入浴や排泄に使う福祉用具は、レンタルになじまないため「購入(特定福祉用具販売)」になります。仕組みと対象品目を整理します。
特定福祉用具販売とは
衛生面などから貸与になじまない用具を、介護保険を使って購入できる仕組みです。年間10万円を上限に、購入費の一定割合(原則9割)が支給されます。
購入費の支給を受ける流れ
- ケアマネジャーに相談する——必要性を確認します
- 福祉用具専門相談員が選定する——特定福祉用具販売の指定を受けた事業者から購入する必要があります
- 購入する——領収書と、品目・型番が分かる書類を保管します
- 市区町村へ申請する——申請書、領収書、カタログの写しなどを提出します
- 支給を受ける——償還払い(いったん全額を払い、あとで9割等が戻る)または受領委任払い
⚠指定を受けていない事業者(家電量販店やネット通販など)から購入した場合、支給の対象にならないことがあります。購入前に必ず確認してください。
支給限度額の考え方
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上限 | 同一年度(4月〜翌年3月)で10万円 |
| 自己負担 | 原則1割(所得に応じて2〜3割) |
| 年度をまたぐ場合 | 年度が変わればリセットされます |
| 同じ品目の再購入 | 破損や状態の変化など、必要性が認められる場合に限られます |
| 区分支給限度基準額との関係 | 販売は、貸与とは別枠です |
対象となる品目
| 品目 | 例 |
|---|---|
| 腰掛便座 | ポータブルトイレ、補高便座、洋式便器の上に置く便座 |
| 自動排泄処理装置の交換可能部品 | レシーバー、チューブ、タンクなど |
| 排泄予測支援機器 | 膀胱内の状態から排尿のタイミングを知らせる機器 |
| 入浴補助用具 | シャワーチェア、バスボード、浴槽内いす、浴槽用手すり、すのこ |
| 簡易浴槽 | 空気式・折りたたみ式など、取水・排水に工事を伴わないもの |
| 移動用リフトのつり具の部分 | — |
よくある疑問
| よくある疑問 | 考え方 |
|---|---|
| ネット通販で買ってよいか | 指定事業者からの購入が要件です。購入前に確認します |
| 先に買ってしまった | 支給されないことがあります。必ず事前にご相談ください |
| 要支援でも対象か | 対象になります(介護予防福祉用具購入費) |
| 10万円を超えたら | 超えた分は全額自己負担です |
| 選択制の品目はどちらがよいか | 使う期間の見込みと、状態が変わる可能性で判断します |
※加算・減算の要件は改定のたびに見直されます。算定の可否は、最新の告示・通知および保険者(市区町村)の運用を必ずご確認ください。本記事は一般的な考え方を整理したものです。
購入後のモニタリング
2024年度に一部品目で貸与・販売の選択制が導入されたことに伴い、販売を選んだ場合にも一定期間後の使用状況の確認が求められるようになりました。貸与のような定期の訪問機会がないため、確認の時期を最初に決めておかないと抜けます。
- 販売時に、いつ確認するかを本人・家族と共有しておく
- 確認の方法(訪問/電話)を事業所内で決めておく
- 使われていない場合は、その理由まで聞き取る
- 破損や劣化がないか確認する
- 状態が変わって合わなくなっていないか確認する
購入と貸与、どちらを選ぶか
| 購入が向く | 貸与が向く | |
|---|---|---|
| 状態 | 安定している | 変わる可能性がある |
| 期間 | 長く使う見込み | 短期間または見通しが立たない |
| 費用 | 月々の負担を抑えたい | 初期の負担を抑えたい |
| 管理 | 自分で管理できる | 修理・交換を任せたい |
| 衛生面 | 肌に直接触れるもの | — |
品目ごとの選び方
| 品目 | 選ぶときに見るところ |
|---|---|
| ポータブルトイレ | 設置場所(ベッドからの距離)、座面の高さ、肘掛けの有無、消臭・洗浄機能、家族が処理しやすいか |
| 補高便座 | 便座の高さをどれだけ上げるか。上げすぎると足が床につかず、かえって不安定になります |
| シャワーチェア | 座面の高さ調整、背もたれ・肘掛けの有無、浴室の広さ、折りたためるか |
| バスボード | 浴槽の幅に合うか、跨ぎ動作の負担がどれだけ減るか |
| 浴槽内いす | 座ったときに肩まで湯につかれるか(高すぎると寒くなります) |
| 浴槽用手すり | 浴槽の縁の厚みに合うか、握りやすい太さか |
入浴補助用具は実際の浴室で合わせないと選べません。カタログの寸法だけで決めると、設置できない・使えないことがあります。
購入前に確認すること
- その事業者が特定福祉用具販売の指定を受けているか
- ケアマネジャーに相談済みか
- 同一年度の購入費の残額はいくらか
- 支給の方法(償還払いか受領委任払いか)
- 実際の設置場所で使えるサイズか
- 返品・交換の条件
特定福祉用具販売|告示の定めと、貴事業所の状況
左に告示・通知の定め、右に貴事業所の状況を書き込む形にしています。算定の可否を判定するものではありません。要件・運用は保険者により異なりますので、最新の告示・通知および保険者の取り扱いをご確認ください。
| 告示・通知の定め | 貴事業所の状況(記入欄) | 裏づけになる書類 |
|---|---|---|
| 福祉用具専門相談員が、特定福祉用具販売計画を作成すること | 計画の作成日: /作成者: | 特定福祉用具販売計画 |
| 利用者が福祉用具貸与も利用している場合は、福祉用具貸与計画と一体のものとして作成すること | 貸与計画との一体作成:済/未 | 福祉用具貸与計画・特定福祉用具販売計画 |
| 計画には、利用者の希望、心身の状況及びその置かれている環境を踏まえた利用目標、機種、選定の理由等を記載すること | 記載項目の確認:済/未 | 計画本文 |
| 計画の内容について利用者又はその家族に説明し、同意を得ること | 説明日: /同意日: | 同意欄のある計画書の写し |
