要介護認定の認定調査では、基本調査の選択肢を選ぶだけでなく、その選択を選んだ根拠と、選択肢では伝わらない状況を特記事項に書きます。介護認定審査会は、この特記事項と主治医意見書をもとに一次判定を修正するかどうかを検討します。つまり、特記事項の書き方が要介護度に影響します。
ここでは第1群から第5群と特別な医療について、迷いやすい場面と、そのまま書き写せる文例を並べました。書き方の原則は3つです。①「できる/できない」ではなく実際に行われている介助を書く、②頻度と時間帯を数字で書く、③いつもと違う場合はその両方を書く。
第1群|身体機能・起居動作(13項目)
実際に行われている介助で選び、選択肢では伝わらない状況を書きます。
| 項目 | 特記事項の文例 |
|---|---|
| 麻痺等の有無 | 左上肢に麻痺あり。肩の高さまで挙上できるが、そこから先は挙がらない。ペットボトルのふたを開ける動作は困難。 |
| 拘縮の有無 | 右膝関節に拘縮あり。仰臥位で他動的に伸展させても160度まで。本人から痛みの訴えあり。 |
| 寝返り | ベッド柵を使えば自力で寝返りができる。柵がない場所(居間の布団)では介助が必要。1日3〜4回、家族が介助している。 |
| 起き上がり | 電動ベッドの背上げ機能を使い、45度まで上げれば自力で起き上がれる。機能を使わない場合は肘で支えても起き上がれない。 |
| 座位保持 | 背もたれがあれば10分程度保持できる。背もたれのない状態では左に傾き、1分程度で支えが必要になる。 |
| 両足での立位保持 | 手すりにつかまれば10秒程度保持できる。支えなしでは立位を保持できず、ふらついて座り込む。 |
| 歩行 | 屋内は伝い歩きで5m程度。屋外は歩行器を使用し、家族が付き添って30m程度。週2回の通院時のみ屋外を歩く。 |
| 立ち上がり | いすの座面に手をついて立ち上がる。ソファなど低い座面からは自力で立ち上がれず、1日2〜3回介助を受けている。 |
| 片足での立位 | どちら側も保持できない。ズボンの着脱時は座って行っている。 |
| 洗身 | 背中と足先に手が届かないため、週2回の入浴時にすべて家族が洗っている。前面と腕は自分で洗える。 |
| つめ切り | 手のつめは自分で切れるが、足のつめは前かがみになれず切れない。月1回、長女が切っている。 |
| 視力 | 新聞の見出しは読めるが、本文は読めない。白内障の手術を勧められているが、本人が希望していない。 |
| 聴力 | 普通の声では聞き取れないことがあり、正面から大きめの声で話すと通じる。電話での会話は困難。 |
第2群|生活機能(12項目)
食事・排泄・清潔・着脱など、日常の場面ごとに頻度と時間帯を数字で書きます。
| 項目 | 特記事項の文例 |
|---|---|
| 移乗 | ベッドから車いすへの移乗は、家族が腰を支えて行っている。1日5〜6回。デイサービスでは職員2名で行っている。 |
| 移動 | 屋内は車いすを自分で操作して移動する。段差のある玄関のみ介助を受けている。 |
| えん下 | 水分でむせることが週2〜3回ある。とろみをつければむせない。固形物ではむせない。 |
| 食事摂取 | スプーンで自分で食べられるが、食べこぼしが多く、食後に家族が衣類を替えている。 |
| 排尿 | 日中はトイレで自立。夜間は間に合わず、週3〜4回失禁があり、家族がリハビリパンツを交換している。 |
| 排便 | 便意の訴えがなく、家族が時間を決めてトイレに誘導している。誘導しないと失敗する。 |
| 口腔清潔 | 歯ブラシを渡せば自分で磨くが、奥歯に磨き残しが多く、毎晩家族が仕上げ磨きをしている。 |
| 洗顔 | タオルを渡せば自分で拭ける。蛇口の操作ができないため、家族が湯を用意している。 |
| 整髪 | くしを渡せば自分でとかせる。後頭部は届かないため、家族が整えている。 |
| 上衣の着脱 | かぶり式は自分で着られる。前開きのボタンは指先の細かい動作ができず、1日2回介助を受けている。 |
| ズボン等の着脱 | 立位が保てないため、座位で行い、臀部を上げる場面で家族が支えている。 |
| 外出頻度 | 週2回の通院のみ。買い物や散歩での外出は6か月以上ない。 |
第3群|認知機能(9項目)
「できる/できない」ではなく、実際にあった出来事で書きます。
| 項目 | 特記事項の文例 |
|---|---|
| 意思の伝達 | 「はい」「いいえ」は伝えられるが、どこが痛いかなど具体的な内容は伝えられない。 |
| 毎日の日課を理解 | 朝食後にデイサービスへ行くことは理解している。曜日の理解はなく、毎日「今日は行く日か」と尋ねる。 |
| 生年月日をいう | 生年月日は正しく答えられる。年齢は10歳ほど若く答える。 |
| 短期記憶 | 5分前に食事をしたことを覚えておらず、1日に3〜4回「まだ食べていない」と話す。 |
| 自分の名前をいう | 氏名は正しく答えられる。 |
