中の対応が困難なため | つり具の縫製とワイヤーを毎回確認 |
| 自動排泄処理装置 | 夜間の排泄介助の負担を減らす | 夜間の交換が家族の負担になっているため | においと皮膚の状態を毎日確認 |
| 排泄予測支援機器 | トイレでの排泄を続ける | 便意・尿意の訴えが乏しいため | 装着位置と通知の精度を確認 |
モニタリングで見て、記録すること
| 見るところ | 記録の文例 |
|---|---|
| 使えているか | 毎日使用されている。使い方に迷う場面はない。 |
| 目標に近づいたか | 歩行距離が10mから20mへ延びた。目標に向けて進んでいる。 |
| 用具の状態 | ブレーキの効きが弱い。事業者へ調整を依頼した。 |
| 身体の状況の変化 | 立ち上がりが安定してきた。より軽い用具への変更を検討する。 |
| 住環境の変化 | ベッドの位置を変えたため、介助バーの向きを調整した。 |
| 介助者の負担 | 妻より「腰の負担が減った」との言葉。 |
| 危険 | コードが動線にかかっていた。配置を変えた。 |
| 本人の受け止め | 「これがあると安心」と話される。 |
| 継続の要否 | 現在の目標に対して有効であり、継続とする。 |
| ケアマネジャーへの報告 | ◯月◯日、電話で報告した。 |
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
