☰ 目次宇宙一カンタンなスローDX・AXの教科書
第1章
願望を明確に

第1部 あたりまえの原則

昔から変わらないことを、介護の現場で確かめる

第1部では、成功する事業に昔から共通している原則を、6つ取り上げます。

01
願望を明確に
どこへ向かうのかを、はっきりさせる
02
恐れを越える
それでも動けない本当の理由を、見られる大きさに割る
03
決めて、小さく始める
割った1つを、今日動ける小ささで始める
04
知識を借りる
その1つを、ゼロから考えず、うまくいった人から借りる
05
仲間と進む
一人で抱えず、前向きな人から一緒に進む
06
続ける
効果が出る前に、やめない

6つは、ばらばらの心得ではありません。つながりは、こうです。
行き先を決める。すると、怖さが出てくる。怖さを割ると、最初の1つが見える。その1つを、借りたやり方で、仲間と始め、続ける。

どれも、目新しいことではありません。
でも、ケアの現場でこれを全部そろえている施設は、思ったより多くありません。

最初の原則は、いちばん地味で、いちばん飛ばされやすいものです。行き先を決めること。
「はじめに」で、足りないのは想いではないと書きました。
では、その「良い施設」を、数字1つと言葉1行で書けますか。

ひとつずつ、確かめていきましょう。

ロマンとそろばん

想いを守るために、数字がある

介護・福祉の事業は、サステナブル(持続可能)でなければなりません。

続けることで、可能性が残る。
続けられなければ、
どんなに素晴らしい理念も、届けたい想いも、
そこで途絶えてしまう。

だからこそ、「ロマン」と「そろばん」の両方が必要です。

素晴らしい理念を持っている介護施設は、日本中にたくさんあります。

「こういう施設にしたい」
「こういう会社にしたい」

その想いに「そろばん」——数字を見る目と、それを支えるDX・AXが加われば、想いは続けられるものになる。

私はそう確信しています。

だから、「宇宙一カンタンな方法」を紹介していきます。DX・AXで諦めてしまう施設を、1社でも減らすためです。

行き先の候補を、6つ並べる

何が変わりうるのか

では、スローDX・AXを進めると、何が変わりうるのか。約束ではなく、私たちが目指してきた行き先として、先に並べておきます。

01
売上を守る
記録が整うと、算定の要件を確かめやすくなります。ケアに余裕が生まれれば、受け入れられる人数を増やす余地も生まれます。
02
経費を下げる
紙代・印刷代、残業代、転記ミスによる損失を、減らしていけます。
03
時間が返ってくる
記録・転記・報告書に取られていた時間が、「利用者さんに寄り添う時間」として戻ってきます。
04
スタッフが残りやすくなる
残業が減り、ストレスが減り、「できた!」が増える。働きやすい施設には、人が残りやすくなります。
05
ケアの質が上がる
記録に追われないぶん、ケアに集中できる。情報が共有されるので、担当が変わっても途切れにくくなります。
06
ご家族に選ばれる
具体的で、タイムリーな報告が届く。ご家族が安心できる施設は、選ばれる施設です。

どれも、一度に起きるものではありません。

ただ、この6つはバラバラには起きません。
経費が下がるから、給与を上げられる。給与が上がるから、人が辞めない。
人が辞めないから、ケアの質が上がる。質が上がるから、選ばれる。

「はじめに」でお話しした陽気の5年も、この順番でした。

その入口になるのが、「時間」です。まず、そこからお話しします。

入口は、時間

本来やりたいことに、時間を返す

あなたは今も、こう思っているはずです。

「利用者さんの役に立ちたい」
「目の前の人の笑顔が見たい」
「人の人生に寄り添いたい」

その想いは、最初から変わっていません。
見失ってもいないし、忘れてもいない。

ただ、記録、転記、報告書、書類整理……。
「もっとこうしたい」に使える時間が、どうしても足りない。

DX・AXの最大の効果は、
「本来やりたいことに、
もっと時間を使えるようになること」です。

DX・AXは時間を奪うものではない。あなたの想いに、時間を返してくれるものです。

6つの行き先と、入口の時間。この中から、あなたの施設の「数字を1つ」を選びます。

3年後の施設を、数字1つと言葉1行で書く

願望を、ぼやけさせない

章のはじめの問いに戻ります。
「良い施設にしたい」という言葉のままでは、何も始まりません。
どこまで行けば「なれた」と言えるのかが、決まっていないからです。

数字を直視したときと同じです。ぼやけたものは、人を止めます。はっきりしたものは、人を動かします。

だから、3年後の姿を、2つの形で書きます。

01
数字を1つ
例:残業のない月を、1年のうち10回にする/月の残業代を、いまより下げる(金額はいまを測ってから決める)
02
言葉を1行
例:職員が、家で記録を書かない施設

数字は、近づいているかどうかを毎月確かめるため。
言葉は、職員みんなが同じ姿を思い浮かべるためです。

数字は、いまの状態を一度だけ測ってから決めます。測れなければ、まず測ることを目標にする。最初の数字は小さくていい。届かなかったら、直せばいいのです。

数字は、約束ではありません。迷わないための目印です。
この目印があると、ここから先の章で出てくる「何から始めるか」「何を借りるか」「誰と始めるか」が、すべて決めやすくなります。

今日やれること(道具がなくてもできます)
・数字の候補を1つ選ぶ(例:記録を家に持ち帰った日の数/定時に記録が終わった日の数/訪問した日のうちに記録が閉じた件数)
・今日から1か月、カレンダーに〇か×をつけて、いまの状態を測る
・言葉を1行、紙に書いて、毎日目に入る場所に貼る
・経営者の方は、数字と1行を一人で決めず、現場の管理者1人と一緒に決める(その人が、第5章の最初の仲間の候補になります)

第1章のまとめ

1願望は2つの形で書く数字を1つ、言葉を1行。紙に書いて、毎日見る
2ロマンとそろばん理念だけでも、数字だけでも続かない。続けられることが価値
3変わりうるものを先に描く時間・人・ケアの質・選ばれること。ひとつが良くなると、次が良くなる

この章で、問いはここまで絞られた

どんな施設にしたいのか。
それを、数字1つと言葉1行で書けているか。