| 今の季節を理解 | 夏に「寒い」と話し、季節に合わない服を選ぶことが週2〜3回ある。 |
| 場所の理解 | 自宅であることは理解している。デイサービスでは「ここはどこか」と繰り返し尋ねる。 |
| 徘徊 | 夕方になると「家に帰る」と話し、玄関から外に出ようとすることが週3〜4回ある。家族が声をかけて戻っている。 |
| 外出すると戻れない | 1年前に外出して戻れなくなり、警察に保護されたことが1回ある。以後、1人での外出はしていない。 |
第4群|精神・行動障害(15項目)
この1か月間の頻度で選びます。みられない場合も「みられない」と書きます。
| 項目 | 特記事項の文例 |
|---|---|
| 被害的 | 「財布を盗られた」と週2〜3回話し、そのつど家族が一緒に探している。 |
| 作話 | 行っていない外出について話すことが週1回程度ある。 |
| 感情が不安定 | 夕方になると涙ぐみ、「帰りたい」と話すことが週3〜4回ある。 |
| 昼夜逆転 | 夜間に2〜3回起き出して居間に来る。日中は臥床して過ごすことが多い。 |
| 同じ話をする | 同じ質問を1時間に3〜4回繰り返す。 |
| 大声をだす | 入浴を勧めたときに「うるさい」と大声を出すことが週1回程度ある。 |
| 介護に抵抗 | 更衣の際に手を払いのけることが週2〜3回あり、時間を空けて再度声をかけている。 |
| 落ち着きなし | 夕方に「帰る」と言って荷物をまとめることが週3〜4回ある。 |
| 一人で出たがる | 日中に「買い物に行く」と言って出ようとすることが週1〜2回ある。 |
| 収集癖 | 使用済みのティッシュを引き出しにためている。家族が週1回片づけている。 |
| 物や衣類を壊す | この6か月間にはみられない。 |
| ひどい物忘れ | 薬を飲んだことを忘れ、重ねて飲もうとすることが月2〜3回あり、家族が管理している。 |
| 意味もなく独り言 | 独り言が続くことが1日に数回ある。 |
| 自分勝手に行動する | 食事の途中で立ち上がり、別の部屋へ行くことが1日1〜2回ある。 |
| 話がまとまらない | 話題が途中で変わり、要件が伝わらないことが日常的にある。 |
第5群|社会生活への適応(6項目)
| 項目 | 特記事項の文例 |
|---|---|
| 薬の内服 | 家族が1回分ずつ小袋に分け、声をかけて手渡している。手渡せば自分で飲める。 |
| 金銭の管理 | 長女がすべて管理している。本人は小銭のみ財布に入れているが、支払いの計算はできない。 |
| 日常の意思決定 | 食べたいものは自分で選べる。受診や契約に関する判断は家族が行っている。 |
| 集団への不適応 | デイサービスでは他の利用者と会話し、行事にも参加している。不適応はみられない。 |
| 買い物 | 週1回、家族と一緒に出かけ、本人は品物を選び、支払いは家族が行っている。 |
| 簡単な調理 | 炊飯器のスイッチは押せる。加熱をともなう調理は、火の消し忘れがあったため6か月前からしていない。 |
特別な医療(過去14日間)
過去14日間に医師の指示に基づいて実際に行われたものが対象です。
| 項目 | 特記事項の文例 |
|---|---|
| 点滴の管理 | この14日間に実施なし。 |
| 中心静脈栄養 | 実施なし。 |
| 透析 | 週3回、月・水・金に通院して血液透析を受けている。送迎は透析施設の車を利用。 |
| ストーマの処置 | 人工肛門を造設しており、装具の交換は週2回、訪問看護師が行っている。 |
| 酸素療法 | 在宅酸素を使用。安静時1L/分、労作時2L/分。1日16時間装着している。 |
| レスピレーター | 使用なし。 |
| 気管切開の処置 | 気管切開部のガーゼ交換を1日1回、家族が行っている。 |
| 疼痛の看護 | がん性疼痛に対し、医師の指示で貼付剤を使用。訪問看護師が週2回、疼痛の評価を行っている。 |
| 経管栄養 | 胃ろうから1日3回注入している。手技は妻が行い、訪問看護師が週1回確認している。 |
| モニター測定 | 血圧・体温・経皮的動脈血酸素飽和度を1日2回、家族が測定して記録している。 |
| じょくそうの処置 | 仙骨部のじょくそうに対し、訪問看護師が週3回、洗浄と被覆材の交換を行っている。 |
| カテーテル | 膀胱留置カテーテルを留置。訪問看護師が2週に1回交換している。 |
迷いやすい場面と、書き方
| 場面 | どう選び、どう書くか | 特記事項の文例 |
|---|---|---|
| 「できる」と答えたが実際はしていない | 能力ではなく実際に行われている介助で選び、両方を特記事項に書く | 本人は「自分でできる」と話されたが、実際には毎回家族が介助している。調査時に動作を確認したところ、途中で手が止まった。 |
| 日によって違う | より頻回な状況で選び、両方の頻度を書く | 週7日のうち4日は自分で歩けるが、3日はふらつきが強く車いすを使用している。 |
