介護サービスの利用開始時には、重要事項説明書とあわせて利用契約書を取り交わします。本記事では、両者の違い、利用契約書の主な記載事項、記入のイメージ(例)、そして根拠となる基準を整理します。
各種書類の全体像は介護の書類・様式の書き方まとめもあわせてご覧ください。

重要事項説明書との違い
重要事項説明書が「サービス内容や料金などを説明し同意を得る」ための書類であるのに対し、利用契約書は事業者と利用者の権利義務(契約関係)を定める書類です。実務では、重要事項を説明したうえで契約書を取り交わす流れが一般的です。
整理すると、次の点が異なります。
| 観点 | 利用契約書 | 重要事項説明書 |
|---|---|---|
| 目的 | 事業者と利用者の権利義務(契約関係)を定める | サービス内容・料金などを説明し、同意を得る |
| 主な内容 | 契約期間、利用料、双方の義務、解約、損害賠償、個人情報の取扱いなど | 運営規程の概要、勤務体制、サービス内容、営業日時、苦情窓口など |
| 性格 | 双方の合意(署名・記名押印) | 事業者からの説明と利用者の同意 |
| 進め方 | 重要事項を説明し同意を得たうえで、利用契約を締結する流れが一般的 | |
上記は一般的な整理です。様式・記載事項はサービス種別・自治体・各事業所の運用により異なります。実際の運用は最新の基準・条例等でご確認ください。
法令上の位置づけ(根拠となる基準)
介護保険の指定サービスでは、サービス提供の開始にあたり、事業者は「運営規程の概要、勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、提供の開始について同意を得なければならない」とされています(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準〔平成11年厚生省令第37号〕第8条)。これがいわゆる重要事項説明書の交付・説明・同意の根拠です。
一方、利用契約書そのものについては、統一様式が省令で定められているわけではありません。契約は民事上の合意であり、記載事項や様式は事業者ごとに整備します。そのため、重要事項説明書は基準にもとづき整える必要があり、利用契約書はその内容と矛盾しないよう作成する、という関係になります。サービス種別ごとに適用される基準(施設・地域密着型など)は異なるため、自事業所に適用される省令・条例の原典をご確認ください。
利用契約書の主な記載事項
- 契約の目的・期間・更新
- 提供するサービスの種類・内容
- 利用料金・支払方法
- 事業者・利用者の義務
- 契約の終了・解約に関する事項
- 損害賠償・免責に関する事項
- 秘密保持・個人情報の取り扱い
- 苦情・相談、紛争解決の方法 など
これらは代表的な項目です。サービス種別により、身体拘束や事故発生時の対応、緊急時の連絡先などを加える場合があります。
記入のイメージ(例)
実物の様式は各事業所で異なります。ここでは記載の雰囲気をつかむための例を示します。氏名は伏字(A様)としています。実在の氏名・被保険者番号は記載しないでください。
| 項目 | 記載イメージ(例) |
|---|---|
| 利用者 | (例)A様(以下「甲」という) |
| 事業者 | (例)○○訪問介護事業所(以下「乙」という) |
| 契約期間 | (例)令和○年○月○日から、要介護認定の有効期間満了日まで。以後、双方に申し出がなければ自動更新 |
| サービス内容 | (例)居宅サービス計画にもとづく訪問介護(身体介護・生活援助) |
| 利用料金・支払 | (例)介護報酬の告示にもとづく額のうち、法定自己負担割合分。毎月○日締め、翌月○日に口座振替 |
| 解約 | (例)甲は○日前までの申し出により、いつでも解約できる |
| 個人情報 | (例)サービス担当者会議等で必要な範囲に限り、あらかじめ文書で同意を得た上で利用 |
上記はあくまで記載イメージの例です。金額・割合・期間などは制度改定や個々の契約により変わるため、自事業所の様式と最新の基準に合わせてご確認ください。
取り交わしのポイント
利用者・家族が内容を理解できるよう丁寧に説明し、双方が署名・記名押印のうえ、控えを交付します。重要事項説明書・運営規程との整合を確認し、保管しておきましょう。
記録・書類をAIで扱うときの個人情報の注意
契約・同意の記録や書類作成をAIツールで効率化する場面が増えています。その際は、利用者の氏名・被保険者番号などの個人情報は伏字にする(例:A様)、または事業所内で定めた取扱いルールに沿って入力するかをあらかじめご確認ください。個人情報の第三者提供・外部サービスの利用は、契約書・重要事項説明書で得た同意の範囲内で行うことが前提です。
よくあるご質問
利用契約書には何を書きますか?
重要事項説明書との違いは?
どちらを先に行いますか?
利用契約書は法令で様式が決まっていますか?
契約書のひな形はありますか?