| 同一種目について、複数の福祉用具を提案すること | 提案した商品数: 点 | 提案した商品の一覧・説明の記録 |
| 計画にモニタリングを行う時期等を記載すること | モニタリングの時期: | 計画本文 |
| 福祉用具専門相談員を常勤換算で2以上配置すること | 配置人数: 名 | 勤務表・資格証の写し |
特定福祉用具販売|運営指導で公表されている指摘
実際に公表されている内容です。詳細は監査対策ナビと各自治体の公表資料をご確認ください。
| 公表されている指摘 | 公表元 |
|---|---|
| 同一種目における複数の福祉用具の提案がされていない事例が散見されます。よくある指摘事項として、福祉用具の保管及び消毒に係る業務の委託先が変更されているにもかかわらず変更届を提出していない、消毒・保管に関する委託業務の履行確認が定期的に行われていない、福祉用具貸与計画に「モニタリングを行う時期等」を記載していない | 堺市の資料 |
| 福祉用具貸与計画を作成していない。福祉用具専門相談員を常勤換算で2以上配置していない。介護予防福祉用具貸与についてモニタリングを適切に行っていない。福祉用具貸与計画の作成に際し、利用者が特定福祉用具販売を利用していたにもかかわらず特定福祉用具販売計画と一体で作成していない | 公表資料の主な指摘事項 |
特定福祉用具販売|記録に残すこと
体制が整っていても、記録がなければ説明できません。以下は記載のイメージを示す(例)です。
| 場面 | 残す記録 | 記載例 |
|---|---|---|
| 計画を作成したとき | 作成日・作成者・利用目標・機種・選定の理由 | ◯月◯日作成。入浴の自立を目標に、浴槽用手すりを選定。理由は浴槽のまたぎ動作の安定 |
| 複数の商品を提案したとき | 提案した商品名・特徴・価格・本人の選択 | 3点を提示し、価格と使い勝手を説明。本人が◯◯を選択した |
| 貸与計画と一体で作成したとき | 貸与計画の該当箇所・整合の確認 | 貸与している手すりとの併用を前提に、同一の計画に記載した |
| 説明・同意を得たとき | 説明日・相手・同意日・交付日 | ◯月◯日、ご本人と長女へ説明。同日に同意を得て交付した |
| 納品したとき | 納品日・設置場所・使用方法の説明 | ◯月◯日納品。浴室に設置し、使用方法を実演して説明した |
| モニタリングしたとき | 実施日・使用状況・目標の達成状況 | ◯月◯日訪問。週2回の入浴で使用できている。目標はおおむね達成 |
| 見直したとき | 見直しの理由・変更内容 | 状態の変化により、より高さのある手すりへ変更を検討した |
特定福祉用具販売|よくある誤りと直し方
| よくある誤り | なぜ問題か | 直し方 |
|---|---|---|
| 同一種目で複数の提案をしていない | 公表資料で「散見されます」と指摘されている | 複数の商品を提示し、説明した記録を残す |
| 貸与計画と別々に作っている | 貸与を利用している場合は一体で作成することとされている | 同一の計画にまとめ、整合を確認する |
| 計画にモニタリングの時期が書かれていない | 公表資料で名指しされている | 時期を明記し、実施したら記録する |
| 選定の理由が書かれていない | なぜその機種かを示せない | 心身の状況・環境・目標との関係で理由を書く |
| 同意日が納品日より後になっている | 手順が逆になっている | 説明・同意・交付を納品前に済ませる |
| 福祉用具専門相談員が常勤換算2以上いない | 人員基準を欠く | 勤務表で常勤換算を確認する |
他の加算は介護保険の加算・減算まとめ、運営指導で確認される書類は監査対策ナビで確認できます。
申請のポイント
- 購入前にケアマネ・専門相談員に相談し、必要性を確認する
- 必ず指定事業者から購入する(指定外は支給対象外)
- 領収書・パンフレット等、申請に必要な書類を保管する
申請・契約管理を効率化する
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」の福祉用具向け機能(福祉用具マナ)は、販売・契約まわりの書類管理を効率化します。利用者さま3名まで、期限なく無料でお試しいただけます。
特定福祉用具販売の対象
特定福祉用具販売は、入浴や排泄に関わる用具など、貸与になじまない用具を購入する場合に介護保険から費用が支給されるしくみです。
| 対象品目の例 | ポイント |
|---|---|
| 腰掛便座(ポータブルトイレ等) | 排泄に関わる用具 |
| 入浴補助用具(シャワーチェア等) | 入浴の安全を支える用具 |
| 簡易浴槽・移動用リフトのつり具など | 貸与になじまない用具 |
算定要件・単位数・様式は介護報酬改定や自治体により異なります。実際の運用にあたっては最新の告示・通知・条例等でご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. どこで買っても支給される?
A. 都道府県等の指定を受けた事業者からの購入が対象です。指定外だと支給されないため、事前に確認しましょう。
Q. 10万円を超えたら?
A. 超えた分は全額自己負担です。年度(4月〜翌3月)でリセットされます。
Q. いったん全額払うのですか?
A. 多くの場合、いったん全額を支払い、後から保険分が償還されます(受領委任払いに対応する自治体もあります)。
特定福祉用具販売とは?
いくら支給されますか?
購入の流れは?
カイポケを使っていないのですが、どうすればよいですか?
出典:厚生労働省ウェブサイト/公共データ利用規約(第1.0版)。本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。加算・単位数・要件は改定される場合があるため、最新の告示・通知でご確認ください。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
