第1部 あたりまえの原則
第1部では、成功する事業に昔から共通している原則を、6つ取り上げます。
6つは、ばらばらの心得ではありません。つながりは、こうです。
行き先を決める。すると、怖さが出てくる。怖さを割ると、最初の1つが見える。その1つを、借りたやり方で、仲間と始め、続ける。
どれも、目新しいことではありません。
でも、ケアの現場でこれを全部そろえている施設は、思ったより多くありません。
最初の原則は、いちばん地味で、いちばん飛ばされやすいものです。行き先を決めること。
「はじめに」で、足りないのは想いではないと書きました。
では、その「良い施設」を、数字1つと言葉1行で書けますか。
ひとつずつ、確かめていきましょう。
ロマンとそろばん
介護・福祉の事業は、サステナブル(持続可能)でなければなりません。
だからこそ、「ロマン」と「そろばん」の両方が必要です。
素晴らしい理念を持っている介護施設は、日本中にたくさんあります。
その想いに「そろばん」——数字を見る目と、それを支えるDX・AXが加われば、想いは続けられるものになる。
私はそう確信しています。
だから、「宇宙一カンタンな方法」を紹介していきます。DX・AXで諦めてしまう施設を、1社でも減らすためです。
行き先の候補を、6つ並べる
では、スローDX・AXを進めると、何が変わりうるのか。約束ではなく、私たちが目指してきた行き先として、先に並べておきます。
どれも、一度に起きるものではありません。
ただ、この6つはバラバラには起きません。
経費が下がるから、給与を上げられる。給与が上がるから、人が辞めない。
人が辞めないから、ケアの質が上がる。質が上がるから、選ばれる。
「はじめに」でお話しした陽気の5年も、この順番でした。
その入口になるのが、「時間」です。まず、そこからお話しします。
入口は、時間
あなたは今も、こう思っているはずです。
「目の前の人の笑顔が見たい」
「人の人生に寄り添いたい」
その想いは、最初から変わっていません。
見失ってもいないし、忘れてもいない。
ただ、記録、転記、報告書、書類整理……。
「もっとこうしたい」に使える時間が、どうしても足りない。
「本来やりたいことに、
もっと時間を使えるようになること」です。
DX・AXは時間を奪うものではない。あなたの想いに、時間を返してくれるものです。
6つの行き先と、入口の時間。この中から、あなたの施設の「数字を1つ」を選びます。
3年後の施設を、数字1つと言葉1行で書く
章のはじめの問いに戻ります。
「良い施設にしたい」という言葉のままでは、何も始まりません。
どこまで行けば「なれた」と言えるのかが、決まっていないからです。
数字を直視したときと同じです。ぼやけたものは、人を止めます。はっきりしたものは、人を動かします。
だから、3年後の姿を、2つの形で書きます。
数字は、近づいているかどうかを毎月確かめるため。
言葉は、職員みんなが同じ姿を思い浮かべるためです。
数字は、いまの状態を一度だけ測ってから決めます。測れなければ、まず測ることを目標にする。最初の数字は小さくていい。届かなかったら、直せばいいのです。
数字は、約束ではありません。迷わないための目印です。
この目印があると、ここから先の章で出てくる「何から始めるか」「何を借りるか」「誰と始めるか」が、すべて決めやすくなります。
・数字の候補を1つ選ぶ(例:記録を家に持ち帰った日の数/定時に記録が終わった日の数/訪問した日のうちに記録が閉じた件数)
・今日から1か月、カレンダーに〇か×をつけて、いまの状態を測る
・言葉を1行、紙に書いて、毎日目に入る場所に貼る
・経営者の方は、数字と1行を一人で決めず、現場の管理者1人と一緒に決める(その人が、第5章の最初の仲間の候補になります)