出典
出典:厚生労働省ウェブサイト(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)/e-Gov法令検索)/公共データ利用規約(第1.0版)。
本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。制度・様式は改定されることがあるため、最新の告示・通知・条例等の原典をご確認ください。
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運営指導で実際に公表されている指摘|出典つき
契約書・重要事項説明書は、運営規程と一致しているかと同意の取り方の2点が確認されます。
| 公表されている指摘 | 公表元 |
|---|---|
| 運営規程・重要事項説明書の内容が実態と異なる、または不整合。差異の多い事項として従業者の職種及び員数/苦情受付機関/利用料/通常の事業の実施地域/営業日及び営業時間/協力医療機関/記録の保存期間が挙げられている | 福井市の令和7年度集団指導資料 |
| 重要事項説明書の記載内容が運営規程と異なっている/必要な記載事項がない、又は必要ない記載事項がある/変更時に同意を取っていない。算定していない加算や徴収していない料金が記載されている例が見受けられた | 津山市の地域密着型サービス事業者集団指導資料 |
| 重要事項説明書等に記載している利用料金(単位)が改訂後のものとなっておらず、改訂後の内容について利用者等へ説明したこと及び同意を得ていることが確認できない | 公表資料の主な指摘事項(金沢市の資料でも説明日・利用者のサイン等の記入漏れがないようにする旨) |
| 重要事項説明書には、料金・加算の内容、外部の苦情連絡先(該当市町村担当課、県国保連合会)及び事故発生時の対応を記載すること | 愛知県の主な指示事項 |
| 重要事項説明書の「事故発生時の対応」「第三者評価の実施状況」の記載漏れについて指導を受けた事業所があった | 公表資料の主な指摘事項 |
| 通常の事業の実施地域について、運営規程と利用者に交付する重要事項説明書の記載内容が異なっていた | 姫路市の令和6年度実地指導結果 |
| 個別サービス計画の同意署名が利用者家族のみとなっている事例、同意日がサービス提供後となっている事例。署名により同意を得る場合は代筆者が利用者及び代筆者の氏名を記入すること | 津山市の集団指導資料(令和5年度) |
| 利用者から個人情報を用いる場合の同意を得ていない/利用者の家族から個人情報を用いる場合の同意を得ていない。代理人は利用者本人の代理であるため、代理人欄への記載をもって家族の同意とすることはできない | 福井市の令和7年度集団指導資料 |
契約時にそろえる書類と、確認すること
| 書類 | 主な記載事項 | 確認すること |
|---|---|---|
| 契約書 | 契約期間、サービスの内容、利用料、解約、損害賠償 | 署名・押印の日付が提供開始日より前か |
| 重要事項説明書 | 運営規程の概要、職種と員数、営業日時、利用料、苦情窓口、事故時の対応、第三者評価 | 運営規程と一字一句そろっているか |
| 個人情報使用同意書 | 利用目的、提供先の範囲、期間 | 本人と家族の双方から得ているか |
| 重要事項の掲示 | 事業所の見やすい場所に掲示。ウェブサイトへの掲載 | 掲示物が最新のものか |
| 料金表 | 基本料金、加算、保険外の実費 | 改定後の額になっているか |
| 緊急時の連絡先 | 夜間・休日の連絡先 | 担当が変わったときに更新しているか |
| 苦情の窓口 | 事業所・市町村担当課・国保連 | 外部の窓口も書かれているか |
| サービス提供の記録の交付 | 申出があった場合の交付 | 交付できる状態になっているか |
同意を得るときに間違えやすいところ
| よくあること | なぜ問題か | どうするか |
|---|---|---|
| 同意日がサービス提供開始日より後 | 手順が逆になっている | 説明・同意・交付を提供開始前に済ませる |
| 家族のみの署名で済ませている | 本人から得るのが原則とされている | 本人から得る。代筆時は代筆者の氏名も記入する |
| 代理人欄で家族の同意も兼ねている | 代理人は本人の代理であり、家族の同意にはならないとされている | 家族の個人情報を使う場合は、家族から別に同意を得る |
| 料金改定後に再説明していない | 改定後の内容への同意が確認できない | 改定のたびに説明し、同意を得た記録を残す |
| 重要事項説明書と運営規程が違う | 公表資料で繰り返し指摘されている | 変更したら両方を同時に直す |
| 算定していない加算が書かれている | 実態と異なる | 提供していないサービスや加算は削除する |
| 説明日・署名の欄が空欄 | 同意を得たことを示せない | 記入漏れを提出前に確認する |
| 掲示物が古いまま | 最新でないと指摘されている | 変更のたびに掲示とウェブサイトも更新する |
運営規程との整合は運営規程で確認できます。要件・運用は保険者により異なります。詳細は監査対策ナビと各自治体の公表資料をご確認ください。
契約の解除・変更で、決めておくこと
解約・変更の取り扱いは、契約書に書いておかないと後で判断が分かれます。
| 場面 | 契約書に定めておくこと | 実際の運用で残す記録 |
|---|---|---|
| 利用者からの解約 | 申出の方法と、何日前までか | 申出を受けた日、方法、理由 |
| 事業者からの解約 | やむを得ない事由の範囲と、予告期間 | 事由、予告した日、代替サービスの調整 |
| 契約の自動更新 | 更新の可否と、更新時の手続き | 更新の意思確認を行った日 |
| サービス内容の変更 | 変更の手続きと、同意の取り方 | 変更内容、説明日、同意した人 |
| 料金の改定 | 改定時の通知の方法と時期 | 通知日、説明日、同意した記録 |
| 入院・入所したとき | 契約の取り扱い(休止か解除か) | 入院日、連絡した相手、再開の見込み |
| 死亡したとき | 契約の終了と、記録の取り扱い | 終了日、遺族への説明 |
| 身元引受人・緊急連絡先の変更 | 変更の届出 | 変更日、新しい連絡先、確認した方法 |
| 損害賠償 | 賠償責任保険の加入と、範囲 | 事故発生時の対応手順 |
| 記録の保存 | 保存期間(完結の日から2年間など、条例による) | 保存場所と、廃棄の記録 |
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