| 本人と家族の話が食い違う | 両方をそのまま書く | 本人は「夜は眠れている」と話されたが、家族からは「夜中に2〜3回起きる」との話があった。 |
| 選択肢に当てはまらない | 近い選択肢を選び、当てはまらない理由を書く | 手すりがあれば自立だが、自宅の廊下に手すりがないため、実際には介助を受けている。 |
| 施設・入院中の調査 | 施設での状況で選び、在宅に戻った場合の見込みも書く | 入院中のため病棟での状況で選択した。自宅は2階に居室があり、退院後は階段の昇降に介助が必要と見込まれる。 |
| 介護者がいないため介助されていない | 介助されていないで選び、必要性を書く | 独居のため介助者がおらず、実際には行われていない。動作の確認では、支えがないと転倒の危険がある。 |
| 拒否のため確認できなかった | 確認できなかった旨と、判断の根拠を書く | 本人が動作の確認を拒まれたため、家族からの聞き取りにより判断した。 |
| 過剰な介助が行われている | 実際の介助で選び、能力とのずれを書く | 家族がすべて介助しているが、調査時に確認したところ、時間はかかるが自分で行えた。 |
| 医療処置の頻度 | 過去14日間に実際に行われたものを選ぶ | 過去14日間に3回実施。それ以前は週1回であった。 |
| 日常生活自立度 | 認定調査員が判断した理由を書く | 夜間に居室から出て徘徊があり、家族が対応しているため、認知症高齢者の日常生活自立度をⅢaと判断した。 |
特記事項でやりがちなことと、直し方
| やりがちなこと | なぜ問題か | どうするか |
|---|---|---|
| 選択肢と同じことしか書いていない | 審査会が判断を修正する材料にならない | 選んだ根拠と、選択肢では伝わらない状況を書く |
| 「時々」「たまに」で書いている | 頻度が伝わらない | 「週2〜3回」「1日1〜2回」と数字で書く |
| 評価語(拒否・不穏・問題行動)を使っている | 事実が伝わらない | 起きた行動をそのまま書く |
| 本人の話だけで書いている | 実際の介助と食い違うことがある | 家族からの聞き取りと、動作の確認を併記する |
| 推測で書いている | 根拠が示せない | 見たこと・聞いたことと、判断を分けて書く |
| 医療処置を14日より前の分まで書いている | 対象期間が違う | 過去14日間に実際に行われたものに限る |
| 介護の手間が伝わらない | 要介護度の判断に反映されない | 誰が・どのくらいの時間・何回行っているかを書く |
| 空欄が多い | 確認したのかどうかが分からない | 該当がない場合も「みられない」と書く |
作成したケアプランへの反映は第2表の書き方、アセスメントはアセスメントの書き方をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
特記事項は必ず書かなければなりませんか。
選択肢と実際の状況に差がある場合や、介護の手間が選択肢だけでは伝わらない場合に記載します。該当がない項目まで無理に書く必要はありませんが、判断に迷った項目は根拠を残してください。
「できる能力」と「実際に行われている介助」のどちらで選びますか。
項目により異なります。第1群の一部は能力で、第2群の多くは実際に行われている介助で評価します。いずれの場合も、選ばなかったほうの状況を特記事項に書いておくと、審査会の判断材料になります。
日によって状態が違うときは、どちらで選びますか。
より頻回にみられる状況で選び、両方の頻度を特記事項に書きます。「週7日のうち4日は◯◯、3日は△△」のように書くと伝わります。
介護者がいないため介助されていない場合はどうしますか。
実際に介助されていない状態で選び、介助が必要と考えられる理由と、動作を確認した結果を特記事項に書きます。
特記事項は要介護度に影響しますか。
介護認定審査会は、基本調査による一次判定に加えて、特記事項と主治医意見書をもとに二次判定を行います。特記事項の内容が判定の修正につながることがあります。
出典:厚生労働省ウェブサイト(要介護認定に関する情報/認定調査員テキスト)/公共データ利用規約(第1.0版)。
本ページは上記を当社が編集・加工したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。項目の構成・評価軸は改定により変わることがあります。実際の判断は最新の認定調査員テキストと保険者の取り扱いにしたがってください。文例はそのまま書き写すためのものではなく、実際に確認した内容に置き換えてご使用ください。
この記事の執筆・編集
介護のマナ編集部(株式会社ライフシフト)
介護記録AI「神マナ(介護のマナ)」を開発・提供する株式会社ライフシフトの編集部。訪問看護ステーションを運営する看護師(CSO)をはじめ、介護・看護の現場とともに、記録・書類・制度の実務情報を発信しています。
